虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

赤ちゃんと作る赤ちゃんのおもちゃ 簡単な回転するレバーの作り方

2017-01-31 21:41:01 | 工作 ワークショップ

エレベーターを巻き上げたり、容器を傾けたりするための回転レバーを作りたがる子がよくいます。

工作本などに載っているレバーの作り方が幼い子には難しすぎるものが多いので、簡単な作り方を模索していました。

丸い紙に割りばしを通して、テープで貼り、曲がるストローをレバーにするという1作目の見本。

レバーが曲がりやすい上、子どもには作業手順がわかりにくい部分がありました。

そこで、さらに改良。

丸いチーズの空き箱を使っていますが、ただの丸い紙でも作れます。

 

折れ曲がるストローを丸いチーズの箱に通し、写真のようにセロテープで貼ります。

もう一本の場がるストローを貼り付けて、レバーにします。

チーズの箱の側面にテープでストローを固定すると、レバーが曲がることはありません。

 

ストローとコップを貼る際は、コップにストローの太さの切り込みを入れて、ストローをはめこんでかた貼ると、きれいにしあがります。

 

レバーを回すと、コップの中に入れたどんぐりなどが、下の取り出し口から出てきます。


レンズーリの拡充学習について 9

2017-01-30 14:47:22 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

レンズーリの拡充学習について 3  

で、次のようなことを書きました。

 

才能は誰かが設定した環境のなかにこじんまりと収まるものではありません。

「こんなことをやらせてあげよう」「こういう風に学ばせよう」という枠からあふれだしたり、ずれたり、反対方向に針が振り切れたりするところにこそ、

その子ならではの特別な能力が潜んでいるものですから。

「あふれだしたり、ずれたり、反対方向に針が振り切れたりするところ」に、もう少しつけ加えるとすると、

その枠内で評価される価値観で測れないため、価値があっても価値があるのだと気づかれない、意味があっても意味があるものだと理解されないところに個性的な資質や才能が潜んでいる

こともよくあります。

たとえば、こんな場合です。

 

年中のBちゃんは場の空気を読むのが上手な快活な女の子です。

模倣が得意なので、わたしが何かお手本を見せると、お手本通りにササッと仕上げるもののそれを広げたり深めたりする姿はありませんでした。

その後は、あちらの子が何か作るとそれを真似、こちらの子が何かやりはじめるとそれを真似て過ごしていました。

Bちゃんが年少の頃、Bちゃんのお母さんは、Bちゃんのことを認めつつも、「この子はあまり自分で考えようとしないのかな?この子はこういう子なんだろうなぁ」と言って笑っておられました。

確かに少し前までのBちゃんは、「独創的な何かを生み出すこと」や「ひとつのことにねばり強く取り組むこと」を基準に能力を見ようとすると、態度があっさりしすぎるようにも見えました。

でも、わたしは、Bちゃんという子を、今している課題に付随している価値感だけではかるなんて、意味のないことのように思われました。

模倣するにしろ、先生のも、あの子のも、この子のも……と真似られるのは、Bちゃんの好奇心の許容量の大きさがなせる業でしょうし、心の柔軟性や瞬時に物事の核心をつかむ能力とも関係しているでしょうから。

今回のレッスンに来た際、Bちゃんのお母さんが、「気づいたらBがこんなものを作っていてびっくりしました」と言って携帯で撮った写真を見せてくれました。

それはBちゃんが作ったパソコンで、ハッとするほどよくできていました。ひとつの作品のなかにさまざまなアイデアや工作技術が組み込まれています。

パソコン画面はストローで立たせてあり、お菓子の仕切りを裏返したものに文字を書き込んだキーボードとつながっていました。

「このストロー使うところとか、Cちゃん(同じグループの子)がストローで何でも作るのをよく見ていたんですよね」とお母さんがおっしゃいました。

この日のレッスンで、ポップアップ絵本を作っていたBちゃんは、いっしょについてきていた小学2年生のお兄ちゃんが基本の家をどんどん高くしていくのを見て、自分も高く積み上げていました。

「先生、本をこうやってしまったら、はみだしちゃう」と困っていたので、「はみ出した部分に紙を継ぎ足すといいかもね」

とアドバイスをしてから別の子の様子を見にいって戻ると、Bちゃんは自分ではみ出し部分を隠す半円の紙を貼っていました。

それでもまだ少しはみ出してしまったところがあったようで、さらに小さな紙を切り抜いて、見えないように隠していました。

 

