虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

一緒に活動することが難しい自閉症の子とする工作

2021-06-28 10:48:21 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

会話がほとんど成り立たなかったり、

多動が激しかったりする自閉症の子と工作を楽しむためのアイデアを紹介します。

 

会話が成り立たず、忙しく動き回り、ひたすらおもちゃを散らかしていく状態にある

自閉症の子に、物作りの魅力を教えていくのは大事なことです。

能動的に考えながら行動することを学ぶ機会になりますし、

他者の模倣をしたり、習ったりするのも上手になっていきます。

 

とはいえ、少しの間、椅子に座っているのも難しい子と

工作を楽しむのは簡単ではありません。

虹色教室でどんな工夫をしているのか、書かせていただきますね。

 

<自閉症の子と工作を楽しむ際のポイント>

① 子どもがこだわるもの。しつこく遊んでいたもの。触っていたもの。好きなもの。

好きな感触、好きな動き、好きな展開などを工作に盛り込む。

  

3歳の自閉症の★くんは、線路が二股に分かれているところや道路の信号があるところ、

ふみきりなどが好きな子です。

電車や車が分かれ道やふみきりや信号などで一時的に止まった状態になり、

それからどうしようかと判断するシーンで、じっと覗きこむような仕草をする姿が

何度もありました。

 

まだ関わることが難しい子ですが、

こちらからそうしたシーンを作って遊びに盛り込むと、かわいい笑みを浮かべます。

工作をする際も、★くんが好きな「乗り物が一時的にストップするもの」を

作って遊ぶことにしました。

 

コミュニケーションを取ることが困難な4歳の☆くんは、

ビー玉をペットボトルに入れていく遊びをしているときに、

でこぼこしたサイズの大きなものを入れようとしては、

軽くパニックを起こして、こちらに助けを求め、

何とかそれを押し込むことができると、とてもうれしそうにしていました。

ほかの場面でも、力を入れて何かを押し込むときに集中し、

うまくいくと大喜びしていました。

そこで、かなり集中して取り組まないと成功しないようなレベルの

穴に何かを入れる作業を工作のテーマにしました。

 

② の子がすでにできるレベルの見本を見せる。

できたものが、本人にとって魅力的であることが大事。

最初は、「貼る」「切る」などの1手順でできる工作にする。

 

★くんに見せた工作見本は、「紙に曲がるストローの一部を貼っただけ」という

「ふみきり」です。

「カンカンカン~」と言いながらストローのふみきりを上げ下げすると、

そわそわして椅子に腰かけるのを嫌がっていた★くんが関心を示しました。

 

 

もう一本のストローも貼るところを見せると、★くんも自分でテープでその上から

貼って、近くにあったスパンコールも貼っていました。

 

 

ミニカーが好きな自閉症の子と工作するときは、このように台紙となるものに、

「テープで何かを貼るだけ」でいろいろな作品作りが楽しめます。

 

モールも貼ると面白い素材です。簡単にトンネル等ができます。

 

モールを与えるときは、端の針金部分で目などをひっ掻いてしまう事故を防ぐために、

あらかじめ先の部分を少しだけ折って渡してください。

 

★くんは、モールを貼ったあとで、磁石でそれを吸い寄せて遊ぶのも

喜んでいました。

 

口に物を入れることが多い自閉症の子と磁石を扱うときは

絶対に口に入れることがないよう注意してください。

飲み込むことができない大きいサイズの磁石を購入することをお勧めします。

 

紙を貼ると、ビー玉を転がすコースターなどもできます。 

☆くんとは、太めのストローを台紙に貼ってから、

小さな発泡スチロールの玉をストローの中に入れて行く作業をしました。

小さな玉を扱うのは集中力がいります。

 

 

☆くんは少し負荷がかかる作業をさせた方が

注意の転動を防げるようで、お母さんが驚くほど根気よく、

この遊びに熱中していました。 

 

 

③  感触が気持ちいい素材を用意する。 

 

上の写真のような、さくさく切るときの感触が気持ちいい「カラフルダンボール」は

切りたい気持ちを誘います。

貼ってから折り目をつけるのが楽なので、ビー玉コースターとして遊べました。


子どもが思うように育たないのは、育て方を失敗したため?

