広瀬旭荘の「天下の貨(たから)七分は浪華にあり、浪華の貨七分は舟中にあり」(原典:九桂草堂随筆)と言われたのは、堂島と中ノ島の米蔵。河川港である中ノ島あたりは船場に近く、、集散地かつCBD(都心)近接の米取引市場となった。この先物取引と集散地はシカゴと似ている。こちらのラサール・ストリートも先物の元祖で、投機的なアニマル・スピリッツで名を馳せた。
閑話休題、この著作は素晴らしい資料だ。知見は:
・米が幕府の生産評価単位→石高 35%が取り分
・先渡契約(Forward)から先物取引(Future)へ、証券化され米小切手(10石単位)
・信用は米方年行司が仲裁人、大坂奉行所、のちには幕府の関与
・豪商が米切手を担保に大名・旗本に融資→地方自治体金融
・空米小切手とモラル・ハザード、幕府による信用補完、民間の拠出要請→「選りきらい」(信用選択に)、入替両替(信用により交換)、不渡り小切手
・河岸:江戸(かし)、大坂(はま)、京都(川ばた)
・蔵屋敷の米俵搬出入は船入堀、雁木(階段状護岸)と瀬越船、
・見付で米の品質評価、実物チェックで「領国米ブランド」
・相場の旗振通信の禁止→抜け駆け禁止と情報の価値
政治(幕府)と経済(商人)、地方経済と中央経済、米と商品作物、時代の経済変遷など多面的な分析は読んでいて興奮する。
淀屋橋近くの会社に勤めた経験もあり、当時の賑わいが想像できる。
大坂から大阪に、そして今は活気がいま一つ。