Bちゃんは、人から学ぶ子で、他の人のよいところを自分の中に統合させていく力を持っているのでしょう。

また、することがとても的を得ていて、現実の生活で役立つような知恵が使える子なのだろうとも感じました。

その点、Bちゃんのお兄ちゃんは、Bちゃんの表紙の継ぎ足しを真似したもののほとんど隠す機能を持っていない形だけの真似に終わっていました。


手と目で考えていく作業は苦手だけれど、考えたり想像したりする頭の中の世界は大きく広がっているBちゃんのお兄ちゃん。

みんなで魔法学校のゲームをした後で、読みかけのハリーポッターの本をみせてくれました。

 

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どうぞよろしくお願いします。

 


工作が 「難しい概念」を、「幼児が簡単に考えられるもの」に変えていく

2017-01-30 09:10:58 | 工作 ワークショップ

拡充学習の話題を補足する意味で、

過去記事の『なぜ幼児に工作させると考える力がアップするの?』の一部をタイトルを変えて紹介します。

 

 
ペダル式のゴミ箱の仕組みに興味を抱いて以来、いつもお家で気づいたことを「大発見大発見!!」と意気込んで知らせてくれる3歳の★くん。
今回のレッスンで、★くんが目を丸くして必死で説明してくれた大発見は、
「あのねぇ、ティッシュをねぇ、引っ張るとね~出てくるの。
もっともっとって。ティッシュを引っ張ると、ティッシュがぁ出てくるの」という話でした。

「本当???それはすごいね~!!ティッシュ引っ張ったら、もっとティッシュが出てくるんだ。へぇ~」といっしょに感動を味わってから、いっしょにテュッシュが次々出てくるしかけを作ってみました。

ティッシュの量が少なくなっている本物のティッシュ箱を使ってもできますよ。

ティッシュを取り出して、半分に折るとき次のティッシュをかませて折り、それを折るとき折るとき、次のティッシュをかませて折る……

と、交互にティッシュ引っかけた状態で折っていきます。
それを箱に入れたらできあがり。
(下から紙製のバネで押し上げる仕組みを作ると、取り出しやすいです)

これがティッシュが次々出てくる仕組みです。
この説明ではわからない……という方は、ティッシュ箱からある程度の束でティッシュを取り出して、どのようにして出てくるのか観察してみてください。

おもしろかったのが、3歳の子たちがレッスンに来たとき、「あのねぇ、ティッシュを引っ張るとねどうなるかわかる?」とたずねて
「わからない」と言うので、
「ティッシュを引っ張ると、次のティッシュが出てきて、それをまた引っ張ると次のティッシュが出てくるんだって!★くんが見つけたんだって!」とオーバーに言うと、目をまん丸くして「ほんと?」「ほんと?」とびっくりするのです。
その後、本物のティッシュを引っ張って見せると、「ふぅわぁぁ~!!」とため息をついて一同びっくりしていました。
(見たことあると思うのだけど、よく観察していなかったんですね。それにしてもこんなに驚くとは……!)

工作というと、「学校でする図画工作の成績をアップさせるためにするもの」「工作教室や工作イベントでするもの」と捉えていらっしゃる方も
たくさんいます。
幼稚園選びも工作が十分できるかをチェックする方はそれほどいないようです。
子育て中の方の意識の中で工作の価値はかなり低いのかもしれません。

そんな「ついで」感覚で扱われている工作ですが、現実に幼児の工作に付き合ってみると(工作教室に連れて行くだけではあまり効果はないでしょうね。それならテレビのワクワクさんを見せる方が効果的かもしれません)工作が「難しい概念」を、「幼児が簡単に考えられるもの」に変えてしまう
まるで魔法のような力を持っていることに気づくはずです。

子どもというのは、子ども特有の物の見方をしていて、長い短い、太い細い、深い浅い、厚い薄いなどを正確に捉えているわけではありません。
お人形用のお風呂に自分も入れると思って足を突っ込もうとする1歳代の子の姿を見てもわかりますよね。
ですから、最初のうちは、子どもが工作をしている間中、あれれ?と思うようなことがたくさんあるんです。
大きな箱一面に紙を貼りたいと言ってた子が、1センチくらいのちんまりした紙を切って貼ってから「小さい……」と言う……貼りたい絵柄の面にノリを貼っては、「絵がなくなった」と不思議がるなど。
でもそれを繰り返した幼児は小学生レベルの立体図形のイメージなんて全て頭に入っているようにきちん空間についての理解が進んでいます。

