虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子どもが思い通りに育たないのは、育て方を失敗したため?

2019-12-28 20:45:24 | 子どもの成長

世の中には正しくて善意に基づいた子育てアドバイスがごまんと溢れています。

また園や学校や習い事では、毎日のように、

「そこの場で共有されている常識」を耳にすることでしょう。

子育て中のタレントのブログやネットの掲示板では、子育て中のママはどのように

振舞うべきか厳しい意見が飛び交っています。

 

そうやって母親のもとへ大量に押し寄せてくる情報は、どれも一理あるし、

子育てが順調な時には、日々の指針にしたり、問題を解決したりするのに

役立つ便利なもののはずです。

 

でも、順調とは言えない時……

子どもを育てていれば、否が応でもしょっちゅう遭遇する事態ですが……。

つい必要以上に子どもを叱り過ぎてしまったり、

理想の親像、子ども像と現実とのギャップに苦しんだりしている時期。

それまで何気なく取り込んでいた情報からまるで毒素でも流れ出しているかのように

内面を蝕まれていくようなことが起こりがちなのではないでしょうか。

 

子どもの言動が手にあまるような場合、内面化した多くの情報に責め立てられて、

子どもの気がかりや問題のすべてを、自分の育て方の失敗と結び付けて考えて

おられる方はたくさんいらっしゃいます。

 

でも実際に親御さんに会ってみると、どの方も9割方はきちんと子どもに対応していて、

罪悪感や失敗感は不必要という印象があります。

必要なのは、子どもの個性に添って、ほんの少し接し方を微調整すること、

修正するにしろ自分のあり方のだいたいに自信を持つこと、

子どもの育ちの道筋の大きな流れを把握して、うまくいかない状態に不必要に

うろたえないことではないでしょうか。

 

子どもによっては唖然とするようないたずらを繰り返す子もいるし、

かんしゃくや駄々をエスカレートさせていく子もいます。

年中、文句ばかり言ってやる気がない子もいるし、

激しく動き回って、トラブルばかり起こす子もいます。

自分の言い分を通そうとして長い時間ごね続ける子もいるし、

不安や緊張が強くて、新しい活動に頑として取り組もうとしない子もいます。

 

そうした子と接していて経験的に言えるのは、

子どもの困った行動の多くは接し方を変えたり、十分に甘えられるような時間や機会を

設けたり、過干渉を減らしたり、子どもの長所や強みにスポットライトを当てることで

改善するけれど、だからといって、今、子どもの問題に悩んでいるのは、

それまでの過去の失敗の結果でもないということです。

 

わたしがこうした意見のよりどころとしているのは、

「たくさんの子どもたちと接する機会がある」という点と

「今、困った状態にある子と非常によく似た時期を経た子が、

その数カ月後、1年後、数年後には、

どのように成長していったのか目にしたことがある」という点で

培った勘のようなものです。

が、それは、子どもの言動に途方に暮れている親御さんが感じたり考えたり

判断したりしている内容と、かなりずれがあります。

 

子どもの問題行動がエスカレートしている時、たいていの方は、

「叱りすぎているのでは」「これまでの接し方が間違っていたのでは」と

親の自分にその原因があるのではないかと悩んでいます。

でも実際にそうした子とじっくり付き合ってみると、子どもの気質の側に因があって、

親の叱り過ぎや接する際の悩みを引き出しているように見えるのです。

 

周囲を疲労困憊させるほど困らせる子には、

発達に偏りのある子もごく一般的なもあるでしょうが、

どちらにしろ、際だって魅力的な面を持っている場合がほとんどです。

知能がとても高かったり、美的な感性が優れていたり、好奇心が強く科学への関心が

強かったり、エネルギッシュで粘りがあったりするのです。

繊細で優しい気持ちを持っていたり、

きちんとしよう完璧であろうがんばろうという気持ちが人一倍強かったりする子も

多いです。

わたしが教室で見かける親を困惑させる子のほとんどは、

発達障害による育てにくさがあるか、ハイリーセンシティブな子か、

ギフテッド(ハイリーセンシティブな子や発達障害の子と重なる部分を持っている

ことが多い)の子のいずれかの特徴を持っているように見えます。

ギフテッドは、先天的に平均値よりも顕著に高い能力を持つ子たちのことです。

 

