虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

いろいろ体験したがるけれど、「ああ、楽しかった」で終わってしまう 後編

2019-03-30 09:09:46 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

前回、記事中で書いたCちゃんのようなタイプでなくても

アウトプットに時間差があるという子はけっこういます。

 

わたしはそうしたインプットとアウトプットの個性的なずれをよく理解することが、

子どもの意欲や能力を高めるコツかな、と感じています。

 

子どもによったら、学習の場面でそういうところが強く出やすい子というのがいます。

勉強でつまずくと、もうどう教えても、何を言っても、

頑として受け入れられなくなる子がいるのです。

その姿は、ひどく物わかりが悪いように見えます。

でも、半日経ったり、1週間過ぎたりしたころ、

再び同じ問題をすると、すんなりできてみたり、教えたことを

難なく理解したりするのです。

そうした子は、「今、みんなといっしょにやっている場でできなきゃいけない」とか

「最初に習った時に理解しないとダメ」といったその場に漂っている空気

で傷つけて、自信ややる気をそがないことが

重要かなと思っています。

 

インプットからアウトプットまでにこれくらいの時間差がある子として

尊重してあげて、できないで焦っている時に、

「今すぐわからなくても大丈夫。

いつも、わからないと思ってから、これくらい

時間が経つと、なんだ簡単だ、とすんなりできるようになっているでしょ。

あなたは賢い子よ。自分でちゃんと答えにたどりつくよ。

自分の頭の使い方を大事にしなくちゃならないよ」

と励ますようにしています。

 

大人は自分のものさしを使って子どもの活動を

比べる目、評価する目で眺めがちですが、

すごくレベルが低いことをしているように見えても、

何もしていないように見えても、

それはインプットとアウトプットが同時進行で起こると

思っているから、そう見えるだけ、という場合がほとんどです。

 

 

上の写真は3年生のDちゃんが作っていたカフェのドリンクです。

このDちゃんは、インプットとアウトプットが大きくずれるような子ではないけれど、

アウトプットするものの質が、外からの目ですぐわかるような価値でないため、

<いろいろ体験したがるけれど、「ああ、楽しかった」で終わってしまう子>として

見られる面があります。

実際にはかなり能力が高いはずの子なのに、「長い時間、かけて、これを作ってただけ?」

「かなり安易にやりたいことを決めてるんじゃないかな?」という印象を周囲に与えやすいのです。

 

でも、このDちゃんという子とていねいにつきあっていると、

それは大きな間違いであることがわかります。

 

インプットとアウトプットが大きくずれるような子ではないけれど、

アウトプットするものの質が、外からの目ですぐわかるような価値でないため、

<いろいろ体験したがるけれど、「ああ、楽しかった」で終わってしまう子>として

見られる面があるDちゃんという子について取り上げています。

 

「アウトプットするものの質が、外からの目ですぐわかるような価値でない」

という子は、とても多いのではないかな、と思います。

親が何に価値を置くか、環境が何を評価するかとも大きくかかわってきます。

みなでお泊りする場に行くと、作った後で、

店開きして遊べるカフェ用の食べ物や飲み物作りというのは、

魅力的な工作です。

でも、同じようにせっせケーキやジュースを作っていても、

子どもによって作るものや作り方は異なります。

ひたすらデコレーションに励んで、おいしそうで見栄えのいいケーキや飲み物を作る子もいれば、

2段ベッド同士を食べ物が移動するレーンにする仕掛けに走る子もいれば、

展開図を描いて、三角柱や円柱のケーキを作る子もいます。ちらしや看板作りに忙しい子もいます。

かじった後の凹んだ形がどのようになるのか、そこに着目する子もいます。モーターを使って

わたがしマシーンなどを作る子もいます。

集団で自由に工作をする場は、そうしたさまざまなアイデアや可能性を

目で見て取り込む機会でもあります。

 

