遊びのアトリエさんの新しいホームページができたそうです。
とてもすてきです。
あそびのアトリエ
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発達障害のある子のお友だちとの関係をサポート 1
発達障害のある子のお友だちとの関係をサポート 2
発達障害のある子のお友だちとの関係をサポート 3
の記事にさせていただいた
発達障害の診断を受けている3歳6ヶ月の★くんと未診断ながら発達上の凹凸が目立つ☆くんの
1ヶ月ぶりのレッスンの様子です。
☆くんは、劇の幕が上がっていくところに夢中なのだそうです。
そこで紙を丸めて作った筒に布を貼りつけて、
くるくる上がる幕を作ってあげました。
☆くんはハムスターの人形や持ってきたおやつを舞台に並べて
大喜びしていました。
★くんは周囲の状況に合わせて動くのが苦手です。
誘いかけても、じっと座ったまま
しつこいほど同じ遊びを繰り返していることが多いです。
今回は、前回同様、
ひたすらバスのドアの開閉にこだわっていました。
★くんがひとつの遊び方に固執して
他の活動にいっさい参加しようとしないのには
見通しの立ちにくさと
身体感覚の鈍さが
理由にあるようでした。
というのも、そのふたつに配慮して誘った遊びには
積極的に参加し、
2回目以降には誘えばすんなり従う姿がありましたから。
お母さんのお話では、集団の活動の場で、みんなで踊ったり体操したりする
時間に、ひとりだけおもちゃを触りたがって
いっしょに参加しようとしない、ということでした。
ただ気に入ったおもちゃさえあれば、そこに通うのを嫌がることはないそうです。
★くんには、
遊びが広がらない自閉症の子との遊びを発展させていく方法 4
で書いたような
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その子がこだわる活動、つまり
見たり聞いたり感覚を楽しんだりしたがる活動と
自分で働きかけたり作ったりする活動との橋渡しになるような
それらの中間に位置するような活動
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がとても重要だと思われました。
★くんはせっかく同年代の子が集う場に連れて行っても、
ある特定のおもちゃのひとつの遊び方に執拗にこだわるところがあるようです。
だとすると、他の子たちと場を共有してはいても、
いっこうに遊びが発展していかない可能性があるのです。
虹色教室でも、自由に遊ばせて様子を見ていると、
延々とバスのドアの開閉だけを繰り返し続けて、
しゃべる内容も、「ドアが開かない」「ドアがちゃんと閉まらない」
とだけ、それこそ何十回でも言い続けています。
★くんは事物の
細部にだけ集中し続ける興味の狭さを持っています。
そのため、★くんの日常生活をサポートするために
お母さんが準備したイラスト付きの手順書のようなものにさえ、
細部に注目しすぎてしまい、逆効果になることもあるそうです。
たとえば、ズボンを自分ではこうとしないため
ズボンをはく手順をイラストで示すと、
「(手順書と違うから)そのズボンと同じタイプのものでないとはかない」という
新たなこだわりが生じて
とても苦労するのだとか。
それほど細部に集中して、こだわりを強めてしまう★くんに対して、
「何か興味ありそうなものを……」と誘いかけても、
固い無表情のまま無視されてしまいます。
そこで、わたしは★くんがこだわっているバスのドアの開閉を
他の活動につなぐことはできないか
いろいろと試してみました。
紙箱で開閉するドアを作る工作の見本を作ったり、ブロックで開閉するドアを作ってみたり、
警察署のドールハウスの引き戸を開閉してみせたりしました。
が、そのどれにも★くんは興味を示しませんでした。
が、そうやっていろいろ働きかけるうちに
★くんは開閉すること自体よりも
バスの扉の機械のような動きに魅力を感じているのがわかってきました。
押すと鳴るブザーとか
カメラのシャッターを押す動作などに
★くんは惹きつけられるところがあるのです。
★くんが夢中になっていたバスの開閉するドアも
レバーをひねると、バスのドア部分がアコーディオンカーテンのように折りたたまれてカチャッとはまる
動きが機械を思わせるのです。
それでは……と工作道具に
100円ショップの電動歯ブラシを加えて、