ギフテッドの子どもたちは、神経の感受性が増すことによって通常の人間より

刺激を生理的に強く経験する特徴を持っているとされています。

こうした刺激に対する並みならない反応をすることは、OE(過度激動)と

呼ばれています。

ギフテッドの子らのように高い能力を持っているわけでなくても、

ハイリーセンシティブな子たちは、よくこのOEという精神状態にあります。

 

ポーランドの心理学者、精神科医、詩人であるドンブロフスキは、

OEという平均以上に敏感な精神状態を5つの分野に区分けしています。

 

1精神運動性OE

落ち着きがなく頭の回転が速い印象を与える。話が一気に飛躍する、

頭が働いて眠れないなど

 

2. 知覚性OE

神経質さ。光、音、匂い、触感など感覚器官に与えられた刺激に過剰に反応する。

美的感覚にもつながる。


3. 想像性OE

隠喩などの詩的表現に優れる。「注意力散漫」と見られる。白昼夢を楽しむ。


知性OE

広く知られているギフテッドの特徴。知識を渇望し、疑問は研究し、理論的な分析や

真実の探求を愛する。そのため高度な科学・ドキュメンタリー番組を好んで見たり、

頭脳パズル、知覚ゲームを好む。


5. 感情性OE感情の種類と幅が大きく「ドラマチック」な反応を示す。

より楽しみ、より悲しみ、より怒り、より驚き、より恐れる。深く感情移入し、

愛着心、責任感、自省意識も非常に強い。

 

子どものOE過度微動が強ければ、育てる親にすれば、

日々、へとへとに疲れ果ててしまうことは想像できます。

でも、こうしたOEの強い子たちの優れた面に光を当てて、

もがき苦しみながら成長していく姿に寄りそい、創造性や強い探究心を発揮する場を

保証してあげるなら、思い通りに育たない不全感は、思った以上の、

想像できなかったほどすばらしい個性の面白さに変わっていくのだと感じています。

また、実際に教室で、そうした姿を目の当たりにしています。


レンガ積み木で十の位と百の位の学習

2019-12-22 20:04:46 | 算数

教室にあるさまざまな物を使って大きな数を体感しています。

年長さんのふたりがしているのは、レンガ積み木のチョコレート屋さん。

レンガ積み木のチョコレート10枚を輪ゴムでたばねて、10の塊を作っています。

作る作業も面白いし、後から算数の問題にチャレンジするのも

楽しくできます。

100を超える数まで数えたり、

32+38=

41+25=

といった問題を解いたりしました。

 

10のかたまりが2こと5でいくつ?

35は10のかたまりがいくつとバラバラの数がいくつ?

98を見せて、「あといくつで100になる?」といった質問をしています。

工作の写真もいくつか。

3~34歳の子のグループでも10作りをよくします。

あといくつで10になるかな?

という問題や「10,20、30~」と数を数えています。


算数の学習の記事をまとめました

2019-12-18 11:01:04 | 算数

この1か月ほど、リフォームをしながら教室をしています。

ブログの更新やらお約束していたオンライン用の「おまけブログ」が

そのままになっています。(年末と正月には少し時間ができるので、

その間に何とかしようと思っています。)

 

過去記事ですが、算数のレッスンの記事をいくつかアップします。

記事と同じものがないと(たくさんのブロックなど)学べない……と感じるかもしれないですが、

雰囲気だけ感じ取っていただき、お家にあるもので学んでみてくださいね。

 

<年中さんの算数レッスン たし算マシーンとひき算マシーン>

年中のAくんとBくんのレッスンの様子を算数の学習中心に紹介します。

「コードマスター(プログラミング ロジック ゲーム)」

の課題に挑戦しています。

このパズル、アメリカのお土産にいただいたもので、今、教室にくる男の子たちに

とても人気があります。

対象年齢は8歳~大人までとあるいるのですが、

AくんもBくんもすぐにルールを飲みこんで問題を解いていました。

 

