虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

お菓子作りで算数

2022-07-27 12:27:37 | 算数

虹色教室では、子どもの要望に合わせて、時々お菓子作りをしています。
だいたいの場合、クッキーか、小さなホットケーキを作ります。

私が「お菓子作り」を通して、子どもにマスターして欲しい…と考えているのは、次の3つです。

お料理の本を見て、材料を用意したり、手順を読み取る力

「はかり」の使い方と重さの単位

時間の量

最近の子は、本を見てその意味を理解する力が弱いです。便利な世の中になった代償でしょうね。

ところが、受験の際にはそうした弱点をねらって、図や表を読み取る新問題が年々増えているんです。

「数学検定」では実際、料理の手順表の問題が出ていました。
問いは、砂糖の分量を半分にして作る場合…?といった、料理したことない子にはピンとこない難しい問題…。

次の「はかり」の使い方…これって教科書で習ったくらいでは、なかなかマスターできないです。
でも、こうして「料理をする」という目的の中で自然に使ってると、けっこうすんなり読めちゃったりします。

「時間」って子どもに教える時、「今は何時何分」ばかりになりがちですよね。

でも、お菓子作りの時に学べる時間は、「○十分」という「時間の量」です。
「このクッキーが焼けるまで30分!」と教えると、子どもはワクワクしながら、時間の量を体感できます。
その時はじめて「時間ってこういう風にも言うんだな」と知る子が多いです。


小さい子にも作れるお菓子(手先が器用になります。)

クッキーもどき
食パンをクッキー型で抜いて焼きます。(子どもに抜かせてあげてくださいね。)

パンプディング
食パンをちぎってココットカップに入れ、卵・砂糖・牛乳を混ぜた液を加え焼くだけ
(子どもにパンをちぎらせてあげて)

プチケーキもどき
市販のビスケットに、ホイップを少し搾り出し、干しぶどうやマーブルチョコを飾ります。


道具と楽しくつきあう

2022-05-20 11:08:56 | 算数

虹色教室には、すぐ出せる場所に置いていて、遊びのシーンでも、工作のシーンでも、雑談のシーンでも、ちょっとしたことがあるたびに出してきて使う道具があります。

 

・1メートルのものさし

・コンパス

・分度器

・デジタル顕微鏡

・指で針が動かせる時計

・イラストつきの地図の図鑑 など。

・アナログのはかり もそのひとつです。

 

何かあるごとに登場していると親しみがわくし、実際に便利で、使いながら当て物クイズをするのも楽しいですから。

たとえば、教室の子がお菓子を持ってきた時なども、食べる前にはかりに乗せています。

 

めもりはそれぞれの年代の子がちょっと集中すればわかるレベルで読んでいます。

 2歳くらいの子なら、動いた目盛りの先に指をおいて、量っている気分にひたるだけで十分ですし、数字が読める子には、「50グラムより重い?」とたずねたり、「もう少しで100グラム」と読んだりしています。

小学生の子らでまだ目盛りが読めない子は、めもりの部分だけ大きく数直線にして書きだして1目盛りがいくつずつ増えているのか、わかりやすくして読んでいます。

よくする当て物クイズは、いくつか入っているお菓子の重さがわかった時に、「1つだと何グラムか?」というもの。

1枚何グラムくらいかな?

袋の重さはどうすればわかるのかな?

 

教え込んでしまうよりも、しょっちゅう使って、常に新しい気づきを深めていくのが大事と思っています。

「はかるのって楽しい、面白い!」という気持ち

 

工作のあとも、はかり。

 


プラレールと理科実験 (ついでに算数も)

2022-05-17 17:48:24 | 算数

小学4年生のAくんとBくんのレッスンで。

科学実験学習キットで、LEDを点灯させる回路を作った二人。

プラレールの列車が通ると、LEDが点灯すると言うしかけ作りにチャレンジしました。

じゃばらに折った紙を貼ったアルミはくに1本のワイヤーをつなぎ、もう一本のワイヤーはアルミはくから少しだけ浮かした状態でおきました。

じゃばらにレールを載せておきます。

列車を走らせてみるものの、LEDは光りません。

そこで、列車に重しを乗せてみたり、じゃばらを薄くしたりして、試行錯誤を繰りかえしました。

最後はちゃんと光るようになりました。

せっかくプラレールの線路をつないだので、この日の算数も、プラレールを使って学びました。

AくんもBくんも、学校レベルの速さの問題はきちんとマスターできているので、電車が鉄橋を通過した時、道のりが鉄橋と電車の長さを足したものになることについて、電車の先頭部分が進んだ部分にだけ注目するようにして、考えました。

