『だれのための仕事』という鷲田清一先生の本を読んでいて、
こんな過去記事を思い出しました。時間がある方は読んでくださいね。
まだ虹色教室を始める前……私が あちこちの主婦向けのパートを
はしごしていたころの話です。
お友達に誘われて、郵便局の短期バイトをすることにしました。
短期といっても、年末の年賀状の区分け……ではなく、新しい保険証を全国に配る際、
直接、手渡しなもんで、戻ってくる郵便物がはんぱじゃない……
そこで再配達のお知らせを電話でするというお仕事でした。
このバイト……5人がグループになって働きます。私のお仲間は若くてきれいな
仕事の出来る20代。几帳面なおば様、のんびり屋の主婦と私。
性別不明(のち女の子と判明)ひと時もじっとしていない20代前半…の子でした。
性別不明の子は、初日から「友達と遊びに行くのでバイト休みます。」と宣言し
「出れる日に○してもらって雇ったはずでは…?」の質問に、
「その時は約束していなかったんです。」と平然と言い訳し
郵便局内を凍りつかせました…が、2日目からは元気に出勤しておりました。
実はその仕事、郵便局が外部スタッフに任せたくなるような裏事情がありました。
こういう特殊な郵便物の再配達は、翌日になるんです。
翌日……フーン それで?とお思いでしょうがこれをお客様に説明したとたん
「なんで、今日持ってこれんのや!!」
「なめとんか、今すぐ持ってこんかい!」と怒鳴られるなじられる……(
お留守だったのはお客様では?そんなに保険証お急ぎですか?)
「だから民営化せえ、いうとんじゃ」と説教されるで、この地域の人の心の狭さ、
貧しさをひしひしと実感する結果となるのです。
数日後、仕事を覚えるまでは優等生だった美人の20代が、
受話器の向こうから怒鳴られ続けて精神的にダウン……
几帳面なおば様もため息しかつかなくなり……のんびり屋の主婦も涙目に……
私としては電話の向こうの見ず知らずの人がわめこうと、ののしろうと、痛くも
かゆくもないので、そのおかげで郵便局内ではかなり待遇されているこの仕事…
「結構、おいしいんじゃないかなぁ?」などと感じていました。
そうして元気なのは、私……と、一向に仕事を覚える気配のない性別不明だった
女の子となりました。
その子ときたら椅子をガタガタ……シャーペンをカチカチ……電話の合間に
しゃべるしゃべる……と落ち着かないことこの上ないのですが、
何せこの仕事の裏事情のせいか、上の人に叱られることはありませんでした。
その子以外の4名はだんだんにその子のことが気になってきました。
これまで よそで働けたんだろうか?……とか
親御さんはどうおっしゃっているんだろう?……などなど。
休憩時間にその子に、直接、疑問をぶつける人も出てきました。
質問をぶつけられたその女の子は、
これまで幼稚園でアルバイトしていたことを話しました。
子どもたちがとてもなついて、その子が行くところには子どもの人だかりが、
できていたのだそうです。が、幼稚園の先生方からの評判はものすごく悪くて
「覚えられないんだったら仕事の手順を書いた札を首からさげて仕事せい!!」
といびられていたのだとか…
それを見かねた園児のお母さんから、「あんたー先生にいじめられてたねー」
と小声で同情されるほど ひどいイジメだったそう。
その子の親御さんは、「とりあえず仕事しておれば、いいよー」
と応援してくれているそうです。
きっと、家でもこの通り落ち着かないんでしょうね。
親御さんとしてはお金に換算される事さえしてくれるなら
それ以上の贅沢は言わない気らしい…。
そんな話をするうちに、私はこうも落ち着かず 仕事も覚えられないこの子が
叱られても、いじめられても、がんばって仕事に来ている姿にちょっと感動して
しまいました。この子が、これからも叱られてもめげずにがんばって働いていて
くれるように…と祈るような気持ちでした。
そして、他のメンバーの人たちも同じような気持ちだったらしく……
はじめは、この子のことがすごく苦手そうだった几帳面なおば様までそっと、
その子のフォローをしていました。短期バイトが終わる頃、5人のグループは、
かなり親しくなっていたのですよ。
この話には 後日談がふたつあります。
ひとつめは、この時のお気楽な仕事ぶりをかわれた私は、
その後も郵便局の仕事を任され10円単位のちっちゃい出世をし、
内部のごたごたに巻き込まれて苦しみました!!