↑ 写真のブロック作品を『たし算マシーン』ということにして問題を出して

遊びました。隙間にいくつか大きめのビーズを入れておきます。

 

「上から5このビーズを投入する場合、途中で3こと4この

ビーズが加わって出てくるとすると、下からいくつのビーズが出てくるでしょう?」

といった問題を考えます。

こうしたおもちゃで課題に取り組むよさは、

「正しい数を当てたい」「あっているかごうか確かめたい」

「もういっかいやりたい」という気持ちを引き出してくれることです。

 

ついでに引き算マシーンも作りました。

ジュースとお茶がでてくる機械と同じ作りかたです。

投入する数について、指で形を作ってしっかり確認します。

問題を出す側の子が一本だけブロックの棒を引き抜きます。残った数を見て、

下に落ちた数がいくつだったか当てます。

答える側の子は、残っているビーズの数を当てます。

 

間違えても楽しいし、何度も遊ぶうちに

5-2と6-2の違いにしても、答えを知識として知るのではなく、

計算式と答えの関係について勘を身につけながら理解を深めています。

 

AくんとBくんが競ってやりたがっていた二進法のおもちゃ。

幼い子たちには二進法の仕組みは難しいので、

レバーについている数を足したら、予想通りの数のポケットに玉が入るように

しています。

 

左の作品は、ひき算マシーンにBくんがブロックを足していって

『ひき算マシーンスーパーX』に進化させたものです。

右は、Aくんのひき算マシーンの進化形。

 

今回、創作好きのAくんのひき算マシーンはあまり凝った作りではありません。

実は、Bくんがひき算マシーンスーパーXを作っている間、

お城の石垣を作っていたから時間が足りなくなったのでした。

 

まだお城は建っていません。

 

算数タイムに5円で遊んでいます。5円がふたつ。5と5で十。

手を打って確認。

 

5円が4つ。

指で忍者になって、5円の上を渡ります。

「5~10~15~20」と数えながら。

大きな数を見て、64-4 や 78-8などを考え中。

 

AくんもBくんも数が大好きな子に成長しつつあります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<年中グループ 算数レッスンのひとこま>

年中のAちゃん、Bちゃん、Cちゃん。

工作用のティッシュの箱にビー玉をたくさん詰め込むいたずらをしていました。

 

いくつ入っているか数えることにしました。

「10より多いかな?」とたずねると、3人とも興味しんしんです。

 

10のくぼみのある製氷皿に、「1,2,3……」と数えながら入れていくと……。

 

トレイのくぼみが全て埋まっても、まだまだあります。

そこで、「10はAちゃん持っていてね」とトレイのビー玉をAちゃんの手の中に

預けて、11から先を数えていくことにしました。

「11,12、13……20」まだあります。

 

「21,22,23……」みんな2ケタの数も上手に数えています。

 

「30」までトレイに入れてから、ティッシュ箱を振ると、

カラコロ小さい音がしました。隙間からひとつだけビー玉が見えます。

「あっ、31こだ!」とCちゃんがうれしそうに声をあげていました。

 

いっしょに空中浮遊という手品の道具を作っていた時のこと。

お人形を描いて、重りを仕込ませて作ります。

頭だけで人形をコップの縁に乗せて大喜びの子どもたち。

 

手品に刺激されて、Cちゃんが、

「あのねぇ、先生。わたし、手にカードとかペタッてできるよ」

と言いました。「すごいね。汗をかくからひっつくのかな?」と話していると、

「ほらーほらー」と金色のテープを乗せて実演。Cちゃん曰く、手品なのだそう。

 

手品かどうかは別にして、これは他の子たちに大受けで、

「見て―見てー先生!わたしもできるー」「はやく写真撮って」と

言いながらこの通り。

 

カニの迷路とお家を作って遊びました。

カニを放したところ、いっしょう懸命作った子のお家ではなく、

箱に穴を開けただけだったCちゃんのお家に何匹か集まって動かなくなりました。

「カニは、電気のついた家は嫌いなのね。

じめじめしていて、暗くて、お魚のにおいとかちくわのにおいがして

ちょっとくさいお家が好きなのかな?」といった話をすると、

子どもたち同士で「わたしは明るくてじめじめしてないお家が好きだけど、

カニは電気が消えているお家が好きなのよねぇ」といった話で盛り上がっていました。

 

