虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

問い方で思考力が変化する 2

2022-09-06 15:14:01 | 思考力

「結局、どんな問い方が子どもの思考力を育てるの?内言を発達させるの?」と疑問を抱えたままの方がいらっしゃるかもしれませんね。

 

私が思うのには、子どもの感情が揺さぶられるような問い方、それまであたり前だと思っていたことの思いもかけない側面を発見した時、つまり「びっくりした」時にちょうどいい問いを投げかけることだと思っています。

問いといっても、必ずしも言葉で問いかけるのではなく、無言の手助けがそのまま子どもへの問いである場合もあります。

あえて問わないことが、問いになることもあるでしょうね。

 

感情が揺さぶられるとき、人は本気で考えるものです。

つまり、揉め事のあるところには、思いっきり知恵を絞る絶好のチャンスがあるということです。

問題を解決するために頭を使うのは、国の場合も、危機に面した時ですよね。

子どもたちにしても、自分や友だちが揉めていたり、何だか心が納得しなくてジレンマに陥ったりするときこそ、みんなを巻き込んで考えることを楽しむチャンスでもあるのです。

工夫して解決したときには、本当にうれしいし、解決しないときには、心に残るストーリーが記憶に刻まれますから。

 

今回の工作のワークショップには3歳の内弁慶の女の子☆ちゃんが参加していました。

☆ちゃんは神経が過敏で繊細で恥ずかしがり屋さん。

反抗期の真っ最中ということもあって、お友だちと仲良くしたいけれど、近づき過ぎるのは怖いし、みんなといろいろしたいけど、自分の物を触られるのは嫌だし、大好きなお友だちは自分の思うように手をつないでくれないしで、気持ちが高ぶって、廊下の暗闇に隠れてしまいました。

誰にも貸したくないとばかりに、ねんどで作ったお料理と、チーズの箱で作った椅子を抱えています。

 

そこで、わたしは☆ちゃんに、「ここに☆ちゃんのお部屋を作ってあげようか?」とたずねました。すると、☆ちゃんは目をキラキラさせてほほえんで、こっくりしました。

段ボールを貸してくださる方がいたので、それを立てて壁やドアにすると素敵なお部屋ができました。

すると、うらやましそうに他の子らがぞろぞろ集まってきました。

お友だちが口ぐちに「お家に入れてよ」と懇願しますが、☆ちゃんは「いやー!だめー!」と断固拒否。

ちょっとお姉ちゃんの◇ちゃんが「ケチはだめ」とばかりにたしなめて、軽く☆ちゃんのおでこをペチリとたたきましたが、☆ちゃんは誰も家に入れようとしません。

 

どうしても家に入りたかった●ちゃんが、ワンワン大きな声で泣き始め、「●ちゃんにもお家を作ってあげよう、ここではどう?これはだめ?」となだめすかしても泣きやみません。

●ちゃんは、●ちゃんで、自分の家が欲しいのではなくて、「意地でも誰も入れないぞ」とがんばっている☆ちゃんの感情がその場にかけている不思議な魔法が魅力なのです。

本当に、どうして手に入らないものはこんなに魅力的なんでしょうね?

 

この後で、激しい「お家に入れて!」「いや!」の争いは、素敵なドラマを生みました。

というのも、実はそれまで☆ちゃんは、●ちゃんが好きで、仲良くなりたくて、手をつないでもらいたくてしかたがなかったのです。

でも、追いかけ回されて、友だちになって~と迫られると逃げたくなるもので、●ちゃんはずっと☆ちゃんを拒否していました。

それが、突然、ものすごく魅力的な豪華?(段ボールの壁の……↑の写真のスペースです)な家の持ち主となった☆ちゃんの株は、この揉め事で一気に急上昇し、●ちゃんの大泣きの末、☆ちゃんと●ちゃんは仲良さそうに手をつないでずっと遊んでいたのです。

 

子どもの思考力を育む問い方、やっぱりよくわからなかったという方がいらっしゃるかもしれません。

確かに、「問いといっても必ずしも言葉で問いかけるのではなく、無言の手助けがそのまま子どもへの問いである場合もあります」というあたり、何が言いたいのやら……と。

 

上記で☆ちゃんがその場にいる緊張から暗い廊下に身をひそめてしまった話をしましたよね。

そうした時のサポートの仕方というか、大人の心のあり様のようなものが、自分で考える子になるか、自分で考えようとせずに、すぐに他人に頼ったり、すぐにあきらめたり、すぐにキレたり、大人の指示に従いすぎたりする子になるかを分ける分岐点となるように感じています。

 

どういうことかというと、人が頭を使うのは、必要があるときで、必要があるときというのは、解決したい問題を抱えているときですよね。

動物を箱に閉じ込めたら、一生懸命知恵を絞って出ようとしますよね。でも、のんびり餌を食べているときに、いくら「頭を使え」と命令したところで、考えようとはしないでしょう。

子どもにしても同じで、子どもは自分で「あれが欲しい」とか、「お友だちと遊びたい」とか、「あんなことができるようになりたい」といった欲望を感じて、すぐにかなえられないとジレンマに陥ります。

葛藤を抱えて、泣いたり、わめいたり、自分の殻に閉じこもったりします。

そのひとつひとつの欲望は、ある意味、子どもにとって非常に大事な成長の起爆剤です。

子どもが自分で作りだす自分の発達をうながすための創造物であり、道具といえるのです。

ですから、大人が葛藤が起こらないように、揉め事がないように先に手をまわしてしまうとか、葛藤が起こるやいなや、解決法を提示して大人が解決してしまうということは、ママ友の関係維持にはいいことかもしれませんが、その分、子どもの成長を遅らせてしまうのではないでしょうか。

 

といっても、子どもたちが揉めるがままに放っておいたのでは、暴力に訴えるようになったり、友だちと遊ぶのを怖がるようになったりしかねません。

それなら、どのようにサポートすればいいのでしょう?

