2歳半の●くん。
駅に屋根をつけようとして、うまくいかずに挫折。
●くんのお母さんが教えようとすると、プイッとどこかへ行ってしまいました。
その後、わたしが●くんと駅の屋根作りをしながら、
どのようにすると子どもが集中してお手本を見て、こちらの言うことに耳を傾ける
ようになるのか実演して、●くんのお母さんに見ていただいたのですが、
肝心のコツの部分がうまく伝わらなかったようです。
そこで、わたしが教える際に気をつけていることについて、
少しくわしく説明してみることにしました。
●くんへの教え方については、続きの記事で紹介しますね。
わたしが、レッスンで物作りの活動を大切にしているのは、
工作技術の向上や手先の器用さを高める意味もありますが、
「お手本をきちんと見る」
「大人の話に耳を傾ける」
「自分の考えを上手に表現する」
「人と協調しながら作業に取り組む」
「現在の自分自身に自信を持つ」
ということを、一回、一回の場で身体を通して学ばせるために最適だから、
という面が大きいです。
そうしたことを子どもに習得させるには、
子どもをサポートする大人が、教え方を洗練させていくことが大切です。
まずは、過去記事から。
4歳8ヶ月の★くん。
教室の棚に飾られていたほかの子の作品(かたつむり)を見つけて、
「これ作りたい!」と言いました。
まず最初に、かたつむりの殻の部分作り。
ピラミッドを作るようにだんだん底が広がるデザインです。
幼稚園や学校のように集団に向かって教えるのでなく、個人か小集団に教えている
虹色教室では、その良さを生かして気をつけている点があります。
それは、手伝い過ぎない、必要以上に教え過ぎないことです。
どんな大人の手伝いも、だんだん必要なくなるように、少しずつ手抜きしていって、
しまいにその部分では「卒業」、「自分ひとりでできる!」ようにしていくことです。
だんだん子どもに仕事を預けていって、製作でしたら最終的に、
目標設定と、それをきちんと言葉にして説明する
材料の準備
製作過程で考えながら進める
新しいアイデアを思いつく
アイデアを生かして取り入れる
わからない点、教えて欲しい技術をたずねて、集中して大人の説明をきく
問題点や改善点に気づく
自分で問題を解決する
製作を振り返り、工夫したポイントなどを説明する
といったことを、子どもがすべて自分でやり遂げ、達成感や自信や満足感を得られる
ようにしています。「ちゃんと聞きなさい」と説明ばかりするのでなくて、
「すごいアイデアね。これはどんなふうに動くの?」
「いいこと思いついたね。どうやって使うのか教えてちょうだい」といった、
子どもの発言を引き出す声かけを増やすのがコツです。
手伝い過ぎない……というのは、この★くんでしたら、
ピラミッド型のブロックの組み方を教えてもらいたがったので、
1段目と2段目だけしてみせて、
「こうしてだんだん下が広くなるように作るのよ」と言いました。
★くんは自分でも真似てみたのですが、
1段目、2段目を作ってから、3段目を作ってみようとしたものの、
うまくいかなくて困っていました。
そこで「ほら、こうして一つだけ、ブロックのポツっとしたところを外に出すのよ」と
最低限の説明をすると、あとは、「わかった!そうか!」と、次の段から自分で
ポイントに気をつけて作って満足そうでした。
安易に「こうやってこうやって作るのよ」と、大人が「作れるようになること」ばかりに
重点をおくと、テクニックとしての作り方を学んでも、
自分で問題を解決する方法は少しも身につきません。
非常に多くの子どもが、自分で考えられることまで、
何でもかんでも大人が教えよう、説明しようとするために、目の前の問題に対して、
● 自分でできそうか
● どこまでならできそうで、どこを手伝ってもらえば良さそうか
● すぐにできなくても、じっくり取り組んでみたらできそうか
といった自分の知力を把握することができなくなっています。
赤ちゃんでも解決できることを、する前から、