Bちゃんが作ったブランコ。Bちゃんは2歳の時にブロックとブロックの間に

ストローをはさんで、「ラプンツェル作ったよ」と言っていました。

長いストローがラプンツェルの髪の毛に見えたようです。

それ以来、ストローを使ってさまざまなものを作るようになったBちゃん。

ブランコ、うんてい、牧場の柵、カギなど自在に作っていきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<うまくいかない時も、投げ出さずに何度も何度も再挑戦する力>

小2の女の子たちのグループレッスンで。

ユースホステルでサンダルを作って以来、何度も何度も改良を加えて

作り直しているというAちゃん。

自分の足型を取り、前に失敗した原因をていねいに分析し、

何回もゼロから作り直しています。

Aちゃんは、勉強でもうまくいかないときにも、落ち込まずに

何度も再挑戦する強さを持っています。

 

教室にはAちゃん同様、失敗や挫折に強くて、

うまくいかないときにも、りラックスした状態で何度でも再挑戦していこうとする子たちが

たくさんいます。

そうした子たちの親御さんには、とてもよく似通った面があるのを

感じています。

 

「何かする度に、出来不出来の評価しない。その時できなくても、先の心配をしない。

遊びも勉強も同じように大切にしている」というところです。

 

1年程前に、教室の折りたたみ式のドールハウスに感動して以来、

Aちゃんが何度も作り直している「からくりハウス」。

今日はわたしといっしょに隠し部屋を作りました。

 

シンプルな小さな部屋があっという間に広がって隠し部屋が生まれます。

 

 

Bちゃんが作った化粧コンパクト。

Bちゃんは目にしたものを何でも作ろうとします。

円柱形のものを作ることが多いです。

 

今日、Bちゃんが教室で作っていたドールハウス。

ベッドやテーブルなど、自在に形を創りだすのが得意です。

カーテンは開閉できる工夫をしていました。

 

少し長い文章題を整理しながら解く練習をしています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なわとびを しました。つとむさんは 1回目は86回 とび、

2回目は 1回目より 38回 多く とび、3回目は 2回目より

27回 少なく とびました。

まさとさんは 1回目は93回とび、2回目は1回目より17回少なくとび、

3回目は 2回目より29回多くとびました。

3回目は どちらが 何回 多く とびましたか。

              (トップクラス問題集2年生より ) 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

算数が得意なBちゃんが、めずらしくうっかりミスをしたものの

3人ともよくできていました。

 

ガタガタした形のまわりの長さを問う問題をいくつか解きました。

合わせると、縦(横)線と同じになる部分に、顔や身体を描いてみると、

とてもイメージしやすくなります。(数字が逆さまの部分は気にしないでくださいね)

 

計算の数当てクイズも楽しかったです。


工作を楽しくするアイデア

2019-12-11 19:31:16 | 工作 ワークショップ

幼い子たちとの工作は、「さぁ、今日は何を作ろう」と構えるより、

ミニカー遊びやお人形遊び、ままごとといった

普段の遊びに、ちょこっと手づくりを足すくらいの感覚で十分だと思っています。

ミニカーで遊んでいる時、パーキングやガソリンスタンドがあると楽しめますよね。

物作りは、「こんなものがあったらいいな」をすぐに叶えてくれます。

 

一方の通路から入った車が回転して

別の通路から出てくるシステムがあると、ミニカー遊びがとても

楽しいです。

丸いチーズの空き箱や写真のような容器などの

中央と地面にする紙に穴を開けて、切ったモールを通してとめます。

車の出入り口を作ったら、できあがり。

 

ミニカー遊びがたちまち楽しくなります。

 

仕組みのある工作は、初め、シンプルであればあるほど

後から応用がききやすいです。

 