 

子どもが葛藤を抱えているとき、大人は子どもが自分たちで解決していく力を尊重しつつ、次のようなサポートができます。

 

◆ 危険のない形で、感情を十分表現させる。子どもの気持ちを受け止める

◆ 新しい別の視点から今起こっている出来事を眺めるヒントを与える。

◆ 創造的な解決法をしめす。

◆ 子どもが葛藤に陥っている本当の理由を見抜いて、心から満足できる体験が味わえるようにする。 

◆ 子どもが葛藤の末、手にいれようとしている新しい理想的な自分像に気づいておく。

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葛藤があるところには、たいてい成長の可能性があります

暗い廊下に隠れてしまった☆ちゃんの行動も、☆ちゃんが今の状態よりもより成長した自分になりたいという向上心が潜んでいます。

これまではお友だちといっしょの場所でも☆ちゃんはママとふたりで仲良く遊んでいれば満足だったのです。

でも、そうじゃなくなった。

それだけじゃ、イライラする。ママじゃなくて、お友だちと仲良くなりたいって欲望が目覚めてきたのです。

でも、どう振舞ったらいいかわからないし、何だか怖い。拒否されそうだし、実際、強く拒否されもするから、先に自分が乱暴に振舞っておく。

でも、それでは少しもお友だちと仲良くなれない。

そんな悪循環から抜け出すすべもなくて、暗い場所に隠れてしまったのでしょう。

 

そうした時に、近くにいた大人が☆ちゃんと同じ視点で、今起こっている揉め事を鎮めることばかりに気持ちを集中させて、「~言いなさい」とか、「仲良くしなさい」とか、「優しくしなさい」と指示して、納めてしまったのでは、その出来事が成長には結びつかないかもしれません。

 

今回の工作の集まりは「虹色サークル」という虹色教室通信の読者の方々が作っているサークルなので、こうした子どもの揉め事にも、親御さんたちは余裕を持って、見守っておられました。

それで、

◆ 危険のない形で、感情を十分表現させる。子どもの気持ちを受け止める。

◆ 新しい別の視点から今起こっている出来事を眺めるヒントを与える。

◆ 創造的な解決法をしめす。

という3つは、自然と親御さんたちの間から、子どもを主にした形のアイデアが出て、「問題が起こった時やイライラを抱えてしまった時、知恵を絞って、工夫すると、こんな楽しい結果が得られるんだ」と子どもが気づけるようなサポートをしておられました。

たとえば、☆ちゃんのお家に入れてもらえなくて悔しがっていた子には、戸の隙間を利用して、忍者の密文をやりとりする新しい遊びを提案していました。

 

ただ、

◆ 子どもが葛藤に陥っている本当の理由を見抜いて、心から満足できる体験が味わえるようにする。 

◆ 子どもが葛藤の末、手にいれようとしている新しい理想的な自分像に気づいておく。

という2つについては、

「やれやれ、揉めてたのがおさまったわ~」とホッとした時点で、次につなげる視点は持っておられないようでした。

そこで、工作後の大人だけの勉強会では、雑談を交えて、子どもを成長させる環境やサポートについて親御さんたちと話しこむことになりました。

 

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本を出させていただきました♪

子どもの考える力をぐっと引き出すお母さんの話し方


問い方で思考力が変化する 1

2022-09-01 10:33:42 | 思考力

子ども時代というのは、自分の心のなかの声、つまり内言が発達していく時期です。

内言というのは、「音声を伴わない自分自身のための内的言語で、主として思考の道具に用いられる」と言われています。

サピア・ウォーフの仮説によると、言語はその話者の世界観の形成に関与する、とされています。

 

わたしも子どもの内言の内容や発達いかんによって、その子の思考力の幅や質や世界の認識そのものが違ってくると思っています。

なぜ子どもを大人の指示で動かして、競争させて、強迫的に何かを訓練させることがまずいのかというと、最も重大な害は、子どもの内言を失わせること、心の声を陳腐なものにさせること、内面を雑音だらけにすること……と言えると思います。

 

子どもにできあがっているものを見せて、「どうしてこれは動くんだと思う?」とたずねると、「そんなの、~にきまってるじゃん」「そんなの当たり前じゃん」と馬鹿にしたように、つまらなそうに言い捨てることがあります。

でも、大人が問い方をちょっと変えると、同じ子らが、たちまち夢中になって考え始めま

黙って、見つめる目の真剣さから、心のなかで、内なる対話が活発に行われているのがわかるときがあります。

問い方をちょっと変えるというのは、場合によりけりなのですが……わたしが上の写真で子どもたちに「動く仕組み」について考えさせているシーンを例に挙げて説明させていただきますね。

子どもたちの前で、「見ててね」と言いながら、トイレットペーパーの芯を転がして見せます。

「動け、動け」と芯を指さして命令していると、前方に転がっていきます。

「どうして転がっていくのかな?」とたずねると、「丸いとこがあるから」とか、「ころころするから」などさまざまな意見がでました。

そこで、「それなら、動け動け、ストップ!戻れ~って戻ってくるようにするにはどうしたらいいのかな?」と尋ねると、身を乗り出してトイレットペーパーの芯をにらみつけて黙っています。

芯のひとつに小さな紙を貼って、転がすときには紙を芯の側面にぴったり沿わせて転がすと、転がるうちに紙が広がって芯は止まり、戻ってきます。

その時、「動け動け、ストップ!戻れ~」と声をかけて、手で動きを表現すると、まるでわたしの声や手の動きに従うように動くトイレットペーパーの芯を手品を見るように見つめる子らは、同時にこの種を見破ろうと必死になって頭を絞ります。

次に、芯のなかにビー玉を1個貼り付けたものも転がしてみます。

これも、「動け動けストップ!戻れ~」の指示に従います。

そんなとき、子どもは、「どうしてなんだろう?~だからかな?でもちがうみたい?どうしてだろう?」とそれをすっきりとした言葉で言い当てたくて、でも簡単そうでも言葉が見つからなくて、もやもやした思いを抱えた状態で集中しています。

