虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

適度な「しばり」が生む学ぶ意欲と喜び と 数学について  息子とおしゃべり

2018-04-30 18:06:19 | 息子とおしゃべり(ときどき娘)

(写真は、どんなおもちゃよりハサミとセロテープが好きな3歳4か月のAくん。

ビー玉コースターを作っています)

 

ゴールデンウィーク中で家にいる大学院生の息子と、教育についてのこんな話題で盛り上がりました。

最近の息子は、ゼミでの研究以外に競技プログラミングと数学を趣味とする仲間で作っている研究会

での活動に明け暮れています。

 

わたしが、「子どものやることを決めてしまったり、必要以上に干渉するのはよくないけど、

何から何まで子どもの望み通り自由にさせるのも、やる気や楽しみを奪うのよね。

適度なしばりは、あった方がいい場合も多いわ」と言うと、

 

息子が、「ああ、わかるわかる。ぼくも小学生の頃、お母さんが時々、

今の時間はボードゲームはしてもいいけど、テレビゲームはだめ、とかちょっとした

しばりを作ってたこと、今、振り返るとよかったと思うよ」と答えた。

 

わたし 「そうよね。でも、大人の考えで、テレビゲーム禁止とまでしたらだめだと

思ったのよ。

誕生日には、自分がほしいって言ったものを、言葉通りにもらってたでしょ。

テレビゲームのソフトを買って

よく遊んでたよ。そんな風に、放任して自由にさせる部分と、

ちょっとしばりがある部分の両方が必要だと

思ったのよ。お母さんは小学生の頃、すごくマンガ好きだったけど、

自由に読ませてもらってた面と、

思う存分とまではいかないしばりの面があったわ。

それで、物語を欲する子どものエネルギーで、手あたり次第に本を読んでいて、

読むうちにマンガより本の方に

面白さを感じるようになっていったわ。

しばりといっても、あくまでも、スポーツやゲームにルールがあるように、

今、始まりと終わりがある枠内で

のちょっとしたしばりのことで、完全に管理してしまったら、その良さが失われるとも思う」

 

息子 「小学生の頃は、テレビゲームとボードゲームの違いがわからなかったけど、

考える部分がちがうから、そうしたしばりがあったからこそ得た考えるプロセスの面白さや

思考を発展させられた面があると思う。

遊びが、完全なお客さん状態で、娯楽として楽しむだけのものになったらつまらないからさ」

 

わたし 「そうよね」

 

息子 「ただただ受け取る側じゃなくて、作ってみる、ないならないで創造してみるって

ことが可能なくらいのしばりはいると思うよ」

 

わたし 「がんばって学んだら、ごほうびに何かをあげる、テレビゲームのような好きな

遊びをやらせてあげるというかかわりは、子どもによったら必要な場合もあるし、

全面的に反対というわけじゃないけど、

学びからも、遊びからも、そこに潜んでいるより興味深いものに気づく

機会を奪ってしまうと思うわ」

 

息子 「どういう部分に価値を感じて消費物中の奥深い世界までの価値観に気づくかは、

それぞれの子どもの個性にもよりけりだろうけど」

 

わたし「虹色教室は、あくまでも算数を中心にした教室ってしているのは、

算数そのものの中に子どもを

わくわくさせる要素がたっぷりあるからなのよ。

子どもがパン屋さんごっこをするために、10個パンを並べて遊んでいる時に、そのまんま

パンの個数を数えたら、1,2,3,4……10と数えるわけだけど、同じものを前にして、

ひとつが10円だとしたら?と考えると、たちまちそれが100円になるし、

100円だったら?と考えると、1000円になる。

3個買うごとに1個おまけすると考えて遊ぶと、6個注文すると、いくつパンがもらえるのか

と考えるのかしらと

ドキドキするし、パンごとに値段がちがうとしたら、ちょうど500円になるように買い物するには

どうすればいいのか

と考えて買い物もできるの。同じパンを前にして、

こんなにも複雑に奥深くいろいろなことを考える

楽しみが味わえるのは算数ならではだから」

 

息子 「ああ、それはわかるよ。日曜数学会(「日曜数学」というのは、

趣味でやる数学研究のこと。

研究成果を5分で発表する会が開催されている。息子は毎週、この放送を楽しみに見ています)で、

別に数学にこだわるわけじゃないけど、

なんで化学や物理なんかじゃなくて、

数学なのか、っていうと、基本的にどんな分野に行っても、数学っていうのは必ず入ってて、

話が科学や物理の話になったり、古典の話になることもあったりする。

あらゆるもののなかに潜んでいる数学なら、

数学を通して、いろんな話ができるってことを話してたよ」

 

