虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

小学生のつまずきと教え方 2 (興味の範囲が狭い子)

2022-06-30 15:53:50 | 算数のつまずき克服

小学生が学習につまずくとき、何らかのハンディーキャップが原因で、できていない場合があります。
「努力しないから」とか「先生の説明を聞いていないから」などと安易に決めつけず、ていねいに原因を探る必要があります。


写真はアスペルガー症候群の女の子に勉強を教えていたとき使っていた紙です。
この子は、障害特性のせいで、「興味の範囲がとても狭い」です。
動物が大好きで、寝ても覚めても動物の話をしています。
私が「お家では、お姉ちゃんとどんなことをして遊ぶの?」とたずねても、
「この問題の解き方はわかる?」とたずねても、
「今日は、カーコちゃん(うちの鳥です)は何をしているの?」
「どうしてカーコちゃんは、飛んでいってしまうの?」と自分の好きな動物の話題にすりかえてしまいます。

何とか計算はできるようになっているものの、算数の概念の多くは、難しすぎて理解できない様子です。
いくら説明しても、首をかしげたままなので、親御さんが困っておられました。

こうした興味の範囲が狭い子には、その子の興味のある事柄で、算数の概念を説明するようにすると、急に理解が進む場合があります。
この女の子も、「子どもが100人いました……」という話だと、そわそわしたり、「うーん」と首をかしげて「わからない」と言うだけだったのですが、子どもをフラミンゴに変えて、「フラミンゴが100羽いてね。そんなにいっぱいいたらどうする? 困るね~!!100羽のフラミンゴを同じ数ずつ10の小屋に分けたら、何羽ずつになるのかな?」という話で説明すると、ずっとわからなかった大きな数を10分割するときの概念に、理解をしめすようになりました。

興味の範囲が狭い自閉症スペクトラムの子どもたちに教えるとき、電車とか、昆虫とか、動物とか、その子が興味を持っている分野の内容で説明すると、学習に集中できる場合がよくあります。
また、学習内容を、できるだけシンプルにして、理解させる部分だけ抽出して教えることも大事です。

1枚の紙に、1つの内容だけ書く。

といったことが、理解に役立ちます。

同じ診断名だから、同じハンディーを抱えているとは限らないので、まず、苦手な部分を見つけると同時に、得意なことや長所も見つけておくと、得意や長所を通して難しい概念の理解が教えやすくなるときがあります。

苦手は、字が小さかったり、たくさん字が並んでいたりすると、読むのが困難になる、聞くと見るを同時にできない、注意散漫、筆算が苦手、文章題が苦手、メタ認知力が極端に弱いなど……。
得意には、色に敏感、位置はよく覚える、数字好き、字を読むのが早い、褒められるとがんばるといったものがあります。


小学生のつまずきと教え方 1

2022-06-27 18:08:46 | 算数のつまずき克服

診断はくだっていないグレーゾーンの子も含めて、発達障害や知的障害がある子と、障害のない子では、つまずく原因も、できるようになるための手立ても異なるケースが多いです。
ですから、子どもが「わからない」と言っているからと、どの子にも同じ方法で教えたのではうまくいかないように思います。

発達障害などがない子たちに教える場合、いきなり解き方を教えるよりも、まず学習に対する主体的な態度やメタ認知力をつけていくことが大事だと考えています。

文章題が苦手な子にも、やる気がない子にも、学習の力の入れどころがずれている子にも、他の子と計算時間などを比べて、「計算をもっと練習したらできるようになるよ」といったアドバイスをするのは、あまり良い教え方とは思えません。

そうした子たちには、大人が、「遠回りで本質からずれた方法でも、まず練習さえすれば、やってるうちに成績に結びつくから、それで欲が出て、勉強をするようになるはず……」という子どもだましな方法で指導をしても、心の底では、「そんなのおかしい」と感じて反発するので、大人の思惑通りいかないものなのです。
また、本当に計算さえすれば成績が伸びる子だったとしても、その必要性を本人が自覚しない限り、やらされている作業をただこなすだけでは、成績に結び付けていくことは難しいのです。

現実に大阪市では、○○式なる大量に計算訓練をさせる教室をいたるところで見かけるし、小学生と話をすると、その教室に通っていない子の方がめずらしいほどなのですが、大量に高速で計算させる学習をする子が増えたから、大阪市の子どもたちの学力が向上しているという話は、聞いたことがないのです。