 

トイレットペーパーの芯で「動け、動け、とまれ、もどれ」という動きについて考えてみる前に、写真のようなひもを広げると上に登っていく仕組みを子どもたちに見せました。

すると、大人の方々は驚いて、「どうして登るのか」と気にかけていたのですが、子どもたちは、「なんだ、そんなのひもを引っ張ったから上がるんじゃん」と、鼻にも引っ掛けない様子でした。

コップの底部分の直径と飲み口の直径の違いによって、物が上下に移動するのですからなかなか面白い仕掛けなのですが、「最初からできあがっている感じ」や「大人が子どもに決まったひとつの答えを出すのを求めているような雰囲気」があったのかもしれません。

 

こんなふうに、いかにも答えを出させるための質問、子どもに知識を与えるための問いかけ、という雰囲気では、子どもの頭はフリーズしたまま動かないものです。

大人が喜ぶような人工的で完成度が高そうな学習であるほど、子どもにすれば、「すでに大人がわかっているんなら、わざわざ自分が考えなくても、大人に正しい答えを教えてもらってから答えればいい」「他の子ら答えて、間違えたら、自分は間違えなくても正しい答えが言える」と考えてしまうのかもしれません。

疑問を抱くこと、内言を育てること、自分の心のなかで考えを追う楽しみを育てるには、「教えよう」「知識を与えよう」という大人の押し付けがほんの少しでも透けて見えたら、逆効果にもなってしまいがちです。

 

それなら、どのようにすると、子どもは自分の心のなかに疑問を抱き、自分と対話し、自分自身で考えを深めていくのでしょう?

それには、子どもへの問いかけ方を工夫する必要がありますが、その前に、普段の親や先生の子どもへの接し方が、近視眼的でないことが重要だと思っています。

大人が子どものアウトプットに注目し過ぎない、子どもの今を評価し過ぎない、子どもに自分ができているかどうか、上手か下手かに注目させるような言動をつつしむことが大切です。

そういう意味で、たとえプールやソロバン教室のようなものでも、まだ小学校にもあがっていないうちから「○級」に合格したかどうかといった刺激にさらすことは、とても危険なことだと感じています。

なぜかというと、子どもはこの広い世界のなかではとても小さな存在で、心がいつもまだ知らない広い世界に向かって開かれていなくてはならないのに、年がら年じゅう、「小さな自分」にばかり注目するように癖付けてしまっては、金魚蜂のなかの金魚のように、認識している世界が狭い子になってしまうからです。

自分が今、何を上手にできようと、できまいと、魔法のような不思議さと、たくさんのやってみたいことと、できるようになりたい憧れと、人と人が関わる場で新しく生まれてくる物語に、どっぷりつかていることができるかどうかが子どもの将来の伸びしろの大きさを決めるように感じています。

自意識過剰になって「小さな自分」にばかり注目するのでなくて、自然に、今ある世界にいることができて、そこで、泣いたり、笑ったり、恥ずかしがったり、怒ったり、ぐずぐずしたり、寝ていたり、ふざけていたり、夢中になっていたり、感動したり、うまくいかなくてイライラしたりすることが、とても重要だと思っています。

そうした感情が突破口になって、広い世界に対して、将来、出入りすることができるようになる入口が作られるからです。

 

子どもが知らない価値はたくさんあります。

「なぜ」という疑問は無数にあって、それぞれに対する答えも無数にあります。

「○級」を取得するために必要なものだけが世界を形作っている価値だと誤解してしまうと、子どもの周りにどんなにすばらしい価値あるものがあっても、その子が感じとれるものはごくわずかになってしまいますよね。

 

↑ 工作イベントにぜんまい式のおもちゃを分解したものを持っていくと、手のひらに乗せて、真剣に見つめている子がいました。

「ぜんまいの動きを使って、何かできないかな?」とアイデアを募ると、トンネルをくぐらせるアイデアと、ひげそりのシェーバーを作る案が出ました。

素朴に、ただ考えること……それが、たまらなく面白い体験でもあるのです。

 

「結局、どんな問い方が子どもの思考力を育てるの?」ということについて、続きの記事です→ 問い方で思考力が変化する 2

 

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本を出させていただきました♪

子どもの考える力をぐっと引き出すお母さんの話し方


メタ認知力を使うことで、脳自体が向上する

2022-01-27 17:01:38 | 思考力

 『滅びゆく思考力(J.ハーリー著/大修館書店)』では、思考力の向上と「メタ認知力」の関わりについて、さまざまな重要な指摘がされています。

 

『メタ認知力』のキーワードは『方略』。

新しいことを学んだり理解したりするときに、自分自身を援助するために用いる、知的なプロセスのことです。

 

現在の環境は心の混乱を引き起こし、子どもたちの内言を失わせています。

また、子どもたちが大人たちとあまり長い時間を過ごさない家庭や、データーの記憶を学習(知識偏重の学習法)している学校は、メタ認知力という脳の特別な長所を無視し、注意の持続の問題で子どもたちを危機に陥れているそうです。

 

イスラエルのルーベン・ヒューエルスタインは、変化する環境に対して人間をより抵抗力や適応力があるようにする「メタ認知的方略の訓練」によって、脳はそれ自身も向上するものと確信しています。

 

ヒューエルスタインは次のように語っています。

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脳は、個人の自己保存を可能にする構成的な方法によって変容することができるのです。

人間は自分自身を変容させることができる点に特徴があります。

私はこれを『自動的可逆性』と呼んでいます。

しかし、学校へ通うようになる前であっても、子どもたちは意味というものを入力する大人を必要としています。

さもなければ、子どもたちは意味を捜し求めて世界をさまようことになるのです。

 『滅びゆく思考力—子どもたちの脳が変わる』(J.ハーリー著/大修館書店)P320

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ヒューエルスタインは、部屋におもちゃを置くだけで、あとは子どがそれで遊ぶことを期待する親のもとでは、適切な思考技能が育たないと主張しています。