↑のトイレットペーパーの芯にひもを貼り付けたものは、

「巻き上げ機」です。

これでエレベーターを上げることもできるし、車を移動させることもできるし、

ペットのリードにもなります。教室ではカツオの一本釣りや船の帆を上げる作業にも使います。

とにかく、くるくるひもを巻きあげる操作はやっていて爽快です。

 

1、2歳の子と工作する際に、空き箱の犬(ティッシュの空き箱に耳だけつけたものなど)に

この巻き上げ機をつかったリードをつけると大喜びします。

1、2歳の子にもわかりやすい工作です。

 

↑エレベーターがあがりました。

 

こうした簡単な「巻き上げ機」を作れるようになると、

曲がるストローのように

ハンドルがついた巻き上げ機を作ったり、

いったん巻き上げておいて、元に戻ろうとする力を使って

動く仕組みにもつながります。

 

巻き上げる道具をふたつ作って、どちらも棒などに差すと、

一方を巻くともう一方が回転する仕組みも作れます。

 

 

「巻き上げる道具をふたつ作って、どちらも棒などに差すと、

一方を巻くともう一方が回転する仕組みも作れます」と書いたところ、

「よくわからないので、どのようにしたらいいのかくわしく

知りたい」という声をいただきました。

 

 

たとえば、下の写真のように

ブロックの棒を2本立てて、

筒状の芯(トイレットペーパーの芯だとブロックの棒に差すと

穴が小さいのでペーパータオルの芯を使っています。なければ、紙を丸めると

自在に筒を作ることができます。

↑の写真のようにブロックの棒に筒状のものに

ひもを貼ったものふたつの一方をくるくる回すと、もう一方もくるくる回ります。

筒の一方に紙皿を貼って「回転すし」の仕組みなどが

作れます。

 


面白い三角の使い道

2019-12-08 20:26:08 | 積み木  ピタゴラスイッチ

子どもたちの積み木遊びを観察していると、

思ってもみなかったところに三角形の積み木を使う子がいて

びっくりする時があります。

子どもは頭が柔軟なんだな、と感心する瞬間です。

 

下の写真は小学1年生のAくんが宇宙科学館を作っていた時のものです。

大きな三角形の積み木を手にして

考え込んでいたので、それは山や屋根くらいにしかできないんじゃないかな?と

思いながら見ていたら、科学館の前の看板?案内板?を設置するスペースの土台にしていました。

レンガ積み木の文字の入っている部分もうまくはめこんで、何かそれらしい感じになっていました。

Aくんは毎回電子工作をしたがる子です。だから積み木遊びに誘った時は

「うーん」と不満そうな顔をしていました。

でも、「博物館を作っていた子がいるよ。Aくんは宇宙好きだから宇宙科学館を作るのも

楽しいんじゃない?」とたずねると、パッと顔が輝いて、

大きくうなずいていました。

それから1か所、1か所、自分の頭の中のイメージに従って宇宙科学館を作っていました。

↑らせん階段です。

 

入り口のところで面白い三角の使い方がありました。

スロープと階段です。

こういう部分、大人はなかなか気づきませんよね。確かに

こうした施設の入り口にはスロープと階段の両方がありますね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

三角の使い方といえば、

自閉症のBくんの使い方に度肝を抜かれました。

最初、Bくんが三角の積み木を上の写真のようにして

天板を乗せようとしているのを見た時は、

「Bくん、それは無理だよ。乗らないよ」と注意していたんですが、

何といい感じに乗っかって安定していたんです。

近未来的なすてきな建物ができていました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

小2のCちゃんは、

半透明の三角形の積み木をふたつ合わせて長方形を作ったものをたくさん並べて壁を作っていました。

大人は壁には長方形の積み木を使うといった先入観があるかと思うのですが、

子どもはそこに使うのか……とびっくりするような使い方をします。

迷路のゴールにおもちゃの500円玉を置いているのもCちゃんならではです。

 


具体物で体感する前に、プリントで覚えてしまうと、現物を正確に認識できなくなる?