わたし 「そうそう、ボードゲームしてても、絵本読んでても、カレンダー見てても、

そこに算数があって、算数を通してそれを眺めると、手品を見るような、あっという驚きとか、

好奇心をそそられる部分とかがあるから、

子どもたちとそれを共有していきたいのよ」

 

息子 「数学は、答えがある爽快さがいいものだけど、あくまでも論理立てて

考えていった末たどり着いた仮定のもとに成り立っていることを忘れてはだめでさ。

平行な線をふたつ引いた時、永遠に交わらないか、宇宙の果てまで行くと交わるのか、

どちらとも言えない。

でも数学を使って、どちらが正しいのかを競いあうのではなくて、こうだって言えるよね、と

自分の主張を整理することはできる。

数学を出来不出来で測られるものとして、テストの点数と直結すうものとしてとらえるの

はいやだな。自分を賢く見せるための道具にしようとする人は、数学が常にひとつの答え

と直結していると

考えるのだろうけど、数学にできるのは、やはり、自分の思考を整理していくことと、

自分の中の何かを呼び覚ますことなのかも。

答えがない数学の世界を鑑賞して楽しむようになると、以前、耳にした時はよく理解することが

できなかった『数学は自由だ』という言葉の意味が腑に落ちたよ」

 

わたし 「数学は自由だって、どういう意味?」

 

息子 「よく話されている言葉だよ。数学は何らか答えがあって、

それを覚えていく学問じゃない、という

ことかな。もちろん、1たす1はいつも2じゃないか、と思うかもしれないけど、1たす1が2なのは、

そういう系統立てた論理上の正解であって、1たす1は本当に2なのか、と疑問を持つ自由はあるんだ。

たとえば、法律のように、はっきり定まった答えがあるものだと、

そこにある事実に疑問を持つことは、何も生まないからね。

もっとも、数学が自由だと言っている人は、本当は数学は

自由であるべきだといいたいのかもしれないけど。

自由でないのかもしれない、でも自由であるべきだと」

 

わたし「そうね。それを言うなら、教育も自由であるべきだと思うわ」

 

息子 「そうだな、確かにそうだ」

 

 


年長さんたちの算数のレッスンの様子です

2018-04-27 21:06:44 | 算数

年長のAちゃん、Bちゃん、Cちゃんの算数のレッスンの様子です。

みんなでパン屋さんごっこ。

どれも1つ100円です。

「3つください」「5つください」と注文すると、

「300円です」「500円です」と答えてくれます。

難しかったのは、買い物役をする時です。

300円を出したいけれど、100円玉が一枚足りなくて、

50円2枚を100円ということにして買い物をしました。

この50円2枚で……というのは、右手と左手にそれぞれ50円ずつ持って、落とさないように

ぱちんと手をあわせて、「50円玉と50円玉をあわせると、100円!」という遊びで

学んでいます。

他に「500円玉と500円玉を……」にもチャレンジしました。

 


全国学力テスト  円の面積がわからない小6生 中3生

2018-04-25 13:37:29 | 教育論 読者の方からのQ&A

過去記事です。

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文部科学省が、小学6年と中学3年を対象に実施した
全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で円の面積を求める公式を理解していない子が非常に多いという

話題を目にしたことがあります。


注意が必要なのは、
まったくわからない、知らないのではなくて、
「直径×円周」としたり「半径×円周」としたり、近いんだけど、微妙にちがうという求め方で間違えたということです。

この円の面積が求められない子たちというのは、
おそらく携帯電話の新しい機能は使いこなせる子たちで、アイドルの近況については正確に覚えていられる子たちなのでしょう。

つまり、知的な能力としたら、
「半径×半径×円周率」が3年かかっても覚えられないなんて重篤な問題を抱えている子はほとんどいないだろう……ということです。

それなら、どうしてこんなにもできないのでしょう? 
学校は何を教えているのでしょう? 
いや、学校は必死で教えてても、子どもが少しも聞いてないのでしょうか……?

私は、この問題は、「子どもにわかるように教えているか」という
先生側の問題ではないように感じています。

以前、現代っ子に共通する算数が苦手になる原因という記事で、


★ 簡単でシンプルなものを直視できない

★ 単純な情報にしっかり意識を向けていられない

現代っ子の特徴について記事にしたことがあります。

また、同様の「できない」理由をいくつか並べた
「わからない」のいくつかの形 と 対処法1という記事も書きました。
その記事には、私立小で教鞭を取られている先生から、次のような
コメントが寄せられています。
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今回の記事、まさに!まさに!です。
先生、見ていらっしゃった?って、言いたくなるほど(笑)
一昨日まで、5年の補習授業をしていました。
うちは、ほとんどの子が中学受験をする私学。
5・6年になれば、参加希望者対象の補習授業は当たり前。
算数補習は習熟度別に少人数指導をしています。
その中の、いわゆるしんどい子たちのクラスは、
まさにこんな子たちが集まっている状態。
どの子も、3つのうち2つ以上当てはまるように思います。
そして、中ぐらいの子のクラスでも、
「言葉の概念がイメージできないから解けない」子が多い。
計算はできるけど、文章問題になると・・・???