二人とも、こうして目で見て考えている時は良くわかっているのに、プリントで問題をやる段になると、電車の長さを足し忘れたり、鉄橋の長さが二倍になると、電車の長さ分まで二倍にしてしまったりしていました。その度、プラレールの鉄橋のところに戻って、電車を動かして考えてもらうと、「あっ、そうか!」とミスに気づいていました。

トンネルの場合、「通過する」場合と、「列車が完全に見えなくなっている間」という場合、進む道のりが変わってくることに、とても驚いていました。


様変わりした算数セット……算数セットを使わない学校もあるそうです

2022-04-27 23:03:42 | 算数

最近の小学校の算数セットは、ひと昔前のものと比べてずいぶん様変わりしたようです。

かつて、わが子の就学を控えた親たちをうんざりさせた算数セットの名前つけ作業も、今では、単語カード風に束ねてある計算カードとせいぜい10個までの具体物、プラスチックの時計などに名前をつければいいだけのようです。

算数セット自体、使わない学校すらあって、ないならないで授業が成り立つなら、算数セットなどという面倒な道具をどうして購入させていたんだろう、と古い教育の無駄なあり様を疑問に思う方もいらっしゃるようです。

 

確かに、授業中の手遊びのもとになるようなセットがあるのは面倒なだけかもしれないし、ちまちました小物は無くし物と忘れ物の元凶となることでしょう。

それでも、「1年生で教えるのはここまでだから……」という数の棒やチップの横で幅をきかせる計算カードを目にすると、もやもやした心配が頭をもたげてきます。

かつての算数セットはよかったとか、今の算数セットではダメだとか、そういうことではなくて、それは、世の中のお母さんの考えや先生の考え方を象徴しているようでもあるし、子どもの置かれている環境や子どもの脳内を具現化したもののようにも見えるからです。

 

教室に初めて来る年長さんや1年生の算数の力を見ていると、「3+1=」といった問いには、即答できるのに、★ちゃん、●ちゃんの前にドーナツのおもちゃを2個ずつ置いて、「★ちゃんのドーナツを1個、●ちゃんにあげるとどうなるかな?」といった質問には、首をかしげたままになってしまう子がけっこういるのです。

目の前の物を見ながら、「これをこっちに移動させたら、どんな風に変化するかな?」とイメージすることができないのです。

 

物を手で動かさないでもイメージできるようになるには、それまでに実際に物に触れて、手で操作した体験がたくさん必要です。

いくら計算カードで式を暗記しても、物をイメージして考えていく力が伸びていくわけではないのです。

計算カードを暗記する時、子どもによっては、まるで電話番号を丸暗記していくような理解で覚えていく子もいるのです。

また、3人の子どもたちがいる時に、「★ちゃん、☆ちゃん、●ちゃんの3人の子の手の中に3個ずつおはじきがあるよ。みんなのおはじきを合わせるといくつになる?」とたずねても、ひとりひとりの子を指さしながら、「1,2,3……4,5,6……」と見えないおはじきを数えあげていくことができない子もいます。

 

算数セットが貧弱になったから、具体物を操作したり、イメージしたりする力が弱くなったというわけではないけれど、できるだけ効率的に学習単元をマスターさせていくこうという考えを世の中の大人たちがこぞって目指すことには、意外な落とし穴があるのではないか、と考えてしまうのです。

 

 

2ケタの筆算はできるけれど、数の理解がほとんど進んでいない子たちといっしょに100を作っていく遊びをすると、それまで学校で何度計算プリントをしてもピンときていなかったことが、ハッとわかる時があるのです。

 

「小学1年生で学ぶのは、この数まで」と決まっていても、実際に目で見て、手で操作する数が、習う数の範囲だけだと、本当の意味で数について理解できるのでしょうか?