主体的な態度やメタ認知力をつけていくとは、つまり、子どもに、どこがどのようにわからないのか具体的にくわしく説明させたり、自分にはどんな学習が足りないと思うか、どんなことをすればできるようになりそうか、分析させたりするのです。

自分のしている学習を、少し高い位置から客観的に眺めさせて、自分でやることを決めさせるのです。

もちろん子どもにとって最初はどうすればいいかわからないでしょうから、ヒントをたくさん与えます。
そうしながら、大人もいっしょに、わからない原因と、これから必要な学習を分析していくと、大人の側もどんなことをどこまで支援すればよいのかわかってきます。

虹色教室では、こんなことがありました。
小学4年生の☆さんは、頭は良いのですが、さみしがりやで飽きっぽい性格です。宿題を始めるやいなや、「わからない、できない」と言うと、お母さんが飛んできて、手を変え品を変えして説明したり、「どうしたらいいんでしょう?」っと心配したり、「なら、先生に聞いてみようか?ならこうしたら?」と提案してくれるのにすっかり味をしめて、『自分で考えてみる』ということは、思いもよらない様子です。

教室でも、すぐさま「わからない、できない」と言うと、よそ見を始める☆さんに、私は、お友だちや年下の子たちに、解き方を教える役をさせたり、友だちと協力し合って考える機会を与えたりしています。

☆さんには、読書家で、いつも図書室で借りた本を見せてくれるという一面があります。それで、「本がたくさん読めるということは理解力がある証拠よ。めんどくさいという心を乗り越えて、がんばってみて。自分で考えるの」と説得していました。
すると、私の前では、「できない、わからない」と騒ぐのはやめて、課題にきちんと取り組めるようになってきました。

この☆さんのように子どもが「わからない」というとき、その子の力量を見極める大人の眼力が大切だと感じています。
ていねいな説明が必要な子と、自力で少し考えさせる必要がある子がいるのです。
考えさせるというのは、問題の解き方だけではなく、「自分はなぜ解けないのか」という理由もです。
「そうだ、学校で先生の話を聞いていなかったからわからないんだ」と気づくかもしれません。
そんな場合は、先生の話など聞かなくても、いつでも「わからない」と言えばだれか助けてくれるよと身体に覚えさせるよりも、「今度から、ちゃんと授業を受けよう」と本人が自覚した方がいい場合があります。

最近では、子どもが「わからない」と言おうものなら、どう教えたらよいか、誰に教えてもらうよう手配しようかと考えることに忙しくて、「まず、自分で考えてみた?」とたずねるのを忘れている場合がよくあるのです。
子どもの側も、まだオムツをしている年齢から、ご機嫌を取りながら手取り足取り教えてくれる習い事や、何も考えなくてもスローステップで出題されるプリント問題に慣れすぎて、たった1分かそこらでも、自分の頭を使ってみる体験をしたことがない子もけっこういるのです。
考える前に、「自分で問題を読んでみた?」と問わなくてはならないケースもあります。

 

学習していくとき、人が頭の中でする作業には、次の4種類があげられます。

★わかる……認知する・分類する・意味を理解する
★覚える……保持する・記憶する・想起する
★考える……類推する、推測する、一般化する、抽象化する
★決める……企画する、評価する、判断する、選択する

学習というと、上であげた『わかる』と『覚える』を子どもに繰り返させることというイメージがあります。

認知させ、分類させ、意味を理解させ、その記憶を保持させて、思い出させてテストすることを繰り返すことこそ、学力につながると信じられています。
教材では、類推する、一般化するといった『考える』作業は、そのパターンをわからせ、覚えさせて、テストしていくことでマスターさせるようにできている教材は多いです。
またそういう学習の場では、『決める』は大人がしてあげる仕事という前提があります。

「読み書き計算は学習の基礎だから、まず読み書き計算の徹底を!」というスローガンはもっともだし、その大切さはよくわかるのですが、子どもの能力を急いで上げようとするあまり、『考える』体験と、『決める』を体験をする場や機会がなくなっているのはどうかなぁ?と感じています。

ひと昔前の子であれば、外で子どもだけで群れて遊ぶ時間が長かったので、自分で選択したり、評価したり、判断したり、企画したりすることは、しょっちゅうありました。
大人が飛んできて何でも解決してくれるわけではないので、推測したり類推したりする力を発達させないと危険でしたし、家のお手伝いは、考え、決める力を使う絶好のチャンスでした。