たかし君のお父さんの体重は75kgで、たかし君の体重は45kgです。
たかし君の体重は、お父さんの体重の何倍ですか?

間違える子が結構いますからね・・・。

これでも私学なんですよぅ。
もちろん、こんな子ばかりではありません(念のため)
賢い子は、感心するほど賢いです。

5年生になってからでも、間に合いますか?
対処法、ぜひ参考にさせてください。
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コメントに書かれているとおり、子どもたちの多くは、現代っ子特有の困難さを抱いて、勉強につまずいています。

現代っ子の困難というのは、
○時は習い事、○時は宿題、○時はお風呂、○時は寝る~と、
毎日のルーティーンを何も考えずにこなしていく……

だけで、毎日が過ぎていく子が多いことから生じてくるように思うのですよ。

問題は家庭だけでなく、学校にも……。

魚を釣るときに、魚が釣れるかどうかはどうでも良い問題で、

むしろ釣れたら処理に困るような意味のない活動として魚釣りがある設定のもと、(自分の利益としては、何の体感も感情もないままに)

「何時間、釣堀にいたか」とか「釣っているフォームが正しいかどうか」なんていう内容をしつこく外からチェックされた挙句、

魚を釣っている自分は、

釣れるようになることを目指している……

という目的が
わからなくなってしまったか、最初からそこが理解できないまま何年もきた……

というのが、学校教育で生み出される「勉強が苦手な子どもたち」ではないでしょうか?

……わかりづらい例でしょうか?

授業の設定は平均的な能力の子たちのペースに沿って進みますから、
「きちんと真剣に学ぶ子」は、ただ普通にがんばるだけで、浮きこぼれてしまって、できたからといって、「もう少し面白い難しい問題を解いてもいい~」といった利益を得ることはなくて、むしろ待ち時間が増えて、
損をした気持ちになります。
そんな風に、がんばることが損と結びついた環境で、
常に自分の能力にブレーキをかけることを求められてきた子が、
いつの間にか、「基礎的なことも理解できていない側」に転じていくのは時間の問題です。

いつの間にか、学習が、他人事になってしまうのです。

妙なたとえですが、
全て自分で計画して、行き先の情報を調べたり、
切符を買ったり、ぶつかる問題を自分で解決しながら旅行するのと、

旅行会社が全てお膳立てしてくれるバスツアーとか、海外旅行のパックとか
で旅行をしている人がいたとすると、

数年後、この2タイプの人々のさまざまな能力をテストすると、どうなるのか、
だいたい予想がつきますよね。

旅行会社が全てお膳立てしてくれるバスツアーとか、海外旅行のパックとかでばかり旅行をしていると、
注目したり敏感になったりするポイントが、
どの旅行会社がいいかとか、旅行会社へのクレームとかいった部分に集中して、
実際に自分で動いて何かする能力が極端に弱まったり、
自信がなくなったりしますよね。

何のために旅行をするのか……という目的についても、
 ツアーに盛り込まれた目を引く情報に踊らされるうち、
根本的な「自分」の動機や「気持ち」や
自分の中に育っていく感性や知恵、自信といったものが、
いつまでも身につかないか、むしろすたれていく……ことになりがちです。

それが学ぶという行為でも、これに似た現象が起こっています。

主体的に体験している子ども本人が、
「遊び」とか「日常生活」で、本当の意味で主人公でなくなってしまったため、
「生きている実感がある自分」がない子が、たくさんいるのです。
「何のためにがんばるの? 誰のために勉強するの?」という問いが、
「自分が自分であること」という生きている感覚の根源的な危うさやあいまいさから
立ち上ってくる子が、あちらにもこちらにもいるのです。

「自分という身体感覚を持っている子ども本人」が不在のまま、
大人たちが次々、新しい旅行ツアーの計画でも立てるように、
「あれを教えて~」「あれを訓練して~」と躍起になっても、
うまくいかないことは目に見えていますよね。


そこから、携帯の新機能は、5分でマスターできる子が、
3年たっても、「半径×半径×円周率」が覚えられらないなんていう
驚くような結果が生まれているように
感じるのですが……。(おそらくバーチャル空間は、大人たちに占領されていないので、子どもは主役の座についていられるのでしょうね)

 