 

わたしは習うものが10までの足し算という時にも、目で見て、身体で数を知るには、100とか1000といった数を、見たり触れたりすることが大事だと思っています。

 

数というのが、どこまでも続く秩序として子どもの中に根付くには、たくさんの数を見たり触れたりする体験が必要ですから。

 

算数セットにまつわる変化について、もやもやとした思いをくすぶらせていた時に、内田樹氏の 子どもたちよ、英語のまえに国語を勉強せよ という文章を読んで、自分が何に対して気を揉んでいたのか腑に落ちました。

この文章、英語について書かれているものですが、学習全般に通じる、大事なことが述べられているのを感じました。

 算数セットの話題からは、少し逸れてしまうかもしれませんが……。

 

内田樹氏は、英語力が下がった理由は「英語を学ぶと将来的に有利」などと、英語力を実利に結びつけるようになったから」とおっしゃっています。

 

学習の“報賞”があらかじめ開示されると、子供たちはいかに効率よく“報賞”を手に入れるか、最小の学習時間で、最大の効果を求めるようになります。

頭のいい子ほど、「聞き流すだけで英語力が上がる」とか「居眠りしながら英語力が身につく」といった市場にあふれている「最小の学習努力で最大の効果」をめざしている学習法に傾倒しがちなのだとか。

 

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かつての「英語が好き」な子供たちは、誰に言われなくても英語の小説を読み、英語の音楽を聴き、英語の映画を観て、厚みのある英語力を身につけた。

そのようにして得た英語力は試験の点数にそのまま反映されるわけではない。

無駄が多すぎたからである。入学試験に出るはずのない「無用の知識」を大量に含んでいたからだ。

けれども、その「試験には出ない知識」が彼らの英語力の厚みを形成していた。

あらかじめ“報賞”を開示すれば、子供たちは必ずそこに至る「最短距離」を探すから厚みがない。

だから、「この教科を勉強すると、いいことがある」という誘導のしかたはしてならないのである。

             

『子どもたちよ 英語のまえに国語を勉強せよ』内田樹(プレジデントFamily 2013年7月号)

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「無駄が多すぎる学習方法に含まれる入学試験に出るはずのない大量の無用の知識がかつての英語力の厚みを形成していた。」というくだりは、自分の子たちを育てていて、強く実感しているところです。

無駄な過程を山ほど踏みながら、わが子たちが勉強したり、アルバイトして社会と関わったりする姿を見ていると、確かに、成功を約束された最短距離をひた走っていくのと違って、努力もしている、能力も十分あると思うのに、それに見合う成果になかなか結び付かないな、ともどかしい時期だってあるのです。

でも、「厚み」とか「深み」という言葉で、そうした無駄の多い体験を経たわが子たちと向き合うと、知恵にしろ、精神力にしろ、物事に対する深い理解にしろ、未来を思い描く力にしろ、わたしが20代の頃といわず、今のわたしも到底及ばないな、とも感じています。

無駄もいっぱい含んでいるような何か自分を投じることから得るものの大きさ、豊かさのようなものをわが子たちの成長から実感しています。

 

話がずいぶん脱線したので、算数セットの話題に戻りますね。

写真は、アスペルガー症候群の6年生の☆ちゃんの学習の様子です。

「1.3は0.1がいくつ分か?」という問いに、「1.3個」という答え。

そこで、「0.1が2個だと、0.2。0.3が3個だと0.3……0.1が10個だといくつ?」とたずねると、「0.01」と答えました。

また、「0.1が10個だと、1よ」と教えてから、「1.1は0.1がいくつ分?」とたずねると、「1.1」と答えていました。

これは、具体物を使って、何個なのかと数えているものと、0.1にあたるものを目で見て確認しておかないと、こんがらがっているな、と感じたので、キラキラした小物のひとつを0.1として13個並べて考えてみました。

そうやって、「0.1、0.2、0.3……と置いて行けば、それまでこんがらがっていた知識もきちんと整理できました。

 

「1枚8円のシールを6人に5枚ずつ配ると、いくらお金がかかるのか」という問題も、文章を読みながら具体物をセットしていってもらうと、「~枚ずつ」という言葉の理解につまずきがあることが判明。

「5枚ずつくばる」という文を読んで、人形にそれぞれ1枚ずつ、全部で5枚のシールを配り終えて、「できた。配れない人形もあった」と言って涼しい顔をしていたのです。

これまで☆ちゃんは「~枚ずつ」という記述が出てくる問題は解けてはいたのですが、「こういう言葉がでてきたら、掛け算をする」と覚えていただけで、意味を正しく理解してはいなかったのです。