「お母さん、やって」「どうするの?」とたずねる5,6歳児も後を絶ちません。
すぐ教えずに、少し様子を見ていると、「見本をみてごらん」と言わなくても、
(「見本をみてごらん」と言わないのは、できないときは手本や見本を見ることを、
自分で思いつくようになって欲しいからです。いつも指示をしてもらっている子は、
6歳でも、これが考えつきません)
子どもは自分で「よく見本を観察して、どのようになっているのか研究してみよう」
ということを思いつきます。
また、あれこれ触ったり、よく観察して、「こうじゃないかな?」と推理します。
説明は、どうしても困っている最低限で十分です。
1~2歳の子に対しても「このおもちゃで遊んでごらん」「お砂を入れて」と、
目の前にあるから、自分で考えられそうなことまですべて言葉で指示を出して、
子どもが「考える」のを邪魔をする方がいます。
子どもと会話をはずませるのはいくらでもいいのですが、
「教える」のに関しては、大人が控えないと、
「考えるのはお母さん」「実行するのは自分」という役割分担を身につけて
しまいますよね。
とにかく、必要以上に教えると、子どもの考えるところがなくなってしまうし、
指示ばかりされて作っても本人はちっとも面白くないものです。
こうしたとき、「どこまで教えるか、手伝うか」の微調整ができるのが
1対1で教える良い点です。
ですから家庭で教える場合、ここの線引きに細心の注意を払っていると、
親はどんどん手抜きができて、
子どもは何事もテキパキと自分でできるようになってきます。
「どこまで教えるか、手伝うか」の基準は、
子どもがそれを楽しめるかどうかで決まります。
たとえば「こんなものが作ってみたいな」と考えることができる年齢の子に、いつまでも
「今日はこれを作りましょう」「今日はこれを学びましょう」という
集団教育の真似っこのようなことを続けていたら、
子どもの発想力も目標を定める力も自発性も失われていきますよね。
「大人が説明して子どもが聞いて理解する」というスタイルも、
それは集団教育で人数上、やむをえなくそうなりがちなだけですから、
家庭では「子どもの側が、大人に理解してもらえるように、自分の考えを整理して、
きちんと説明する」が基本と思っておいて、
そちらに近づく方向に、「教える」のでなく「引き出す」接し方をしていると、
その方がずっと自然でいきいきと学び始めます。
子どもが「楽しいな~」とワクワク活動できる範囲で、どんどん子どもに作業や、
考える活動や、言葉での表現をまかせていき、
大人は常に手抜きできる部分を探っていく……
子どもの驚異的な成長する力に、きっと目を見はるはずですよ。
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この文章を書いて、気になっているのが、「教える」ことへの誤解です。
というのは、教えなくてはわからないことや、
子どもが頭で考えられるわけがないこと(危険物の扱い方など)は教えずダメ出しだけで
すませて、
教えなくてもいいこと、ちょっと待っていれば子どもが自分で考えることは、
間を与えず、即座に「教える」、
子どもが自分で選んだり、判断したり、失敗の原因を探ったりする前に、
すべて「教える」、という方が非常に多くて、
「教える」という言葉を使うことに迷いがあるのです。
難しいです
↑警察署の梯子を上らせているところ。
前回の記事で、 「お手本をきちんと見る」「大人の話に耳を傾ける」
「自分の考えを上手に表現する」 「人と協調しながら作業に取り組む」
「現在の自分自身に自信を持つ」ということを、一回一回の場で身体を通して
学ばせるために子どもたちと物作りをしている話を書きました。
2歳半の●くんとのやりとりを再現しながら、それについて説明しますね。
●くんは利発なしっかりした子で、自分の考えをとても大切にする子です。
「こうしたい」「ああしたい」という気持ちはたくさん持っているようで、
目ざとく何かを見つけては、自分も試してみようとします。