また、子どもにとっては電化製品も生活用品もおもちゃと同じように捉えていて、その機能についてきちんと把握していないことはよくあります。

たとえば、懐中電灯には「電池」を入れるけれど、「コード」がついていないといった事実は、子どもがとてもびっくりするネタで、工作をするとき、一番「力」が入る部分になったりするのです。

子どものこうした姿を見ていると、工作とは、子どもが世界を知るため、理解するための手段であって、工作することで、観察する姿や考える力が変化してくることがわかるはずです。

それでも子どもが「映るテレビが作りたい」と言ってきたらどうしてあげたら良いかわからないという方もいますよね。

まず、子どもといっしょにテレビを観察します。
電源を入れると明るくなって、消すと消えますね。
「何に似ているかな?」と子どもにたずねると、「懐中電灯」と答えるかもしれませんね。

それなら、子どもの描いた絵。リモコンの絵。懐中電灯を用意して、リモコンを押すと同時に子どもの描いた絵の背後から懐中電灯を照らせば「テレビのスイッチオン!」懐中電灯を消せば「消えた!」といったものができますよね。

それ以外にも、子どもと観察してみて、絵が動くから長い絵を描いて、輪にして箱の中で動かすというアイデアを思いつくかもしれません。

また鏡にテレビの枠を貼り付け、マイクを持ってその枠の中に自分が写るようにするのでもいかもしれませんよね。

良いアイデアが浮かばないときは、「何かいいアイデアないかな?」と家の中を探索するだけでも、子どもはとても喜びますよ。

レンズーリの拡充学習について 8

2017-01-29 14:18:13 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

 レンズーリの拡充学習について 2 

の記事で、「同じ見本を見せても、それぞれの子どもへの響き方は違います。」とを書きました。

そこで、ここで紹介したポップアップの見本に他の子らはどのように反応したのか、

別のグループのレッスンの様子を紹介してみようと思います。

 

年中の女の子たちのグループの様子です。

年中のAちゃんは基本のポップアップを作った後で、

「ここに絵を描いて、開けたら立つようにしたい」と言っていました。

そこで、開くと絵が立ち上がるように

折った紙で一定の角度を作って貼る方法を教えようと思っていると、

こちらがアドバイスする間もなく、Aちゃんはちゃっちゃと紙を切って折って、ハートを描いて、

テープで貼り付けていました。

それから、「ナオミ先生、ここをこうやって折っておいて、開いたときに

こうしたらちゃんと立つよ」と説明してくれました。

 

開くと自然に立ち上がるわけではないけれど、「折りたたむ」ということを

利用したいいアイデアです。

そこで、ここはAちゃんが自分で考えたアイデアを優先して、

紙が自然に立ち上がる方法を教えるのは、また次の機会(Aちゃんがそれを必要とするとき)

に回すことにしました。

 

Aちゃんは独創的な自分のアイデアを追うのが好きな子です。

「どのように見えるか」に

非常に繊細な感性を持っています。

年少の頃から、

輪ゴムやモールやひもで、球形、らせん形、幾何学模様と

いった形を作っては、さまざまな方向からそれを眺めて遊んでいました。

 

また、「自分がどのようにしたいのか」を言葉で説明することに熱心で、

問題を解決するための知恵を絞っては、どうやって問題を克服したのか、

事細かに解説するところが、この子の際立った個性だと感じています。

 

 

 

わたしに、自己流ポップアップを披露した後で、Aちゃんは、

「ここから覗いたら、ハートが見えるのよ」と言いました。

わたしが、四角い枠を覗き込んで、「見えた、見えた、すごいね。」と言うと、

Aちゃんは急に神妙な顔になって、

「手で立つようにするんじゃなくて、開いたら自分で立つようにするのはどうするの?」とたずねました。

 

四角い枠から見える位置にある状態でポップアップにするのは

難しい問題です。紙を継ぎ足して、折り方を工夫したら立つだろうかと考え込んでいたら、

Aちゃんが、「輪ゴムをつけておいて、開いたらポンッと開くようにしたい」と言いました。

Aちゃんが言うように、切った輪ゴムをポップアップさせる紙と土台に貼り付けると、

開くと同時にハートの絵が、

ゴムに引っ張られて立ち上がるようになりました。

 

そういえば、1年前、Aちゃんたちのグループについて、こんな記事を書いていました。

(輪ゴム交差させて覗き込んでいるのはAちゃんです。)

 

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毎日いっしょに過ごしているわが子でも、その子ならではの才能や資質に気づくのは難しいと