2021-06-26 09:41:07 | ハイリーセンシティブチャイルド(HSC)・敏感な子

世の中には正しくて善意に基づいた子育てアドバイスがごまんと溢れています。

また園や学校や習い事では、毎日のように、

「そこの場で共有されている常識」を耳にすることでしょう。

子育て中のタレントのブログやネットの掲示板では、子育て中のママはどのように

振舞うべきか厳しい意見が飛び交っています。

 

そうやって母親のもとへ大量に押し寄せてくる情報は、どれも一理あるし、

子育てが順調な時には、日々の指針にしたり、問題を解決したりするのに

役立つ便利なもののはずです。

 

でも、順調とは言えない時……

子どもを育てていれば、否が応でもしょっちゅう遭遇する事態ですが……。

つい必要以上に子どもを叱り過ぎてしまったり、

理想の親像、子ども像と現実とのギャップに苦しんだりしている時期。

それまで何気なく取り込んでいた情報からまるで毒素でも流れ出しているかのように

内面を蝕まれていくようなことが起こりがちなのではないでしょうか。

 

子どもの言動が手にあまるような場合、内面化した多くの情報に責め立てられて、

子どもの気がかりや問題のすべてを、自分の育て方の失敗と結び付けて考えて

おられる方はたくさんいらっしゃいます。

 

でも実際に親御さんに会ってみると、どの方も9割方はきちんと子どもに対応していて、

罪悪感や失敗感は不必要という印象があります。

必要なのは、子どもの個性に添って、ほんの少し接し方を微調整すること、

修正するにしろ自分のあり方のだいたいに自信を持つこと、

子どもの育ちの道筋の大きな流れを把握して、うまくいかない状態に不必要に

うろたえないことではないでしょうか。

 

子どもによっては唖然とするようないたずらを繰り返す子もいるし、

かんしゃくや駄々をエスカレートさせていく子もいます。

年中、文句ばかり言ってやる気がない子もいるし、

激しく動き回って、トラブルばかり起こす子もいます。

自分の言い分を通そうとして長い時間ごね続ける子もいるし、

不安や緊張が強くて、新しい活動に頑として取り組もうとしない子もいます。

 

そうした子と接していて経験的に言えるのは、

子どもの困った行動の多くは接し方を変えたり、十分に甘えられるような時間や機会を

設けたり、過干渉を減らしたり、子どもの長所や強みにスポットライトを当てることで

改善するけれど、だからといって、今、子どもの問題に悩んでいるのは、

それまでの過去の失敗の結果でもないということです。

 

わたしがこうした意見のよりどころとしているのは、

「たくさんの子どもたちと接する機会がある」という点と

「今、困った状態にある子と非常によく似た時期を経た子が、

その数カ月後、1年後、数年後には、

どのように成長していったのか目にしたことがある」という点で

培った勘のようなものです。

が、それは、子どもの言動に途方に暮れている親御さんが感じたり考えたり

判断したりしている内容と、かなりずれがあります。

 

子どもの問題行動がエスカレートしている時、たいていの方は、

「叱りすぎているのでは」「これまでの接し方が間違っていたのでは」と

親の自分にその原因があるのではないかと悩んでいます。

でも実際にそうした子とじっくり付き合ってみると、子どもの気質の側に因があって、

親の叱り過ぎや接する際の悩みを引き出しているように見えるのです。

 

周囲を疲労困憊させるほど困らせる子には、

発達に偏りのある子もごく一般的なもあるでしょうが、

どちらにしろ、際だって魅力的な面を持っている場合がほとんどです。

知能がとても高かったり、美的な感性が優れていたり、好奇心が強く科学への関心が

強かったり、エネルギッシュで粘りがあったりするのです。

繊細で優しい気持ちを持っていたり、

きちんとしよう完璧であろうがんばろうという気持ちが人一倍強かったりする子も

多いです。

わたしが教室で見かける親を困惑させる子のほとんどは、

発達障害による育てにくさがあるか、ハイリーセンシティブな子か、

ギフテッド(ハイリーセンシティブな子や発達障害の子と重なる部分を持っている

ことが多い)の子のいずれかの特徴を持っているように見えます。

ギフテッドは、先天的に平均値よりも顕著に高い能力を持つ子たちのことです。

 