 

「5個ずつ9皿に分けると、3個あまる」という問題を具体的に皿と小物で表してみるようにうながすと、ひとつの皿に9個、小物を乗せており、「3個あまる」という部分は、「3掛けるの?」とたずねて、計算式で紙に書こうとしていました。

 

☆ちゃんのように言葉と実際の物の扱いが結びついていない場合にも、学校で習っている期間は、計算ドリル等で同じ問題を繰り返し練習するので、パターンとして解けるようになっていることはよくあります。

学校の先生も、親も、そうして形だけでもできるようになって、テストで点を稼げたら良しとする風潮が蔓延しているように思われます。

それは、算数セットを従来のものに戻せば解決する問題でもないでしょう。

でも、物を扱わなくても、計算カードで暗記だけして、数式を扱えるようになれば問題なし……という方向に行き過ぎることには危機感を覚えます。

 

勉強は、学校で習う内容を訓練したかどうか、それができるようになっているかどうか、にだけ力を入れていても、それ以外の無駄とも思われるさまざまな体験を経なくては、きちんと力がついていかないし、正しく理解できないところがあります。

 

ゲームをして遊んでいると、頭の使い方をきちんと習得していないことに、成績が伸び悩みの原因が見つかることがあります。

写真のゲームは、「青、赤、緑、黄色、紫」の5色と、「猫、犬、馬、牛、豚」の5ひきの動物について、

「青い猫」、「赤い豚」、「黄色い馬」、「紫の牛」のように4ひきの動物、それぞれに色がついているカードを見て、そのカードにない色で、いない動物を場のカードから探す遊びです。

こういうゲームをする時には、まず、色か動物のどちらかを先に絞り込んで、色は緑がないから……猫でも豚でも馬でも牛でもない動物の犬と合わせて、答えは緑の犬ね……と判断すると、すぐに答えがわかるようになります。

そうした情報を処理が苦手だと、色の情報を覚えておくことができなくて、動物だけで判断したり、逆に色だけで判断したりしがちです。

 

カード遊びなんてテストには出ない……と思うかもしれませんが、そうした遊びの中で、手で物を操作しながら、「問題文を読んで、書いてあることを記憶した状態で、そこに描かれている図について判断する」とか、「文中にいくつかの情報が含まれている時、ひとつひとつの情報を整理して段階を踏んで解いていく」といった力が身に着いていきます。

「単元で習うことが、ちょっとでも早く労力を使わずにできるようになること」だけを目指すことには、いくら表面的な知識は詰め込んでも、そうした頭の使い方自体は身に付きにくいという難点があるのではないでしょうか。

 

幼児や低学年の子どもたちは、本人たちが、学習の“報賞”や将来の実利の意味も知らないうちから、「最小の学習努力で最大の効果」を与えようとする大人たちのレールの上に乗せられていきがちです。

それは、子ども自身が、自分の判断で、少ない努力で多くの効果を得ようと模索すること以上に、学びの根っこをスカスカにしてしまうのかもしれません。


年少さん 学習の土台を作る遊び

2022-04-19 10:57:20 | 算数

4歳前後の子たちは、「数量概念の形成」を目的とした遊びが、とにかく大好きです。

将来の算数の力の土台となるパターンを自分の中にインプットしていこうとするような貪欲な遊び方です。

その年代の子のグループレッスンも、個人レッスンも、この「数量概念の形成」を促進させるような遊びが自然と生まれ、どんどん発展していく姿を見かけます。

そうした子どもの知能の成長を飛躍させる遊びが、いきいきと繰り広げられるようにするには、身近な大人が、「子どもがどのように数量概念の形成していくかを理解し、子どもの学習の妨害をするのをやめて、環境を整えていく」必要があります。

4歳前後の子たちのグループレッスンでは、お弁当を持ってピクニックに行く遊びの中で、自分から「氷を3個ずつコップに入れてジュースを作りますからね」と言って、ジュースを作っていたり、大小のサイズを比べる、配る、並べる、人数分用意する、バスの乗り降りと増減、水を移し変えて増減に気づいたりと、この年代の子たちがいかにそうした内容に関心が高いかわかる遊び方でした。

