都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

比較技術でみる産業列国事情 森田正規 :ためになります

2009-10-27 23:04:27 | マクロ経済

 知識の源泉となる著作だ。「比較技術学」を提唱する碩学が、放送大学のために分かり易く書いてある。データが省略されているのは残念だ。国の産業を技術と資質、比較優位でまとめてある。切口は、「比較技術の要因構造」(P40)に示されている「定常要因(国民性、自然地理的条件)」、「蓄積要因(経済・工業・技術の伝統・基盤)」、「時代要因(社会体制と政策、時代と環境)」に区分されていて分かりやすい。補完すると、「企業組織・労働者・規範」という生産現場の言及が素晴らしい分析だ。1章に結論はまとまっている。<o:p></o:p>

 指摘には、教育制度と機会の提供が重要なこと、R&D(研究と応用)の両輪が必要なこと、基幹産業の裾野の広がりと製造の大切さ(楽して儲けたGMの破綻)がある。さらに、「カネの余剰の悪さを防ぐ」とあり、「これからもモノつくりの時代」として、情報の飽和と工業への回帰を提唱している。日本モノつくりの特質は「文明受容と変容」、「丹精」、「一般向け良いモノ」とあり、これからは「高度化」と「多種多様」とあり(月並みだが)、エコ対応のエネルギー技術など挙げている。<o:p></o:p>

 いくら、デジタルでもオーディオは理論上ありえないCDプレイヤーのクロック交換で音が変わるし、車はエンジンの組み立て精度で燃費も反応も変わる。測定できない要素、多種多様な改良で別物に変わるのがモノの面白さだ。科学者、技術者、職人、製造組織管理は未だに必要だとの思いを新たにした。大体、情報の入手、分析、管理、コントロールシステムだけでモノが良くなるというのは幻想だ。油まみれ(現場)が基本だろう。<o:p></o:p>

本書で驚いたことは、インドが人口世界一になる、中国は歴史を背負いまとまらない(科挙・お上意識)外貨(ドル)保有高の上昇、韓国の5大企業がある。<o:p></o:p>

 お奨めできる「比較技術学」の入門書です。

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