ギフテッドの子どもたちは、神経の感受性が増すことによって通常の人間より

刺激を生理的に強く経験する特徴を持っているとされています。

こうした刺激に対する並みならない反応をすることは、OE(過度激動)と

呼ばれています。

ギフテッドの子らのように高い能力を持っているわけでなくても、

ハイリーセンシティブな子たちは、よくこのOEという精神状態にあります。

 

ポーランドの心理学者、精神科医、詩人であるドンブロフスキは、

OEという平均以上に敏感な精神状態を5つの分野に区分けしています。

 

1精神運動性OE

落ち着きがなく頭の回転が速い印象を与える。話が一気に飛躍する、

頭が働いて眠れないなど

 

2. 知覚性OE

神経質さ。光、音、匂い、触感など感覚器官に与えられた刺激に過剰に反応する。

美的感覚にもつながる。


3. 想像性OE

隠喩などの詩的表現に優れる。「注意力散漫」と見られる。白昼夢を楽しむ。


知性OE

広く知られているギフテッドの特徴。知識を渇望し、疑問は研究し、理論的な分析や

真実の探求を愛する。そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、

頭脳パズル、知覚ゲームを好む。


5. 感情性OE感情の種類と幅が大きく「ドラマチック」な反応を示す。

より楽しみ、より悲しみ、より怒り、より驚き、より恐れる。深く感情移入し、

愛着心、責任感、自省意識も非常に強い。

 

子どものOE過度微動が強ければ、育てる親にすれば、

日々、へとへとに疲れ果ててしまうことは想像できます。

でも、こうしたOEの強い子たちの優れた面に光を当てて、

もがき苦しみながら成長していく姿に寄りそい、創造性や強い探究心を発揮する場を

保証してあげるなら、思い通りに育たない不全感は、思った以上の、

想像できなかったほどすばらしい個性の面白さに変わっていくのだと感じています。

また、実際に教室で、そうした姿を目の当たりにしています。


相談 『時計の問題』の理解につまずいています

2021-06-22 09:35:12 | 虹色オンライン教材

虹色オンライン算数教室をご利用いただいている方からこんなご相談をいただきました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小学3年生の娘が、算数「時計」の問題でつまずいています。
「水族館に行きました。水族館に着いた時間は午前9時です。
出た時間は午後2時です。水族館に何時間いましたか?」
といった問題を2年生の頃からなかなか理解できないままで
その都度教えてきましたが、しばらく間をおいて解かせると
またできないの繰り返しで今にいたります。
 
娘は、着いた時間から水族館を出た時間を引こうとします。
 
説明した後にもう一度解くときに
午後2時が14時引く9時と書きます。
 
時間の問題にも色々ありますが
何分後は何時ですか?
何分前は何時何分ですか?
などは、間違えなく解けるようになってきました。
 
何分間ですか?とか
何時間ですか?とか
「間」を聴かれる問題でこんがらがっているようです。
 
計算はつまずきもなくできるのですが、
筆算をものすごく嫌がり
何度も間違えて怒り出します。
最初に筆算すれば一回で解けるのに‥‥‥と毎回思いますが、
1年以上注意してもやりません。
性格はよくも悪くも負けず嫌いの頑張り屋です。
 
ーーーーーーーーー
 
こちらのご相談に回答した記事をおまけブログ(鍵付きです)にアップしました。
 
(おまけブログとは、虹色オンライン算数教室を購入いただいた方に見ていただける鍵付きブログです。見ていただく方法については、こちらの記事で書いています。)

ダンボールで忍者屋敷作り

2021-06-18 11:09:08 | 通常レッスン

緊急事態宣言の下で、三密を避けて、

教室での活動は自粛ムードのちんまりしたもの

になりがちなんですが、

子供達に、「今日は何をしたい?」とたずねると、

「大きな○○を作りたい!もっと、もっと大きな〜!!」と

いう返事が返ってきます。

遊びに我慢を強いることが増えても、

子ども達の心までもちんまりと縮こまっていないようで一安心。

 

小学2年生のAくん。

お兄ちゃん二人は虹色教室の卒業生です。

お兄ちゃん達のレッスンについてきた頃の楽しい思い出が

深く心に残っているようです。

「お兄ちゃん達がしていたみたいな忍者屋敷が作りたい!」

と言いました。

懐かしいAくんのお兄ちゃん達の忍者屋敷作りの風景

みんなでワイワイ協力しあって作業することはできないけれど、

せめて大きな段ボールを用意して

忍者屋敷づくりを手助けすることにしました。

 

昔風の家具と思いきや、壁に穴があり、外に通じるトンネルに。

何とか、入れました!