それが、最近では、学習法がどんどん合理的になり、系統化されているので、テストの点としては、短期間に急速に進歩するようになっているものの、そのせいで、子どもが自分で考える体験も、決める体験もできないということが起こりがちなのです。

★考える……類推する、推測する、一般化する、抽象化する
★決める……企画する、評価する、判断する、選択する

は、授業内容や教材の中に取り込もうとすると、複雑になって難しいですが、遊びやお手伝いやものづくりや会話の中では、大人の関わり方次第で、自然に伸ばしていけることでもあります。

私が子どもの頃は、学校の規則がそれほど細かくなかったので、学校でたびたびトラブルが発生していました。
そのたびに、学級会や終わりの会で、子供同士、活発に意見が交わして、問題を解決しようとしていました。
当時は、『考える』と『決める』が活性化されるような場面がたくさんあったのです。
授業中に交換日記を回している子がいるとか、シャーリングなどのおもちゃをどこまで学校に持ってきてもいいかとか、男の子の口が悪いとか、女の子がえらそうだとか、揉め事にしても、けんかや話し合いにしてもつきることはありせんでした。
本当にうだうだと言い合いばかりしていましたが、そうした真剣な言葉や感情のぶつけ合いを通して、自分の責任を自覚したり、考えを練ったり、判断力をつけたりしていたのです。
「子どものことは、大人が何でも決めて、大人が勝手に解決する」という風潮は、最近のものだと思います。

基礎が大事だからと、『わかる』と『覚える』を訓練していく際の問題は、大人が子どもの能力を伸ばそうとあせるあまり、視野が狭くなって、

★わかる……認知する、分類する、意味を理解する
★覚える……保持する。記憶する、想起する

の部分で、少しでも先に進ませようと、目に見える成果を求めるあまり、『考える』と『決める』を体験する場や機会を奪ってしまうことにあるように思っています。


忙しくって、子どもたちに話し合いなどさせていられない……という大人のせかせかした態度をゆるめて、少しリラックスして子どもたちに接しないと、勉強はたくさんしたけれど、考えたり、決めたりしたことがないという子が増えてくるかもしれません。


『未来のだるまちゃんへ』メッセージ

2022-06-23 11:45:25 | 教育論 読者の方からのQ&A

 『だるまちゃんとてんぐちゃん』などの人気絵本を世に送り出してきた、かこさとしさんの『未来のだるまちゃんへ』で先生方に向けて書いたメッセージを読んで、考えさせられました。

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今は学校の先生方も忙しくてそれどころではないかもしれませんが、本当は生徒さんたちがひとりひとり、どんなものが好きで何に関心を抱いているのか、その生態を見極めて、先達としてうまいこと導いてあげられないものか。

型にはまった目標を掲げて、お尻をひっぱたくだけでは才能があっても埋もれたままになってしまっている気がする。

 「君が持っている、ものすごい鉱脈はそれだよ」

そう気づかせてやることさえできれば、子どもは、大人が叱咤激励なんかしなくたって自分からぐんぐん成長していけるのだ。

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 このメッセージは先生方だけでなく親や身近な大人たちみなが、大切に受け止めていく必要があるな、と感じました。

 

子どもたちが自分で自発的に花開いていく糸口をつかむ前に、外注して解決していく手立てがあふれるほどあって、子どもが自分で見つけるのを待っていられない風潮がありますから。

 

 『未来のだるまちゃんへ』にこんなエピソードがありました。

あるとき、かこさとしさんは、とにかく子どもたちと遊ばなきゃと、材料がなかったので、新聞を人数分に破いて、「この中に数字があるのを見つけて、多い人が勝ちだぞ。さぁ、用意ドン!」と言ったそうです。

そんなたわいのない遊びでも、子どもは「僕が一番!」「ちっともないや」と、はしゃいで探していたそうです。

そうしたら「自分の方がもっと多い」という子がいて、のぞくと株式欄だったそうです。

「なるほど株式か。これが一番だな」と褒めたら、「株式って、なんだ?」と聞かれたそう。

その子のお父さんは日立造船に勤めていたらしく「お前のお父ちゃんはここに勤めているんだから、これを毎日調べてみろ」と言ったら、その子も自分の父親のことだから、グラフなんてかけと言った覚えはないのに、ちゃんと株やみたいにグラフまで書くようになって、そのまま続けていたそうです。