親も教師も、子どもの理解を組み立てるように援助し、それを通して意味を教えていく必要があるのだとか。

 

といっても、それは今の早期教育ありがちな、一口サイズに刻んだ「思考技能」の要素を押しつけるやり方とは違います。

「思考」を過剰に分割すると、創造性を犠牲にすることにつながるのです。

 

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虹色教室の年中さんと年長さんの子どもたちのレッスンの様子から、遊びの中で子どもたちが思考を広げ、柔軟に考えていく姿を紹介します。

 

年中のAちゃんが「葉っぱ」の形をしたブロックのパーツを見つけて「畑を作りたいわ」と言いました。

ブロックで畑を作ろうというアイデアを思いついたのはAちゃんが初めてです。

家庭菜園をしている年長のBちゃんが、すぐにそのアイデアに飛びついて、いっしょに畑作りをはじめました。

「きゅうりとかミニトマトとか植えようよ」と話しています。

ブロックの穴にさせるサイズにストローを用意してあげると、器用な年長のCちゃんがはさみで切っていきました。

めいめいブロックの穴にストローをさしては、「ほら、伸びてきているよ。よく育っているねぇ」と本物の植物を眺めるような感情のこもった声で話しあっていました。

 

このグループの子たちは、それぞれ独創的なアイデアを思いついては、さまざまな場面で工夫を凝らす子達ですが、お友だちと協調して、遊びをストーリーのあるものに作りあげていくことも、とっても上手です。

 

畑を作ったお友だちの姿を見て、畑にかける水が出てくる水道を作っているAちゃん。

ビー玉の水が透明のホースを通って飛び出します。

 

アイデアマンのAちゃん。工作材料の網を見つけると、「魚を捕まえる網にする」と言いました。

そこで、海に魚を捕るワナを仕掛けることにしました。

ワナの中にはパンが入れられていました。

すると、BちゃんとCちゃんが、サンマと鯛の人形を手にして、誤ってワナにかかってしまうストーリーで遊びだしました。

「先生、もっと魚はいないの?」とCちゃん。

「大きいまぐろならあるけど、これは一本釣りね。」と答えると、「まぐろも捕まえたい!」と子どもたち。

 

別グループのやんちゃな男の子たちがやっていたまぐろの一本釣り?(天井のフックに引っかけて、吊り上げています。)

 

 

「工作したい」という子らと、「たつまき」ができるおもちゃを作りました。

 

発泡スチロールの玉やスパンコールなどをペットボトルに入れて工作するうちに、Bちゃんが、「粘土でキャンディーとか作りたい」と言いました。

 

以前、遊んだことがあるベルトコンベアーで食べ物を移動させたことを思いだしたAちゃんが、工場の機械を作りたがりました。

写真を撮りそびれたのですが、空き箱に画用紙を挟んで動かす形で、面白いベルトコンベアーができました。

 

年中や年長さんのおしゃべりを聞いていると、自分たちはどんなことがしたいのか、それには何が必要で、どんなことをすればいいのか、あることからどんなことが連想されるのか、あるものの背後にはどんな意味があるのか、非常によくわかっているし、互いのアイデアを響かせ合って遊ぶ中で、それをどんどん広げていくのがわかります。

一方で、大人との会話や一緒にする活動を通して、意味の理解を深め、内言を育み、さまざまな思考パターンを身につけていくのを感じます。

 

↑ 算数タイムの一コマ。


しっかり考えられる子になるための大事なこと

2021-10-30 12:43:43 | 思考力

1~3歳までの子育て環境について、深刻な問題だと感じていることがあります。

それは、

★子どもが自分で考える
★自分の感情で感じる

という仕事をほとんど奪い取ってしまうものとなっていることです。

ちょうど3歳の子たちのブロック教室をしていると、3歳くらいの子というのは、すぐに物を奪い合うのですが、そのたびにたちまちお母さんが「貸してあげなさい」とか、「取ったらダメ!」とか指示を出しているのです。

子どもには現場ですぐ教えるのが大事というのはわかるのです。
でも、はやく決着させたい気持ちと、親同士の遠慮が、子どもから自分で考え判断する能力を奪った上、間違った教育をほどこしている場合がよくあるのです。

☆ちゃんが★ちゃんのおもちゃを奪おうとしたとき、こんなことがありました。

たちまち☆ちゃんのお母さんが、☆ちゃんに「ダメでしょ~!」
★ちゃんがすんなりおもちゃを☆ちゃんに渡してしまって、呆然とした顔をしていると、一同「えらい~!」と言いながらパチパチパチ~!!
☆ちゃんに「ありがとうは?」 で一件落着~

これで……いいのでしょうか???

まず、★ちゃんは、次にどうすればよいか学べてませんよね。
「ありがとう」と言えば、取ってしまってもいいのでしょうか?

また☆ちゃんは、何も考えずに、「手さえ離せば褒められる」「自分が我慢するのが正しい」という間違った対応を教えられてますから、今後、混乱して、自分で考えることを放棄してしまうかもしれません。

なら、こういう場面でどういう対応をすればいいでしょうか?

