虹色教室には、幼児期に病院で広汎性発達障がいと診断されたり、
広汎性発達障がいの疑いを指摘されたりしていた子が
かなりの人数います。
また病院は受診していないものの、幼児期には、集団に溶け込みにくく、
こだわりが非常に強くてパニックを頻繁に起こしていた子や
発達の凸凹が非常に大きかった子など、広汎性発達障がいの子らの特徴をたくさん持っている子もいます。
その子たちの成長を見守っていると、病院で診断を受けた時点では、
先々まで非常に深刻な発達の遅れが残ることを指摘されていた子らも、
小学校1年生か2年生の後半くらいまでには、
知能の面でも、社会性の発達の面でも、ほとんど問題が感じられなくなることがよくあります。
虹色教室で接している子に限れば、適切な働きかけをしてきた場合、
幼児期の問題がそのまま残るケースよりも、診断時には考えられなかったほど成長し、
さまざまな面で優れた能力を発揮するようになっているケースの方が圧倒的に多いです。
論理的に数学的に考える能力とか、物を作り上げる力とか、
問題解決能力とか、ねばり強くまじめに努力する力などは
同じ年齢の子たちからすると突出した高い能力をしめす子もたくさんいます。
特に自閉傾向ゆえに発達の遅れが目立っていた子というのは、
一般的な子が4、5年かかってできるようになってきたことを、
たった1年か2年で一足飛びにできるようになることがよくあって、
身近な大人の関わり方や接し方で、
非常に悪い状態にも非常に良い状態にもなりえる子らだと感じています。
↑の写真は、幼児期に広汎性発達障がいの疑いを指摘されていた
現在は小学1年生の★くんです。
年長さんまでは、言葉の理解力が3歳年下の妹さんよりもかなり幼い状態でした。
同年代の子らの遊びの輪に入ることが難しく、興味の幅が狭くて遊びが限られているので、
ひとつの作業にこだわりだすと何ヶ月間もそればかりやりたがるようなところがありました。
教室外の子に参加してもらっている夏の科学クラブや算数クラブの際に、
知的な面での遅れで気になる点がたくさんあったので、就学準備のために月1回のレッスンに
通ってもらうことにしました。
それから2年あまりの間に、★くんは確実に成長してきました。
小学校では算数のテストも国語のテストもどちらもほぼ満点を取ってきているそうです。
それを聞いて、前回のレッスンでは、トップクラス問題集2年生の国語(P84,85)
で読解力のテストをしてみました。
かなり難しい記述の多い問題です。半分くらい解けたらいいかと思っていたのですが、全て解ききって
全問正解でした。
★くんは、柔軟に他の子の遊びや会話に対応できるようになっており、先日もリーダーシップを発揮して
お友だちをまとめる役もきちんとこなせていました。
快活で自信に満ちていて、集中力があります。
★くんがこれほど変化したのだから、
虹色教室ではどんな風に勉強を教えているんだろう、よほど上手に指導しているのだろう、
と考える方がいるかもしれません。
でも、実のところ、わたしはほとんど何もしていません。
月、1回、会うだけですから、できることといったってしれているのです。
でも、★くんが虹色教室に来ることがなく、ただ本人の成長する力に任せていただけでは、
今のように柔軟でがんばり屋で
考えることが好きで理解力の高い子に育っていたかというと
難しかったような気もしています。
ほんのささいな違いとはいえ、
その子がその時期その時期に、最も必要としていることに
フォーカスすることができる感覚を、身近な人がひとりでも持ち続けることができるかいなかは、
ハンディーキャップのある子の成長に大きな影響を及ぼすものだと感じています。
虹色教室では
親御さんがそうした感性を持ちながら子育てできるように
サポートしています。
わたしが教室で関わることができる子どもの人数は限られています。
でも、せめてブログを通して、「その時期、その時期に子どもが最も必要としているものを見極める方法」を
お伝えすることができたらなぁと思っています。
★くんの成長の秘密は、次に挙げること密接に関わりがあると感じています。
★くんは、幼児期に好きなブロック遊びでとことん遊びこみました。
ブロックの世界で目標を定めることや、論理的に考えること、
工夫すること、ねばり強くやり遂げること、自分に自信を持つこと、他人と交渉すること、周りに認められること、
他の素材を取り入れたり、興味の範囲を広げること、お父さんと遊びを通して深くかかわること、
ブロックを使って算数の問題を解くことなどを、毎日、思う存分してきました。
苦手だったおしゃべりも、自分で作ったブロック作品について説明するうちに、
徐々に流暢に話せるようになってきました。
柔軟性や他人との関わりを広げる段階で、焦らない。
ひとつひとつの揉め事を大切にする。
親御さんたちが常にリラックスしていて、不安定な心になりにくい。親御さんたちの心が
ささいなことでぶれにくい。
親御さんがどちらも、
学習ができるようになることよりも、本人の「好き」の世界を広げることの方に
積極的。
お父さんといっしょに山登りをしたり、機械いじりしたりするなど、
身近な大好きな人が、未知の世界とのつながりを作ってくれている。
学童のように異年齢の子が集まる場で、子ども同士の関係をサポートして
くれる方がいる。
次回に続きます。