2019-12-03 09:40:03 | 算数

日高敏隆氏の『生きものの流儀』という著書に興味深い話が載っていました。

簡単に要約して紹介しますね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

著者が当時の成城学園小学校の先生だった庄司和晃先生からうかがった話です。

ある日、庄司先生は子どもたちに画用紙を配って「さあ、アリの絵を描いてください」と

言ったそうです。たちまちイメージできたらしい子もいれば、まだイメージをさぐっている子もいたそうです。

できた絵を見ると、アリの身体は頭と胴体のふたつに分かれていて、

人間がイメージしている「動物」の姿であって、

たいていの女の子はそのアリにリボンまでつけていたのだとか。

 

次に庄司先生は、子どもたちひとりに1匹ずつ、「実物」のアリを渡して、

「これがほんもののアリだよ。今度はそれをようく見て、アリの絵を描いてください。」と言ったそうです。

すると、驚いたことに、実物のアリを見て描いたはずの絵でも、その多くは

依然としてアリは胴と頭、足は四本だったのだとか。

著者はそこに人間のイリュージョンというものの見たような気がしたということです。

どの子も実物はちゃんとまじめに見ているはずなのに、

実物が自分の思っているように見えてしまい、それ以外のものは、

存在しなくなっているのです。

 

庄司先生は、その後、

「……よく描けてきたなあ。えらい、えらい。だけど、アリの体って

ほんとに頭と胴体しかないのかい?」とか、「じゃぁ、その六本の足はどこに生えている?」といった

会話を通した指導をして、もう一枚、子どもたちに絵を描かせると、

子どもたちの絵はより正確なものになりました。(が、依然、赤いリボンをつけている子らはいたようですが)

「イリュージョンが修正されるには、これだけの手間が必要なのだ。しかも現実の生きたアリが

手もとにいるのにである」と著者は人間の持っている錯覚や幻想のもつ意味と力が

少し理解できるようになったと述べています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先に紹介した話で面白かったのは、

実物を見た後で、最初の動物もどきのアリの絵から、

頭、胸、腹、そして6本の肢という昆虫の姿に変化させることができた子というのは、

一枚目の絵を何度も描いたり消したりしていた子どもの場合に

多かったという著者の発見です。

何でも、一枚目の絵を太い鉛筆で自信満々、頭と胴、四本の肢と描いた子の絵は、

実物を見ても何一つ変わっていなかったそうです。

 

この話を読んだ数日後の小学2年生の女の子ふたりのレッスンで

こんな気になる出来事がありました。

この2年生の子たちは、もともと観察力があって、思考力も高い子たち

です。

そのうちの子のひとりは、2年生になったあたりから、長文を読んで理解する力が伸びて、

中学入試向けの和差算や植木算や旅人算なども

ひねった問題でもテキパキと解けるようになってきました。

 

それでこれまでは虹色教室で月に1回、そうした問題に触れる程度だったのですが、

お家でも最レベの最高レベルの問題を中心に予習をしてくるようになりました。

 

わたしはこの子がやる気と自信に満ちて学習に取り組むようになった

こと自体はうれしくて、その意欲を大事に育んでいこうと感じた反面、

ちょっと気になる態度に引っかかるようになってきました。

 

お家で学んでくる際に、正しい式を教わってくるようになったためか、

問題を見たとたん、複雑なものでも数字を操作して、

正しい公式で解こうとする姿が目立つようになったのです。

 

でも、少し前なら、紙に絵図を描いてみて、考えこみながら解いていたのが、

問題を見たとたん、数を正しい公式にあてはめるようにさらさら

解くようにもなっていたのです。

 

そこで、その子がお家ではしていない3年生の最レベの問題から、

一部を取り出して、上の写真の図を描いて、緑色の線の部分、

直径2センチの円の中心が描く線について、

長さをたずねたところ、「18センチ?ん、20センチかな?」とでたらめなことを言いました。

 

何度もよく見るようにうながしても、緑の線が18センチの線より長いということや、

20センチよりも短いということに気づけません。

この子は、本来、とても観察力があって、直観がよく働く子ですから、

この線の違いに気づかないわけはないのです。

 