こういう場面って、その都度、状況によって変化します。
ちょうだい!っと欲しがってもOKな場もあれば、相手が赤ちゃんだから譲ってあげよう~という場合もあります。

まず、今の子どもの気持ちや欲求を言葉にしてはっきりさせる・認めてあげることがいりますよね。

奪おうとした子には、「●●のおもちゃが使いたいのよね、●●したいもんね」

奪われそうになって、おもちゃをにぎってる子には、「おもちゃ貸してほしいんだって。どうする?」
さらにぎゅっとおもちゃをにぎれば、「今、貸したくないんだね」

最初の子に「今、貸したくないんだって」
そういって、あとは渡してしまうなり、嫌がって渡さないなり、子どもの判断にまかせます。

客観的に見ての善悪は、子どもの心の中で熟成されて、ゆっくり良い判断がくだせるように、徐々に教えていけばいいのではないでしょうか。

1~3歳の子にとって、物の奪い合いは、頭をフルで働かせるチャンスです。

でも「考えなさい」と言うのは矛盾しているのです。
考える子にしようと思いながら、「考えなさい」という指示を与えて、すぐに答えを出させようとしているのですから……。

考えるという行為は、「考えなさい」と言われてするものではなくて、さまざまな場面にぶつかって、自分で解決したり、判断を下さなければならないとき、しはじめます
「考えなさい」という指示で考えようとすれば、頭が空っぽになってしまいます。

それよりも子どものくだした結論がたとえ「ベスト」でなくても、今のその子にとっては、それが「ベスト」の答えなのですから、間違っていれば、間違いを学ぶ良いチャンスが与えられたのだし……といったんそれを認めることが大事なこともよくあります。

あとひとつ、「考える」ことの障害物となるものに「体験のともなわない知識」があります。

知的好奇心が強いことは良いことです。
でも、手で簡単なものを作るレベルに意識を目の前の現実に向けられない子が、大量の知識を持つことはとても危険なことでもあると感じています。

危険とまで書いたのは、私が軽度発達障がいの子らとたくさん接し、そうしたさまざまな情報に目を通すことがあるからです。

軽度発達障がいの子の特徴は「できることとできないことの差の開きが大きい」ということです。

「言葉は達者なのに極端に不器用、読書好きで図形はさっぱり」「すごく手先が器用なのに、言語面の発達がゆっくり」「すごい作品が作れるのに言葉の理解力が弱い」といった感じです。
脳のタイプが一般的な子と少し異なるため、そうなるのです。

でも、最近、親御さんが知識をインプットしようとする態度で子どもと接していたり、語りかけ育児を誤った方法でしていたりするため、発達障がいの子でないのに、「できることとできないことの差の開き」が大きな子が増えているように思います。

目安として、4歳半~の子で、「知識は豊富なのに、ゴム鉄砲や簡単なコマを回すこと(ひものものではありません)ができない」場合、子どもの生活を見直す必要があると思います。

こうした子は頭が働くし、さまざまなことに敏感に気づく力があるのに、実際には学校に入って、テキパキ動作することができなくて、自分に自信を失ってしまいます。

「記憶するけれど、思考しない」という態度にもつながります。

『思春期にがんばっている子』という本の中で明橋大二氏が、「大人が、もう一度遊び心をとりもどすこと。それがそのまま、子どものやる気を育てることになる」とおっしゃっています。

明橋氏はこんなこともおっしゃっています。

遊びに満ちていたはずの子どもの世界が、今は、指示され、命令され、強制され
る「仕事」ばかりになってはいないでしょうか。
それが子どもののやる気をそぎ、ひいては、学ぶこと、働くことに、苦痛しか感じられなくさせているように思います。


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著書を出させていただきました♪



「失敗を乗り越える力」「とことん考えることを楽しめる力」が身につく接し方を紹介しています。


考える力を育むブロック遊び 3

2021-10-19 21:49:17 | 思考力

ビー玉を上に上らせて一気に滑らせる道具の作り方を教えていた時のこと。

ビー玉を滑らせる道具は、下のようにブロックの穴にビー玉を乗せます。

下の写真のようにビー玉を受けながらスライドさせていきます。

 

3歳のAくんがゴミ収集車のおもちゃで、落ちるビー玉を受けようとしました。

でもゴミ収集車の穴は車の後部にあるので、ビー玉がうまく入りません。

ビー玉を滑らせる板をどけてゴミ収集車を割りこませるAくんに対して、大人はつい、「それはできないよ。それじゃないよ」と言ってしまいそうになります。

 

でも、そんな言葉をグッと飲み込んで、子どもといっしょに「どうしたらうまくいくかな?」と考えてみると、考えることがとても楽しくなってきますよ。

 

<問題解決作戦 1>

扱っているものをいろいろな角度から見る。ていねいに観察する。

ゴミ収集車をていねいに観察すると横にレバーがついていました。

押してみると、ゴミを入れる部分が傾きます。

でも残念ながら、穴が下向きになってしまいました。

これでは、ビー玉を受けることができませんね。

 

<問題解決作戦 2>

逆転の発想!をしてみる。

「縦のものを横にできないか?横のものを逆さにできないか?傾きを利用できないか?高さを利用できないか?」もついでに考えてみる。

 逆転の発想ってありますよね。ゴミ収集車の穴が後ろについているなら、何とか後ろの穴にビー玉を入れようと躍起になるより、ゴミ収集車の穴がビー玉が落ちてくる位置にくるようにしてしまえばいい……というアイデア。

といっても、ゴミ収集車を手で持って傾けるのはご法度ですから、ブロックでスロープを作って傾けることにしました。

ついでにビー玉を上らせる道具の傾きも大きくします。

 

「ピーッピーッピーッピーッ、車がバックします。車がバックします。」と言いながら、逆向きにスロープを上らせると、無事、ビー玉がゴミ収集車の中に落ちるようになりました。

 

 

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子どもがブロックの穴にサイコロを入れるのに夢中になっていました。

「この子、こういうことが好きなんだな。」と気づいたら、それと同じ遊びをもう少し深めることができるように遊びのバリエーションを増やしてあげます

でも、どうすればいいかわからない……という方もいらっしゃいますよね。

 

<遊びの発展 1>

足し算してみる。

同じタイプのものをもうひとつ足してみたら……。

2種類のものを足してみたら……。

 

ガチャポンと穴の空いたトンネルとベルトコンベアーが足し算されて、何やら面白いおもちゃに……。↓

↑の写真の上部は、ガチャポンです。

一生懸命遊んでいる2歳のBくん。


筒に、小さなおもちゃが入るくらいの穴を一つ開けて、その筒が入る隙間を作って組んだブロックに差し込みます。

上からおもちゃをいれ、筒をくるりと回すと、下に落ちてくる仕組みです。

 

ガチャポンの下は↓の写真のような簡単な仕掛けのベルトコンベアーになっています。

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<遊びの発展 2>

逆転の発想。

ひたすらブロックを重ねて高いビルを作った4歳のCちゃん。

お家を作っていた子たちがエレベーターを取りつけていたのがうらやましいけれど、この高いビルの横にエレベーターを作るとすると、どれだけたくさんのブロックが必要かわかりません。

それに労力も!