何か作るたびに、工作物の床をそれで振動させて
不思議な動きを作りだすと、
キラキラと目を輝かせて席に着きました。
どうしてこんな電動ハブラシが教室にあるのかというと、
科学クラブの子たちが分解して何か別のおもちゃに改造するための
電池で動く機械の100円グッズをあれこれ買いだめしているからなのですが……
この手の安価な電動グッズ類が自閉っ子たちのツボにはまることって
よくあるのです。
たとえば、くるくるハンドルを回したりカチカチ握ったりして
蓄電してライトを灯す機械とか、
光ファイバーのライトとか
押すと音がでるグッズとか、
砂時計に似た不思議な液体や粒子が上下に移動するグッズなどです。
今回の電動歯ブラシは、写真のように空き箱に押し当ててスイッチを入れると
箱の上に乗せた船はまるで海を渡っているように走りますし、
毛糸の玉はもぐらや毛虫のような動きをします。
★くんと☆くんに、持ってきたおやつの空き袋で舟を作ってあげると
大喜びでした。自分の食べたお菓子、それも前回と同じように
ピクニックごっこをして、山のぼり(椅子のことです)もして、包みを開いて
食べたお菓子の袋で作ったもの、ということで、
とても気に入っているようでした。
舟が箱の上を動いていく様子を見た★くんは、
電動歯ブラシを手にして、自分も舟を動かしてみたり、それをおもちゃのバスやセロテープの台やテーブルに押し当ててみて、
振動が変化する様子を楽しんでいました。
☆くんはモールを使って、虫を作ることにしました。
★くんは毛糸を切って、妙な生き物を作るのに熱心でした。
なかなかうまくはさみが使えず苦労していましたが、「こうするの?こうするの?」と
たずねながら、根気よく切っていました。
ふたりがいろいろ試してみながら熱心に遊ぶ様子を見て、
次の機会には、他の電動の機械類を使った遊びをいくつか提案してみようと思いました。
手を打つと音に反応するロボットや
障害物を避けて進んでいくロボットなどで遊ばせてあげると、
身体を使う遊びや
積み木やブロックで障害物を作る遊びにつながるかもしれない、と思いました。
(ちょうどそれらの電子工作で作るロボット類の科学クラブ用に準備していたものです)
「自閉っ子のこだわり」 を「能動的に取り組む活動」へと 橋渡しする 中間の活動
というのは、
必ずしも物に働きかける活動だけでは
ないと考えています。
何の道具も材料もなくても、自閉っ子の世界を広げていくお手伝いはできるはずです。
たとえば、こんな感じです。
★くんがバスのドアの開閉にひたすら
こだわっていたことを書きました。前回のレッスンの時に
★くんはバスの中に教室にあるものをあれこれ押し込んで遊んでいたのですが、
ハムスターの人形を出してあげた時に一番喜んでバスに乗せていました。
今回、「バスに入れるのがない。」とつぶやくのを聞いて、
「ハムスター乗せる?」とたずねると、パッと表情が明るくなりました。
自閉っ子たちと遊んでいて、強く感じるのが
こちらとの時間の感覚の違いです。
自閉っ子たちは、その場所でずいぶん前にあった出来事も
ほんの数分前にあったことのように鮮明に覚えていることが多いようです。
ですから、今遊んでいるものと関係なくても
本人の記憶の中ではリアルにつながっている物があれこれあるのです。
そうしたその子が過去に愛着を持ったものを
こちらが覚えておいて(覚えておくばかりでは無理があるので、できるだけ記録しておいて)
過去の場面をそっくりそのまま再現してあげるようにしています。
過去の場面といっても、大人の目から見た過去の場面ではなく
その子のこだわりにそった過去の場面ということですが。
すると、自分のファンタジーの世界にこもりがちな子や
警戒心が強くて人を拒絶するような構えが強い子も
そんな風に同じ過去を共有しているわたしに対して頼ったり甘えたりしてくるようになりますし、
ちょっと気を緩めて、新しい体験を受け入れてみようという姿勢が生じてきたり、
わたしが次にすることを期待するような態度が出てきたりします。
これまでの話とは反対に、もし身近な大人が、その子が過去に不快に感じた物とか
これまで触れたことがないので不安を覚えるものなどを
子どもを喜ばせよう、何か学ばせようとして
出してくると、自分の世界に閉じこもる態度を強固にすることがあるはずです。
自閉っ子は「甘えたい、近づきたい」という気持ちが高ぶると同時に