 

どちらかと言えば、学校の勉強はあまり熱心じゃない子でも、「これだ」と思うものを見つけさえすれば、そういうことが起きるわけです。

そんな例はいくらでもありました。

と、かこさんはおっしゃっています。また、

本人に興味がない時に、大人がちぎれるまで手をひっぱったってどうしようもない。

 とも。

(「昆虫好き」という子でも、「昆虫全般が好き」という子はまずいなくて、「バッタが好き」とか「セミが好き」とか昆虫好きになったきっかけになった何かがあり、それについてはピンポイントで大人顔負けにくわしかったりします。)

 

「なんで好きなの?」と聞けば、そこにはきっとその子だけの物語が浮かび上がってくるはずです。

子どもにはそうした秘めた力があって、糸口さえぱっとつかまえたら、あとは自分自身の力で伸ばしていく、自分で探求し伸びてい行くことができるのだと思います。

自分から興味を抱いたものを調べて、どんどん深めていく時の充実感というのは、その子の生きる喜びにもつながっているのでしょう。

子どもの顔が急にいきいきと輝きだすのがわかります。

 

といった言葉は、虹色教室でも、何度も何度も、目にして感動してきたことでもあります。

 

少し前に成長とは自発的に花開くこと」というかこさんの言葉を強く感じた出来事がありました。

教室に小学校にあがるまで、1語文か2語文を話すのがやっとだった重い自閉症のAくんという男の子がいるんです。

その子のお母さんの子育てがまさに、かこさとしさんがおっしゃるような視点によるものでした。

小学校中学年になったAくんは、3ケタの計算をしたり、みんなの前で歌を歌ったり、さまざまなゲームや頭脳パズルを楽しんだり、ブロックですごい作品を作ったりするようになり、人と関わることを心から楽しんでいるのがわかります。

その成長のひとつひとつには、ささいな見落としてしまいそうなきっかけがありました。

たとえば、Aくんは地理に興味を持つようになったのですが、そのきっかけは「北海道」の地図の絵が描いてある大好きな蒸しパンだったそうです。

Aくんは特性のせいで、興味の対象がどうしても狭くなりがちなのです。

それで、Aくんが、いつも北海道の地図の絵がついている蒸しパンが好きなことから、親御さんたちは思いきって北海道旅行を計画しました。

といっても初めてのことにパニックを起こしがちなAくんを連れての旅行は、それは大変なものだったようです。

同時に、準備をし、工夫をし、問題にぶつかったら家族で解決しながら乗り越えて、旅行がうまくいった後で、Aくんの興味関心と自信は大きく広がっていました。

Aくんは学校や虹色教室でのさまざまな新しい課題に積極的に取り組むようになってきました。

以前はむずかしすぎてすぐにあきらめていたグラビティ―・メイズという頭脳パズルの問題を次々と課題を解く形でクリアーしていきました。


かんたん紙コップ工作♪ 雨ふらし機+いろいろ楽しめる!

2022-06-19 13:37:37 | 工作 ワークショップ

2歳児さんたちが、とても満足する工作です。

とんがったえんぴつで紙コップの底に穴をあけます。

上から力を入れるだけで穴があくので、これができるようになった2歳の子たちはコップの底にたくさん穴をあけたがります。

コップに水を入れると、雨が降ってきますよ。

 

<2歳児さんの発見>

2歳のAくんが作った雨降らし機で遊んでいた時のこと、Aくんがコップを水の中に沈めようとしました。すると、コップ内の穴から水が、噴き上がってきました。

「噴水!」Aくんがうれしそうに声をあげました。

 

そうして遊んだあとで、紙コップに自分でしゃぼん玉を膨らませてもらいます。

<遊び方>

1. しゃぼん玉液(台所洗剤を少しだけ溶かした水かせっけん水)に、穴をあけた紙コップの底をつけます。

2. ボウルなどに水を入れて、底にしゃぼん玉液をつけた紙コップを、写真のように逆さにした状態でつけていきます。

3. 水に空気が押されてしゃぼん玉が膨らみます。

不思議で楽しい実験です。


ジオラマ作りに夢中

2022-06-15 13:39:20 | 通常レッスン

小3のAくんとBくんのレッスンで、(一緒に来ていたAくんのお兄ちゃんも手伝ってくれています)ジオラマを作って遊びました。

最近、教室で話題に上ることが多い、明石海峡大橋と瀬戸大橋をイメージして作っています。


勉強が好きになるまでのプロセス 2

2022-06-13 15:18:14 | 教育論 読者の方からのQ&A

前回の記事にこんなコメントをいただいたので紹介します。

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「間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態」