この時期に、こうした遊びに全く関心がない子には、いくつか理由が考えられます。

子どもが自由に同じような遊びをしていると、遊びに発展や学ぶことがないような気がして気持ちがせいてくる大人がいる場合

(お皿に、いろいろ乗せては楽しく遊んでいるよりも、かけ算が言えるようになることに価値を感じるような「結果を急ぐ大人」がそばにいると、遊びを、じっくりと時間をかけて展開していく姿が失われます。

そのため、考えなくなり、記憶に頼って反射的に何かしては、次の遊びを始めるという2歳前後の子の遊び方をし続ける子がよくいます。)

1~2歳半までに「探索してまわる」「いたずらを繰り返す」「たくさん歩く」「感覚を刺激する水遊び、砂遊び」などをあまりさせていない場合

(足りないと、どうしても次の年代に持ち越されるので、4,5歳の子が1,2歳児の遊びを強く求める姿をよく見ます)

できあがったおもちゃが多くて、算数遊びを展開する遊び道具が、教材教材しているか、少ない場合。

拡散思考が発達する前に、収束思考による考え方しかできないようなインプットをおこなう場合。

(幼児の遊びを見ていると、たくさんたくさんの拡散思考を自分の中から生み出していって、それを試したフィードバックから、微妙な正しさの違いを学んでいます。

この時期に、問いと答えがイコールで結ばれるようなインプットばかりしていると、自分で思いつくことや考えたことに自信を失い、大人から教わったことを丸暗記するようになるようです)

生活が慌しく、遊びを中断されがち。中断されることを繰り返すうちに、遊ぶこと自体がめんどくさくなっている場合。

自分で気づく前に大人が教えるので、自分で気づく喜びを味わったことがない場合。

親への愛着がきちんと形成されていない場合。

遊びなのに、遊び心がない場合。

(子どもだからといって、楽しい遊びを次々思いつけるわけではありません。身近な大人や年長の子のすることを見て、学ぶ必要があります。子どものお手本になる場合、楽しい気持ちがあふれてくるような遊び心が大事です)

子どもの世界に「できる」「できない」の評価が入っている場合。

(上手ね、すごいね、と褒めるのだって、大人が出来不出来の結果を気にしつつ褒めていると、子どもから純粋な楽しみやミスを気にせずに何にでもチャレンジしようという気持ちを奪います。幼児期に、もりもりプリントを進めるようなやる気につながっても、小3くらいからの無気力の原因となりやすいようです。

子どもが「できる」「できない」を意識しはじめると、想像力や創造性が阻害されて、遊びから知能を促進するような面が失われていきます。
子どもは、せめて遊びの世界では評価されることを避けようとして、幼稚な遊び方にこだわるのをよく見かけます。

「できる」「できない」への気づきは、子どもの中で無理のない形で自然に生まれてきますが、周囲は小学校に入るまで、子どもの世界に評価したり比べたりする「物差し」を入れない覚悟が必要です。)


変な例えですが、これからさまざまなシステムを構築していって、新しい製品を生み出していこうとしている工場があるとします。

まず、いろんな機械を作りだし、動かしてみて、チェックしていくべきところを、工場内の機械の電源は切ってしまって、できあがった商品をたくさん工場内に持ち込んでは、従業員総出で、他社の商品を使用してみることばかりしていたらどうなるでしょう?

テレビを作ってる工場なら、部品を作る前から、テレビ番組は楽しめるし、従業員は、試行錯誤して壁にぶつかることなく、忙しく「何か」をしているわけで、効率的に見えなくもない……でも、工場の機械は少しも作動していないのです。
数年後に何かが、生み出されてくるのでしょうか?

子どもにしても、大人がいくら外部の知識を与えても、自分の頭と身体を使わせていかないと、この変な工場のたとえと同じように、がんばってもがんばっても、(与える側も使う側も)何だかうまくいかないな~ということになっていくのではないでしょうか?