↓掛け軸を作っています。

 

★段ボール工作の関連記事★

段ボールで簡単に子どもが乗れる舟を作る方法


幼児期に体験しておくと、算数が得意になること

2021-06-16 09:38:38 | 算数

幼児期、“ある遊び”をした経験の量で、4年生以降の算数を解く力が全然違ってくるな~と感じています。

その遊び……しっかりしている子は、
小学校低学年であっても、高学年の問題も、自分でひらめいて解いていくことが多いです。

どんな遊び??

と気になりますよね。

ままごとの延長線上にある、分ける遊びです。
それも大人に教わりながら、分けるのでなく、

ただ皿があるから、あっちやりこっちやり、ジャラジャラ……

大玉ビーズや豆やどんぐりやビー玉を本能的に、感触を楽しんで分ける行為です。

外では砂や小石もいいですよね。

おやつの時間にはお菓子を分ける。
そこでも教えるというより、自分でいろいろやってみることが大事で、
何か大人が教えよう気づかせようとフォーカスすると、体感してわかることが減ってしまいます。

この「分ける」遊び、どのような先の学習に結びついているのか
小学校で習うことと、中学入試の問題から例をあげていきますね。

たとえば、「平均」を出す問題。

平均とはつまり、↓の写真のように、



皿にいくつかずつ入ってて、

いったん、ごちゃっと集めて、

もとの皿に同じ数ずつ分けなおす

という行為です。
それが、85点とか70点で計算するわけですから、
どんぐりが85個とか70個とか、い~っぱいあるというだけで、
あとは上と同じ作業をすればいいのです。

もちろん、教えるときに何十個もどんぐりは必要ないのですが、
それより、
「分ける」「集める」「分けなおす」
といった算数の大きな枠になる部分がピンとくるかどうか……は、幼児期の体感にかかっている気がするのです。

教室では、幼いうちから、計算プリントをしてきた子たちが、体感が抜けているために、中学の計算もできるのに、幼児がささっとわかることがいつまでもわからない~
新しい文章題になるたびに、公式の暗記で解いていくので、応用がきかない~
という問題にぶつかるのを良く見かけます。

この算数に必要な体感というのは、
たとえば、高いところから飛び降りたことがあるかどうか……の感覚に似ています。
目で見れば、あの高さならいける!
あの高さはひざにひびく~
あの高さは危険……ということが、体験がたくさんある人にはわかりますよね。

でも何センチが飛べて~とプリントで習うと、地面が傾いていて危険なところで飛んでしまったり、メジャーがないから飛べないと思ったりするのではないでしょうか?

今日は4歳児さんたちのグループレッスン。
女の子3人組さん、毎回、頬が緩みっぱなしのかわいらしさです。
このごろ、少しだけお菓子を持参しているので、いっしょにお菓子を分け合う時間は、すごく楽しくて大事な学習時間です。
3枚のおかしを「★ちゃん、☆ちゃん、私でわけるのよ」と○ちゃんが言ったので、
「4枚だったら、どうしよう?」とたずねると、
「★ちゃん、☆ちゃん、私、先生」と答えます。
「先生はいらないから、3つに割って★ちゃん、☆ちゃん、○ちゃんにあげるね。ひとり、1と3分の1ずつになるね」と言うと、
「そう、1つと、3つに割ったのの1個ずつ」とうなずきました。
お菓子を食べながら、それそれのお母さんやお父さんお留守番の赤ちゃんにも
みんなお菓子を配ったらいくつになるんだろう?」という話で盛り上がりました。
キャッキャと笑いながら計算してくれました。

 

平均算だけでなく、
算数のほとんどの文章題が、皿に分けるという感覚をベースにしているといっても過言ではありません。

割合の問題

1000円の3割は?
つまり、1000個のどんぐり(数)を10の並んだ皿に同じ数ずつ分ける
その3皿ですね。

1200円の40パーセントは?
つまり1200個のどんぐり(数)を100個並んだ皿に同じ数ずつ分ける、その40皿分ですね。

時速も同じ

時速5キロは 分速何キロメートル?
5キロをまず、5000メートルになおして……
5000個のどんぐりを1時間は60分だから、60個並んだ皿に分けた1つ分ですね。

兄は10歳 弟の2倍の年齢です。
弟は何歳?

