虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

メタ認知力を使うことで、脳自体が向上する

2022-01-27 17:01:38 | 思考力

 『滅びゆく思考力(J.ハーリー著/大修館書店)』では、思考力の向上と「メタ認知力」の関わりについて、さまざまな重要な指摘がされています。

 

『メタ認知力』のキーワードは『方略』。

新しいことを学んだり理解したりするときに、自分自身を援助するために用いる、知的なプロセスのことです。

 

現在の環境は心の混乱を引き起こし、子どもたちの内言を失わせています。

また、子どもたちが大人たちとあまり長い時間を過ごさない家庭や、データーの記憶を学習(知識偏重の学習法)している学校は、メタ認知力という脳の特別な長所を無視し、注意の持続の問題で子どもたちを危機に陥れているそうです。

 

イスラエルのルーベン・ヒューエルスタインは、変化する環境に対して人間をより抵抗力や適応力があるようにする「メタ認知的方略の訓練」によって、脳はそれ自身も向上するものと確信しています。

 

ヒューエルスタインは次のように語っています。

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脳は、個人の自己保存を可能にする構成的な方法によって変容することができるのです。

人間は自分自身を変容させることができる点に特徴があります。

私はこれを『自動的可逆性』と呼んでいます。

しかし、学校へ通うようになる前であっても、子どもたちは意味というものを入力する大人を必要としています。

さもなければ、子どもたちは意味を捜し求めて世界をさまようことになるのです。

 『滅びゆく思考力—子どもたちの脳が変わる』(J.ハーリー著/大修館書店)P320

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ヒューエルスタインは、部屋におもちゃを置くだけで、あとは子どがそれで遊ぶことを期待する親のもとでは、適切な思考技能が育たないと主張しています。

親も教師も、子どもの理解を組み立てるように援助し、それを通して意味を教えていく必要があるのだとか。

 

といっても、それは今の早期教育ありがちな、一口サイズに刻んだ「思考技能」の要素を押しつけるやり方とは違います。

「思考」を過剰に分割すると、創造性を犠牲にすることにつながるのです。

 

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虹色教室の年中さんと年長さんの子どもたちのレッスンの様子から、遊びの中で子どもたちが思考を広げ、柔軟に考えていく姿を紹介します。

 

年中のAちゃんが「葉っぱ」の形をしたブロックのパーツを見つけて「畑を作りたいわ」と言いました。

ブロックで畑を作ろうというアイデアを思いついたのはAちゃんが初めてです。

家庭菜園をしている年長のBちゃんが、すぐにそのアイデアに飛びついて、いっしょに畑作りをはじめました。

「きゅうりとかミニトマトとか植えようよ」と話しています。

ブロックの穴にさせるサイズにストローを用意してあげると、器用な年長のCちゃんがはさみで切っていきました。

めいめいブロックの穴にストローをさしては、「ほら、伸びてきているよ。よく育っているねぇ」と本物の植物を眺めるような感情のこもった声で話しあっていました。

 

このグループの子たちは、それぞれ独創的なアイデアを思いついては、さまざまな場面で工夫を凝らす子達ですが、お友だちと協調して、遊びをストーリーのあるものに作りあげていくことも、とっても上手です。

 

畑を作ったお友だちの姿を見て、畑にかける水が出てくる水道を作っているAちゃん。

ビー玉の水が透明のホースを通って飛び出します。

 

アイデアマンのAちゃん。工作材料の網を見つけると、「魚を捕まえる網にする」と言いました。

そこで、海に魚を捕るワナを仕掛けることにしました。

ワナの中にはパンが入れられていました。

すると、BちゃんとCちゃんが、サンマと鯛の人形を手にして、誤ってワナにかかってしまうストーリーで遊びだしました。

「先生、もっと魚はいないの?」とCちゃん。

「大きいまぐろならあるけど、これは一本釣りね。」と答えると、「まぐろも捕まえたい!」と子どもたち。

 

別グループのやんちゃな男の子たちがやっていたまぐろの一本釣り?(天井のフックに引っかけて、吊り上げています。)

 

 

「工作したい」という子らと、「たつまき」ができるおもちゃを作りました。

 

発泡スチロールの玉やスパンコールなどをペットボトルに入れて工作するうちに、Bちゃんが、「粘土でキャンディーとか作りたい」と言いました。

 

以前、遊んだことがあるベルトコンベアーで食べ物を移動させたことを思いだしたAちゃんが、工場の機械を作りたがりました。

写真を撮りそびれたのですが、空き箱に画用紙を挟んで動かす形で、面白いベルトコンベアーができました。

 