↑これがすごく大事なんだな〜って最近ひしひしと感じています。

先生もご存知の通り、娘の書く漢字の中には不思議な形の物がチラホラ、、、(;^ω^)
でも何故か漢字の練習を頑張らせよう、とかいう気になれず、しばらく様子見、、

すると案の定、個人面談で先生に「漢字がちょっとね、、、漢字の書き取りをご自宅で頑張らせて下さい」言われました、、、
勿論、はい! と返事をし、で、そのまま何もやりませんでした(;^ω^)

それから約一年は見るも無残な点数ばかりで酷い状態でしたが、何故か私も娘もち〜っとも気にならず、、、

そうこうしているうちに娘の方が自発的に漢字の書き取りをするようになり、今ではほぼ毎回満点(*^^*)<
しかし、私は勉強の事で特に褒めた訳でもなく、どちらかというと、「プリントくらいやりなさいよ!」と怒っていましたが、、、

では、何が娘をヤル気にさせたんだろう、、、???

「○○はいつも頑張ってるね!頑張り過ぎてない?息抜きも必要よ〜」と、毎日労いの言葉をかけていたから?
はたまた突然ヤル気を出してほぼ毎日やっている習い事のおかげ???
↑これがヤル気が溢れ出した状態なのかしら、、、?

理由はよく分からないままですが、一つだけわかっている事は、私が無理矢理漢字の書き取りをやらせていたらこうはならなかっただろうな、、、です。(;^ω^)

漢字のみならず、他の勉強も自発的にやってくれる日が来るのかな、、、にわかに信じがたいのですが、、、今は淡い期待を抱きながら日々過ごしています(*^^*)
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前回までの記事で、

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遅ればせながら大逆転を遂げる子たちには、それが先に書いた「間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態(やる気がからぶり状態)」をしばらく過ごしているという共通点があります。

また、親や学校の先生や友達から一目置かれて認められていて、周囲の愛情を肌で感じられる状況があり、ありのままの自分を表現できる場がある点も共通しています。

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といったことを書きました。

書きたかったことは、子育てで同様の経験をした方以外には伝わらないだろうな……と思っています。

どうして伝わらないなどと消極的なことを言うのかというと、この状態は、「できなくてもくじけずに意欲的に取り組んでいる」という、一般的に言葉からイメージするであろう状態とはちがって、はっきりとはわからないけれど、

「子どもの脳の中で新しい回路が開発されつつあるんじゃないか」

「幼い子たちの敏感期や集中現象に似ている」

と感じさせるもので、これまでそれについて言及されるのを見たことがないからです。

 

虹色教室の特徴は、ひとりひとりの子と長い期間関わることが多いことです。

1、2歳の頃出会って、それから10年あまりの年月、見守り続けることもめずらしくありません。

もうひとつの大きな特徴は、子どもとの関わり方が多岐にわたっていることです。

工作したり、実験したり、ゲームをしたり、ブロック遊びをしたり、ごっこ遊びに興じたり、算数を学んだり、お泊まりのレッスンに行ったり、それぞれの子のその時期の興味やニーズにそった活動をしたりしています。

そんなふうに、幼い頃から大人のような口をきくようになる頃まで、その子がどんな風に成長していくのか見守りながら年月を重ねるうちに、子どもというものやそれぞれの子の個性、子どもの育ちというものに対して、深い信頼感や安心感や、自然を前にして感じるような敬虔な気持ちを抱くようになりました。

というのも、どんなに今、目の前の子の問題行動が目立っていても、できないことばかりが目についても、子どもは成長の過程でそれを取り戻すかのような劇的な成長の時期が訪れたり、個性の力で、不利な条件を利用して、他の子らが真似できないような面を大きく伸ばしたりする姿を何度も目にしてきたからです。

 