Dちゃんは最初、ガチャガチャの半球に穴を開けて、ストローを通して、

ふたつきのドリンクを作りたがっていました。

が、この半球はけっこう硬くて、熱で溶かすのでなければ、おそらく穴を開ける時点で

ひび割れるだろうと思われました。

それで、穴を開ける方法についてあれこれ相談した結果、穴そのものは開けず、

上からと下から、それぞれ別のストローを接着して作るのがいいのではないか、

という「ちょっとめんどくさい展開」になりました。

「誰もやったことがない未知のことである」と「ちょっとめんどくさい展開」になると、

たいていの子はあきらめるか、もっと安易はやり方(ふたをなくす)などに

流れます。

でも、このDちゃんは、必ずといっていいほど、

そうした困難さや難しさが伴う課題を選びます。

教室では、透明のフィルムを動かして見るのぞき眼鏡とか、複雑なポップアップ絵本の仕組みなどに

チャレンジしていました。

 

そうした課題も、実際やってみたら、簡単だったということもたまにあります。

でもたいてい、途中でどうやってもうまくいかず、長い間試行錯誤して

あまりパッとしない結果につながるんです。

エネルギーのほとんどが、きれいに仕上げることではなく、

はじめてだからうまくいかなくて、失敗してやりなおしたり、

どうやったらいいか考えたりする時間に費やされますから。


このDちゃんという子の魅力は、作業をメタな視点で眺めて、統合したり発展したり

する考え方につながるところで、

できあがったものが何かということより、

気づいたことは何かというところに価値があります。

 

たとえば、コップの周りにレースのリボンを貼り付けるとしたら、

長さはどれくらいか、どうやったら求まるかといったことに、

体験すれば関心が高まり、少し教えれば理解して納得します。

自分自身で、さまざまなことに気づきもします。

 

そうした活動を通して、頭の中の世界を変化させていく子たちは、

見えている世界ではそれほど目立つことをしない場合も多いです。

ひとりひとりの子の個性にていねいに接する大切さを思います。

 

 


いろいろ体験したがるけれど、「ああ、楽しかった」で終わってしまう 前編

2019-03-30 09:07:45 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

ユースホステルの2~3年生の女の子たちのレッスンに行ってきました。

部屋でカフェを開くそうで、ケーキやドリンクをせっせと作っていました。

このところの3年生のAちゃんのケーキ作りのブームは、三角柱を展開図から作ることです。

平面が立体に変化するのは、何度体験しても不思議で面白いです。

2年生のBちゃんのすいか作り。

がぶっと食べたら、変化するところを作っていました。

光る風船を持ってきてくれた子がいるので、カフェは夜間営業をしていました。

 

 親御さんたちの勉強会で、子どもたちの姿について

こんなご相談をいただきました。

「工場見学に行ってみる?」「科学館に行ってみる?」などと誘うと、「行きたい!行きたい!」と

何にでも興味を示し、お出かけを楽しむ小学2年生のCちゃん。

でも、どこに出かけても、「ああ、楽しかった」で終わり、そこから何か得たようでもなく、

興味が広がったり深まったりするようにも見えない、というお話でした。

Cちゃんは利発で穏やかな気質の子です。

何でもそつなく器用にこなし、強い自己主張やこだわりはいっさいありません。

聞き分けが良く柔軟なので、周囲の声に合わせているだけに見えることもあり、

集団の場ではニコニコ笑顔を振りまく様子が目にとまるだけで、これといって目立たないこともあります。

Cちゃんのお母さんは、どこかに連れていくからといって、

そこで何か覚えてほしい、能力をアップさせてほしい、見たものに強い関心を寄せてほしいと思っているわけでなく、

ただ、「これでいいのかしら?」と何となくもやもやするのだと思います。

確かに、ユースに着いてすぐの工作の時間にしても、算数の学習時間しても、夕食までの

子どもたち主体の活動時間にしても、Cちゃんはみんなの輪に溶け込んでいて、終始明るく控えめにしていて、

これという目の引くものを作る姿もなかったし、「わかった、こうでしょ!」と意気揚々と

発言する姿もありませんでした。それは教室でのグループレッスンでもよく見るCちゃんの姿です。

でも、だからといってCちゃんの活動への関心が薄いわけでもないし、

その時間から取り立てて得るものがなかったとか、アウトプットがなかったというわけではないのです。

 

内向型の子に多いのですが、アウトプットの出方にかなり時間差があり、

アウトプットされたものは、

その子というフィルターを通って収束されているという特徴がある子たち

けっこういるのです。

 

内向型の子に多いのですが、アウトプットの出方にかなり時間差があり、

アウトプットされたものは、

その子というフィルターを通って収束されているという特徴がある子たち

けっこういるのです、と書きました。

 

