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★狭い細部に強く注目してしまう
★次の活動に切り替えられない
★全体の結びつきを理解しにくい
★聞くと書く 足と手 など同時にふたつのことを処理できない (不器用)
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といったシングルフォーカスの特性を持っている子に学習を教えていると、
「手を変え品を変えして説明しても聞いているのかすらわからない」
「頑固なほどに物分りが悪い」
という場面にぶつかることがあります。
その姿から、「この子はやる気がない」「他人の話を聞こうとしない」とか、
「この子は全然できない」「わかっていない」と決め付けてしまう方がいます。
ちょっと注意が必要なのは、
同じひとりの子が、シングルフォーカスに陥って、とても視野が狭くなっている時と、そうではない時で、
理解力や思考力に大きな開きがある場合が多いことです。
まるで頭がフリーズしてしまったように
「わからない!わからない!」と言い張るようなときは、
いったん学習を終わらせて、別の機会にそれまでとは違うアプローチで
説明すると、すんなり理解することがよくあります。
シングルフォーカスに陥りやすい子は、負のイメージを持った記憶を
いつまでも保っていて、
前のときにわからなかったものを
もう一度同じ方法で教えようとすると、
一瞥しただけで考えようともせずに「わからない!」と
決め付けることがあります。
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上の2枚の色板は、アスペルガー症候群のもうすぐ4年生の☆ちゃんの学習で使っていたものです。
この子は、とても記憶力が良いのですが、
前に覚えた知識に固執するあまり、新しい概念を学んでもそれを受け入れることができないことがよくあります。
たとえば、1の線分を10に分けたうちのひとつが10分の1だと習うと、
次にそれが 0.1 でもあると聞いたとたん、
「10分の1と 0.1 のどちらが正しいのかわからないから、全部ちんぷんかんぷんになってしまった」
という事態に陥ってしまうのです。
☆ちゃんが今、悩んでいるのは、はかりの読み方です。
☆ちゃんはどの量りも、時計のように、この位置ならこの重さという
決まった答えがあると思っています。
でも良く似ていても、時計とはかりは大違い。
同じひとつの目盛りに見えるものが、あるときはひと目盛り1グラムで、あるときは2グラム、あるときは5グラムと読み方が変わります。
そうした説明をいくら受けても、☆ちゃんは
最初の自分の思い込みにしがみつくばかりです。
そういうときには、教科書やプリントから離れて、
手で操作できるものを準備することが大事です。
写真の色板を見せて、「ここからここまでが10のとき、半分のこの位置はいくつかな?」とたずねてみると、
☆ちゃんは首をかしげています。
ここからここまでがどれだけの大きさかということから遡って、
半分だったらそれがいくつになるかわからないとすると、
はかりを読むのは難しかったはずです。
まず、こうしたシンプルな教具で、
10本色板を並べて、「ここからここまでが100グラムのとき、ここは何グラムかな?」とか、
5本の色板を並べて、「ここからここまでが100グラムのとき、ここは何グラムかな?」とたずねてみて、切る数によって、数値が変わってくることを感覚で学ばせていく必要があるのでしょう。
それでも、たいていの場合、すぐに「わかった!」と納得しないはずです。
でも、そうして教えてから、しばらく時間を置くと、ちゃんとできるようになっていることがよくあります。
シングルフォーカスの特性を持っている子は、
● 頭がひとつの考えに占められている状態が鎮まって、少し自由に考えられるようになるまでゆったり待ってあげること
● 視覚優位の子が多いので、目で見て手で操作して考えられるようにしてあげること
のふたつが大事だと思っています。
シングルフォーカスの特性を持っている子というのは、
自分のわかっている知識を想像力を使って加工して、
わからない知識を理解するのに使っていくというのが苦手です。
そこで、私がとても重要だと感じているは、
「想像力が弱い」という状態に対する
周囲の人の想像力です。
イメージすることに苦労しない一般的な人々は
想像力が弱いというのがどんな状態か、
想像してみるということはほとんどありません。
でも、自分の持っている想像力を使って、
そうしたハンディーが
どのような場面でどんな困難を生み出すのか
ていねいに考えていくようにすると、
子どもが先に進めなくて困り果てているときに、適切な支援をしてあげることができます。
たとえば、ものさしの絵と、リボンがいくつかに切りわけられている絵がワークブックに描かれているとします。
ものさしの目盛りには、左からだんだん大きくなる数字が書いてあって、
その線の位置の数値は、0からその場所までの長さを表しているという暗黙の了解があります。
リボンの場合、ある長さが、何センチという分量を表しています。
見た目がそっくりに描かれていても、一般的な人は、そうした暗黙のルールを想像力を使って見分けて、理解しています。
でも、シングルフォーカスの特性を持つ子たちには、
同じように線で描かれているなら、同じものに見えてしまうのです。
そこで、ひとつひとつ、実際に目で見て触れるものを用意して、
「この場合は、これを思い出して考えてね」「こっちの場合は、これを思い出して考えてね」と具体的に考えていける何かと結びつけてあげる必要があるのです。
そこに必要なのが、(繰り返しますが)「想像することが困難である」ということに対する
想像力です。
想像力にハンディーを持っていない人々も、
普段の生活では、過去のパターンに反射的に反応するだけで、
意識して想像力を使うことはあまりないようです。
でも、多くの人が、ちょっと意識して、いろんな場面で想像力をしっかり使っていくと、
想像することが苦手な子どもたちが、潜在している能力を伸ばせるようになるだけでなく、
少しずつ想像する方法を学んでいくことができるのです。