いう話をよくうかがいます。

才能や資質を見つけるために、何を習わせようか、何を体験させようか

と悩む方もいるようです。

でも、ちょっと肩の力を抜いて、子どもの視線が釘付けになっているものに注意を向けたり

子どもの言葉にていねいに耳を傾けたりしていると、

日常のさまざまな場面でその子ならではの才能や資質が顔をのぞかせているのに

気づくはずです。

 

写真は年少グループのAちゃんが、輪ゴムを交差させて「見て!」と言っているところです。

輪ゴムを触っていると偶然こんな形ができたようです。

よほどこの形が気に入ったのか、Aちゃんは長い間これを見続けていました。

 

大人が子どもにやらせたいことや教えたいことがせわしなくある場合、

Aちゃんのこんな発見は時間の無駄や手遊びの一種にしか見えません。

でも、普段から大人の側が、子どもの興味やアイデアや言葉を

関心を寄せていて、子どもから発信されたものを取り上げたり膨らませたりする

余裕を随所に作っていたら、その子ならではの才能や資質の輝きを目の当たりに

するにちがいありません。

 

Aちゃんは形の美しさや素材の性質や物の動きの面白さを探究するのが好きな子です。

この日も教室内で、一方に玉がはまって取れなくなっているラップの芯を見つけて、

ビー玉を入れて芯を左右に傾けては、「玉がはまっている方向に傾けるとビー玉が出てこず、

もう一方に傾けるとビー玉が出てくる」という様子を

しつこいほど何度も試していました。

そこで、このラップの芯を使った工作にAちゃんを誘うと、

「ボチャンと水の中に落ちるようにしたい」と言いました。

ラップの芯を傾ける方法は、年少さんのレッスンにつきあっていた

Bちゃんの年長のお姉ちゃんのアイデアで、お菓子の箱の内側部分を使いました。

ポリテープで水面を作ると、どんぐりやビー玉を水の中に飛び込ませる

おもちゃができました。

 

Aちゃんは、これまで自分が見つけた動きや形や素材の性質を

発展させて工作をしたことが何度かあります。

そうするうちに、積極的に自分の発見をよりくわしく説明しようと

するようになりました。

また、何かを発見した時、こちらがそれを取り上げて

工作したり遊んだりするよう提案すると、

非常にねばり強く取り組むようになりました。

輪ゴムを交差させると球形の面白い形ができることに夢中になっていたAちゃんに

モールで輪っかを作って、輪ゴムと同じように交差させて球形を作ることを提案すると、

喜んで↓のような作品を作っていました。

 

 お友だちのBちゃんも真似してたくさん球を作っていました。

 


天井からぶらさげている100円ショップのバンジーコイルが大人気

2017-01-28 21:25:32 | 理科 科学クラブ

天井からぶらさげているバネ(バンジーコイルというらしい)が、子どもたちに大人気です。

紙コップを吊らして、どんぐりを入れて遊んでいます。

↑の写真は紙コップを取ろうと椅子に乗って、手を伸ばしている3歳のAちゃん。

コップにどんぐりをたくさん入れると、重さでAちゃんの顔のあたりまでコップが下りてきます。

 

とにかく楽しくてしょうがない様子。

 

お家に持って帰って遊べるようにこれとよく似たおもちゃを作ることにしました。

(教室内で気に入ったおもちゃがあるときは、適当な材料でよく似たおもちゃを作っています。

 

紙コップにゴムをつけると、こんな感じ。

ビー玉などははねると危ないので、デュプロの人形を2体入れています。

ゴムをねじると、くるくる回ります。

紙コップの周りに色紙を貼ると、さらにすてきになりました。

 


レンズーリの拡充学習について 7

2017-01-27 14:53:43 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

教室では、子どもの「こんなことがしたい」という声に応えるためのさまざまな体験を用意しているのですが、「こんなことがしたい」と言葉に出して伝える前の個性のなかにある潜在的な

「この子は好きだろうな」

「この子はこういう才能がありそう

「この子はこういう機会を増やすと伸びそう」

という体験も用意しています。

後者の体験は、子ども側の言葉にまだなっていないものなので、これまで教室で子どもたちの成長を見守るなかで培ってきた

「こういうタイプの子はこういうことを好みそう」

「こんな体験のなかで成長しそう」

 という勘に基づいて準備しています。

 