兄は9歳 来年になると、弟の2倍の年になります。
今、弟は何歳?

といった文章題も、「分ける」感性で見てみると、写真↓の通り。



2倍の2皿側が10個なら、1皿はいくつ?
で解けますね。

下のものも、皿に1個ずつどんぐり増やすと、写真のような2倍の状態になったと考えられますね。

子どもにたっぷり遊ばせて、感性をにぶらせないことがとても大切です。

↑集合の問題は、こんな風に分けます。


遊べない子は遊びに必要な技術を習得していない 2

2021-06-13 20:57:37 | 幼児教育の基本
電車のおもちゃを出してきて、ただ前後に動かしたり、好きな電車を集めたりして
遊んでいた子に、「ブロックを使って、その電車の駅や線路を作らない?」と誘うと、
少しとまどった顔をしながらうなずきました。
 
そこで、「ほら、前に、長い長い道路を作ったことがあるわね。どんどん板をつないでいって」と言うと、
横でそのやりとりを聞いていた子が、パッと顔を輝かせて、
「あぁ、前にやった。もっといっぱい板がいる。もっともっと長くなくちゃ」と言いながら、
ブロックの板を並べだしました。
 

↑と↓は前にブロック用の板を並べた時の写真です。

↑ こんな風に道路を作って遊んだ楽しい体験を思い出したようです。

わたしが列車を走らせるためにブロックを横につないでいく見本を見せると、他で遊んでいた子らも

集まってきて、長い線路を作り始めました。

 

こうして手を使ってする作業に没頭し始めると、子どもの態度は素直で落ち着いたものになっていき、

同時に頭の中はいきいきと活発に動きだすようで、

意欲的でよく練られた考えや言葉が出てくるようになります。

 

線路をつなぎ終えたとたん、Nゲージを走らせてみてから、

「そっちとこっちとで発車したら衝突しちゃうよ。

こっちの線路は、こっちからあっちに行って、あっちに着いたら

戻ってくるようにして、

あっちの線路は、あっちからこっちに行って、戻ってくるようにしたら?」と

言う子がいました。

すると別の子は自分の好きなように走らせたかったようです。

線路に1台だけ走らせるのでは嫌らしいのです。

 

そのため何度かNゲージが衝突することになり、言い合いになりかけたものの、

「それなら、連結したら?」という意見が出て、問題が解決しました。

Nゲージをどんどん(セロテープで)連結すると、長い1台の列車になるので、

1台ずつを行き来させているのと同じになったのです。

 

そうして遊び出すと、ここが終点、こうやって切符を買って……とごっこ遊びを広げる子、

駅で電車に乗る人が住んでいるお家を作ってストーリーを膨らませる子などが出てきて、

遊びが広がっていきました。

 

遊びって、ある程度、「ああ疲れた」「やるだけやった」というところまで

自分の身体なり、頭なりを使いきらないと、

楽しさが湧いてこないものなのです。

その「やるだけやった」は、その時期その時期の子が

やっているうちにどんどん楽しくなっていって、「もうちょっと、もうちょっと」と

自分の限界までやり遂げないと気がすまなくなっちゃうような活動であること、

五感にとって気持ちいいこと、目で見て満足できるものであることが大事です。

 

だからといって、わざわざこういうおもちゃを買いそろえなくちゃいけないということはなく、

お家にあるもので十分だと思います。

 

今回の「つないでつないで長く長くしていく」という活動は、

子どもにとって楽しくて達成感のある活動のひとつですが、

ブロックの板がなくても、下の写真のように「柵だよ」と言いながら

ブロックを置いていくだけでも、子どもにしたらさまざまな想像力を

掻き立ててくれるものなのです。

 

↑の写真の作品を作った子は、教室の端から端まで柵を付けた後で、おもむろに立ちあがると、

しみじみと自分の作り上げた作品を眺めながら、

「どうして、こんなにすごいのが作れちゃったんだろう?」とつぶやきました。

置いていくだけ、並べていくだけ、囲むだけでも、道路ができ、線路ができ、工事現場ができ、公園ができます。

そうした作業に熱中するうちに、想像力がいきいきと働き始めます。

 