みなといっしょに体験している時、これはいいけどあれはいや、と自分で取捨選択するのではなく、

何でもウェルカムという姿勢のせいで、何に対しても強い関心を抱いていないかのように見えたり、

その場で楽しく過ごしているだけのようにも見えたりする子がいるんです。

そうして、興味が拡散していく間、拡散思考をどんどん広げいく一方で、

ずいぶん時間が経って、ひとりになった時、「〇〇したい!」と急に思いついて

何か始めるというタイプです。

その「〇〇したい!」は、明らかに、何となくすごしていた時に見聞きしたものの

影響を受けているだけれど、そこで見聞きしたものをそのまま模倣するようなものでなく、

「その子」というフィルターを通って、体験がまるで結晶したような印象を受けます。

 

晩の算数のレッスンの後で、Cちゃんが急に思いついたように

「ストローを使っていろいろな形を作る本ありますか?」とたずねに来ました。

日中、わたしがお母さん方と見ていた本をそっと気にかけていたようです。

そして、ひとりでせっせとモールとストローをつないで、

正八面体の骨組みを作っていました。

 

 

そういえば、この日の工作タイムに、3年生のAちゃんは、紙に三角柱の展開図を描いて、ケーキを作っていましたし、

そして、2年生のBちゃんは

すいかをかじった時の実の部分の形、つまり球の表面にあたる形を作ろうと苦戦していましたし、

夕食前にはせっせとフェルトの綿に楊枝で刺して、球を作ってましたから、

Cちゃんとしても形の面白さに心が動いていたようなのです。

でも、Cちゃんが、目にするものに興味を抱き、自分の中に取り込んで、

「こんなことがしたい!」と感じるまで、

こんな風にかなりの時間のずれがあるのです。

 

それと、Cちゃんはいざアウトプットするという段になると、

いつも体験をちょっとメタな視点から眺めたようなものになりがちだな、と感じ

ました。

たとえば、Cちゃんは、さまざまな頭脳パズルが好きなんですが、

Cちゃんが一番うれしそうにしている時というのは、

「解けた!」という瞬間より、

自分なりにその頭脳パズルの背後にある規則に気づいて、それを

言葉にしている時なんです。

正解したとか、たくさん問題が解けたとか、1番になった、勝った、ということは、

Cちゃんにとっては二の次であるようです。


年中さんの「なぜ?」「どうして?」

2019-03-30 08:55:05 | 年中、年長

年中のAちゃんは、さまざまな活動にマイペースにじっくり関わる子です。

この日も他の子が作ったビー玉コースターで、長い時間遊んで、どこがどうなっているのか、隅々まで観察して

うまく転がる理由や転がらない理由について熱心におしゃべりしていました。

Aちゃんのお母さんの話では、最近、「どうして?」「なぜ?」と一日中たずねているそうで、

工作や実験を通して物を観察する目が高度になってきたためか、

「このおもちゃの(さしこんである人形部分)あんぱんまんは、

どうやって入れたの?こっちを先に入れて、それから次にここを作ったのかな?

どういう順番で入れたのかな?」とか、

「どうして線路に石があるの?どうして線路に石がいるの?」とか、

どうして電車の上にひも(架線)があるの?どこまで(架線は)あるの?」

疑問が、以前より具体的なものになっているそうです。

Aちゃん、教室でも「なぜ?なぜ?」を連発していました。

この日は年中の女の子ふたりのレッスンだったのですが、年小時代に比べ、

何かやり遂げると、「もう一回」「もう一回」と繰り返しやりたがる熱心さが目立ちました。

 

上の本は、「1はウラパン、2はオコサ」と言いながら数を数えていく数遊びです。

けっこう難しいのですが、ふたりとも一生懸命参加していました。

ちょっと難しいことにチャレンジするのが楽しい時期のようです。


ひとつの不思議から次の不思議が生まれる

2019-03-30 08:51:49 | 年中、年長

 

 ブログのカテゴリーを少しずつ整理しています。年齢ごとのカテゴリーを増やしています。

ついでに埋もれていた過去記事を再アップさせることが

たびたびあります。

 