前回の記事のAくんのような資質の子は、科学実験をしたり生き物や植物の生態を観察したりする機会をたくさん作ってあげるといいんじゃないかな、と感じています。

Aくんは、ひとつの物事について知ると、「じゃあ、こっちはどうなの?」「こっちはどうなの?」と必ずよく似た別のものでそれを試したがります。

この日のレッスンでもこんなことがありました。

 教室でおもちゃを選ぶとき、Aくんはまず0歳の弟くんのために下の写真のようなおもちゃを選んであげてから、自分のおもちゃを探しに行っていました。

 でも、少しすると弟くんは、Aくんが遊んでいる恐竜をつかんで口に入れました。

Aくんがみるみる困り顔になったので、

「Aくん、見て、弟くんがおててをピーンで伸ばしたら、ここからここまで届くね。おててが届かないところまで恐竜を引っ越しさせないと」と言いながら、

Aくんの弟くんの手が描く半円を手で示すと、Aくんは興味しんしんの様子で話を聞いて、弟くんの近くの恐竜たちを移動させました。

 

でも、弟くんは、さっきつかんだおもちゃをまだ口に入れたままでした。

「引き出しに入っているおもちゃ(恐竜など)は、みんなが触るから赤ちゃんが口に入れるとバイキンを食べちゃうね。

先生が赤ちゃんのおもちゃを持ってくるから、弟くんに恐竜と交換してもらおう」

そう言って赤ちゃん用のおもちゃを取ってきました。

すると、弟くんは今度は小さいカニのフィギュアをなめていました。

「もう歯が生えていたら、カニのあしの小さいかけらを飲み込んでしまうかもしれないから危ないね。弟くんに赤ちゃんのおもちゃと代えてもらおう」

わたしがそう言うと、Aくんは、恐竜を取り返すことより、わたしの話に関心があるようでした。

小さいものはゴクンと飲み込んでしまうから赤ちゃんがかじったらダメ、引き出しのおもちゃはみんなが遊んでいるからなめたらバイキンを食べてしまう、といった理由についてくわしく聞きたがった後で、

壁にかかっているメダルを指さして、「あれは(弟が)なめてもいいの?」とたずねました。

「あれは、ダメよ」

「どうして?」

「あれは金属だから」と言っても

「どうしてなめたらだめなの?」と再びたずねます。

確かに、メダルは赤ちゃんの歯でかみきって飲み込むものではないし、多くの子が手で触れて遊ぶものでもありません。

金属はどうしてなめたらよくないのか、説明するのは難しいです。

 

メダルに興味があるようだったので、アルミハクを銀メダルに重ねてこすりだしをしました。

アルミハクの表面にメダルの形が現れました。

喜んだAくんは、「金メダルならどうなるの?」とたずねました。

そこで、金メダルもこすったところ、先にこすったものと同じ形が出てきました。

大人にはわかりきったことなのですが、実際に試して、目で確かめると、何だか不思議な感動がありました。

 

↑ 「これはなめても大丈夫なの?」とぷにぷにした素材の人形を探してきたAくん。

その後、磁石は赤ちゃんが口に入れたら危ないからここでしか遊べないよ」と注意して、

磁石でチョウチョを空中に浮かせる遊びをしました。

 

お外で、太陽光発電で動くドラえもんカーで遊びました。

日が当たっているところで走り、人の影や日陰に入るととまります。

どんなときに走るのか確かめる姿に、観察したひとつひとつの物事について自分の頭でゆっくりじっくり考えてみようとするAくんの個性と資質が光っていました。


レンズーリの拡充学習について 6

2017-01-26 15:31:11 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

「Aくん、ゲームをして遊ぼうか?どのゲームで遊びたい?」とたずねると、

HABA社のErster Obstgarten という絵本の世界から飛び出したような素朴で愛らしいゲームを選んできました。

これはまだ弟くんが生まれていなかった頃、ずいぶん前にAくんのお気に入りだったゲームです。

そういえば、普段は、お兄ちゃんのゲームに付き合うことが多くて、やっていなかったのです。

Aくんのお兄ちゃんがAくんの年齢の時は、ストラテゴという軍人将棋の一種がやたら気に入ってそればかりやりたがっていました。

Aくんとお兄ちゃんのこんな過去記事を見つけました。(注 記事内のAくんとBくんはここでは反対で兄がAで弟がBになっています)

 

ボードゲームが大好き♪

↑ ストラテゴ

Aくんのお兄ちゃんは、数の大小によって勝敗が決まるゲームや、ポンジャンのようにたくさんの駒があって、それらを集めたり組み合わせたりするゲームが好きな子です。

危険を顧みず、どんどん攻めて、勝ち取っていく隙のない遊び方を好みます。

一方、Aくんは隙こそが遊びの要、喜びのもと、というような子で、ひとつひとつの物事を自分の内面で大きく膨らませて味わうのが好きです。

ゲームにしても他の遊びにしても、その背後にある物語性を楽しむ姿があります。

 Erster Obstgartenの本来のルールとは少し異なるのですが(教室ではゲームのルールをその子の発達段階に合わせて調整しています)、

「色さいころを振りながら、赤、黄緑、藍色、黄色の4色の果物をすべて異なる種類を1つずつ集めて、4つそろった人が勝ち」というルールで遊びました。

色さいころには、カラスとかごの目があって、どちらもドキドキするアクシデントが起こります。

 

