虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 10

2012-07-31 19:09:47 | 幼児教育の基本

ユースホステルの朝食はバイキング方式で、パンやソーセージやフルーツや魚など、

好きなものを好きなだけ自分の皿に持って食べるスタイルでした。

2歳から6歳までの子どもたちは、氷水やジュースを取ってきたり、スプーンを並べたりして

朝食の準備を手伝っていました。

 

◎ちゃんのお母さんは、席に着いて待っている◎ちゃんの前に

自分と◎ちゃん用にたっぷり盛った皿を置きました。

 

「いただきます」の後で、◎ちゃんのお母さんは、皿の上の料理を次々と◎ちゃんに勧めだしました。

その熱心さから、栄養のあるものを少しでもたくさん食べてもらいたいという

気持ちが伝わってきます。

 

◎ちゃんは食が細い子です。

おまけに前の晩の食事量が多かったためか、お母さんが矢継ぎ早に

「オレンジは?」「パンを一口食べてみる?」と勧めるごとに、

口をへの字に曲げて、不機嫌そうなやぶにらみの顔を作って

椅子にもたれかかっています。

それでもお母さんが、「1つだけ食べたら?」「ほらオレンジ。食べてみて!」と

催促するので、「食べさせて!お母さんが食べさせて!」と口の中でもごもご言っていたかと思うと、

その後からは、「さぁ、食べなさい」「ソーセージは?」とお母さんが口をきくたびに

キレ気味のキンキンする声で、「食べさせて!お母さんが食べさせて!」と喚きはじめました。

 

お母さんの話では毎日、こうした食事風景が繰り広げられているそうで、

いつもは根負けして、4歳の◎ちゃんに対して、まるで0,1歳の赤ちゃんにするように

お母さんが食べさせてあげることも多いようです。

 

しつこいほど「お母さんが食べさせて!」とごねている◎ちゃんは、

外から見ると、

大人からの誘いかけに「イヤ」と反発ばかりしている

わがままな子のように映ることでしょう。

 

でもわたしは◎ちゃんのこうした荒れは、

きちんとお母さんに対して「イヤ」が言えていないことに

原因のひとつがあるように感じました。

もちろん、言葉だけに注目すれば、◎ちゃん、口を開けば「イヤ」ばかりなのです。

 

でも、この食事シーンを含めてさまざまな場面で、

実際には、◎ちゃんのお母さんの想定の中に◎ちゃんという個人が「OK」と「イヤ」の

ふたつの選択肢を持っている自立した存在だと感じられていないように見え、

それが◎ちゃんの荒れた言動を引き出しているように思えることがたびたびあったのです。

 

◎ちゃんとお母さんの関係の中で、◎ちゃんの「イヤ」という気持ちは

あってもないものとして、受信されないものとして、意味として認められないものとして

扱われているように感じたのです。

 

次回に続きます。


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 9

2012-07-31 14:00:07 | 幼児教育の基本

ユースホステルのレッスンには子どもとの関わり方に悩んでいる親御さんが

何人か来ておられました。

4歳の◎ちゃんのお母さんは、ちょっとしたことでしょっちゅうパニック状態に陥って

感情を爆発させる◎ちゃんへの接し方に戸惑っていました。

 

◎ちゃんはもともと感覚が過敏で、人に対する警戒心が強く

社会性の発達がゆっくりしている子です。

虹色教室に通いだした頃は同じ室内に他の人や子がいるだけで我慢ならなくて、

部屋を布や段ボールで仕切って、

他の子が絶対近づかないようにしていないと遊べませんでした。

それがこの1年ほどで、次第にお友だちやお友だちのお母さんに打ち解けてきて、

自分から友だちを求めるようになってきました。

笑顔もたくさん見られるようになり、お母さんやわたしに「作って!」と頼むことも多いものの

工作も楽しめています。言葉遣いや表情にはまだ硬いところがありますが、

「ごっこ遊び」のような想像力を必要とする遊びも上手になってきました。

 