年中のAくんは、不思議に感じるものを見つけて、それをじっくり探求するのが

好きな男の子です。これまでも、のび縮みするバネを使った工作や氷の変化などに

夢中になってきました。

今回のレッスンで、Aくんが、ラップの芯を覗いて、潜水艦のについている覗き眼鏡だということにして

遊んでいたので、100円ショップの眼鏡を曲がる部分につけてあげると大喜びでした。

見栄えは悪いですが、後で自由にはずすことも考えてそのまま取り付けています。

下から、天井の方向に芯を覗いているのに、部屋の壁面にあるものが見えるのが、

不思議でたまらない様子。

Aくんは筒を倒してみたり、上に向けたり、斜めに向けたり、曲がった先の方向だけ

変えてみたりして遊んでいました。

面白くてたまらない様子です。

 

Aくん、今度は、「もっともっと筒を長くしたい!」と考えていました。

それから、「これ、お風呂で見ることができる?」とたずねていました。

 

もっと筒を長くしたり、もう一度曲がるところを作ってもう一枚鏡を取り付けたり

すると、もっといろいろ探求できますよね。

Aくんが、お風呂の中の様子を覗きたがっていたので、

牛乳パックで同様の覗きめがねを作ることを提案しました。

 

鏡の不思議に夢中になっているAくんと、簡単な万華鏡もどきを

作って遊びました。

3枚の鏡を三角になるように置いて、中央に小物を入れたり、下に絵柄を敷いたりして

覗きます。

顔を近づけて中を覗きます。

自分で作るので、万華鏡の仕組みがよくわかります。

 

 

 

 


Aくんもがんばった! ロボットもがんばった!

2019-03-29 21:23:38 | 子どもの成長

 Aくんもがんばった!

ロボットもがんばった!

Aくん作の巨大な障害物のある道を、

段差を超えることができるロボットは進んでいきました。

 子どものその時期その時期の本気注がれた遊びは、

後から振り返るとその子の生きた軌跡を見るようです。


真似と個性

2019-03-27 22:36:16 | 工作 ワークショップ

少し前に、年長のAちゃんがDVDの裏面にねんどのゆきだるまの人形を貼って

『虹を作る道具』を作った子がいました。

その後、年長のBくんと小2のCちゃんが、同じ材料で作り方を真似して

『虹を作る道具』を作りました。

それぞれ、Aちゃんの模倣とはいえ、その子らしい個性が加わって

とても魅力的なできばえでした。

Bくんのツタンカーメンです。

Bくんは3歳の頃からピラミッドが好きで、ブロックや工作で

何度もピラミッドを作っています。

 

Cちゃんの作品です。

Cちゃんは動くしかけをイメージするのがとても上手です。

最初はDVDの(角度が)いろいろ変わるようにして、光のあたり方が変化するように

したいと言っていました。私と話しあった結果、DVDを前後に動かすと、光が当たる面のサイズが変化する

ようにしました。そうすると虹のでき方が変わります。

 


「まんげ鏡が作りたい!」

2019-03-26 22:36:16 | 3、4歳児

3歳11か月のAちゃんが工作で作りたがるものは、たいていカメラとか望遠鏡といった

のぞくところやレンズがついているものです。

今回は教室に着くなり、「まんげ鏡が作りたい!」と

何度も言っていました。

そこで、Aちゃんのような幼い子でも

自分で作った満足が得られて、仕組みも理解しやすいように

材料を工夫してみました。

100円ショップの子どもの手のひらほどのサイズの鏡を3枚

貼り合わるだけで、あとはその三角の隙間にスパンコールなどを入れては

のぞきました。

そうしてたっぷり遊んだ後で、透明の平たい空き容器に

スパンコールなどを入れて、さらに万華鏡らしくしました。

Aちゃんはうれしくてたまらない様子で、何度も何度も自分の作ったまんげ鏡をのぞきこんでいました。

 

同じグループのBくんが、レイザーメイズという頭脳パズルで遊びたがりました。

もう少し年上の子向けのパズルなのですが、

ちょうど鏡でまんげ鏡を作った後だからか、

レーザーの行先が鏡に反射して曲がるしかけで

3人ともかなり熱心に遊んでいました。

 