数日前のこと、
昨年は、多動が目立って(発達障害の診断を受けている子です)、問題に集中できず、
どの問題もきちんと解ききるまでには至らなかった子が、
1年ぶりにやってきた算数クラブで、学年相当の算数の問題を次々解くだけでなく、分配算や和差算もちゃんと理解して解いて、
ちょっと驚き、とてもうれしく感じた出来事がありました。

この子とは、金魚すくいの準備や、ボールを飛ばすマシーンや、ポケモンのチップゲームなどをいっしょに作りました。
すると、何を作るときもとても積極的で、
年下の子が困っているときは、その子の分も作ってあげる
気遣いを見せていました。
また、「ぼくね、サッカーでクラスで一番なんだよ」「絵が得意だよ」と
1年の間で、いろんなことで自信を育てていたことがわかりました。
お母さんの話では、塾などへは行っておらず、
とにかく毎日いっぱいいっぱいまで身体を動かして遊ぶうちに、多動がおさまって、学習に集中することができるようになってきたそうです。

レッスンで算数の問題を解いてもらうと、

もうすぐ3時というのが、何時頃か……

「Aくんの持っている電車のおもちゃは、Bくんの半分です」というとき、
Bくんはどれだけ電車のおもちゃを持っているのか……

AさんとBさんがすくった金魚があわせて12ひきで、Aさんの方がBさんより2ひき多くすくったという場合、
AさんBさんは、それぞれ何びきずつすくったことになるのか……

といった問題が、
自分の経験を通して、すぐにピンとくる状態でした。
遊びの力はすごいですね。

「遊び」が大事と繰り返していると、
どんな能力をアップさせるどんな遊びをさせたらいいですか?
とたずねられることがよくありますが、
基本は子どもが自由に遊び、自由に考え、自由に判断する場面が多いほどよいと感じています。

たとえば、自由に遊んでいる子は、少しでもたくさん遊びたくて、
「あと10分だけ遊ばせて~」とお母さんに交渉し、
「だったらあの時計の長い針が、8のところにくるまでだけ……40分になるまでだけよ」といったやりとりを繰り返したりしています。
そうするうちに、10分経つと、何時何分になるとか、夏は日が長くて、
7時くらいまでは明るいな……それは太陽の軌道が冬と異なるからだなとか、
○くんの家まで3分だから、送って戻ってきたら、6分くらいかかるから
それから遊べるのは~分くらいだな~」とか
自分で懸命に考えるようになるし、体感としてさまざまなパターンの時間や数がインプットされてきます。

それが、毎日、決められた行動を、ただ、こなしている子たちは、
頭を使わないだけでなく、体感しているものにゆがみがあるのです。

「10個のお菓子を3人でわけるといくつずつ?」とたずねると、
よく遊ぶ子は、
「3つと割ったやつ」と言ったり、「3個ずつで、1個はあまるから、残しておく」と言ったりします。
けれども、学習時間が長く、遊びが少ない子たちは、
「分けられない」「1個ずつ?」「2個? 10個?」と答えることがあります。

 

親が勉強にだけ目を向けて、子どもの生活を痩せた貧相なものにしてしまうと、

実感できるものの幅が狭くなってしまうのかもしれませねん。


発達障害の診断で気にかかること

2018-04-24 20:22:06 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

親しい方のブログで紹介されていた

何か変だよ、日本の発達障害の医療 【前編】過剰検査

 

何か変だよ、日本の発達障害の医療 【後編】過剰診断・治療

という記事を紹介します。

教室にいらしているお母さんも、病院での診察で、「脳波の乱れがあるので、療育に通ってください」と言われ、

具体的にどこに行ってどのようなことをしたらよいかは説明されなかったので困っている、とお聞きして、

気になっていたところでした。

もし、子供の発達上の問題で病院にかかられる際は、

日本のガイドラインが、ADHDの診断に不必要な検査を行うことを勧めるような内容になっていること

について知っておくのがよいかと思いました。


『フロー』状態が起きやすい環境を作るには?

