都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

災害リスクの心理学 ダチョウのパラドックス(ハワード・クンレイター 、ロバート・マイヤー):災害の保険から、行動経済学、誘導策、政策まで幅広い

2021-12-19 02:50:12 | 都市計画

 なぜ、災害の起こるところに、災害の後でも住むのか。また、個人での対策費用の出し惜しみはなぜか。誘導策や政策としての規制はどうあるべきかを分析している。

 わが国でも、宮古市の1933年地震の碑が「~此処より下に家を建てるな」とあったが守られなかった。遊水地を宅地化し洪水の頻発や造成の課題での土砂崩れなど、都市計画的にはこのようなエリアは安い地価(危険性があるから)でスプロールの発生と住宅化という問題がある。

 本著は都市計画ではなく経済学だが、災害防止の方策として卓越した見識だ。今後の都市計画は経済学との連携が必要だと切に感じた。

 知見は:

・6つの被害を生む心理的バイアス→行動経済学で言われている項目だ

①近視眼的思考壁:遠くの災害から守る便益と、目先のコストや労働、双曲割引に似る

②忘却癖:災害の教訓を忘れる

③楽観壁:将来の災害を過小評価する

④惰性癖:不確かな災害対策なら現状維持

⑤単純化癖:リスクの一部分だけを取り出し、関係する諸要因に注意を向けない

⑥同調癖:他の人に合わせ自分の行動を決める

・時間解釈レベル理論:時間が近づくと楽しみにしていた旅行でも準備が面倒になり嫌気がさす

・災害の後、買い上げをしても、空き地は「安い出物」とみなされ建築ラッシュになり災害のサイクルが動き始める

・初期設定→ナッジ( https://en.wikipedia.org/wiki/Nudge_theory )に近い、損害保険加入や災害対策への誘導政策

・確率論:100年に一度の洪水なら、25年で22%以上起こる(1-(99/100)25)と具体的に示すのが良い

・極性化効果:オピニオン・リーダーが群れを率いる、群れは賢明さにかける、つまりはパンデミックの噂の拡大やワクチン接種の危険性のデマなど広がる

・行動リスクの管理

①バイアスのリスト・アッフ゜:なぜ災害リスクの備えをおろそかにするのか

②リスク認知への影響:バイアスがリスク過小評価とどうつながるか

③災害準備への影響:歪んだリスク認知が災害準備計画に与えるマイナス効果の評価

④対応策の設計:③におけるエラーを克服すとため誘導できるインセンティヴと説得の計画

・行動リスク監査:上記6つのバイアス別にリスク認知に対する影響、災害準備への影響、対応策のマトリクス(表)を作る

・政策のデザイン

①実効性の高い規制と基準:建築について

②区分け事業:再建の要求のあるなかでの建築制限エリアを区分け

③住宅移転のための土地買い上げ:引越にまつわる、経済・コミュニティへの補助・インセンティヴ

④長期節税効果:減税(あるいは上乗せ)で誘導

 

 都市計画関係者は一読に値する

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