「子どもとの会話がなりたちません。思考力の伸びが弱いです」という相談を
受けることがあります。
1年生ですが、しゃべったとしても、「あれして~これして~!」「うん、それで?」
といった簡単なやりとりばかりで会話になっていません。
「4歳児ですが、うまく言葉で表現できないので、すぐ手がでます。よく泣きます」
といった相談をときどき受けます。
実のところ、とても多くの子どもたちが、ごくごく簡単な言葉のやりとりだけで
日々過していて、会話のキャッチボールがいい感じに続く子というのは少ないようです。
先日、そうした対話する力が弱いため、
「遊び方が幼いし、考える力が弱いようで心配です」と相談を受けた年長さんたちの
レッスンをしました。
そこで、いくつか気づいた点がありました。
★ 「短い」「浅い」場合も、「小さい」といった言葉で表現していても、
それで親御さんとの会話が通じてしまっている場合。
いちいち間違いを修正させる必要はないのですが、語彙を正しく使い、
さまざまな言葉を使いこなせるように、子どもが「この棒、小さいね」といえば、
「そうよね。短いよね。もう数センチ長ければ、車のタイヤに取り付けることが
できるのに」と返すなど、
正しい言葉や、別の言い方でのフィードバック+親の意見や気持ちをひとことくらいに、
ていねいな返事を返すことが大事です。
家庭では、「この棒、小さいね」に「そうね」と返していたり、
「はやく片付けなさい」と返していることが多いものです。
大人がほんの少しでも子どもへの返事に思考力や創造力を使うようにすれば
たちまち子どもの語彙は増えていきます。
★ 「レゴはブロックじゃない」と言うなど、概念の理解に弱さがある場合。
「魚は生き物じゃない。生き物は、カブトとかクワガタだから。」など、
自分がこれまで見聞きした狭い範囲で言葉を理解している場合があります。
「金魚が尾をひらひらさせるのはどうしてかな?」
「どうして、あんなふうに上手に浮かんでいられるのかな?」といった
子どもの疑問に対し、即座に答えを教えたり、図鑑で調べるのでなく、
いっしょに疑問を追いかけて会話することを楽しんでいると、
どんな生き物がどんな仲間に分類されるかといったことは、
会話の中で、自然と察して学んでいけますよ。
★ 子どもとの会話が成り立たない~という場合。
「そして」「だから」といった接続詞を補って会話をつなぐ方法を
自然に示していきます。
「もし~だったらどうかな?」といったアイデアを子どもといっしょに
ユーモアもまじえて、ありえないことでもいっぱい出してみます。
子どもとの会話が成り立たない~という場合、親御さん側は、
「かなりワンパターンの命令かうながす言葉か、簡単な感想や質問しかしたことがない」
とおっしゃるケースが多いです。
それで、子ども側からは、スラスラと論理的に筋の通った返事を期待してしまうので、
期待が高い分、場が緊張してしゃべりにくくなりがちなのです。
大人の側がリラックスして、会話を楽しむ技術を少しずつレベルアップしていくと、
回を重ねるごとに、子どもの表現力は豊かになっていきます。
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子どもの知能を高めるには、身近な大人が純粋に楽しみながら、
子どもの話に耳を傾けるのが一番です。
子どもが何か言うたびに、「教えよう」「しつけよう」「評価しよう」として、
性急に大人が価値があると思うものを押し付けていけば、
子どもたちはよく考えもせずに、何でも鵜呑みにして動くようになります。
「こうしてごらん」と指示を出すのを控えて、ゆったりと子どもが何かを選択するのを
待っていると、
その子がどんな子で、何に価値を置いていて、どのようなことを望んでいるのか
見えてきます。
↑の写真は、3歳後半の●くんといっしょに過ごしていた、2歳4カ月の★くんです。
★くんは、言葉が達者で、慎重でよく考えてから行動する子です。
この日は初めて会った3歳の男の子を前にして、固まっていました。
心配した★くんのお母さんが、
「~したら?」「~したら?」と声をかけようとしていましたが、
お願いして声かけを控えていただいて、
周囲を緊張した様子で眺める★くんをそっとしておきました。
年上の●くんが先に遊んでいたものを、
後から必ず★くんが、「~やりたい!」と言っているのがわかりました。
また、自分が遊ぶときには、
先に遊んでいた●くんの遊び方から良いものを吸収してもいました。
観察力や何をしているのか意味を察する力が優れているのです。
そうした★くんの性質からすると、
★くんが観察している最中に、「~してごらん」とうながすことは、
せっかく集中して学んでいるところを中断して、
「学ばずに何かするように」とせかすことになりがちなのがわかりますよね。
なら、どんな声かけをすると良いのかというと、
★くんでしたら、観察した後で、
何かをし始めた時に、「よく○○することに気がついたね」とか、
「面白そう。どうやってするのか教えてちょうだい」とか、
本人が触っている物の名前や動作の名前を具体的に表現しながら、
楽しく会話を紡ぎだすことだと思います。
↑の写真では、環状線の本を読みながら、駅名や電車の名前を言いながら、
環状線について説明していた●くんを真似て、同じ本を読み始めたところです。
●くんの態度から学んでいる★くんの気持ちを汲んで
「次は何駅かな?次は何駅かな?環状線はぐるぐる回るね」といった
●くんがしていたことを、★くんが引き継げるような声かけをするといいかもしれません。
子ともと会話をするときに、大人が言いたいことを言うのではなくて、
その子の性質を理解した上で、子どもが自分の意志を向上する方向に向けやすいように
サポートすることが大事ではないでしょうか。
(たとえば、★くんでしたら、年上の子の行動を見習って目的を定める性質を
尊重していくということです)