今回のユースホステルのレッスンも本人が指折り数えて楽しみにしてくれていたの

です。

 

◎ちゃんのちょっと育てにくい性質はおそらく生得的なもので、お母さんの育て方とは関係ないはずです。

 

とはいえ食事や遊びの場面でのお母さんの◎ちゃんへの関わり方を見ていると、

改善した方がいいと思われる面がたくさんありました。

また晩の親のための勉強会でうかがった「お家でのお母さんと◎ちゃんの過ごし方」にしても

軌道修正が必要そうでした。

 

次回に続きます。

 

 

 

 


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 8

2012-07-31 05:14:11 | 幼児教育の基本

『モンテッソーリの知恵』(ブラザー・ジョルダン社)という本に

「しつけ」に関する次のような一文があります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本当のしつけとは、決まった時間にベッドに行かせることや、おもちゃを片付けさせるといった、

指示したことを子どもにさせることではありません。

しつけとは、他人に対する敬意と

自分の人生をコントロールする力(内面化)を持って、子どもが自立して育つのを

助けることです。

しつけはまた、子どもが自制心を発達させることができるよう、

自分自身に十分に自尊を与え、自分自身を理解させる社会性のある生活を「しつけ」と

考えてください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

★くんとわたしがペアになって過ごしている間、★くんはたびたび

ちょっと危なっかしいことをして得意気な顔をしていました。

危ないことをするといっても運動神経が優れていますから、転んだり、身体をどこかに打ちつけるようなことはありません。

★くんの表情は、「大人は危ない危ないって言うけど、ぼくは大丈夫なんだよ。ぼくはちゃんとできるから」

という自信がみなぎっていました。

出窓に上ったり、エレベーターにスレスレまで近づいたり、スリッパを履いて駆けまわるようなことは

どんなに運動神経がよくてもやめさせなくてはなりませんが、

★くんの「ぼくは大丈夫なんだよ。ぼくはちゃんとできるから」という気持ちはきちんと受け取って、

その思いを現実の世界で発揮するチャンスをたくさん与えてあげる必要を感じました。

 

実際、★くんはジュースがたっぷり入った重いピッチャーを

集中して扱ったり、氷水が入ったおわんを運んだりといった

同じ年頃の子が「できない、無理、怖い」と言って避けるような活動には

真剣な表情で取り組めました。

そんな★くんを見て、★くんのお母さんは、「家でも料理の手伝いなんかをしたがることは

よくあるのですが、面倒なのもあってやらせていませんでした。でももっといろんなことをさせないとダメですね」

とおっしゃっていました。

★くんは意欲が薄い子なのではなく、

これまで自分の中から意欲が湧いてきた瞬間に、その思いを受け止めてもらって、やってみて、達成して、認められた、

という体験が少なかったので、外から与えられた課題になかなかスイッチが入らなかっただけのようです。

 

★くんの目や表情から「やってみたい」という気持ちが見えた時に、

「~してみる?」とたずねると、たいていいい返事が返ってくるようになりました。

工作をする時、★くんは身体に装備するドリルのようなものを

作りたがりました。戦隊物が大好きなようです。

男らしさや強さへのあこがれが高まっている時期のようです。

そうした精神的な面であこがれているものについても

身近な大人がきちんと受け取って、

それを現実世界で洗練させていけるように方向づけてあげる必要を感じました。

 

わがまま放題にさせて、その全てを受容するだけでは、

「男らしく凛々しくなりたい」という望みに対して

自分がみじめでつまらなく感じられるだけですよね。

「男らしく凛々しくあれる」場面を見つけては、本人のチャレンジをそっとサポートしたり、

言葉で★くんの勇気ある一面を認めていくことが大切ではないでしょうか。

 

もう少しだけ続きます。

 

 

 


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 7

2012-07-30 11:51:00 | 幼児教育の基本

身体が求める要求世界としての「自我」の世界と、

知性として育てた「第二の自我」の世界の間に生じる

矛盾と葛藤を生きている時期の子らを育てている親御さんたちのなかには、

子どもが自分の力で時間をかけてそれらを克服していくのを待たずに

大人の力でそのどちらかを勝たせてしまう方がたくさんいます。

 