 

こんな時は、エレベーターの囲いを作って、その内側にエレベーターを設置して……という従来のイメージを転換して、すでにある高いビルの周りを囲うように最低限のパーツでエレベーターを作ってみました。

 

ドーナツ型のエレベーターがビルの串にささっているような案配。

 

お友だちが長い腕がついたロボットでエレベーターに誘導してくれています。

 

<遊びの発展 3>

囲いの中にキラキラを詰めて……。どの囲いに一番たくさん入るかな?

 

<遊びの発展 4>

組み方で、線対称にも点対称にもなるパズル。作り方は簡単です。

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本を出させていただきました♪


考える力を育むブロック遊び 2

2021-10-17 15:47:17 | 思考力

年長のAちゃんの『科学館』。

Aちゃんは教室の定期的なレッスンに通ってくれている子です。

「ブロックで磁石を使って遊ぶ方法が知りたい」と、自分で磁石を持参していました。

ドールハウスの作り方を説明した後で、「これをレストランにしてもいいし、駅のビルにしてもいいよ」と説明していると、「科学館にしたい」と即決しました。

Aちゃんは以前、教室で科学館に出かけたことがあるのです。

その時、感動したあれやこれやを作ってみたかったのでしょう。

そこで、科学館で、「確かあんなの見た……こんなのあったな……」というものを、ブロックで作ったお家に組み込む方法を教えることにしました。

 

科学館には、磁石のしくみ、光のしくみ、音のしくみ、空気のしくみなどを学べるコーナーがあります。

どれもお家にあるちょっとした小道具で再現することができそうですね。

キーライト(100円グッズ)を使って、上の写真のような投影機を作ってみました。

丸いチーズの空き容器に穴を開けて、セロテープを両面から貼ってマジックで絵を描きます。

丸い箱の中心にモールや針金入りリボンを通すと、ブロックに装着可能になります。

くるくる回転させながら、壁に絵を映します。

 

回転させることができる投影機の作り方を教えながら、いつも子どもたちが何かに夢中になった際に投げかける質問をしました。

「このアイデアが面白いなと思ったら、次に発展させるために、どんなことをしてみたらいいと思う?」

(この質問は、この言葉通りたずねるのではなくて、子どもの理解する力によって、言葉を介さずに伝えることもあるのですが、今回は親御さんもおられたので、大人向けにそうした質問にしました。)

 

<発展させる方法 1>

縦のものを横にしてみる

縦のものを横にしたり、ひっくり返したりすると、全く新しい使い方を発見することがあります。

下の写真は、投影機とほぼ同じ仕組みで、磁石の力でモールの花が咲くようにしたもの。

モールを円盤の上に散らして、下から磁石をあてると、モールが磁石に集まってきて、花のようになります。

科学館にこんな展示物があったので。

 

上の写真はAちゃんが考えた投影の仕組み。

透明の曲面に沿うようにライトを動かしていくと、白い壁の部分に映像が流れるように映し出されていきました。

 この輪っかの中央に白い塔を置いたら、全方向から投影できる道具ができますね。

こんな感じです。↓

 

① 透明ファイルに油性マジックで絵を描いて、細長く切り取り、輪っか状にします。

② 絵を描いた輪っかは動かさず置いたままで、ライトを当てる位置を変えていくと、映っている魚が動いているように見えます。

 

<発展させる方法 2>

知っていることや学んだことを2つ以上組み合わせる

2つ以上アイデアを組み合わせると、たちまち面白いものができあがります。

 

お家の上に、ガムマシーンの一部を乗せたBちゃん。

(ガムマシーンとは、バーを押すと、螺旋状のスロープを丸いガムがくるくる回りながら降りてくるおもちゃです。小さいサイズのものは100均でも売っています。Cちゃんは、ガムを入れておく部分を外して、ビー玉を転がす坂として利用しています。)

ガムマシーンの上部まで、ビー玉を送り届ける装置と組み合わせると、たちまちすてきなしかけができあがりました。

 

↓の写真は、虫やロボットの動く手足(←詳しい作り方はリンク先をご覧ください)を、ドールハウスにひっつけたことでできた面白い道具です。

椅子に座っている子のところにロボットアームがドーナツを届けています。

機械化した未来の家を作っていくのも楽しいですね。

 

<発展させる方法 3>

科学的な興味につながるように遊ぶ

ブロックの内部に磁石を入れると、こんな風に金属がひっつくブロックができあがります。

磁石が落ちないように磁石とブロックの間に折った紙を挟んで調節します。

 

次回→ 考える力を育むブロック遊び 3 に続きます。

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本を出させていただきました♪


考える力を育むブロック遊び

2021-10-16 17:55:05 | 思考力

2歳児の親御さんたちのグループで、穴を利用して、さまざまなしかけを作る方法を学んでいた時のこと。

「『穴を棒でふさいで、棒を動かすことで小物が下に落ちる』というシンプルなしかけで子どもが熱心に遊びだしたら、次はどうしますか?」とたずねました。

すると、参加しておられたパパさんが、こんな面白いおもちゃを作っていました。

さまざまな方向から差し込まれた棒を上から順番に引きぬくと、ビー玉がだんだん下におりてきます。

そこの娘ちゃんが、不思議そうにしかけを覗きこみながら遊んでいると、赤ちゃんが興味しんしんに近づいてきて、引っ込んだり出てきたりするブロックの棒を触りだしました。

棒が引っ込むと、穴に指を入れて取り出そうとする姿に、一同、大笑い。

 