「新しいおもちゃを出して、ちょっと触っては、おしまい」という遊び方をしていたら、

自分の想像力を使うところまで行きつかないのです。

 

そうして想像力を働かせて遊んでいると、次には、

「上から電車を眺める駅を作りたいな」「これは特急で、こっちは回送で……」

「こういう風にしたい」「ああいう風にしたい」と

今度は思考力を働かせて、遊び始めます。

↑ 電車をくぐらせようとしたら、人形がトンネルの屋根にあたってしまうから

トンネルを高く作り直しました。

どんどんどんどん線路を長くしていく遊びから、

「地下鉄が上の駅のところに登って行くようにしたい」という願望が生まれ、

苦労してだんだん高くなっていく高架を作りました。

 

どんどんつないでいく楽しみも、お城のなわばり図を作るという意味を意識しながら作ることで、

昔の人の知恵への関心が高まり、自分たちもあれこれ知恵を絞って遊びこむことができました。

↑通ろうとすると、橋が崩れる仕掛け。

どんどん並べて、どんどん乗せているうちに、いろいろな物語が生まれていました。

どんどんどんどんつないでつないで……に熱中していると、こんな素敵な街になった

こともあります。

 

夢中になって遊ぶには、簡単にすぐできて、何度も繰り返したくなるような作業を

思い存分やることができる環境が大事だと思います。

公園でする砂遊びでも、お花を絞って作る色水遊びでも、何でもいいのです。

そうした身体を使って集中する活動を洗練させていきながら、

それがごっこ遊びにつながっていって、

想像力をたっぷり使う機会が生まれるようにサポートしてあげます。

また思考力を使って

次々生まれてくる願望を言葉にしたり、それを達成したり、問題を解決したりする楽しさを

たくさん体験させてあげることも大切です。


遊べない子は遊びに必要な技術を習得していない 1

2021-06-10 22:24:44 | 幼児教育の基本

 

 

「子どもは遊びの天才」なんて言われますが、

実際には、遊ぶのが苦手な子、遊び方が不器用な子がたくさんいるんじゃないかな?と

思います。

 

子どもたちが心の底から楽しそうに真剣に遊び込むことができるようになるには、

いくつか体得していかなければならない

技術のようなものがあると感じています。

 

遊ぶのに技術を体得しなくちゃならないなんて

おかしなことを言うように聞こえるかもしれませんね。

でもやっぱりいると思うんですよ。上手に遊ぶためのワザ!

 

目新しいおもちゃをちょっと触ってはうろうろするだけだったり、

 

遊び方の説明を聞いて、ちょっとうまくいかなくても何度か試してみるほどに

ひとつの物に根気よくつきあうエネルギーが乏しかったり、

 

遊びがワンパターンだったり、

幼なかったり、

依存的だったり、

友だちとふざけたり物を取り合ったりするばかりで遊びが発展しなかったりする子っていますよね。

 

そうした遊び方は性格や能力に起因しているように思われがちです。

もちろん、それらの影響も大きいはずです。

 

でも、それとは別に、

「遊びに必要な技術を持っているかどうか」というのも

遊びの質と密接に関わっているのではないでしょうか。

 

では、「遊びに必要な技術」って、どんなものなのでしょう?

 

★ まず最初に大事なのは、「何かとしっかり関わっていける力」をつけることかもしれません。

ひとつの遊びに愛着を抱いて、ひとつの活動を通して、

「面白いな、楽しいな」という気持ちを持続していくことができるようになることです。

 

★ 遊びというのは、おもちゃがあって、それをいじってさえいれば

発展していくわけではありません。

楽しく遊ぶには、「いろんな形で想像力を使ってみる」という

実際に自分の頭と心を使って遊んだ体験が必要です。

遊びの世界で自分の頭を使えるようになっておかないと、

おもちゃがあるから、遊具があるから、楽しめるわけではないのです。

子どもは、自然に、物を何かに見立ててみたり、ごっこ遊びに興じたりするものですが、

大人の接し方やおもちゃが子どもの想像力を枯らせてしまったり、奪ってしまったりすることも

よくあることです。

また、もともと想像力に弱さがあって、ていねいに育んでもらわないと、

自分から使おうとしない子もいるのです。

 

環境と大人の役割は大きいです。

 

 
 