下の写真は同じくAちゃんたち3歳児さんのゲーム風景です。

いつの間にか、3人ともルール通り同じ種類の玉がぶつかるように

先を予測して玉を取れるようになっていました。

みんな楽しそうに遊んでいました。


幼い頃に見えるその子の本質

2019-03-24 19:51:38 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

人の本質というのは、そうそう変わるものではなくて、

一粒の種子が人生の全てを包むような核心を成しているのに似ているという

話を目にしたことがあります。

<特に子どもというのは、小さいがゆえに経験より想像力に頼るため、

その時期に「何を作りだし、何を垣間見たのか」が、

良くも悪くも深くその人の本質を形成してしまうのです。>

としめくくられていました。

 幼児と接していると、特に3歳以下の幼い子らといっしょにすごすと、

もうすでにその子にしかない個性のきらめきがあって、

心を打たれます。

そうしたその子らしさの芽を大事に見守っていると、

最初は欠点にしか見えなかったものや、誰にも気づかれない目立たないもので

あっても、その子にしかない核となるものがどんなに面白く

魅力的に展開していくのか、毎回驚かされます。

 

写真は2歳児さんふたりのレッスンの様子です。

2歳7か月のAくんは、教室に動物園のパンフレットを持ってきて、

うれしそうに見せてくれました。

そこでいっしょに紙コップで動物園を作って遊ぶことにしました。

Aくんは元気よく紙コップを切っていました。折り上げて、名前を書くと、

動物たちの家ができました。

Aくんのはお出かけ先のパンフレットを大事にしていて、何度も見ているようです。

これまでも教室にそうしたタイプの子がいたのですが、

そうした子は現実に見聞きしたことを、図鑑や本で確かめたり、

自分でも本や新聞を作ってみたり、地図を見ながら宝さがしをしたり、

説明書を見ながら何か作ったりするのが大好きな子に成長していました。

もっと大きくなると、自分の未来を思い描いて、「外国に行きたいからその国の言葉を勉強しよう」と

自発的に勉強をしはじめたり、自分の経験を振り返って、じっくり考えて言語化しようとしたり

する姿がありました。

この日、Aくんがやりたがったのは、ちょっとお兄ちゃん向けの教具でした。

以前、年上の子らが遊ぶ姿を見て、自分もしてみたいと思っていたようです。

 

Aくんは全ての面をひとりで埋めきってとても満足そうでした。

いっしょにレッスンしていた2歳3か月のBくんは

模倣が上手で要領がいい子です。

小学生のお兄ちゃんが立方体の展開図の学習でつまずいていたので、

お母さんがアドバイスをしていたところ、Bくんがすっかり覚えてしまって

先生気取りで解説していた姿に笑いました。はさみなどの道具も

大人が使う姿を見ていて、上手に扱っていました。

そうした姿の中で、Bくんらしさというのは、

ただ真似するのではなくて、物事の大事な要の部分を

ちゃっかりつかんで真似するところだな、と感じました。

おそらく、これから先、大きくなるにつれて、Bくんにとって、「あこがれる」ということが、

とても強いモチベーションになっていくんだろうな、と感じました。

 


考えたり推理したり試したりできるような遊びや物作りをするには? 

2019-03-24 09:39:34 | 通常レッスン

「遊びでも工作でも何でもいいのですが、考えたり試したりできるような体験を

してほしいです」「自分でやらず、自分で考えず、ママやって、が目立ちます。

考えたり推理したりして頭を使ってもらいたいです」という声をいくつか

いただきました。

 

そこで、教室のレッスンの中で、子どもが考えたり推理したり試したりする

体験ができるように工夫している点を紹介しますね。

 

 

その子が今、興味を持っているものを通して考えるきっかけを作っています。

 

新年少のAくんと新年中のBくんは、クレーンのおもちゃをいじって遊んでいました。

ただクレーンを上下に動かすだけでは、考える楽しみが味わえないので、

クレーンの先にひっかけるバケツ(紙コップ製)を作って、

Aくんが好きなビー玉転がしのおもちゃと組み合わせて遊ぶことにしました。

 

転がり落ちてくるビー玉を、

クレーンの先につけたバケツで受け取る遊びにふたりは夢中。

 

ビー玉転がしとクレーンのようにふたつの遊びを組み合わせることで、

いろいろ工夫するチャンスが生まれます。

 

Aくんのお母さんが、

紙コップで「中に入ったビー玉がひっくりかえる」仕掛けを作ったので、

先の転がってきたビー玉を紙コップのバケツで受ける遊びと

組み合わせることにしました。

 

ついでに今、教室で流行っている武士の時代の戦法の『石落とし』(もどき)として

遊ぶことに。

 