2018-04-23 13:17:08 | 日々思うこと 雑感

ずいぶん前のことになりますが、虹色教室では『ピタゴラスイッチ研究部』と

いうクラブを作って、自分で考えたアイデアを競いあうことをしていました。

競いあうといってもそれぞれの子の自分のアイデアですから、その子の個性が強く出て、

電気やモーターを使った仕掛けに熱中する子、音の出る仕掛けばかり作る子、

ゴールに凝る子と興味の方向が異なります。

優劣決めがたい互いに切磋琢磨する面白い研究報告になりました。

私は基本的に、材料の調達と、『フロー状態』が起きやすいような環境を

作ること以外はあまり手を出さないようにしていました。

「そんなものを使うの?」という子どもならではの変なアイデアが、

すごい動きを生み出すこともよくありましたから。

また、そうした遊びの興奮のあるうちに、レッスンの後半は算数や

数学の学習に集中させるようにしていました。「たくさん学んで、

もっと高度なことができるようになりたい」という気持を引き出したかったからです。

フローとは、人が時間も忘れて無我夢中になって何かに没頭しているときの

精神状態をいいます。

心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱されました。

やってることにのめりこみすぎて、行為と意識が溶けあうような感覚です。

子どもにフロー状態を体験させるには、管理しすぎず、

成果を求めず、それぞれの子が自然な状態で自分に自信が持てるよう支えることが大事です。

また、友だちと協力しあって同じ目標に向かって努力するときも、

それぞれひとりひとりの子が、

自分自身の好奇心や探究心に突き動かされて取り組めるよう支援します。

この当時、5歳だったピタゴラスイッチの研究部員さんたちは

勉強中もフローの状態を作り出すことができるように成長してきています。

この研究部は、アイデアマンの主力メンバーが受験に突入したことと、

幼い子たちが『化学実験』ばかりやりたがる時期が続いたので、半休部状態のまま

今に至っています。

それが最近になって子どもたちの間に、「面白い崩れ方をするドミノが作りたい」と

いう気持ちが生まれてきたので、ピタゴラスイッチ研究部、復活しそうな気配です。

 

ピタゴラスイッチ研究部の報告 無事にライトがつきました!

ピタゴラスイッチ研究部の報告 無事にライトがつきました!2

ピタゴラスイッチ研究部の報告 運動の向きを変える 1

ピタゴラスイッチ研究部の報告  運動の向きを変える 2

ピタゴラスイッチ研究部の報告 ビー球スライダー 1

ピタゴラスイッチ研究部の報告 ビー球スライダー 2

ピタゴラスイッチ研究部の報告 ゴール地点の工夫 3

ピタゴラスイッチ研究部の報告  ビー球がよくすべる波の形 

ピタゴラスイッチ研究部♪ 音の出る仕組み

ピタゴラスイッチのスタート部分♪

科学クラブでのピタゴラスイッチ研究 1

科学クラブでのピタゴラスイッチ研究 2

 

ピタゴラスイッチ作品のアイデアは、

これ以外にも面白いものがたくさんできたのですが、きりがないのでこれくらいで……。

これは昨日の小1生たちがドミノで遊んでいる様子です。

最初に円の上にドミノを並べてみて面白かったので、

もうひとつ作って、8の字を一筆で書くように倒れるようにしたいと思いました。

が、台にしている円形の板は周りが丸まっていて、

思うように交差しておくことができません。

そこで、8の交差する部分にあたるドミノを吊り下げる作戦に出ました。

よいアイデアではあったんだけど、これは失敗。

すると、ひとりの子が、この吊り下げたドミノを使ったゲームを思いつきました。

下にドミノを重ねておき、ひもをつけたドミノを上から落として

いくつドミノが崩れるか競うゲームです。

改良を加えて棒を1本足すと、カーブを描いてドミノが降りて来て

積んだドミノをはじくゲームが完成しました。

子どもたちが次々にアイデアを出しながら、自分たちで工夫しながら遊ぶようにするには、

子どもたちのひとりひとりが『フロー状態』に入っていけるように

環境や大人と子どもの関係を整えることが大切です。

おまけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピタゴラスイッチ研究部♪ 透明ホースの中を走る

ピタゴラスイッチ研究部員さんたちの研究発表です♪

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ピタゴラスイッチ研究部 と フロー

の記事を読んだ方からこんな質問をいただきました。

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『フロー状態』が起きやすいような環境を作ること

→この点について家庭でできること、親としてできることを教えていただけますと

嬉しいです。うちの子(もうすぐ3歳です)は非常に気が散りやすいタイプで、

遊びが長続きしません。おもちゃも次から次へと変えていきます。もう少し集中して

遊び込めないものか・・・と悩んでおります。よろしくお願いします。

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3、4歳の子たちは遊びが長続きせず、おもちゃを次々変えていくことはよくあります。

一つの遊びで遊び込むことができるように導くために、次のような点に注意して

関わっています。

 

① それぞれの子の敏感期に注目する。

手作業で夢中になること。知能面で敏感になっていること。

 

② その子の好み。個性。

色、形、作業の好み。頭の使い方の個性。遊びの好き嫌い。

 

③ 最近の出来事。その日、関心を持ったものなどに注意する。

体験したことを遊びに取り入れる見本を見せる。

 

④ 遊びのさまざまなシーンで敏感期の活動を満喫できるようにする。

 