子どもをお客様のように扱って、

楽しい刺激や面白い刺激をたっぷり与えて

年相応の責任を果たさせたり、チャレンジを応援したりしなければ、

「自我」ばかりが勝つことになってしまいます。

 

子どもの要求や気持ちを受け止めるより先に

しつけたいことや教育したいことを押しつけていけば、

その子の核である「自我」が育たないままに

「第二の自我」だけが肥大していくこととなります。

 『失速するよい子たち』 という小児科医の三好邦雄先生の著書では、

「両親、祖父母に囲まれて宝物のように育った子」や母親から「この子は幼稚園の時に天才でした」

と語られるような子が、成長するにつれ自分を見失い、学校に通えなくなったり、心身症になるケースが

たくさん扱われています。

この本はわが子が幼い頃、読んだことがありますが、加藤繁美先生の文章でも取りあげられていて

この問題が年々、さらに深刻なものとなっているのを感じました。

 

そうした大人の要求に過剰に適応する子たちの問題は、

また別の機会にくわしく書かせていただきますね。

 

次回に続きます。


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 6

2012-07-30 10:05:03 | 幼児教育の基本

レッスン中の★くんは、他の子たちが熱中している課題に参加したがらず、

わたしの問いに答えるのも嫌がっていました。

「どうして?」「どれがやりたい?」といった質問にも答えずに

会話が続かないことも多々ありました。

お母さんとの間でも、じっくりとひとつの興味を追うように

会話を続けることはなく

要求だけ出して、お母さんの話は聞かない、という態度も多々ありました。

 

そうした★くんの態度を見ると、「自己内対話」をせずに

反射的に好き勝手に振舞っているように見えます。

 

が、★くんとわたしのふたりで過ごしている時、★くんは気にいらないことがあって

一度無視するようなことがあっても、

こちらが黙って待っているだけで、

自分で決意してきちんと自分のするべきことをやっていたのです。

 

 ですから、★くんは、

今まさに「自己内対話」を鍛えている真っ最中で、

葛藤の渦中にある

 と言えるのでしょう。

 

ただ★くんのお母さんは、母親として★くんを受容して愛情を注ぐことに気を取られて、

★くんの内面で「自我」と「第二の自我」が戦っている最中に

即座に「自我」の要求を満たしてしまって、

★くんのなかで育ちつつある「規範的自我」や「理想的自我」を

親子で共有していく大切さに気づいておられないようにも見えました。

 

 ★くんのお母さんは、心をこめて、★くんの発するものを

受け止めようとしています。

 

でも、受け止めると同時に方向づける、という点で、

言葉の世界で「社会的存在として自分がどう行動すべきか」を

★くんと共有していく過程を省略しがちなように見えました。

 

 


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 5

2012-07-30 08:17:06 | 幼児教育の基本

お母さんに離れていていただいて★くんと過ごすうちに

★くんのさまざまな面が見えてきました。

★くんは手洗い場でも窓辺でも

少し高い位置に台があると腕の力だけでヒョイッと上ろうとし、

危ないからやめるように注意しても聞こえないふりをする癖があります。

危険な場所でそれをすることや注意を無視するところは問題なのですが、

身体の使い方はしっかりしていて

機敏な上、注意力や集中力も申し分ないことが見て取れました。

 

つまり鉄棒などの器械運動の道具を使わせるとすると

注意力にしろ身体の動かし方にしろ

怪我をするような危なっかしいことはしないはずなのです。

また自分にちょうどいいチャレンジしがいのある課題を

見つける力があるようだし、

とても意欲的でもあるのです。

 