 

こちらは2歳のBくんとお母さんの作品。

棒を入れる穴のサイズが少し大きいだけで、それまでにない面白い動きが生まれていました。

お母さんが上の穴からアヒルを入れると、Bくんが棒を押す時に、アヒルが棒に乗って出てくるのです。

このしかけで「ハト時計」を作ることができるかもしれませんね。

 

最初のシンプルなアイデアを、知恵を絞って少しだけ発展させるようにして遊ぶと、子どももいっしょになって考えるようになっていきます。

 

ちょっとしたアクシデントも知恵を使う好機です。

上の写真は、最初、スライドして開閉するドア(写真の右上に写っている緑のブロック)がついた駐車場だったのですが、Cくんが入口を黄色いブロックで埋めてしまいました。

これでは車を入れることができません。

でも、これを見た時、わたしは面白いアイデアを思いつきました。

下の写真のようにCくんが埋めた黄色いブロックの形をつけた鍵を作ると、「鍵をしめると、ドアが開閉できない」「鍵を開けると、ドアが動くようになる」という遊びができるな……と。

差し込んでガチャガチャ回す鍵ではなく、鍵そのものがドアを動かないように押さえているという、遊びの世界ならではの鍵です。

こんな風に、「中に入れない」という困った状況も、創造的に解決する姿を見せると、子どもは子どもで、新たなアイデアを試してみようとします。

 

ブロック遊びをする時は、「子どもに作り方を教える」のではなく、「子どもといっしょに知恵を絞ることや問題を解決することを楽しもう」という気持ちで関わるのがいいかもしれません。

平たいブロックの板も、ブロックを縦、横、斜めの方向に積んでいくことで、たちまち立体的な作品になります。

階段をつけたり、エレベーターをつけたりすると、子どもは空間を自在に使って遊びだします。

荷物を引きあげる道具も取り付けました。

 

「3階から2階に下りるのはどうすればいいでしょう?」と相談をいただいたので、らせん状の階段を作る方法を見ていただくと、思わぬ解決法があるもの……と、とても面白がっていただきました。

空間を複雑に使った作品は、遊びをわくわくするものにしてくれます。

子どもは自然に階段や家具や入口などを付け加えるようになると思います。

 

続きを読んでくださる方はこちらへどうぞ。↓

考える力を育むブロック遊び 2

考える力を育むブロック遊び 3

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本を出させていただきました♪


幼児が「よく考える」ようになるためのステップ 5 <感じる>

2021-10-10 23:09:39 | 思考力

幼児が「よく考える」ようになるために大事な3つめのことは、「感じる」です。
特に自分の気持ちを感じて味わうという意味の「感じる」が大切だと思います。

「感じる」って、考えることと関係がなさそうですが、幼児期に情緒的なものが十分発達しないと、小学生になって、ちゃんとがんばる気持ちの軸になるものがなくて、「だるい~」「なんで、そんなんしなきゃならないの?」「どうでもいい」「べつに~」が口癖の子になってしまうかもしれません。

「できるようになりたい」
「ほめられたい」
「認められたい」
「達成したとき気持ちがいい、スカッとする」
「お友だちと共感しあいたい」
「自分自身に満足」
「もっとお話を読みたい」
「あんな風になりたい」
 
といった前向きな気持ちは、幼児期に、はずかしい、悲しい、うれしい、くやしい、さみしい、といった気持ちをたくさん経験して、大人に共感してもらったり、ゆっくり気持ちと向き合うのにつきあってもらって、自分の気持ちに通じていく先に生じてくる思いです。

幼児期に、悲しくても、寂しくても、「早く早く」「今忙しいから」「まだ泣いてるの?」「もうお姉ちゃんでしょ」と、感情を無視するように教えられていると、自分の基本の気持ちがだんだんわからなくなってきますよね。

そうすると、「どうして、人に優しくしなくちゃいけないのかわからない」
「どうして勉強しなくちゃいけないのかわからない~」と、気持ちに関わることには、どれにも疎くなってしまうのも仕方ありません。

子どもと接するとき、「教えたい」ことで接するのでなく、気持ちを通いあわせることを一番にすることが、「考える」ことを得意にする近道です。

ふしぎなだ、うれしいな、わくわくするな、悔しいな!
できたらいいのにな、いいな~うらやましいな、気持ちいいな、
楽しいな…。
 
そうした気持ちが引き金になって、「知りたい」「学びたい」「考えたい」という意欲が生まれるからです。

気持ちに気づけないのに、知識だけインプットされても、無気力や燃え尽きにつながる過剰ながんばりを生むだけですよね。

幼児期は、気持ちいいな、面白いな、不思議だな~といった「感じる」を育むように心がけると、自然と学ぶ意欲が高くて、よく考える子に育っていくと思いますよ。


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本を出させていただきました♪


幼児が「よく考える」ようになるためのステップ 4 <聞いた後で>

2021-10-09 23:07:17 | 思考力

「聞く」にもいろんな技術があります。

記憶力が良く、語彙が多く、園や学校生活をいきいきと楽しんでいる子というのは、この聞く力が発達した子が多いです。

「語りかけ育児」や、「アウトプットを求めずにシャワーのように子どもに言葉をかけましょう~」と最初に発言した方は、おそらく、子どもと大人の間に自然なコミュニケーションの形があることを前提として、そうした方法を紹介したのだと思います。

絵本の読み聞かせにしてもそうです。

まだ言葉がしゃべれない赤ちゃんであっても、非言語の状態で、大人と子どもの間に、身振りや表情や目の動きや、なん語によって、「思い」がいったりきたりする関係があって、それを補うように「語りかけ」や「読み聞かせ」があるのなら、それは子どもにとって貴重な体験となるはずなのです。