Aくんはこのルールの意味をよく理解して遊んでいました。

途中で、かごの目が出て、せっかく集めた果物をひっくりかえさなくてはなりませんでした。

その後、木のところに、藍色がひとつもなくなってしまい、このままでは、Aくんがいつまでも4色そろえることができないと思ったので、

「かごをひっくり返した時の果物を木に戻しておくことにしようか」と言って果物を木のプレートに戻すことにしました。

 

するとAくんから、「木からいっぺん取った果物は、もう木にならないんだよ。木から落ちたら、ずっとそのままだよ」とダメ出しがありました。

確かにそうですね。

 

Aくんは身の回りのことをよく観察していて、それが次にどうなるのか、前はどうだったのかについて考えをめぐらせることが好きです。

 

Aくんについて、こんな笑い話のようなエピソードがふたつあります。

Aくんが2歳の頃、ユースホステルのレッスンで、オニが好きなAくんが、「大きくなったらオニになりたい」と言ったことが小学生の子どもたちに大受けでした。

その翌年、3歳になったAくんがウルトラマンが好きだというので、前年、いっしょにユースで過ごした小学生の子ら(Aくんのお兄ちゃんの友達のきょうだいです)が、

「Aくん、大きくなったら、ウルトラマンになるの?」とたずねました。

すると、Aくんはきっぱりと、「ウルトラマンにならない」と言いました。

「どうして?」とたずねられると、

「お父さんもお母さんもウルトラマンじゃないから、大きくなってもウルトラマンにならない」と答えました。

 

最近、Aくんはお母さんにこんな自論を披露したそうです。

お兄ちゃんに恐竜は本当に生きていたことを教わったのでしょうか、

「怪獣が生きていたときの後で、ウルトラマンが生きているときがきて、その後で、人間がいるんだね」


レンズーリの拡充学習について 5

2017-01-25 19:48:48 | 教育論 読者の方からのQ&A

 レンズーリの拡充学習について

という記事のなかで、、子どもの能力、興味、学習、表現スタイルの好みについての情報を体系的に集め、

「全才能ポートフォリオ」という形で記録するという海外の学校の取り組みについて書きました。

先生方は絶えず子どもの得意な分野に関心をしめして、情報を収集し、情報を更新しているそうです。

 

虹色教室でも、ひとりひとりの子どもの得意分野、才能、興味、学習や表現スタイルについて、どんなささいなことも把握し、親御さんと共有するようにしています。

また、それぞれの子の個性の芽が見えたら、それを育む機会をたくさん設けるようにしています。

どれもほんのささいなことばかりなのですが、どんな風に個性の芽を感じ取り、育もうとしているのか、プレ年少のAくんのレッスンの様子から、紹介しますね。

 

ここのところのAくんは、何だか元気がありませんでした。

年中のお兄ちゃんのBくんといっしょに教室で過ごす間、十分、Aくんが楽しめそうなゲームなども、緊張した面持ちで、「できない。難しい」と言ったり、

自分で遊びを選ばず、周囲の流れになんとなくあわせながらつまらなそうにしていたり、笑顔が減って、言いかけた言葉を飲み込んでしまったりする姿が目立ちました。

Aくんらしさがきちんと発揮されていないのを感じたので、お兄ちゃんとは別日にAくんだけのレッスン日を設けることにしました。

そうして、Aくんが自分のやりたいことを誰にも邪魔されずにやりつくしたり、Aくんのお母さんもわたしも、Aくんが話す言葉にていねいに耳を傾けたり、

Aくんという子がどんな子なのか、どんなことを考え、どんなことに好奇心を抱き、どのような才能や可能性を秘めた子なのか、全身で感受することにしました。

 