戸塚滝登著の『子どもの脳が学ぶとき』に、数学者のシーモア・パパートの『パパートの原理』がの一部が紹介されています。

 

子どもの脳は単に知識を詰め込まれるだけでは発達できず、その知識を使うための知識(より良い方法を見つけたり、発展させたりする体験などの知識)を与えられない限り、うまく成長することはできない」という考えのことです。

 

子どもの脳は単に新しいスキルや知識を身に付けるだけでは成長できない。

「知識を使いこなすための知識」「知識についての知識」を学ぶことも、子どもの脳の発達にとってかけがえのないステップになる。

ーー『子どもの脳が学ぶとき』戸塚滝登著

 

この著書には、脳神経科学者、ジュディス・ラポポートとジェイ・ジードの脳スキャナーを使った脳発達の研究の話題も取り上げられています。

ラポポート博士が、普通のIQの子どもたち、ややIQが高い子どもたち、最もIQが高い子どもたちの3つのグループに分けて子どもの脳発達と知能指数との関係を追跡したところ、もっとIQが高い子どもたちにだけ、奇妙な現象が見つかりました。

それは、IQの高い子どもたちの脳ほどスロースペースで成長し、思春期がやってくるまで成長をやめなかったということです。

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虹色教室では、先に書いたように長い期間、多岐にわたる活動を通して子どもたちとかかわるため、知識を使うための知識、つまり知恵を獲得していく場面にしょっちゅう遭遇します。

また、教室では、子どもがよりよい方法を見つけたり、オリジナルアイデアをひらめいたり、問題の解決法に気づいたり、それらを繰り返しによって洗練させ、より高度なものへと発展させていけるように環境を整え、私自身や親のスキルアップに努めてもいます。

最近、10年以上続けてきたそうした活動が実を結び、思った以上の成果を得るようになったのを肌で感じています。

その一方で、新たな問題に頭を悩ませてもいます。

「教室での子どもたちとの関わり」という現場の仕事について経験知が上がるにつれて、ブログを読む不特定多数の人々に伝えることがより難しくなってきたのです。

子どもの成長のスイッチはいつどんな時、どのような条件で入るのか、子どもとの関わりでどんな点に気をつけていけばいいのか、現場の子どもとのやり取りのなかでは正確に把握できても、それを言葉でさらっと説明すると、どうしても言葉足らずになってしまうのです。

虹色教室通信は、そうした 現場での気づきを日誌のようにつづっているものです。

忙しい日は日誌というよりメモの状態でアップしています。

 

<補足>

断片的な日々の話題なので、もしもう少しまとまった形で読みたいという方は 、『子どもの考える力をぐっと引き出すお母さんの話し方』という本にこれまでの気づきをまとめていただいたので、手に取ってみてください。


勉強が好きになるまでのプロセス 1

2022-06-10 09:47:53 | 教育論 読者の方からのQ&A

算数のレッスンをしていると、見慣れないものを目にするたびに、よく見もしないで……また、数秒、考えてみることもしないで、即座に、「習ってない!そんなのわからん!」と突っぱねる子……(「習ってない!くんタイプ」とします)と、

やる気まんまんで、積極的に参加しているんだけど、考えていく手立てが身についていなくて、答えを間違ってばかりいる子……(「やる気がからぶりくんタイプ」とします)の2タイプの子たちがいました。

「習ってない!くんタイプ」と「やる気がからぶりくんタイプ」が、能力もできていることも同じくらいだったとすると、これから先の伸びとか可能性という面では、「やる気がからぶりくんタイプ」の方が利があるのです。

「習ってない!くんタイプ」は、チャレンジする前から、耳をふざいで、目を閉じて、心にシャッターをおろしちゃってますから。

でも、「やる気がからぶりくんタイプ」の方は、夢中になって関わっているうちに、体感が身についていったり、気づきが生まれたり、的確に指導することで、理解に至ったりするでしょうから。

ここで書きたいのは、だから、こんな口癖の子はダメだとか、この子の態度は丸でこの子はバツといったことではありません。

そうではなくて、子どもが「習ってない!くんタイプ」だった場合、次に通るべきプロセスは、間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態で、それを存分にやりつくしてから、次の「理解した上で答えを導きだす」「慎重に忍耐強く考え抜いていく」「考えるための技能を身につけて解く」というプロセスへと移っていくといいのかな……と考えています。

 