年中や年長さんのおしゃべりを聞いていると、自分たちはどんなことがしたいのか、それには何が必要で、どんなことをすればいいのか、あることからどんなことが連想されるのか、あるものの背後にはどんな意味があるのか、非常によくわかっているし、互いのアイデアを響かせ合って遊ぶ中で、それをどんどん広げていくのがわかります。

一方で、大人との会話や一緒にする活動を通して、意味の理解を深め、内言を育み、さまざまな思考パターンを身につけていくのを感じます。

 

↑ 算数タイムの一コマ。


こぐまくんの知育日記♦︎虹色教室mini♦︎更新しました♪

2022-01-25 23:05:32 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

こぐまくんの知育日記♦︎虹色教室mini♦︎更新しました♪

いろんなことに興味しんしんのこぐまくん2 (1歳9ヶ月)

よかったら覗いてみてくださいね。


玉入れ と 計算

2022-01-22 21:53:44 | 算数
小1の子たちと、玉入れ遊びをしているところです。
 
本格的に天井からカゴを吊って投げ入れて、その後、玉の得点計算をしました。

すべての玉が1個ずつ入っていたので、1+2+3+4=10点

ついでに少し難しい問題にチャレンジ。
 
色ごとにA~Dの記号をつけて、

A+2×B+C
 
とか、
 
3×B+D を計算。
 
なんとか解けました。


星座を作って遊んだよ ♪

2022-01-19 22:55:53 | 理科 科学クラブ

小3のAちゃんのレッスンで。

黒い紙がたっぷりあるので、星座の絵を描いて遊びました。

星の部分に目打ちで穴を開けています。

星の色に合わせてセロファンを貼っています。

サソリ座です。

こいぬ座はこんな感じになります。


子育ての悩みから抜け出すための あれこれ

2022-01-14 22:33:47 | 子育て しつけ

子育ての迷いや悩みが答えを出せないまま堂々巡りし続けているとき、

ちょっとした枠組みを作ってみることで、解決しやすくなることがあります。

 

悩んでいるときというのは、

心が気にかけている「そのこと」に一点集中していますから、

一つの明快な答えを求めて真っすぐ真っすぐ、悩みを追いかけているものです。

でも、子育ての悩みって、機械ではない人間相手の困りごとですから、

「線」で対応するより、最初からズレやブレを想定した枠で囲った「面」で

対応したほうがうまくいきやすいのです。

 

たとえば、子どもが何をするのも、「ママ、やって!」と頼り気味で、

ぐずぐずだらだらして覇気がないことを悩んでいるとします。

「線」悩んでいると、注意してもダメ、叱ると泣いて余計にぐずぐずする、

褒めておだてても依存するばかり……もっと構ってあげればいいのか、

もっと厳しくすればいいのか、これまでの対応がまずかったのか、

迷いと悩みは深まるにつれて、親ががんばればがんばるほど、子どものダメなところが

目についてくる……ということが起こりがちです。

 

そこで、いったん「線」で考えるのをやめて、

ざっくりと枠を作ってみることにします。

 

 枠のサイズを決めるのに、数ヶ月前までの過去を振り返って参考にします。

すると、「弟や妹ができた」とか「家族が入院した」とか「引っ越しした」

「保育園に行き始めた」「クラス替えがあって担任が変わった」

「父母が言い争うことが多かった」など、

子どもにとったら衝撃的で不安でたまらなくなるような出来事が

思い当たることがあります。

 

小学生でしたら、「クラスの仲良しグループに入れてもらえない」

「勉強がさっぱりわからなくなってきた」

「厳しい担任になって、他の子が怒鳴られている時もビクビクしている」といった、

親には見えにくい学校内での変化に伴う戸惑いもあるはずです。

 

子どもにしたら手に余るような事態だったはずなのに、

どうしていたかな……と思いを巡らすと、

「ちょっとおとなしいな」「下の子をかわいがっているな」

「ボーッとしていることが多いな」くらいで過ごしていたことに、

気づくかもしれません。

 

そんな場合、遅ればせながら、

「これからしばらくは覇気のないだらだらぐずぐずする時期」が続いて、

 「出来事を受け入れる元気が出てくるころから

泣いたりわがままを言ったり、赤ちゃん返りをしたりして、周囲を困らせる時期」が

くるだろう。

 「子どもの精神的な成長に関わる」のはそれからでいい……

 と、時間軸をざっくり区切っておくと、成長を支えやすいです。

 