Aくんのレッスン日、0歳の弟くんといっしょにニコニコしながら教室に入ってきたAくんは、これまで教室でしたことがある遊びをひとつひとつていねいにやりはじめました。

新幹線や電車のNゲージを横一列に隙間なく並べてから、サイズの大きな恐竜や動物の人形を4体ずつ対面で並べました。

どちらも、以前Aくんがそうやって並べだしたら、お兄ちゃんのBくんや他のお友だちがおもちゃを借りたがって、結局、貸す貸さないの小競りあいで終わった遊びでした。

恐竜や他の動物を対面させながら、Aくんは、「これは同じ種類、これは、こっちと同じ種類、これはこっち」と言いながら、

どれをどちらの仲間に入れるか、あれこれ試しながら、そうして迷うことを心から楽しんでいました。

そういえばAくんは、2歳代の頃、動物のフィギアのなかから水の中に生息する生き物を選び出して、ブロックの海の基礎板(南極か北極の海を表現しているプレート)の上に並べていくことが好きでした。

当時も、Aくんは誰かに教わったわけではないけれど、1匹も間違わずに水のなかの生き物と陸の生き物に分けていました。

当時は迷いがなかったのに、成長したAくんが、今、頭を悩ませつつ恐竜や動物を分けているのは、水の中の恐竜とくじらは同じ仲間に入れてもいいのか、

自分が大好きな強い生き物たち」というくくりはセットにしていいものか、小さい恐竜と大きい恐竜は同じ種類でも同じ側においてもいいものか、

また対面で向き合わせるということは戦わせることでもあるので、それなりに、どれとどれがあうのか考えなくてはならないけどどうしたものか、

Aくんのなかにある分類の仕方が複雑になってきたからのようでした。

 

いったん「こうだ」とおいてみてから、「やっぱりこれはちがうのかな」と差し替えるときに、自分で自分を納得させる理由に思いをめぐらせることや、

それを言葉にして表現することに何よりも意識を集中させているところにAくんらしさがありました。

 

いったんは別の種類としながら、算数のレッスンのときに、「2の数の玉」の上に好きな生き物を選ぶ課題で復活していた恐竜同士ではないけれど、水のなかで暮らしている2匹。

この選んで仲間同士で集めることは今のAくんを心からわくわくさせるようで、算数レッスンの際は、数ごとにおいた動物をばらして元に戻さずに、

「全部並べておいておいて」と言って、どんどん大きな数になるまで続けたがった後で、数ごとに並べた人形の前に鎮座して、いろいろな思いをめぐらせていました。

 

次回に続きます。


レンズーリの拡充学習について 4

2017-01-24 22:03:27 | 教育論 読者の方からのQ&A

前回の記事の同じ見本を見てから、まったく別路線で、犬の散歩迷路を作っていたBちゃん。

 

ポップアップ絵本にするために、切り込みを入れて、迷路上を犬が移動できるようにしました。

 

 Bちゃんは、いろいろな物事にアンテナを張っていて、あれこれサッとキャッチしたらすばやく意味を察する飲み込みのはやい子です。

一方で、そうした頭の回転の速さや、気持ちの移り変わりに身体がついていけていないところがあって、ひとつひとつ手順を踏んで学んでいったり、手指を使ってじっくり何かを作り込んでいったりするのは苦手です。

教室では、頭や心の動きと身体の動きがバランスよく協調していけるよう見守っていくことがBちゃんの才能を育む手立てだと考えています。

 

この日の算数レッスンで、「3人で分けるとあまらずに分けられる数」と「4人で分けるとあまらずに分けられる数」に赤と青のチップをおいていく作業をしました。

そうした後で、「3人で分けても4人で分けても1あまる数にどんなものがあるか?」という問題や、

50このお菓子は3人で分けると、いくつあまるのか、数の表を見てすぐに当てられるか」という問題を出しました。

すると、Bちゃんは即座にチップの位置とあまりの数の関係に気づいて、正しい答えを言っていました。

 

飴玉とかどんぐりのような身の回りにあるようなもので、「3人で分けたらどうなるかな?」とたずねるのなら、たいていの子が、自分の扱っている操作を理解して、あまりがいくつか答えることができます。

下の写真は赤い玉で「3人で分けても4人で分けても1あまる数にどんなものがあるか?」を試しているところで、それなら年長のDくんにもよくわかる作業のようでした。

でも、そうした赤い玉で行っていることが、数の表とどうつながりがあるのかすぐにピンとくる子は、2、3年生でもそれほど多くないのです。

子どものなかには、計算練習などは嫌がるけれど、3の倍数というのは、ある数を3で割ったときの答えと同じになるし、数の表で一定の間隔をあけて並んでいくことや、

その間にある数があまりのある数にあたること、そうして数の表の上で確認したことを数直線で表すとどうなるのか、ということが難なく同時に理解できる子らがいます。

そうした資質は、学校での勉強では気づかれず、基礎的な計算ルールを訓練させられる間に、大の算数嫌いになっているケースも度々見かけます。

 