幼児から小学校高学年くらいまでの子どもたちの育ちに付き合っていると、幼い頃は、他の子よりあれこれ遅れがあってやきもきした子も、一般的な子より数年遅れでそうしたあれこれに夢中になって、急激な成長を遂げる時期を経るのをよく見かけます。

もちろん、オールマイティーにできる子になるというわけではないけれど、苦手でできないように見えたことに、他の子が飽きたころに手をつけだしたかと思うと、いつのまにか苦手が得意になっている、できない→上手にできるに変わっている、という姿はめずらしくないのです。

虹色教室では算数の学習も見ているので、工作や遊びだけでなく、勉強においても同様の変化があって、勉強でつまずいてばかりいた子が、ある共通するプロセスを経て、いつの間にか勉強が大好きな子になっているのをよく目にします。

 

遅ればせながら大逆転を遂げる子たちには、先に書いた「間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態」をしばらく過ごしているという共通点があります。

また、親や学校の先生や友達から一目置かれて認められていて、周囲の愛情を肌で感じられる状況があり、ありのままの自分を表現できる場がある点も共通しています。

 

「考える場面ですぐにシャッターを下ろしてしまう子」に対して、「間違っていてもいいからやる気があふれだしている状態」に移行させようと思う親御さんは少ないです。

たいていは、できないところをできるようにさせようとしたり、考えないでも解ける形に直して、暗記メインで訓練したりします。

あっちのいい方法、こっちのいい方法、あの習い事、この習い事……と、とにかく大量にインプットすることで解決しようとする方もいます。

でも、そうした方法は、一時的に効果が上がったように見えても、さらに考えることから遠ざける結果を生んでしまいがちです。

 

次回に続きます。


学校に通い出したら、どんどん勉強嫌いになっていく?

2022-06-02 22:00:00 | 教育論 読者の方からのQ&A

「明後日(あさって)の感覚」って聞いたことがありますか?

アーティストの日比野克彦氏が、哲学者で大阪大学総長の鷲田精一氏との対談中に使っておられた言葉なんですが、目にしたとたん、「良い言葉だな~」という感動を通り越して、自分の生きてきた方法とか、やってきたこととか、考えてきたこととか、そうしたもの全てに太い一本の芯が通って、「あ~、私はこうした感覚を大事にしてきたんだ」と納得したような気持ちになりました。


日比野氏が、

明日のことはある程度はっきりわかる。1ヶ月後のことは全然わからない。自分の絵の描き方やワークショップなどの共同作業は、ちょうど、「明後日」のように、ぼんやりと大まかなところだけわかっている感じなんです。
……(中略)ある一つのアクションが次のアクションを生み、この人と出会ったから、このアクションにつながっていく。いつもその連続です。
絵も同じで、大まかな方向性はありますが、「黒い線を描いた、この次はどうしよう」と、まず一手を描かないと次の一手を思いつかないものです。……(略)

と、アーティスト自身が先行きを正確に把握しないまま進んでいくプロジェクトについて、「明後日の感覚」という言葉で言い表したところ、

鷲田氏が、

そういうプロセスには、「新しい社会性」とでもいうものを模索していくヒントがあるような気がします……(続く)

といったこと答えておられるんです。

以前、教育の場に「ブラックボックス」という言葉が必要なのでは?……といったことを書いたことがあります。こちらの一連の記事です↓

★教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 1
★教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 2
★教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 3
★教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 4
★教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 5
★教育現場に必要な 『ブラックボックス』 という言葉 6

「子どもたちが、ブラックボックス化する世界に生きていることを無視したまま、パソコンや携帯ゲームや、○○○計算や○○時間といったよさげ~な方法だけ取り入れても、子どもたちが主体的に勉強していく方向には、機能しないんじゃないかな?」という疑問を言葉にしたものです。
(多くの方が、同じようなことを考えていたそうでした)


日比野氏の『明後日(あさって)の感覚』という言葉に出会ったとき、村上陽一郎氏の『ブラックボックス』という言葉を目にしたときと同じような強い衝撃を受けました。
そして、この『明後日(あさって)の感覚』という言葉もまた、「教育現場に必要な言葉じゃないかな?」「子どもが意欲ややる気を取り戻すキーワードじゃないかな?」という思いにかられました。

