どういう経緯で私のタンスに入っていたのか定かではないが黒い喪服が出てきた。
母のものならもう着ることがないので解いてしまおうと取り出し広げてみて驚くと同時にドキッ。
裏地の身ごろの上の部分が鮮やかな緋色だ。
何やらなまめかしい。
男性の地味な羽織の裏地に華やかな模様の布地を使っているのは展覧会で見たことはある。
裏地は見えないので緋色でもいいがちょっと冒険だと思う。
母がやってきたので聞くと自分のものではないと言う。
私の家の紋は三つ巴だがこの喪服の紋は桐紋だ。
金生町暮らしを初めてもう八年になる。
誰のものかわからないがもう文句を言ってくる人はいないと思うので解くがちょっとためらっている。
緋色のヤマツツジを採ってきたので一緒に写したが黒を控えた緋色には華やかさが負けそう。