というのも、そんなふうに生活が変化したり、普段通りでない出来事に遭遇したあとは、

大人も知らず知らず不安を抱えがちなので、子どものダメな部分が目につきやすい

ものなのです。

そのせいで、近視眼的になったり、感情的になったりりして、

子どもの不安をあおって、困った行動を誘発したら、元も子もありませんよね。

 

「ちょっと気になる」程度の成長の遅れを

子どもの将来を悲観するほどオーバーに悩むこともあります。

他の子のようにできないことがあると、それがちょっとしたことでも、

子どもは子どもでジレンマを抱えたり、不安を覚えたりしているものです。

つまり、心にかかった負荷を消化するそれなりの時間が必要なのです。

そうでないと、がんばる気持ちにスイッチが入らないですから。

子どもは感情を持たない機械と違って、

いくら大人の気持ちが急いていて、今すぐにでも、子どもの遅れを埋める

あれやこれやの対策を打ちたいとあせってみても、

必要なものを飛ばせば、結果的には、ゆっくり対応した場合の何倍も時間がかかることに

なるかもしれません。

 

子どもがさまざまな現実を受け入れて乗り越えていくチャンスと時間を奪ってしまうと、

子どもとの関係がどんどんこじれてきて、

解決しようのないような問題に発展することもあります。

 

枠組みを作るということは、気になる問題を放置したり、

問題があるのに「ない」ものとして否認することではありません。

子どもは人間で、親も人間であることを前提にして、

子どもの側が自分の感情を封じたり無視したりしないように、

大人の側が自分の不安や恐れに基づいて、子どもに関わることがないように、

そのせいで問題をこじらせて悪循環に陥らないように、

ストッパーとして働くような枠を作っておくという生活の知恵のようなものです。

 

子どもの心が自ら成長しようとする自然なプロセスを大事にすると、

問題を安全にスムーズに解決していくことができますよ。

 

以前、何度注意しても、学校の持ち物の管理がいい加減な小学生の男の子の

ことで悩んでいる方から相談を受けたことがあります。

 

「必要なものをかけておくだけでいいように環境を整え、

畳みかけるように言い聞かせ、

本人自身、管理がいい加減だったため何度も痛い目にあっているというのに

直す気配がない。

反省の色もうかがえない。

どうしたものか。

放っておいたら自然にできるようになるようなら、見守りたいものだけど、

そう甘くはいかないのは承知している。

子どもの良い面は十分理解しているし、認めてもいる。

こんなふうに子どもの問題ばかり気にかけているのはどうかと思うし、

自分で自分のしていることにうんざりしてしまうけど、注意せざるえないし、

気にせずにはいられない」というお話でした。

 

ADHD,ADD気味のうちの家族の姿を思うと、大いに耳が痛い内容。

 

「注意欠如の特性は、本当にあなどれないから

意志の力と努力で簡単に克服できるわけでないし……」と思いつつ、

こんな話をしました。(いくつかの会話をまとめています)

 

「わたしも今だに物忘れやミスがひどいですから、

そんな親に育てられているうちの子たちは遺伝もあるから、

Aくん(相談者の息子くん)と同じように生活のごく基本的なことが呆れるほど

何度言ってもできるようにならない……というところがありました。

 今も一般的な基準からすると、ダメな面がずいぶん多いはずですけど、

欠点を持ちつつ、仕事先で大事な役を任されたり、友だちと創造的な活動をする

よい関係を作りあげたりして、それなりに何とかやっています。

 

二人とも自分の欠点への向き合い方とか失敗の受け止め方とか

自分に合う場を見つけるのが上手いな、と思います。

自分に合う場がなければ自分で作ってしまおう……というところすらあります。

 

わたしが娘や息子の年齢だった頃と比べると、わたしの場合、失敗すると

自分はダメだ……ダメだ……と自虐モードに入って、起こった事実を正確に把握する

勇気が持てないために、何度も同じ失敗を繰り返すことがあったけれど、

うちの子たちは、失敗が続いたからといって自分たちを欠陥商品だと思わないし、

素直に自分の失敗を見つめて、それを言葉にしながら

悩んだり反省したりすることができる点が頼もしいなと思います。

それができるからこそ次の対策を練ったり、解決を図ったりすることに

つながっているのもわかります。

 

ですから、何でもきちんとこなせるテキパキとした子に育て上げる方法は

何も言えませんが、反省していないように見える状態から、

現実に起こることを自分の問題として責任を持って引きうけていけるように

後押しする方法ならいくつかアドバイスできるかもしれません。

 

 