 

4歳前後の子のままごとは真剣そのもの。

「3分待ってくださいね」「180度にセットして~焼きますからね」
時間や温度を取り入れて、リアルにするととても喜びます。
といっても、本当の意味で理解するのはまだ先のことでしょう。

市販のままごとセットにオーブンもあるでしょうが、「それらしく」見立てて遊ぶ方が喜ぶ上に、見立てるついでにさまざまな知的な要素を加えて楽しめます。

イスなどの隙間から、皿と食べ物を入れて、スイッチを入れてから、お皿をぐるぐるまわします。(電子レンジやオーブンらしくなりますね)写真では布をかけて、演出しています。(何かと布をかけたがる……この時期の子たちです)

4歳前後の子たちの前で、この黒い布を広げて、
「洞窟探検に行く人~?」
「宇宙旅行に行く子~?」
「夜の世界に行ってお化けを見てくる子~?」
などと、その都度適当な提案をすると、
「はい」「はい」と真剣な表情で手が挙がります。

懐中電灯を持って布の中にもぐったあとで、
「どうだった?」とたずねると、

「面白かった」「もう一回行きたい」という返事。
 
消防隊が大好きな★くんが、火災現場で放水しているところです。
「カンカン鳴らすのがいる」と言うので、天井からアルミの穴の空いたボウルを吊ってあげながら、
「どのくらいの高さに吊らすの?」とたずねました。
「これくらい」と、自分の肩あたりの高さを指して、「いや、もうちょっと下かな?もうちょっとだけ。」と答えます。
「ぼくが座るでしょ。カンカンするとき、ほらっ、この高さがいいんだ」と言います。
4歳くらいの子は、自分の背の高さや身体の位置から、長さや高さについて考えるようです。

「ぼくは消防士さんだから、前の席で、プーさんは後ろだよ」
「3丁目行ってきます!火事は11階です。」
「4丁目行ってきます!火事は、146階です!!」
と、位置や数字を取り入れた、遊びが楽しくてたまらない様子です。

この後、消防士さんは、火災現場から、ぬいぐるみたちを救い出し、無事消防署に帰りました。
とたんに「う~う~泥棒です!5丁目に泥棒です」とパトカーになって出かけ、悪そうな顔をしたクロネコのぬいぐるみを捕まえて、牢屋に閉じ込めていました。

算数が得意になる幼児のくらし

2022-02-24 18:44:00 | 算数
幼児期、毎日のくらしのちょっとした工夫で、

算数大好き♪
算数が得意♪

という子になるコツを、いくつか紹介しますね。

算数が得意になるには、「交換」に対するイメージが、とっても大事です。

中学生の関数の学習や方程式になっても、

ある点を別の言い方であらわしていく
ある数を別の言い方で言い換えていく

という交換のイメージがつかめているかが大事なんです。

もちろん、小学1年生の学習でも、小学校受験でも、交換のイメージがきちっとつかめているかは、重要課題です。

小学校受験の場合、
きりんマーク1つ = 赤い丸2つ
くまマーク1つ = 赤い丸3つ

きりんマーク2つでは、赤い丸はいくつか
くまマーク3つでは赤い丸いくつか

といった問題を解く力が必要です。

小学生のくりあがりくりさがりでは、1円10枚と10円ひとつを交換できることがわかる力が必要。
もちろん高学年になっても、算数の難問は、イメージを交換し続けていくことで解けていきます。

そんな大切な交換のイメージ……幼児期にたっぷり経験させてあげたいですね。

切符を買う

☆ガチャポンをする

☆自動販売機でジュースを買う

などは、普通の買い物より、交換がわかりやすい体験です。

また、コインやシールをいくつかためさせて、何かと交換することを、生活の中で、ちょこちょこ増やすといいかもしれません。
大人の世界のクーポン感覚のものより、遊び心がある楽しいものがいいです。

おりこうにしていると、宅配便が届いて、3個ハンコを貯めたら、水遊びさせてあげるとか……

宅配便は、もちろんそこら辺にある空き箱です。

子どもは夢の世界に生きていますから、あんまりリアルすぎる設定ではなく、心が温かくなるようなアイデアの中で、想像したり計算したりする力が育ってきます

子どもが開いているジュースやさんでジュースを3杯頼んで、入れてもらったらキラキラした大きなコイン(折り紙製の巨大コイン)と交換というのもいいですね。

幼児教材等の大人の満足を想定したものは、子どもの想像力を奪うことも多いと思います。

幼児は明るくて優しくて何でもできてしまう不思議な世界に生きているので、そうした世界に大人の方が入っていく必要があるのです。
そうすれば、たちまち算数も国語も理科も社会も、子どもが自由に扱えるおもちゃになっていきます。
 
 

以前、記事で、「自然に察することができる知力が育っていないときに、訓練で教えると、応用のきかないでたらめな解き方をするようになるからです。」と書いたことがあるものの、虹色教室の小学1年生たちの中には、面積の計算をしている子たちもけっこういます。