今日、レッスンに来ていた3歳と4歳の★ちゃん、☆ちゃんの遊びを例に挙げて、

もう少し具体的に説明させていただきますね。

 

教室に着いた当初、★ちゃんも☆ちゃんも、

次々と遊びを変えて落ち着かない様子でした。

☆ちゃんは椅子が好きな子で、2歳くらいの頃も、教室にある子ども用の椅子を

部屋中に並べたり、重ねたりして遊んでいました。

 

人形劇の劇場を取ってもらいたがったので、☆ちゃんに渡すと、劇場の前に椅子を

並べだしました。

以前、教室で人形劇の劇場を作って遊んだことがあるのを思い出したようです。

虹色教室では、子どもが何か新しい体験をしたときは、それを

おもちゃや工作で再体験できるようにしています。

 

保育園の発表会を楽しんだ☆ちゃんと発表会の様子楽しんだ日の記事 

この日は2つ年上のお兄ちゃんが主になって、舞台装置の仕掛け作りをするのを

見るのと、お人形を椅子に座らせていくのが☆ちゃんの仕事でした。

 

それを思い出したのか、☆ちゃんは人形劇場を目にするなり、椅子を並べ出しました。

「もっと椅子がほしい」と言いました。

 

椅子とお人形を用意すると、どんどん椅子を並べては人形を座らせていきました。

(椅子は100円ショップで購入したグラグラゲームに入っていたものです)

☆ちゃんは真剣な表情で、「先生、前は小さい人が座って、後ろは大きい人が座るよ。

だって、前に大きい人が座ったら劇が見られなくなるから」と言っていました。

幼い子たちは、手と目を協応させて集中してやらなくてはならない作業を、

何度も何度も満喫するまで繰り返すのを好みます。

その子がやりたがる作業をたくさん行える環境を作ってあげることが大事だと

思っています。

また時折、イメージを育てるために、大人が体験を再体験できるような

見本を作ってあげることも必要です。

 

★ちゃんに、「何がやりたい?何が好き?」とたずねると、「ビー玉」と答えました。

らせんにビー玉が転がっていくおもちゃにビー玉を入れて遊びだしました。

★ちゃんは感覚に訴えることが好きで、こうした遊びをはじめると

いつまでも続けています。

集中しているとはいえますが、こればかりでは発展しない上、知力や想像力をしっかり

使って遊ぶ満足感は得られません。

 

そこで、★ちゃんが熱中する作業の一つひとつを

次の段階に発展させたり、個々の遊びをつないで意味を作りだしたり

する方法をいくつか提案しました。

 

上写真の左は、★ちゃんが遊んでいたビー玉がクルクルとらせんに滑り降りていく

おもちゃです。高い位置に滑り台を作って、滑り台から飛び出したビー玉が

らせんに滑り降りるおもちゃの中に入るようにしました。

★ちゃんは放射線状に落下するビー玉の動きに大喜び。

滑り台の高さや位置を調整しながら遊んでいました。

 

ビー玉がポンッと跳びあがるおもちゃと、受ける道具の組み合わせでも、

十分楽しんだあとで、受ける側の穴を滑り台につないだり、

ビー玉を飛ばす道具を椅子の上に設置して遊びました。

 

ホースをゴムで椅子につないであげると喜んでいたので、最初は転がして受ける

遊びをし、途中から、それまで作っていた線路に貨物列車を作って、

ホースを使ってビー玉の荷物を荷台に入れて、運んで行くというごっこ遊びをする

ことにしました。

 

このように敏感期の作業的な活動と見立て遊びがつながると、

子どもはとても長い時間、夢中になって遊ぶことがよくあります。

 


「地球儀が作りたい」「ドライブコースが作りたい」

2018-04-20 09:32:41 | 工作 ワークショップ

このところ簡単な更新ばかりですいません。算数記事用の写真などもたまっているので、おいおいアップしますね。

最近、教室では、「太陽が作りたい」「宇宙が作りたい」といっ子がけっこういます。

年長のAくんは、「地球が作りたい」と言っていました。

「これくらいの大きさんきゃいやだ」と天球儀を指さして言うので、材料探しにひと苦労。

Aくんといっしょに工作用の材料箱をあさって、カップ麺のどんぶりをふたつ見つけました。

木の葉型に切った紙を貼って球を作りました。

Aくんが上手に大陸を描くのにびっくり。

お母さんの話では、家族旅行で海外に行ったので、飛行機の中で見た地球の映像に興味を抱いたそうです。

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こちらは年長のBくんのドライブコース作り。

長い紙にドライブコースを描いて、端にラップの芯を貼りました。

ティッシュ箱にセットすると、ドライブコースのできあがり。

車は実は最初に太陽を作っていたものを変形させました。

芯を回すと、風景が変わっていきます。


これまで子供たちを夢中にさせた活動

2018-04-18 14:21:04 | 工作 ワークショップ

 