どの位置にひもを貼るかで、ひっくり返ったり、返らなかったり。

 

ビー玉がたまると、石がごろごろ。

こういった遊びは、十分遊びきった後も、さらに発展した遊びにつながりやすいです。

同じようなシステムでエレベーターを各階で止まらせたり、

コインを入れると出てくる自動販売機なども作れます。

車にひもをつけて坂道を上らせることもできます。

 

また、紙コップのバケツでビー玉を受け止めるのではなく、

落ちた先でできることをいろいろ考えてみるのも面白いです。

 

普段はなかなか遊びが長続きしないBくん。教室で見つけた

ガムマシーンの部品が気に入って、「誰にも貸したくない」と一悶着起こした後で、

キャンディー屋さんをして遊んでいました。

紙コップに穴を開けて、キャンディーの機械のコインの投入口を作ったのが

うれしくてたまらないらしく、「ぼくがj考えたんだよ」と繰り返していました。

 

そこで、いっしょにキャンディーマシーンを作ることにしました。

 

「コップに切り込みを入れる」というBくんの思いついた工作方法で

ほとんどできる作りです。

 

上から見ると、どうすればビー玉が下に落ちるのかわかります。

「ここをもっと切ればいいんだよ」と、切り込みを広げることを

思いついたBくんは、とても誇らしそうでした。

 

 毎回のように書いていますが、

子どもの好み、個性、熱中する事柄を把握するのも大切です。

新年中のCくん。一番大きい数、最強の生き物、でっかい乗り物など、

比べられる量やサイズに注目する子です。

 

算数タイムに、「3人の子の手の中に隠した3体ずつの人形の数がいくつか」

といった問題にいきいきと取り組む姿があります。

頭の中で扱っている数をカウントしていくのが得意なようです。

男らしい強さへの憧れから、危なっかしくて乱暴な遊びやルールや物を

破壊するような遊びをしたがることもありますが、何かに熱中し始めると、

ねばり強く取り組みます。

 

Cくんがデュプロの線路をつないで遊んでいたので、

「線路をだんだんだんだん高くなるようにしていって、

車がシューッとジェットコースターみたいに滑りおりてくるようにしてみる?」

とたずねると、うなずきました。

Cくんのように数の増減が気になる子は、こんなふうに「だんだん高くなっていく」

といった物作りをとても好みます。他に「高い高いビルとエレベーターを作る」とか、

「大量に何かを取りつけて最強の武器を作る」といったシチュエーションも。

 

下の写真は、Cくん同様、数や秩序を好む子たちが熱中する作品作りです。

 

Cくんの場合、サイズや数の好みが強さへの憧れと結びついているので、

下のような作品作りを巨大化させたり、

強く見えるよう飾り付けていく方が好むかもしれません。

 

何かを破壊してしまうほどの強さを好む子には、

最後に「滑り降りてくる」とか「すばやく走る」とか「高速回転する」といった

オチも必要なようです。

 

 

今回作った「だんだん高くなっていく線路」の話題に戻りますね。

「速くダイナミックに滑りおりてほしい」という思いがあれば、

「もっと速く滑りおりるにはどうすればいいだろう?」と

大人といっしょにいろいろなことを試してみることができます。

 

☆ 坂を急にする。

☆ 乗り物に重りを乗せて重くする。

 

など、いろいろな方法が試せるかもしれません。

「速くなるのはどうしてか」「遅くなるのはどうしてか」と

理由を話しあうこともできます。

 

 

今回は、たまたま教室にあったデュプロの線路で、

「どうしたら速くすべりおりるか」を試していますが、

ビー玉転がしのおもちゃを使ってもいいし、上の写真のような

ビー玉が滑って行く仕組みを、紙を折ってブロックに乗せることでも

再現できます。

 

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<おまけ> ブロックでクレーンを作る方法。

 

 

 

『魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」ではダメ?