面積の意味をきちんと理解しているからです。

そうなると、どこで、自然に察することができる知力が育っているかどうかわかるの?という疑問が生まれますよね。

教室では、たてよこのマスに人形を置いたり、オセロの盤に駒を置いたりして、幼いときから、遊びの中で、九九を量や面積のイメージで見る体験をたくさんしています。
また、陣取り遊び、テトリスのような遊びなど、面積への気づきをうながすゲームもたくさんします。

こうした体験をたくさん積んでいて、自由工作で自分で自在に物が作れる子の場合、幼稚園児でも面積の計算をきちんと理解して解いていきます。

また、面積や九九の意味がわかると同時に、最大公約数を使って、同じ正方形でいくつに分けることができるかという問題や、中学受験の文章題を面積図を使って解く方法がわかっています。

次は、「順序」の感性を育てる方法です。

小学1年生の学習で、「前から○番目」「後ろから○番目」という概念を学習することを知っている方は多いと思います。
幼児用ワークなどで、それさえマスターさせておけば、順序の問題は十分と考えてしまいがちです。

しかし、実際には、かけっこをしたとき、追い越し追い越されしたとき、どのような順番になるか、階段で、あと何段のぼると、前の子と同じ段になるか、0から9までの数字を並び替えて、最も大きな数字を作るなど、順序にまつわる問題は何年生になっても続きます。

ですから、幼児期から、「並ぶ」とか「順序」の概念に触れて楽しく遊んで、そうしたセンスを磨いておくことは大事です。

幼児が喜ぶ順序を体感する遊びは、

★ミニカーや人形を並べる

★運動会ごっこをして遊ぶ

★積み木を階段状に積んで人形を置いていく

などです。

子どもと遊ぶ時、お勉強色が強いと、考えずに「はいはい」と丸覚えする癖がつきます。

感性を磨くには、ただ楽しくそうした経験を積めれば十分なんです。

病院ごっこで、待合室のお客さんを順番に呼ぶのも楽しいし、イスやざぶとんを並べて、バスごっこをするのも楽しいです。

ごっこ遊びに、人形も仲間に入れて、並んだり、順番を意識する遊びを取り入れるのです。

外出時に、並ぶことがあるときは、できるだけそうした機会を楽しんで、「まだかな?まだかな?」と、子どもと顔を見合わせて「並ぶ」や「順序」にフォーカスして時間をすごしてみることも大事です。


算数が好きになる遊び

2022-02-19 17:19:52 | 算数

トングで「デコレーションボールを2個ずつ配り、いくつになったか数える」課題をしています。

「2つずつ配るのをやってみたい子?」とたずねると、ハイ、ハイ、と元気に手が上がりました。

4歳の子を筆頭に3歳の子もきちんと2つずつ置いて、数えることができてうれしそうでした。

「もう一回やらせて」と何度もせがまれました。

子どもたちが大好きな数を数えながら、小物を並べていく課題。

「19、20!」と数えて置いたあとで、20個目を戻して、「20引く1はいくつ?」とたずねると、まだみんなわからないのですが、「19だったね」というと納得しています。

こうした並べながら計算する遊びは、さまざまな年齢の子たちとしています。

子どもたちが一つひとつ手に取るたびにわくわくするような小物を100個くらい集めておくと、算数の世界に触れることが楽しくなります。

 


円の面積と円周を簡単に覚えられるカルタを作りました

2022-02-15 11:09:46 | 算数

円の面積と円周を簡単に覚えられるカルタを作りました。

九九を覚え始めた子とならすぐ遊べます。

 

このカルタ、ハンディーキャップがあるため、円の面積の学習でつまずいて困っていた子のために作ったのですが、その子はもちろん、小学校低学年の子まですぐ覚えてあそんでくれました。

ちなみに、この学習でつまずいていた子は、こんな↓複雑な面積の計算もできるようになりました。

 

 

子供といっしょに作ります。

子供にコンパスの幅をものさしで測ってもらいます。

厚紙(段ボールなど)にコンパスで円を描きます。

 

円より少し大きいサイズで切ってから、いったん裏返して、いろいろな柄のマスキングテープをびっしり貼ってから円を切り取ると下の写真のようにきれいなカードができます。

子供はこの作業が大好きなので、いっしょに作ると愛着がわきます。

 