ふたつ目は、数年後、阪急電車内で、あの女の子と再会。
なつかしくなって声をかけると「だれ?」とつれない答え。
「ほら 郵便局の短期バイトで…。」と説明しかけると、隣にいたその子の友達が、
「覚えとけよー、そんくらいー」と笑いながらツッコミを入れていました。
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郵便局の短期バイトが終わる頃、
私は電話の向こうの怒鳴り声に「めげない」……というか、
怒鳴りだしたら受話器を少し耳から離して「いろいろストレスあるのね~。
大阪、景気が悪いしな~。保険書の配達が翌日になるってだけで、こんだけ負の
エネルギー放出できるんだから、ある意味すごいわ……やれやれ……」と
怒鳴り終えるまで、鼻歌まじりに待っていて、
「どうも申し訳ありません。~~です」と用件を伝えて、ていねいに電話を切る
ってことを繰り返していたのですが、
そのお気楽ムードの仕事ぶりが、短期バイト教育係(?)のお眼鏡にかなったらしく、
バイトが終わる頃、「他のパートもやってみない?」というお声がかかりました。
ちょうど、お金が必要な時期だったので、承諾し、さっそく小荷物係をすることに
なりました。
私……はっきり言って、そんなに仕事ができる人間じゃありません。
雑だし、ポカミスが多いし、定期的に体調崩しますし……
でも、ある他の人に負けない特技があるのです。
それは新しい仕事を覚えるのがはやい……ということです。
といって、頭の中身は平均的日本人。覚えが良いわけでも、頭の回転が速いわけ
でもありません。身体能力もダメダメです。
ならどうして仕事を覚えるのがはやいのかというと、
今の仕事にもつながっているのですが、「教育する」「教える」「教わる」という
時点で、学ぶ内容を瞬時に、ごくごくシンプルで簡単な形に翻訳することが
得意なのです。ですから、難しそうな解説書も、複雑な仕事の手順のプリントも、
見ると同時に、幼児にもわかるようなイラストつきで色分けされた1,2の手順で
できる内容に頭の中で変化させてしまっているのです。
そのため、頭はあまり良くなくても、
驚異的な記憶力と頭の回転の速さを持ってるのじゃないか??
と誤解されるほど、素早く仕事を覚えてしまえるのです。
そのため、これまでどこのバイトに行っても、仕事を覚えるまでの時点では、
他の人の先を行ってました。
絶対覚えれないような難しい仕事を「1回しか教えへんよ」
なんて脅してくるいじわるな先輩の鼻を明かすのがひそかな楽しみでした(本格的に
仕事が始まれば、ポカミスが多くてぼろが出てくるのですが)。
そうして他の人が何週間かかかるという話だった新人教育期間を2~3日で終えて、
楽しく小荷物係をやっていると、
「もう、覚えたの?」と郵便局内の上司が、小荷物係の視察に来て、
まだこの仕事について日が浅いのに、「きみ、別の部署に行ってくれ」という
お声がかかり、大きな荷物の扱いの部署に移されました。
その上司は新しい部署に何度か見に来て、「女性なのに、ここの係りは大変だね。
もう仕事覚えたの?きみ、別の部署に行ってくれないか?」とまたしても
お声がかかりました。
そして、留守中の荷物の保管と電話応対の部署でも同様のことがあり、
「きみ、別の部署に行ってくれないか?」とお声がかかりました。
(みんな私が出席の印鑑を押すのを忘れたり、雑に押していることなんかにも、
まだ気づいておりません)
私にすれば、ぼろが出る前に教育期間ばかりでラッキーなんですが、
次の部署に行けば、時給数十円アップする可能性も高まるけれど……。
郵便局内でも最大の難所。絶対ミスが許されない、誰も仕事が長続きしない……と
噂される速達便の区分け。
たったひと文字の見落としで、間違って遠方に郵便物が行っちゃた場合、
上司が飛行機で郵便物を届けるはめになる。
人間のうっかりが、上司の一日の仕事と飛行機の運賃の金額とてんびんに
かかっている常に心臓に悪い~部署なのです。
おまけに私はかなり雑で、ミスが多い人間。
うまくいくのかいかないのか、最初から逃げ出すのもな~と
取り合えず受けることにしました。
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お仕事裏話 4
お仕事裏話 5
お仕事裏話 6
お仕事裏話 7
お仕事裏話 8
お仕事裏話 9