教室では、子どもたちが興味を持ったものとさまざまな形で触れ合い、発展させるお手伝いをしています。

これまで子どもたちを夢中にしたものと、興味を膨らませるためにした活動の数々を紹介します。

(近いうちに、算数にかかわることで、子どもたちを夢中にしたものと興味を膨らませる活動を整理することにします)

 

<子どもたちを夢中にさせたもの>

 

ピタゴラ装置作り

 教室やユースホステルの部屋全体を使った大がかりなものから

ストローの中をビーズが滑っていくミニサイズのピタゴラ装置まで

さまざまなものを作りました。数えきれないほどしかけのアイデアが

試されています。


影絵劇、映画作り

 ブロックで作るミニシアターから、2mほどのスクリーンを使ったものまで

さまざまな影絵劇や映画を作りました。

 

工場作り ごみ処理場、ベルトコンベアーで移動させる算数の工場、

 

頭脳パズル

 

ハンバーガーショップ作り

ボードゲーム、カードゲーム

エレベーター作り クレーン作り

 

 

忍者

 

戦国武将 お城

 

ドールハウス作り

 

ガチャポン作り

 

 

レジ作り

 アルミホイルを貼ったお菓子の箱にレジのバーコードを読み取る機械をつけると

ピッと鳴ります。

 

 

パソコン作り 携帯電話作り

 

元素カード

海賊船 大型フェリー

 

ポップアップのしかけ

 

かばん作り

 

すごろく作り

 

歴史的建造物

 

深海魚

 

おばけ屋敷作り

宇宙

 

ポケモンゴーのゲーム作り(ブザーが鳴るマッチング式のゲーム作り)

 

わたがし機作り (モーターを使った工作)

 

 

 生きものの生態

電車の世界

 

スライム(動く砂鉄スライム、スーパーボール作り

 

電子工作

 

プログラミング

 

洋服屋さん

 レオナルド・ダウ¨ィンチ

 


自閉症の子が活動にいいイメージを持てるようにする

2018-04-13 21:47:43 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

虹色教室には自閉症の子たちも通ってくれています。

教室では、自閉症の子たちが、さまざまな活動にいいイメージを抱けるようフォローしています。

写真は2年生になったAくんが、はじめて実験に取り組んでいるところです。

Aくんは小学校に上がるまでほとんど言葉がなかった重い自閉症の男の子です。

多動もひどかったので、ほんの少しの間、ひとつの活動にかかわらせることも難しい子でした。

でも、親御さんたちがていねいに根気よくさまざまな活動に触れさせてきたおかげで、

絵本の読み聞かせ、ブロック作品作り、ボードゲーム、頭脳パズルなど

熱中して取り組めるものがたくさん増えてきました。

最近では、言葉がいっきに増えて、「どうして?」を連発し、さまざまな会話を楽しむようになりました。

 

実験をする前に、『ビーカーくんと放課後の理科室』という絵本を楽しみました。

読みながら、実際に教室にある実験器具で遊んでみて、興味を引き出しました。

絵本を読み終わると、Aくんが、「ビーカーくんのじっけん、これとこれとこれとこれ したいです」と

ビーカーくんが自分の得意な実験をするシーンを指さしました。

そこで、最初に風船の中の氷を取り出して、塩を振って傷をつける実験をしました。

スポイドを使うのを楽しんでいたので、試験管にクエン酸と重曹を入れて、化学反応を起こさせる実験をしました。

泡があふれるたびに、Aくんの笑顔がはじけていました。

Aくんの世界がひとつひとつ広がっていくといいな、と感じます。

 


大好きなことばかり、ずっと続けてきた♪ (恐竜の解剖図)

2018-04-10 16:03:18 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

(過去記事です)

今日は、半年前に東京に引越していった小学2年生の◆くん、4歳の●くん

兄弟が教室に来てくれました。

お兄ちゃんの◆くんは、3歳の頃から引っ越す前月まで、毎月、虹色教室に来てくれていました。

弟の●くんも、生まれてまもない時期からお兄ちゃんといっしょに教室に来てくれていました。

ですから東京に行っても、ずっと「虹色教室に行きたい」と言い続けてくれていたそう‥‥‥。

 

お父さんの用事のついでに、

教室にも顔を出してくれることになりました。

 

「久しぶりに虹色で何をしたい?」とお母さんにたずねられた◆くんは、

「恐竜の解剖図が作りたい。前になおみ先生と作ったみたいなやつ」と言ったそうです。

 