でも、「小学3年生のだと難しいに違いない」とか「やったことがない問題は解けないに違いない」とか

「算数の問題は、そこにあるどれかの数字を言えばいいはず」といった思い込みが邪魔をするのか、

素直に絵が見れなくなっていました。

 

難しい問題をさらさらと正しい式を立てて解けるようになると、

周囲から「すごい~」という賞賛を浴びることが多くなります。

 

すると、子どもはうれしくて、がんばる意欲を見せるときがあるのですが、

その時期の周囲の大人のフォローやサポートが

とても重要だと思っています。

 

「すごい~」と言われることにばかり心が奪われると、

絵図を描いて、試行錯誤して、自己流の間違った式を立てるより、

「最初から答えを見て、暗記してしまえばいいじゃん」という態度に傾き

がちになるからです。

 

そうした時に陥りやすいのは、

意味を理解せずに、

「こういう言葉が出てくるこういう問い方の時は、

この数からこの数を引いて、それにこの数をかければいいんだった」といった

わからないままに丸飲みするように解く癖がつくことです。

 

そういう癖がつきはじめている時の危険信号は、

現物を見ているのに、

自分のなかのイリュージョンに自信を持つあまりに、

現物を正しく見ることができなくなっているという状態だと

感じています。

 

線が長いか短いか、

素直に見るならすぐにわかるのに、

「前にどんな解き方だったかな?」と

記憶をさぐる作業に忙しくて、目の前のものが見れなくなる場合があるのです。

 

もちろん、意欲的に学習し、長い文を理解して解く力が伸びること自体はいいことで、

それを認めて、褒めて、大事にしてあげなくてはなりません。

 

でも、その時に、

子どもが問題を自分で具体物を操作して説明できるほどわかっておらず、

自分で絵図をきちんと描いて、自分の間違いを修正できるほど成長していないにも関わらず、

式さえ暗記すれば、そちらが正しい答えなんだよ……と教えこんでしまうことは

危険なことだと思うのです。

 

正しい式を覚えるのは、

まず問題の意味が正確にわかって、自分で自在に操作できるようになってからで十分で、

わかりもしないのに、正しい式だけかけるようになると、

自分がわかっていると錯覚して、さっぱり応用のきかない力をつけてしまうからです。

 

前回の記事にe-com子育ての羊先生から次のようなコメントをいただきました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヒトの五感というのは脳で処理をする過程で、

記憶や経験に影響されるというのを聞いたことがあります。

アリの絵の話は、ヒトが見たいものを見るという例ですね。

実はまだブログでアップしていない記事で、公式をわすれたから解けないという

生徒の話を書きました。公式から離れて考えれば持てる知識で解けるのにです。


「正しい解法」という枠に囚われている生徒が多いように感じます。

その原因を作っているのは大人なのですね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

羊先生のブログで、

現実の中から何かを引き出す訓練=学習

という記事を読んでとても共感しました。

京都産業大学の永田和宏教授の

 「今の若い人は、現実の世界から何かを引き出すという訓練を全く受けていませんね。」

という指摘からはじまる考えさせる文章や

JT生命誌研究館館長 中村桂子氏の

「 教育や学問では一人一人の状況に応じて対象から引き出すものが違ってくるところが大事なのに、

どんな子供も同じことから同じものを引き出すように仕向けている風潮がありますね」

というこちらも現在の教育問題の急所を突く指摘と取り上げて、

羊先生がわかりやすく解説してくださっています。

ぜひ、ブログに遊びにいってくださいね。

 

前回の記事で、教室の子が意欲的に学習に取り組むようになると同時に

目の前の事実が素直に眺められなくなる事態が起こったという話を書きました。

 

「デジタルからデジタルへ」情報を変換することを覚えるほど、

目の前の現実の世界や自分が向き合っている対象を正しく読み説いて、

そこから価値ある何かを生み出していくことは難しくなりがちです。

 

 でも、だからといってプリントや本で学んだり、

その子の能力を超える概念に

触れたりすることが悪いわけではないはずです。

 

羊先生がおっしゃる通り、「正しい解法という枠に囚われるあまり、

公式を忘れると解けなくなるような原因を作る」 大人の態度に

問題があるのではないでしょうか。