で紹介した『web屋の日常』のtoksatoさんの

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食も情報も生き方も飽和状態の今の日本では、

子どもに釣り方(テクニックや公式など)を教えるだけでは、とてつもなく危険で、

魚を釣ることの楽しさや意義を教える必要がある。

「なぜ釣りをするのか」を自分で噛み砕いて把握しなければ、その熱意と哲学がなければ、

扱えないし、磨きあげることができない。

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という考え方に深く共感しています。

ですから、子どもが、「考えたり推理したり試したり」するようになるには、

テクニック的なことを教えるのではなく、考えたり推理したり試したりする

楽しさを思いっきり味わう必要があると思っています。

そのためは、自分が学んでいるひとつひとつの内容に愛着を抱き、

考えたくてたまらなくなるほど好きになるのが一番です。

 

「好き」な気持ちは伝染します。

だからこそ、ちまたではいろいろなものが流行するのですよね。

知識や考えることに対する「好き」も例外じゃありません。

つい最近も、小学生の子らに「大阪城めぐり」の企画と準備をさせることにしたとたん、

教室中が歴史ブームに湧いているのです。

 

最初に「好き」という気持ちがベースにあると、

「どうやって畳36枚分もあるような巨大な石を運んだんだろう?どうやって、

船に乗せたんだろう?」という疑問に必死で頭をひねるし、

昔の人の知恵に心底、感服します。

「考えるってすごいなぁ」「こんな途方もないことを実現しちゃうんだなぁ」

「いろいろ知るのって楽しいなぁ」「やってみて試してみるのはワクワクするなぁ」

と身体で感じ取るはずです。

 

新一年生のAちゃんが忍者めしというグミを教室に持ってきていました。

そこで、同じく新1年生のBちゃんといっしょに『忍者の大常識』という本にあった

非常用の携帯食を作ることにしました。

作るといっても、ごっこ遊びの延長で、ひと通り材料は用意するものの、

全部偽ものなんですが……。

 

そば粉の代わりに塩土を削ったもので。

 

小麦粉ねんどの人参。

 

あれこれ混ぜ合わせて、3年酒にひたす振りをして、できあがり。

(本当は、水渇丸も飢渇丸ももっと小さな粒だったはず……。)

「ごっこ」とはいえ、こんな風に本格的にごっこ遊びに興じると、

いろいろな知識をもっともっと得たいと感じるようになるし、

昔の暮らしについてさまざまな疑問が湧いてきます。

 

AちゃんとBちゃんは、竹筒の中に目つぶしのとうがらしを仕込んだものと、

くさりのついた武器を仕込んだものを作りたがりました。

 

ついでに自分の足の型を取ってぞうりを作り、

黒い覆面をかぶって、忍者になりきって遊んでいました。

 

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他の子らが作った石落としの仕掛けに、

石垣をつけくわえることにした新一年生のCくん。

 

石落としの仕掛けを見た新一年生のDくんは、

コップの中にビー玉が入ると、ビー玉の重さでひもが引っ張られる仕組みを

使ってエレベーターを上げることにしました。

 

でも、ひもが絡まってうまく作動しませんでした。

このように「うまくいかない時」は、「考える時」です。

 

ひもが絡まらないようにひと工夫。

と、次は、ビー玉がコップいっぱいに入っても

エレベーターが上がらないことがわかりました。

そこで、コップの下にもうひとつコップをつけ足して、

最初からビー玉をある程度入れておくことにしました。

 

すると、ビー玉コースターを通って、一定量のビー玉がコップに溜まると、

ゆっくりとエレベーターが上がりだしました。Dくん大感激。

エレベーターも石落としの仕掛けも、前回の記事で紹介した、

「スロープを滑って行くビー玉をコップで受ける」という遊びの形を変えたものです。

面白くて夢中になれることなら何でも、ちょっと形を変えて、

発展させると、考えたり推理したり試したりするきっかけになります。


子どもの間違いから学ぶ

2019-03-23 09:32:46 | 年中、年長

年中さんの女の子たちのグループレッスンでのこと。
この子たち、毎回少しだけおやつを持ってきて、
途中のおやつタイムにそれを分け合うのを楽しみにしています。
自分の持ってきたお菓子を、お友だちに平等に分けるにはどうすればよいか、
考えるのが上手になってきました。「残ったひとつは、4人だったら、4つに割ればいい」と言います。
それで、お菓子を使って小学校受験の『逆思考』の問題をたずねてみました。

3個のお菓子を見せて、
「妹に2個お菓子をあげたら、3つになっちゃったよ。
妹にあげる前は、はじめ、いくつ持っていたのかな?」と
たずねると、口々に「3個!」と言います。
そこで、実際、もらったりあげたりする様子を見せて、数が変化するさまを理解させてから問い直すと、やはり「うーん、3個?4個?」と首をかしげています。