Bちゃんは少し前に「九九を覚えられない。九九は嫌い」と言って、算数の学習を嫌がっていました。

コツコツ暗記して学ぶ学習が苦手なのです。

そんな時に、Bちゃんという子をよく理解していて、長所をうまく発揮して算数と関われるように気を配ってあげないと、せっかく数学的なセンスがある子なのに、

算数と聞いただけで心のシャッターを下ろしてしまう癖がつきかねないのです。

学習の面でも、テストで測れるものだけでなく、ひとりひとりの子の個性的な才能に気づいて、それに光を当てる機会を設けることの大事さを感じています。

 次回に続きます。


レンズーリの拡充学習について 3

2017-01-23 09:19:23 | 教育論 読者の方からのQ&A

 子どもの才能を伸ばそうと思うとき、たいていの方は「何をさせるか」「何を学ばせるか」に着目することと思います。

また好きかどうかを調べるのは、習い事やワークショップなどで体験させてみて、喜んだかどうか、他の子よりできていたかどうかで才能の有無がわかると思いがちです。

でも、たいていの場合、才能は誰かが設定した環境のなかにこじんまりと収まるものではありません。

「こんなことをやらせてあげよう」「こういう風に学ばせよう」という枠からあふれだしたり、ずれたり、

反対方向に針が振り切れたりするところにこそ、その子ならではの特別な能力が潜んでいるものですから。

 

ポップアップ絵本作りの際も、全員に見せたお手本は同じですが、それぞれの反応も、興味の方向性も、出来上がった作品もずいぶんちがいました。

 

 

前回、大きな大きな階段を作って、基本のおうちをぐるりと囲ませていたAちゃんの場合、最初に、「今日は何かやりたいことある?」とたずねた時から、

「何もやりたくなーい」「どれもつまらん、やりたくなーい」と言い続け、他の子らの希望で、ポップアップ絵本作りをすることに決まりかけると、

「何もやる気ないし、全然、やりたくなーい、面白くない」とわざとだるそうなポーズを繰り返していました。

Aちゃんが、「何もやりたくない、面白くない」とわざとだるそうなポーズをとるのは、完璧主義で、これまで誰も作ったことがないようなものを作りたいという理想の高さの裏返しで、

実際には、いつも、誰よりも活動に熱中し、ユニークな大作を仕上げているのです。

Aちゃんは創造的でエネルギッシュな子ですが、Aちゃんの能力をきちんと発揮させるには、関わる上でAちゃんという子をよく知っておく必要があります。

 

たとえば前回の記事で書いた

Aちゃんのお母さんの「それじゃ、ポップアップにならないわ。開かないでしょ」という注意のような

「何を作っているのか、何を目指しているのか」決まっている状態で、その路線からはずれたらダメだししていく」という形の関わりをすると、

たちまち、無気力で反抗的な態度に終始することになってしまうのです。

教室での創作活動は、お手本を教えますが、子どもがそこからはみだした時こそ、その子が自分の「こんな風にしたい」を存分に追及できるように手助けしています。

 

基本のお家を階段でぐるりと囲むアイデアは、確かにポップアップにできるのかさだかではありませんが、頭の回転が速く、次々と面白いことをひらめくAちゃんらしいアイデアです。

わたしはAちゃんのアイデアについて、Aちゃんの話にしっかり耳を傾けて相談に乗ることにしました。

 

「Aちゃん、らせん状に階段がだんだん高くなっていくのはすてきなデザインよね。どうしてもポップアップにしたい場合、かなり工夫がいるかもしれないよ。

もし、Aちゃんがポップアップ絵本ではなくて、開いた形のままで、ぐるっと階段があがっていく建物を作っていくのでもいいなら、とても魅力的な作品ができあがると思うよ」

といった話をすると、「たためなくてもいい」と言いました。

そこで、Aちゃんに階段の一方の高さと同じ幅の帯を作ると、もう一方にも壁ができることを教えました。

すると、Aちゃんは、目を輝かせて、「それなら、こうすればいいね」と、階段のスタート地点を最初に作った家の屋根部分まで引き上げました。

そうして、これから作るもう一方の壁に、反対側の壁の高さともともとあった家の高さを足すと、らせん状の階段は一気にスケールの大きいものになり魅力がアップしました。

 

それからのAちゃんは、2年生と思えない根気と創造力で、誰の手も借りずに残りの階段の壁をすべて作りあげたあとで、家の屋根から降りるための折り返す形の階段を作っていました。

次回に続きます。