こぐまくんの知育日記♦︎虹色教室mini♦︎更新しました♪

2022-01-07 23:09:07 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

こぐまくんの知育日記♦︎虹色教室mini♦︎更新しました。

いろんなことに興味しんしんのこぐまくん

よかったらのぞいてみてくださいね。

 

 


遊びが長続きしない子が集中して遊べるようにするには

2022-01-05 09:22:21 | 幼児教育の基本

3歳のお子さんをお持ちの親御さんから、次のような質問をいただきました。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

うちの子は非常に気が散りやすいタイプで、遊びが長続きしません。おもちゃも次から次へと変えていきます。もう少し集中して遊び込めないものか・・・と悩んでおります。よろしくお願いします。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

3、4歳の子たちは遊びが長続きせず、おもちゃを次々変えていくことはよくあります。

一つの遊びで遊び込むことができるように導くために、次のような点に注意して

関わっています。

 

① それぞれの子の敏感期に注目する。

手作業で夢中になること。知能面で敏感になっていること。

 

② その子の好み。個性。

色、形、作業の好み。頭の使い方の個性。遊びの好き嫌い。

 

③ 最近の出来事。その日、関心を持ったものなどに注目する。

体験したことを遊びに取り入れる見本を見せる。

 

④ 遊びのさまざまなシーンで敏感期の活動を満喫できるようにする。

 

今日、レッスンに来ていた3歳と4歳の★ちゃん、☆ちゃんの遊びを例に挙げて、

もう少し具体的に説明させていただきますね。

 

教室に着いた当初、★ちゃんも☆ちゃんも、

次々と遊びを変えて落ち着かない様子でした。

☆ちゃんは椅子が好きな子で、2歳くらいの頃も、教室にある子ども用の椅子を

部屋中に並べたり、重ねたりして遊んでいました。

 

人形劇の劇場を取ってもらいたがったので、☆ちゃんに渡すと、劇場の前に椅子を

並べだしました。

以前、教室で人形劇の劇場を作って遊んだことがあるのを思い出したようです。

虹色教室では、子どもが何か新しい体験をしたときは、それを

おもちゃや工作で再体験できるようにしています。

 

↑  保育園の発表会の後で。

発表会の体験が胸に響いたのか、☆ちゃんは夢中になって、椅子を並べていました。

 

 

 

椅子は100円ショップで購入したグラグラゲームに入っていたものです。

☆ちゃんは真剣な表情で、「先生、前は小さい人が座って、後ろは大きい人が座るよ。

だって、前に大きい人が座ったら劇が見られなくなるから」と言っていました。

幼い子たちは、手と目を協応させて集中してやらなくてはならない作業を、

何度も何度も満喫するまで繰り返すのを好みます。

その子がやりたがる作業をたくさん行える環境を作ってあげることが大事だと

思っています。

また時折、イメージを育てるために、大人が体験を再体験できるような

見本を作ってあげることも必要です。

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★ちゃんに、「何がやりたい?何が好き?」とたずねると、「ビー玉」と答えました。

らせんにビー玉が転がっていくおもちゃにビー玉を入れて遊びだしました。

★ちゃんは感覚に訴えることが好きで、こうした遊びをはじめると

いつまでも続けています。

集中しているとはいえますが、こればかりでは発展しない上、知力や想像力をしっかり

使って遊ぶ満足感は得られません。

 

そこで、★ちゃんが熱中する作業の一つひとつを

次の段階に発展させたり、個々の遊びをつないで意味を作りだしたり

する方法をいくつか提案しました。

 

上写真の左は、★ちゃんが遊んでいたビー玉がクルクルとらせんに滑り降りていく

おもちゃです。高い位置に滑り台を作って、滑り台から飛び出したビー玉が

らせんに滑り降りるおもちゃの中に入るようにしました。

★ちゃんは放射線状に落下するビー玉の動きに大喜び。

滑り台の高さや位置を調整しながら遊んでいました。

 

ビー玉がポンッと跳びあがるおもちゃと、受ける道具の組み合わせでも、

十分楽しんだあとで、受ける側の穴を滑り台につないだり、

ビー玉を飛ばす道具を椅子の上に設置して遊びました。

 

ホースをゴムで椅子につないであげると喜んでいたので、最初は転がして受ける

遊びをし、途中から、それまで作っていた線路に貨物列車を作って、

ホースを使ってビー玉の荷物を荷台に入れて、運んで行くというごっこ遊びをする

ことにしました。

 

このように敏感期の作業的な活動と見立て遊びがつながると、

子どもはとても長い時間、夢中になって遊ぶことがよくあります。