「離れたい、拒絶したい」という気持ちも高くなることが
多いようです。
そのため、「お母さん」のような
一番甘えたい対象が近ずくほど、たちまちやる気を失って、だらだらと崩れるような態度で過ごしたり、
同じ行動を反復し続けて自分の中に閉じこもってしまったりする
ことがよくあります。
そんな悪循環に陥っている時は、子どもによかれと思うことを
あれこれしようとがんばる前に、
遊びが広がらない自閉症の子との遊びを発展させていくこと5
で紹介した
「関係発達支援の基本」の 関係欲求をめぐるアンビバレンスに基づく悪循環を断ち切ること
を最初に目指すことが大切じゃないかと思っています。
★くんの話に戻しますね。
★くんはバスの中にハムスターを詰め込んでは、「ドアが開かない、開かない」と言って
ぶつぶつ言っていました。
この「ドアが開かない」という言葉は、わたしに何とかしてほしい、という意味を含んでいるようでした。
なぜドアが開かなくなるのかというと、バスのドアの開閉部分に
ハムスターが詰まってしまうからです。
正確に言うと、★くんがそこにハムスターを入れて
ドアが開かなくなるように、わざわざしているのです。
そこで★くんの「ドアが開かない」「開かない」を
困ってるんだな、嫌なんだな、とだけ受け取って、
「だったら、ハムスターをバスに入れるのをやめなさい」とか
「ドアの近くにハムスターを入れないように気をつけなさい」と言うのは
まずいな、と思いました。
なぜなら、★くんはまだ人と関わっていく力がとても弱い子だからです。
★くん自ら、他の人に関わっていこうとするのは
皆無に等しいのです。
とすると、たとえそれがわざわざ自分で作りだしている
不満や不平であっても、相手のフィードバックを求めて能動的に振舞っているなら
そのひとつひとつが大切なものでもあるからです。
といっても、その対応いかんによっては、
「問題行動を起こすと注目されるという」刷り込みとなって
自閉っ子に悪い習慣をつける可能性もあります。
ですから、こうした時の対応は、とても慎重に注意が必要だし、少しずつ良い関係へと変換していくもので
なくてはなりません。
わたしはひとつひとつの訴えに
本人が望む以上でも以下でもない、そのまんまの対応を繰り返すようにしています。
明らかに、「わざわざそんなところに入れるからでしょ?」という状態で、
「いったい、何十回、同じ失敗(おそらくわざと)をしているのかな?」という場合でも
初めて要求された場合と同じように対応するのです。
それと同時に、そうした要求に応える言動が、★くんにとってわかりやすくて、
人に対する興味をそそるものとなるように工夫しています。
もしそれが難しいと感じる方はパーキング等の自動券売機のような音声が出る機械になったふりをして
遊んであげるのでもいいです。
★くんは、「どうして開かないのかな?」と注意深くドアの中をのぞきこみ、
「あっ、こんなところに詰まっている。ハムスターが詰まっている。」と言ってから、
ゆっくりバスをひっくり返して、
トントンと詰まった部分を叩いて、ハムスターを移動させて、
「うまくいったかなー?」と★くんの期待と自分の期待を重ね合わせるように息を合わせて
ドアを開くという一連の作業に心から満足しているようでした、
そうしたまるで機械のように
望んだことを望んだように返してくれる相手に
自閉っ子は信頼や安心感を寄せるようになってきます。
そうして信頼や安心感が見えはじめると、
強迫的な繰り返しは減り始め、自分から能動的に働きかけてくるものも増えてきます。
★くんの変化は、こんな感じでした。
初めのうちは、座り込んだまま、険しい表情でうつむいたまま、「バスのドアが開かない」と
半ばおもちゃに当たるような調子で繰り返していたのが、
だんだん、こちらを呼ぶような口調で、「ドアが開かないドアが~」とイライラした声になり、
しまいには、自分からバスを持ってきて、「ドアが開かない」と言いながら
わたしにそれを付き出すようになってきました。
そうして何とかしてほしいという様子で持ってきながら、
ちょっと甘えるような仕草をするようにもなりました。
ある時、わたしにもたれかかって、こんなものを見せてくれました。
バスにはドアの開閉ができる面と
写真のように開かないドアが描かれている面があるのです。
★くんはその開かないドアを指さして、「どうやって開けるの?」とたずねました。