虹色教室で子どもたちに学ばせているとき、私には、どうすれば子どもたちのやる気や意欲が盛り上がってきて、知りたい!調べてみたい!もっとがんばりたい!という気持ちになるのか、だいたいのところ勘でわかっているんです。

それは、「自分は既存のきまったコースをなぞってるだけじゃないんだ」という感覚……というか、「ある方向性はあるけれど、進んでいく先はガチガチに固まったもんじゃないんだ」「自分のアイデアや考えや発言が、未来を変えてく影響力を持っているんだ」という感覚でレッスンを受けているということです。

教室で、時々、忍者ブームとか、日本全国のゆるきゃらを覚えようブームとか、宇宙の実験ブームとかが巻き起こるのですが、最初の火付け役の子たちの時期には、黒い布切れにもぐって宇宙気分を味わうことから、宇宙への興味が膨らんでいくような、教材は整ってないし、やることは見えてないしで、言わばレッスンとしたら、「レベル低い!」状態なんです。

でも、そんなカオスな時期こそ、子どもたちは、「こうしたら?」「これしたい!」「なんでだろ?」と主体的に自分で動いて、それは熱心に学びたがるんです。
そのブームが飛び火して、他の子たちの興味も加わるにつれ、私は子どもたちがワクワクして熱中していた学習課題を扱いやすい教材にして、「宇宙」といったタイトルのついた箱の中に溜めていきます。

すると、大人の目には、箱を開けるだけでワクワクするような教材パックができあがるんです。
もたつかずに、「わ~」っという感動や、「そういうことだったのか」という知識を得るのも手っ取りばやくて、大人は満足。
でも、最初の子たちに比べたら、ものすごく良い教育環境……のはずが、後の子たちほど、しら~っとやる気がない状態に陥ってしまいがちなのです。
そこから、発展させて自分で調べてみようという気持ちになりにくく、「見て、不思議でしょ?」と、笛吹けど踊らずという状態です。

同じように見えるけど、むしろ、後の方がよっぽど魅力的なのに、何がどうやる気や意欲を半減させるのでしょう……?

大人が何日も前から事前に準備していた魅力的なプロジェクトよりも、下の記事のような3歳の子のふとした発見の方が、どうして子どもたちの探求心に火をつける場合があるのでしょう?

★3歳の子の発見から、発明、研究、工作の輪 1
★3歳の子の発見から、発明、研究、工作の輪 2
★3歳の子の発見から、発明、研究、工作の輪 3
★3歳の子の発見から、発明、研究、工作の輪 4
★3歳の子の発見から、発明、研究、工作の輪 5

子どもの意欲ややる気の盛り上がりって、ランダムでその日のお天気で決まっているように見えて、やっぱり言葉にして整理できる一定のルールが存在する気がしています。

うちの息子が、小学3、4年生の頃、ビデオカメラ片手に友だちと映画を撮ることに熱中していたことがありました。
上映会というのに引っ張っていかれて見たら、期待以上の面白さで、「今度、もっと良いのができたら、公募に応募したらどう?映像作品の募集がないか調べてあげるわ」と言ったことがあります。
すると、息子は呆れたように、「お母さんは、遊びってものがわかっていないな~。何かのためとか、結果とか気にせず、自由にやるから遊びで、だから面白いんだよ」と言い返されたことがあります。

子どもって、もともと功利的じゃないんですよね。
「遊び心」が汚されていない場や時間の中ではじめて、いきいきと自分を発揮できるし、思いきりがんばれるし、頭をしぼりきって考えられるのでしょう。
それと、遊んでいる途中で、映画作りが、探偵ごっこに変わるかもしれないし、まったく別の興味へと流れていくかもしれないという、未来が固定されていない感じが、今の集中や全力投球を支えているのでしょう。

そういえば、昔、私が通ってた小学校や高校(中学は荒れてました)は、きちんと学校としての秩序は保たれていたけれど、日比野氏の言った『明後日(あさって)の感覚』というものが、いろんな場の底流に流れていて、私たちの好奇心を持続するのに役立っていたな~と思いあたりました。

 

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★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 2

★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 3

★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 4

★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 5 (冒険心とポジティブシンキング?)


★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 6 (冒険心とポジティブシンキング?)

★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 7 (好奇心が枯れていく小学生)

★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 8 (子どもから地頭力を奪わない子育て)

★学校に通いだしたらどんどん勉強嫌いになっていく? 9(これでおしまいです)