といっても、まだ2歳半ですから、手先は器用じゃありませんし、
どんな風にしたらうまくいくのかお手本を見る力もありません。
この日も、駅の屋根を作ろうと、ブロックを2つはめたところまでは
よかったのですが、ずれた位置にはめた後でうろうろし始めました。
でも、きっとトンネルのような電車をくぐらせる屋根が作りたかったのだろうということは
見て取れました。
そこで、●くんのお母さんが、「●くん、●くん。見て。こうやって、作ったら……」と
説明しようとしましたが、●くんは聞こうとしません。
お家でも、プラレールのつなぎ方などで、
うまくできなくて困っている●くんに教えようとすると説明を聞かないので、
そうした場面で、教えるべきか放っておくべきか迷う、とおっしゃいました。
わたしは、●くんのお母さんが「●くん、●くん。見て。」と
作るのが嫌になっている●くんを追いかけるようにして教える
姿を見て、それはまずいなぁと感じました。
わたしは、子どもの側が
「知りたい」「見たい」「聞きたい」という気持ちの高まりで、前のめりになって
迫ってくるような状態に導きながら、教えるようにしています。
工作のワークショップ等でも、どのような態度で接すれば
子どもが「積極的に学びたい」モードになるのか見ていただいくようにしているの
ですが、なかなか伝えるのは難しいです。
「知りたい」「見たい」「聞きたい」という気持ちを高めるには、
集団に教えるときと、個人に教えるときでは勝手が違います。
今回は、個人について説明します。
ひとりの子どもに教えるときは、まずその子の活動のリズムと
頭の使い方のリズムをつかむことが大切です。
たとえば、●くんは、意志が強く、頭脳活動が得意そうな子で、
自分の目的意識がはっきりしています。
活動の様子を見ていると、お友だちのしていることをじっくり観察したり、
何をしようかと注意をめぐらせて、よく考えた上で行動に移しています。
やってみてうまくいかないときは、うまくできないことにちょっと腹を立てている様子で、
プイッとその場を離れて、次のことに取り組もうとします。
常に、「ぼくは、できる!できる!」という気持ちで自分を鼓舞しているようにも見え、
新しいことにチャレンジするときは、それまでの失敗などなかったことのように、
強気で冷静な態度です。
そんな●くんですから、「やったけどうまくいかなかった~」という場面は、
一番声をかけられたくないはずで、
教えようとして追いかければ、その場で聞かないだけでなく、
お母さんの話を聞くこと全般を馬鹿にするようになるかもしれません。
わたしは、●くんが「やったけどうまくいかなかった~」という場面で、
「あぁ、●くんは、屋根を作りたかったんだな」と気づいた上で、
それを胸にしまっておきました。
なぜかというと、そうした場面を心にとめておくと、次に●くんに教える時に、
「何をテーマにすると夢中になってこちらの話を聞くか」のヒントになるからです。
少しすると、お友だちの☆くんの駅に屋根をつけてあげる機会がありました。
案の定、●くんは興味しんしんでこちらを見ています。
わたしはあえて、●くんのことは呼ばすに、
☆くんに、「こうやって、こうやって、高い屋根が作りたいの?」とたずねながら、
作り方がわかるようにゆっくりと作って見せました。
2歳や3歳の子にお手本を見せるときは、
大きな子にするように、「ちゃんと見なさい」とか「聞きなさい」とか、
「こうしてごらん」などとは言わず、
「赤いのを、こうして、もうひとつ赤いのを、こうやってこうやって~」と
行動のひとつひとつを言葉にしたり、
「こうやって、高い、高い、高い~ってするのでいいの?」と
躍動感が伝わるようなたずね方をするといいです。
子どもは、自分がどんなふうにしたいのか尋ねられている間は
無我夢中で課題を見つめているものです。
そうして身体で「お手本を見る」ということをマスターしたあとで、
「さぁ、ちゃんと見てちょうだい」と言うと、ポイントをつかんで集中して
みるようになります。