が、この「語りかけ」や「読み聞かせ」が、子どもの「聞く」力を鈍らせ、大人に素直に心を開かない状態を作ることもあるのに注意していただきたいのです。

どういう声かけがよくないか……というと、日本人がテレビ画面に向かって、「あほやな~こうしたらいいのに、ぶつくさ~」と独り言を言うことよくありますよね。
テレビから返事があるとは思ってないので、自分が見たまま、そこで感じたことを外に吐き出してそのまま~という言葉です。

また、テレビゲームをしていて、「もっと右右!」「だめだめ、そうじゃなくて、あっちに行かなきゃ。はやく取りに行って!」とゲーム画面の主人公に向かって、声に出さないとしても、独り言を言い続けるときがありますよね。
これも、テレビから返事があるとは思っていないので、言いっぱなしです。

カセットテープに絵本を音読して録音するとき、ひたすら読むことに集中しますよね。
これもカセットテープが何を考えてるかなんて考えず、言いっぱなしです。

この機械に向かって「言いっぱなし」の習慣が、そのまま乳幼児に向けての言葉かけでも使われているケースを見かけることがよくあります。

そうした機械に対するような言葉かけは、どこで集中して、どこで受け答えすればよいのかコツがつかみにくい上、子どもの内面から伝えたい、しゃべりたい、会話のキャッチボールがしたいという気持ちを引き出しにくいです。

「伝えたい、しゃべりたい、会話のキャッチボールをしたい」という気持ちを育てるには、大人の側に、子どもの言葉を聞きたいという姿勢があって、子どもの言葉に共感する言葉と、それを膨らまして子どもの気持ちを引き立てる言葉を返すことが大事だからです。

つまり、「語りかけ」が上手になるということは、まず大人が「聞く」のが上手で、
「うなずく」のが上手で、子どもの言葉をうまく膨らますという点で「語りかける会話が豊富」という意味だからです。

そんな風に大人が上手に「聞く」姿勢をしめしていれば、子どもは自然に、どうやって人の話を聞けば良いのかマスターします。
「聞く」といった簡単な動作でも、やはりお手本がないと難しいからです。

次の記事→ 幼児が「よく考える」ようになるためのステップ 5 <感じる> に続きます。


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本を出させていただきました♪


幼児が「よく考える」ようになるためのステップ 3 <聞く>

2021-10-08 21:32:44 | 思考力

上手に「考える」ことができるようになるために、できるようになっておくといいステップの2つめは、上手に「聞く」ことです。

2、3歳の子にはじめて会うと、耳の機能には何も問題がないのに、まるでまったく耳が聞こえていないように見える時がある子がけっこういます。

お母さんや私が呼びかけても、振り向いたり音のほうに顔を向けたりしないで、好きなことをしています。

また、何かをひっくり返したりして、ガラガラ大きな音がしても、その方をちらりと見ることもないのです。

 

幼い子は同時に2つのことをするのが苦手ですから、何かに夢中になると、耳がお留守……となりがちなのですが、わざと聞こえていても無視しているように見える子の場合、大人の対応や生活環境に気をつけると、直ってくることがほとんどです。

「聞く」力の良し悪しは、自分の心の中で考えた言葉を「聞く」力とも関係がありますから、「考える」力に大きな影響を及ぼします。

もし「見える」ものだけで反射のように答えを出すばかりだと、少しも考えが深まりませんよね。

人の話も周囲の音も自分の心の声も、しっかり集中して「聞ける」技術を身につければ、じっくり考える力が育ってきます。

 

それでは、どうしたら「聞く」のが上手になるでしょう?

 

一番良い方法は、お母さんが不必要なことをしゃべりすぎないことです。

「語りかけ育児」という言葉があるくらいですから、シャワーのように子どもに言葉をかけたらいいんじゃないの?と思うかも知れません。

確かに、語りかけるコツをきちんと押さえて、子どもの興味と聞きたい思いを引き出しながら、語りかけていくのなら、とてもすばらしいのです。

でもだいたいの場合、お母さんが子どもに声をかけるほど、子どもは音への反応を鈍化させて、全部聞いていたらきりがない上、きちんと聞いてもどうでもいいことばかりだからBGMのように聞き流すという習慣をつけています。

そうした場合、声かけというのは、「遊んできたら?それか~し~てっていって。何がしたい?よかったね。ほら、あれで遊んでおいで。これで遊ぶ?」といったものです。

それも、子どもが新しいものを目にして、真剣に頭を使おうとしているとき、お家よりもお外で遊ぶ際や、お友だちを前にした際、大人がしゃべりすぎてしまうと問題が大きい気がします。

 

2、3歳の子なら、「何をしようかな?」「あれ面白そうだな」「触ってみようかな」「あれで遊ぼ」と、自分の頭で考えて決めることをすべて、お母さんが横からロボットのリモコンスイッチを押して操作するように言葉で指示を出しているのです。

もちろん、子どもの方は、そうしたことは自分で決めるべきとわかっていますから、自分で自由に遊び出すのですが、お母さんがたくさん指示を出す場合、大人の声にはいっさい耳をかさないことが習慣になっている子も多いです。

そこでさらにたくさん声をかけ、さらに無視するという悪循環に陥っています。

軽度発達障害があって、呼びかけると聞こえていないようだったかと思うと、小さな音にも敏感……という子もいるのですが、ほとんどの場合は、自分に向けられる音が多すぎて、全てに反応していられないから、自分に呼びかけられる声に鈍感になっているという、障害とは無関係のもののように見えます。

 

また赤ちゃんの時期から、そうした「こうしたら?」「ああしたら?」と背後から子どもの気もちを代弁する声かけは多いけれど、あやして笑わせたり、手遊びしたりして、子どもの顔を見て反応を引き出しながら、きちっと声をかけることは少なかったという場合、「聞く」ことが、とても苦手な子になりやすいように感じます。

次の記事→ 幼児が「よく考える」ようになるためのステップ 4 <聞いた後で> に続きます。

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本を出させていただきました♪