おそらくどうして開かないのか、★くんはわかっているのです。
見たところ開きそうもない作りですから。
それでも、わたしが開けようと試みて、「うーん、開かないね。開かないドアだね」と言うと、
満足した様子で、フッと笑って、
予想したことが予想通りでとってもうれしいという態度で、
バスを抱えて自分の遊びの場に戻って行きました。
☆くんは発達の凹凸があるにはあっても
個性の範囲と思われる子です。
目が少し合いにくく、コミュニケーションの取り方がちょっとだけちぐはぐかな?と感じることがあります。
その場の状況を把握するのが苦手なようです。
とはいえ、人と関わるのが好きですし、物ややり方にこだわることもありませんから、
大らかに成長を見守って行くだけでいいのかもしれません。
☆くんは発達障害等はない子たちの別のグループレッスンにも参加しています。
そこでの☆くんの遊び方と★くんと過ごす時の遊び方を比べると、
「同じ子かな?」と思われるほど指示の通りやすさと意欲の違いが見られます。
★くんとふたりで過ごす間の☆くんは、わたしが誘う活動がブロック作りであれ、工作であれ、
積極的に参加して、自分の考えもあれこれ口にしています。
でも、別グループで4人ほどで過ごす時には、
みんなが工作などを始めたり、椅子に座ってお話を聞いたりしている間も、
ひとりでふらふらと歩きまわることがよくあるし、状況の読みにくさが目立つ印象があるのです。
☆くんは刺激が多く、処理する情報量が多い場では、
自分をコントロールするのが難しくなるのでしょうか。
☆くんにすると、★くんの活動量の少なさは安心感につながっているのかもしれません。
★くんと☆くんといっしょに
今回も前回同様ピクニックごっこやクイズごっこをしました。
それぞれが持ってきたビスケットとクラッカーをティッシュに包んで、その上からさらに大きなハンカチで包んで
ピクニックに出掛けます。
☆くんは、こうした見立て遊びが楽しくてたまらない様子。
★くんは、見立てているという状況がどういうものか
ピンときていないようにも見えましたが、一通りのアトラクションを抜けて
お弁当タイムということでお菓子を広げました。
その時、「クイズです!このお茶は誰のお茶でしょう?」と★くんの
ペットボトルを上に掲げると、
★くんが急に手を挙げて、身を乗り出すようにして立ちあがって、
「★くんの!」と元気に答えたのにはびっくりしました。
一度できたことを、何度もやる機会を設けて
成功させてあげる大切さを感じました。
☆くんは、★くんの食べているビスケットが欲しくてたまりませんでした。
それで自分のクラッカーを★くんに押しつけるようにしてあげると、
★くんの手からビスケットを奪い取ろうとしました。
★くんは多めにビスケットを持っているのですが、自分の分を分けたくない様子です。
そのためふたりの間で無言のお菓子のひっぱりあいが続いていました。
どちらも自分の思いを相手に伝えることができないでいるのです。
それで、それぞれの気持ちを言葉にさせました。といっても★くんは「いやいや」とだけ、
☆くんは「ほしい~」とだけしか言えませんでした。
わたしがそれぞれの気持ちに少し言葉をそえて、ふたりに考えさせていると、
★くんが決心したようにビスケットを☆くんの方に差しだしました。
こうした小さなトラブルにていねいにつきあいながら、
自分の気持ちも相手の気持ちもどちらも大切にしながら
問題を解決していく力がついていきます。
そうした揉め事の後では、
★くんも☆くんも、「ふたり」でいっしょに何かする、
ということに積極的になりはじめたように感じました。
そのおかげか、ふたりともかなり長い間、工作に取り組んでいました。
この日、
帰り際に、★くんに工作で作った舟を手渡してあげると、
★くんが顔をほころばせて、ニコニコしていました。
心底うれしくてたまらない、楽しくてたまらないという様子です。
★くん、とにかく固い無表情でいることが多い子なので、
こんなにかわいらしく幸福そうに笑うのか、と感動してしまいました。
☆くんはどの活動も楽しくてたまらない様子でした。学ぶ姿勢もしっかりしていました。
☆くんの遊び方からは、余裕と発展しそうな可能性が感じられました。
ですから次に来た時には、
劇の幕だけでなく、もっとたくさん☆くんが日常で興味を持っていたものについて
お母さんからうかがって遊びに取り入れるといいのかもしれない、と思いました。