自閉症の子 と アフォーダンス ターンテイキング の話
で取り上げた「アフォーダンス」という概念は、知れば知るほど、興味深いものです。
アフォーダンスとは、物体の持つ形や色や材質といった属性が、それをどう扱ったらよいのか
という行為の可能性を生き物にメッセージをして伝えているとする、考えです。
「環境が動物に提供するもの」です。
たとえば、引き手のついたタンスは、そこにいる私が引いて開けることができるかどうかを
認識していようとしていまいと、「このタンスと私には引いて開けるというアフォーダンスが存在する」と
表現されます。
幼い子たちを観察していると、
あらゆる場所で、「子どもと物体」「子どもと自然環境」の間に存在するアフォーダンスを
目にすることができます。
幼児の探索活動は、アフォーダンスをピックアップして、利用して、理解する活動を
延々とし続けているように見えます。
幼児は水や砂のようなものに無限に潜在する意味も
探し続けます。
『知覚はおわらない』佐々木正人 青土社
の中で、著者が早稲田の講義で学生たちに、「水のアフォーダンスについて教えてほしい」とたずね、
返ってきた答えを紹介していました。
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……水は物を動かし、浮かし、溶かし、無くす。流す。
水は物と物とを「結びつけ」、すべての「間を埋める」。
陸と陸の隙間を埋める。あらゆる容器はじつは水に埋められる隙間であり、
空気にあるあらゆる隙間は湿気とよばれる飛散した水で埋められている。
水はすべての表面との「緊密な接触」を意味する。水に
何か落とすと、物にどんな小さなくぼみがあっても、どのように複雑なカーブを描いていても、
物のすべての表面に水がぴたりとふれて包む。離れない。
水は接触する物のかたちによって
融通無碍に変形する。
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早稲田の学生が挙げた水のアフォーダンスよりもっと多種多様のものを、
幼い子たちも知覚しているように見えます。
憑かれたようにそれを探求し続ける姿がありますから。
『モンテッソーリの知恵』LESLEY BRITTON (株)ブラザー・ジョルダン社
に子どもが学ぶ過程について説明した次のような記述があります。
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学習は誕生時から始まり、子どもがどのように学ぶかという根本的な過程は、
人生の始まるほんの初期にあるのだと
認識することはまた大切なことです。
まず、第一に子どもたちは遊びを通して、彼らのまわりの世界にある物を
その経験を通して学びます。
たとえば水は湿っている、水は熱くもなるし冷たくもなる、水は容器から別の容器に
そそぐことができるという考えを、
他の多数のことと同様、あなたの赤ん坊や子どもは彼の普段の生活の中で、
お風呂やキッチンでの遊びを通して学ぶことでしょう。
この自発的な遊びは、子どもの発達の要求に対する反応なお中で開始されます。
子どもを手助けするためにできることは、可能な限り子どもの年齢に適切な
多くの異なった経験と多くの遊びを提供できるよう、保育室や過程を遊びやすく整頓んすることです。
親や保育者自身もこれらの遊びに参加し、励まし、そして怒りえる問題に備えて、
安全を守ることも大切です。
(『モンテッソーリの知恵』より)
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子どもの遊びとは、学びであって、
その学びとは何なのかというと、
どうも「アフォーダンス」と関わりが深そうですよね。
土や砂や水や粘土や絵の具、糊、折り紙といった素材は
子どもの感覚受容系を構造化し、精巧にさせる助けとなるといわれています。
大人の目からすると、ただのいたずらにしか見えない活動のどれもが、
子どにとって最も最適な学習であって、
それは学ぶだけでなく脳をより良い状態に発達させる助けになっているんだな
と驚きます。
幼児を見ていると、
直観、感覚、思考、感情のどれが優れているかという
性格タイプのちがいによって
「アフォーダンス」の利用の仕方がずいぶん異なるように感じています。
直観が優れている子は、さまざまな物が潜在させているアフォーダンスを、
奇想天外なものまで次々ピックアップします。
ままごとのフライパンがあったとすると、
それに物を入れて、何かを炒めるまねをする前に、くぼんだ形から
帽子のようにかぶってみたり、足に履いてみたり、
取っ手がついている形からバットのように振ってみたり、
取っ手を持って、隙間に突っ込んでみたりします。
感情が優れている子の場合、フライパンはフライパンとして、
お母さんの真似事をするためや、「はいどうぞ」と差し出してやりとりするために使われます。
感覚が優れている子たちも、フライパンをフライパンとして使うけれど、
感情が優れている子たちよりも、道具そのものをより洗練された動きで扱おうとしたり、
サイズや大きさで分別したり、そのくぼみの部分にぴったり過ぎるほど
合うものを入れたりします。
それか、色やある一部分の形に強い興味を示します。
思考が優れている子たちは、直観寄りの子か、感覚寄りの子かで、
思いがけない活用法を探求することに興味があるか、
秩序立てていくことや、色や形や性質に興味があるかわかれるものの、
少しすると、それを分析して言葉で表すことに興味を示しています。
次回に続きます。