それで。「おにいちゃんがね、2個お菓子を取っちゃったの。そうしたら、3個になっちゃったよ。最初はいくつだったかな?」という問いに変えると、
お兄ちゃんのいる子が、「5個!」と答え、その子はそれからは、
他の問いでもきちんと答えるようになりました。

この問題は、なかなか理解にいたらなかった子も、
自分が日常でよく遭遇する出来事でイメージできることは理解が早いのです。
教室では、子どもたちにさまざまな問いかけをして
何を理解していて、何を間違えるか、どの概念が弱いのかに気づいたときは、
それから私がまず学び、親御さんに伝えて、
少しだけ環境を豊かにしてもらっています。

たとえば、先ほどの逆思考のような問題が苦手だとわかれば、
子どもをいつも「はやく、はやく」とせかさず、
いろんな場面でゆっくりおしゃべりしながら、「あ~、どうぞってしたから、ちょっとになったね。じゃあ、今度はお母さんは☆ちゃんに2個あげようね」
という具合に、気持を味わったり、少し前のことを振り返ったりする時間を
増やすようにするといいですよね。

子どもの間違いから学ぶというのは、
子どもが「あれっ?」というところで間違えたとき、
教え込んでわからせるのではなくて、
「こうした概念に気づきにくい生活をしていないかな?」と子どもの暮らしを見直して、環境を改善したり豊かにしたりしていくことです。

幼児教育には、賛成派、反対派、どちらもいらっしゃることと思います。
私は子どもの世界に評価や競争を持ち込んだり、
ペーパーでの学習をたくさんさせたりすることには反対です。

しかし、
幼児期に小学校受験に出てくるような
『数量・比較』『お話の記憶』『言葉』『常識』や『図形』や『推理』といった問題に触れて、

きちんと集中して話を聞いたり、聞いたことや見たことを記憶にとどめたり、
表現力を豊かにしたり、推理したり、図形で遊んだり、
理科や行事などの常識問題をしたりして、
頭を使い方や頭を使う楽しみを知るのはよいことだと考えています。

そうした頭を使う体験を、遊びや生活の中で
たくさん楽しめるように工夫しています。

そうして、問題を出すとき、子どもが間違えるときがありますよね。
間違えるたびに、
「間違えてもいいんだな。チャレンジすることこそ大事なんだな。どうして間違ったのかよく考えてみよう」
という気持ちになるように、気をつけています。
親御さんによっては、できないと、いちいちその場でわからせようと
説明をはじめる方もいるのですが、
私は、大人が、子どもが今、理解のどの段階にいるかを把握すれば十分だと思っています。
あわててできる状態にするより、
自由にリラックスして、たくさん間違えることができる場にすることを優先しています。

女の子のグループレッスンの子たちは、語彙が豊かで、とってもおしゃべりです。

ですが、女の人がいろんな家事をしている絵を見せて何をしているのか問うと、せんたくものをほしているときは、「せんたくしている」
たたんでいるときも、「せんたくしている」
ほうきで掃いている絵は、「そうじしている」
と言ってました。ハトが、エサをついばんでいる絵は、「食べている」
猫がつめを研いでいる絵は、「ひっかいている」と答えました。


正解と言えば、正解なのですが、
「ほす」「はく」「たたむ」「ついばむ」「とぐ」といった
絵を正しく表現する言葉が使えているかというと、
三角かな?というところ。
こんな場合、「間違っているよ」とは言わず、
「せんたくしている」と答えれば、
「そうね、せんたくものを干しているね」と正しい言葉で返してあげるといいですね。
それから、家庭では、子どもがおしゃべりだと、大人は言葉を気をつけて使おうとはあまり思わないのですが、
少しだけ言葉の世界の豊かさを味わうような会話をするよう
つとめるとよいかと思いました。

虹色教室通信では、よく「はやくはやく」とせかさない……ということを
繰り返しています。
それはつまり、豊かな言葉の世界をゆっくり味わうことや、
自分の言葉で、考えを練ってみること、
身近な不思議に科学的な疑問を抱いてゆっくり親しむことを意味しています。
目に見える成果の陰で、
そうしたものが犠牲にされているのをたびたび見かけるからです。