そういえば2年ほど前、◆くんと図鑑を見ながら解剖図を作ったことがあったのです。

↑の左がかつての解剖図。

当時は◆くんが恐竜の絵を全て描いて、内蔵部分を作る時は、

わたしも少し手伝いました。

が、2年生になった◆くんは、材料だけ用意してあげると、

最初から最後まで

自分で作っていました。

 

 

 

↑◆くんが幼稚園の頃から作り続けている

恐竜の図鑑。

これまで何百枚、何千枚と絵を描いてきているので、

見本も見ずにさらさらと恐竜や世界地図を描いていきます。

◆くんは好きなことをずっと続けるうちに、

恐竜のことだけでなく、世界地図、体の内部の名前や仕組み、歴史、動物の生態など

それはさまざまなことを深く理解しています。

算数もとても得意です。

それに気持ちが優しく遊び上手なので、同年代の子からも、

年上の子や年下の子らからも好かれています。

 

こんな◆くんも、幼稚園時代は、「自分の好きなことはやりたいけど、好きじゃないことはしたくない」

と言い張って、「わがままな子にならないか」「お勉強ぎらいないならないか」

とお母さんをやきもきさせていた時期もありました。

 

◆くんのお母さんは、「大好きなことばかり、ずっと続けさせてきたけれど、それだけでいいんだなって

最近思うようになりました。好きなことを思う存分させることで、

他に何もしなくても何でもよくできるようになっています」

とうれしそうにおっしゃっていました。

↑今日は4歳になった●くんも恐竜の解剖図を作っていました。

下のイラストは●くんが描いた恐竜です。

 

今日のレッスンには、恐竜好きの5歳の男の子も参加してくれました。

 

3人でゲームをしたり、ストローでUFOキャッチャーのおもちゃを作ったりして

遊びました。

算数の学習にも3人とも集中してしっかり取り組むことができました。

 


作文が一行も書けない想像力に困難を持つ子たちと

2018-04-06 22:00:17 | 国語

「作文が一行も書けないようです」と相談を受けていたもうすぐ2年生になるAくんとBくん。

どちらも想像力が極端に弱い凹凸のある子たちです。

「何を書けばいいのか、さっぱり思いつかない」という話でした。

 

そこで、A5サイズの小さな紙をたっぷり用意。

その日の活動(工作やゲーム)を通して、作文の練習をすることにしました。

作文練習の仕方はこんな具合です。

 

Aくんは、工作をしたがりました。牛乳パックを切ってライオンを作ろうとしています。

わたしは、A5の紙に赤で「したこと」と書きました。

「ここには、したことを書くのよ。今何してる?」とたずねると、

「牛乳パックで、ライオンを作ってる」と言いました。

「Aくん、それなら、したことの紙に、やったことを書いてね」と言うと、

「ぎゅうにゅうのはこで、らいおんをつくりました」と書いていました。

 

そして、Bくんに向かって、「Bくんは、今、何を見てる?」とたずねると、

「Aくんが、工作してるの見た」と答えたので、

別の紙に「見たこと」と赤で書いて、「自分の目で見たことがあったら書いてね」と言いました。

それから別の紙に「聞いたこと」と書きました。

Bくんは、自分の目で見たことを書いてから、「ぼくは工作したくないよ」と言いました。

そこで、別の紙に「思ったこと」と書いて、「ここに思ったことを書いてね。工作したくないって心で思ったら、

ここに書いたらいいよ」というと、いつもいろいろと不満の多いBくんが、

思ったことの紙をいくつも作って、書いていました。

「気持ち 感じたこと」も書きました。

そこで、「りゆう」と書いた紙も作って、「どうして、工作がしたくないの?理由を教えて。

別の遊びがしたいからとか、今日は工作をする気分じゃないからとか、理由はいろいろあるよね」と言うと、

「今日はね、おなかがすいているんだよ。だから、工作をする気分じゃない」と言いました。

「それなら、そう書いてね」と言うと、Bくんは、何枚も何枚も思ったことや理由を書いてから、

「ぼくは、もうこれから作文が簡単になっちゃった」と言いました。

すると、Aくんが、「ぼくBくんの弟のCくんのこと書いてもいいかな?」とたずねました。

「もちろんよ。どんな名前か。どんな子か。どんなことをするのか、書いてね」というと、

「ぼくも弟のこと書きたい」とBくんが言いました。

「真似しだ」とAくんが文句を言い、「ぼくの弟だから」とBくんが怒りました。

その後、AくんとBくんといっしょに「もしも」の作文を書きました。

上の写真は、「もしもタイムマシーンにのってうみのなかにもぐってさめのうえにのったら」と書こうとしている

Aくんの作文です。