★ 想像力だけでなく、思考力を遊びの中で活かしていく方法を習得すれば、
遊びはどんどん魅力的なものに発展していきます。
 
 
それでは、写真のブロック遊びをしている子どもたちを例に挙げて、
これまで書いてきたことを具体的に説明させてくださいね。
 
5歳と3歳の子たち、5人の遊びの風景です。
 
ひとりの男の子が電車のおもちゃを出してきて、ただ前後に動かしたり、好きな電車を集めたりして
遊んでいました。
遊んでいました……といっても、電車をいじっているだけなので、
それほど面白そうでじゃないのですが、飽きると新しいおもちゃを探しに行って
お気に入りに加えることで、本人の中では遊びが成り立っているようでした。
 
お家で、そうした遊びを遊びと思っている子がたくさんいます。
 
おもちゃをしばらくいじっていると、「片付けなさい」とお母さんに言われ、
片付けると、次のおもちゃが出したくなり、
出してきて触っているうちに、次の「片付けなさい」という指示が来るということを
エンドレスに繰り返すうちに、「遊び」という活動が、「赤ちゃん時期の見て触って満足」という
段階から、少しも発展していない子がたくさんいるのです。
 
 
次回に続きます。

こぐまくんの知育日記♦︎虹色教室mini♦︎更新しました。

2021-06-09 22:19:35 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

こぐまくんの知育日記♦︎虹色教室mini♦︎更新しました。

1歳1ヶ月の子と楽しむ工作2

1歳1ヶ月の子と楽しむ工作3

感覚遊びに夢中

よかったらみてくださいね。


学校が辛い子に知ってほしいこと

2021-06-08 11:57:45 | 息子とおしゃべり(ときどき娘)
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、
東京で就職し、エンジニアとして働いている息子と1年以上会っていません。
時折かかってくる電話で、息子の元気な声を聞いては、
ほっと胸を撫で下ろしています。
 
先日、そんな息子から、LINEでメッセージが入っていました。
ペットボトルに懐中電灯を当てている写真と共に、
「ペットボトルに床用ワックスを入れて照らすと、夕焼けが作れるらしい。
空で起こっていることと同じレイリー拡散が起こるらしい」
とのこと。
 
「以前、教室でそんな実験をしたことがあるよ。
空の色のことにすごく興味を持っている子がいたからね」と返すと、
「さすが(笑)」という返事と一緒に、
「空や光のことに興味がある子がいたら、
パソコンでそういうのを再現する職業もあることを教えてあげると
大人がやっていることが見えてきていいかも」
と返ってきました。
 
そんなやりとりの後で、仕事の調子はどうかたずねると
「エンジニアは楽しいのと、自分のペースでできるのと
自由度が高いから、本当に楽でいいと思うよ。
朝起きれない・
人に指示されるのが嫌い・
マルチタスクができないタイプに天職」
とのことでした。
 
それから、
「働いているけど、落差で言えば小中高より今が楽。
宿題もなければ、
好きなことやっているだけでお金もらえるから、
学校が辛い子に知ってほしい」
と締めくくっていました。
 

あっという間 紙で作る教具

2021-06-06 09:30:07 | 教材作り

子どもの「わからない!」にぶつかった時、

一枚の紙を2、3回折って切り込みを入れただけという

簡単な紙の教具を作ると、他のどんな方法より

理解の助けになります。

特に数の世界での体感が足りない子や

人の話を聞いて学ぶのが苦手な困りを持っている子には

驚くほど効果があります。

 

虹色オンライン算数教室のおまけブログ(鍵付きです)で、

引き算のくり下がりがわかる紙の教具

という記事を書きました。

100円玉を10円玉10枚と交換したり、

1000円札を100円玉10枚と交換したりする

ことがスムーズにできると、

2ケタや3ケタのくり下がりのある筆算の理解が

スムーズになります。

 

(おまけブログとは、虹色オンライン算数教室を購入いただいた方に見ていただける鍵付きブログです。見ていただく方法については、こちらの記事で書いています。)

 

おまけブログでは他にもあっと言う間にできて

子どもの理解力を高めてくれる紙の教具をいくつか

紹介しています。

よかったらのぞいてみて下さいね。

 

おつりを暗算できるようになる 紙の教具

ひらがながすぐ覚えられるようになる 紙の教具

かけ算の理解につながる 紙の教具