<遊び方(学習の仕方)>

 

いろいろな半径の円のカードを置いて、円の面積と円周の違いについて子供と話をします。

違いについて話す際、円のカードを手に取って、どの部分にあたるのか、触れながら話をすると理解しやすいです。

まず円の面積の出し方を教えます。

 

「半径 かける 半径 かける 3.14」と説明する時、半径の時は手をパチンとたたき、3.14の時は指を3本立てて、「つまりだいたい3だね」と話すと覚えやすいです。

それから、子供と順番に好きな円を選んで、円の面積の公式を言えたら取ります。

「3 かける 3 かける 3.14」のように。

 

この円のカルタは、公式を覚える緊張感をやわらげてくれるようで、算数と聞くと頭がフリーズする子も楽しく取り組めるようです。

 

円周は、「半径 かける 2 かける 3.14」と覚えると、後から忘れたり、混乱したりする子がいるので、「直径」にあたるこの部分……と指で直径の長さを作って、「この長さがだいたい3本分あったら、円の回りにひもをぐるっと沿わしていった長さと同じよね」と、公式の丸暗記ではなく体感として納得できるよう説明するといいです。

 

その後、子供たちと、円周と面積を答えてカードを取っていく遊びをします。

 

さらにさまざまな形の図形のカルタを作ってみたい方は

虹色オンライン算数教室のおまけブログ(鍵付きです)で、

円の面積と円周を簡単に覚えられるカルタを作りました 2

という記事を書いています。

(おまけブログとは、虹色オンライン算数教室を購入いただいた方に見ていただける鍵付きブログです。見ていただく方法については、こちらの記事で書いています。)

 


玉入れ と 計算

2022-01-22 21:53:44 | 算数
小1の子たちと、玉入れ遊びをしているところです。
 
本格的に天井からカゴを吊って投げ入れて、その後、玉の得点計算をしました。

すべての玉が1個ずつ入っていたので、1+2+3+4=10点

ついでに少し難しい問題にチャレンジ。
 
色ごとにA~Dの記号をつけて、

A+2×B+C
 
とか、
 
3×B+D を計算。
 
なんとか解けました。


小学校に行ってから大きな力になるカード遊び

2021-12-11 21:55:12 | 算数

4歳の☆くんが、1~50までの数字がついている電車のカードを、1~10 11~20 21~30 31~40 41~50 に並べています。

数の敏感期が半ばを過ぎると、こうした遊びに熱中する子はとても多いです。

いっしょに楽しみながら並べるのがいいと思います。
ひとりで完成させるからいい…のでなくて、こうした遊びを繰り返す中で、数のルールに気づき、頭の中に数の秩序が整理されていくことが大事です。

ほどほどに援助しながら、何がわかっていて何がわかっていないのか、課題は何かを探ります

子どもがこうしたことに熱中し始めると、一人遊びをしてくれて助かった…とすぐに場を離れる方もいますが、それを繰り返すとこうした活動が一時期の熱中で終わって、学習にまでつながらないように感じています。

知的な作業をしているときはできるだけそばにいて、励まし、子どもの発見に共感してあげてくださいね。

虹色教室に小学生になってから通ってくる子を見ていると、1年生で5+1や10+1はわかるのに、32+1や41+1がわからない…という子がいるのです。

大人にとっては数の常識も、子どもにとっては未知の世界。
数がどんどんつながっていくイメージを上のような遊びでしっかり身につけていないと、教えられたこと以外、まったくわからない…ということもあるのです。

☆くんは、1~20くらいはきちんと並べていたのに、25の次に31を並べたり、
32の次に37並べたしていました。
が、ちょっとコツを教えると、的確に置けるようになっていました。

こうした作業は、数について深い理解をもたらすのです。

数とは別の話ですが、教室には○○式で中学生のレベルまで学習が進んでいる能力の高い子がいるのですが、積み木の数についてたずねると、見えない部分がまったく推測できず、幼児の幼い子のレベルのままなのです。
また、線分図でおおまかに数を把握することも困難でした。

幼児期の体験からくる感覚は、何枚プリントをこなしても身につきません

幼児が自分から繰り返し熱中する遊びの大切さは、他のどんな教育法にも代えられないほど、その後の能力を左右するもののようです。