また★くんは「自分の頭で閃いた!」というアイデアを実行する時は、

思いを言葉にしたり、頭で考えたりするのに熱心でした。

たとえば空気圧の水鉄砲を作った時も

その吹き方を工夫したり、吹き出した水で「けんけんぱ」の輪を描くアイデアを実行したり

していました。

★くんはおそらく外向直観型の感情寄りの子か外向感情型の直観寄りの子だと思われます。

普段は、頭を使うような場面を避けたがったり、言葉を使って表現するのをまどろっこしそうにする一方で、

それまでにないアイデアを思いついた時には

目をキラキラさせて言いたいことがたくさんある様子なのです。

 

シャボン玉用のさまざまな道具を作って遊んでいた時も、

「袋の端を切ってシャボン玉を作る道具にする」といった

奇想天外なアイデアが★くんを惹きつけていました。

(写真は別のお友だち)

また食事の時には、珍しい仕掛けのマーガリンんとジャムの容器に大喜びで

「これをパキッと折るとマーガリンとジャムがいっしょに出てくるんだよ」

と周囲の子に説明していました。

「本当?知らなかったわ。先生のもしてくれる?」とたのむと

誇らしそうに、わたしのマーガリンんとジャムを出してくれました。

 

次回に続きます。


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 4

2012-07-29 18:29:48 | 幼児教育の基本

部屋を移動する時、わたしは★くんを呼びとめて

軽いけれどちょっとかさばる荷物のひとつを運ぶ手伝いを頼みました。

★くんは一瞬、驚いたような呆れたような表情をして固まっていましたが、

少しすると苦虫をかみつぶしたような顔つきになって、

「どうしておれが持たなきゃいけないんだよ!」と毒づきました。

 

わたしは他の荷物でふさがっている自分の両手を示しながら、

こう静かにたずねました。

「★くん。★くんは、先生には弓矢のおもちゃちょうだい!あれちょうだい!これちょうだい!

って頼んでばっかりで、先生がお願いすることは、

どうしておれがしなくちゃいけないんだよって言うの?」

 

すると★くんはしばらく黙って突っ立っていましたが、急に決心したように

わたしの荷物に手をかけると運びはじめました。

「ありがとう」と言うと、黙ったままずんずん運んでいきます。

★くんはあまりしつこく言わなくても、

自分でどうすべきかわかっている子だな、と感じました。

 

食堂でもこんなことがありました。

食事の準備を手伝うために手を洗うように言っても

★くんは聞こえないふりをしていました。

「食べ物にバイ菌がつくから、ハンドソープでていねいに手を洗ってね」

ともう一度だけ声をかけて様子を見ていると、

むくれた表情で固まっていましたが、少しすると決心したように手洗い場に行って

手を洗っていましたが、洗い終わると濡れた手のまま水しぶきを飛ばして

ふざけ始めました。

「洗面台の横に、手を拭くための紙タオルがあるでしょ。ちゃんと手を拭いて」と一度だけ言って

様子を見ていると、そのまま知らんふりしてどこかへ行きかけたものの、

急に決意した様子で紙タオルで手を拭きに行っていました。

 

★くんの内面では、

指示に従うべきか無視するべきか

葛藤しているのがよくわかるのですが、

その都度、しつこく言われなくてもより正しい態度を選べているようです。

 

次回に続きます。

 


分子模型作り

2012-07-29 16:39:12 | 理科 科学クラブ

化学好きの小学3年生の●くん。分子式を紙いっぱい書いてきてくれました。

そこでいっしょに分子モデル作りにチャレンジすることにしました。

枕の中に入れる発泡スチロールの玉や

色つきの油粘土などを使って作りましたが、

なかなか思うような形ができません。

(一番下の写真はダイヤモンドの分子模型を作るための

ひとつひとつのパーツを作ったものです。)

他の子らとも楽しむために

もう少し分子モデルが作りやすい素材を探してみるつもりです。


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 3

2012-07-29 08:58:00 | 幼児教育の基本

★くんのお母さんもお父さんも★くんを心から可愛がっている方々です。

愛情をたっぷり注いで、しょっちゅうギューッと抱きしめています。

それにも関わらず、

 

「★くんがこれまで自分の言葉を十分に聴き取ってもらえず、自分の思いを受け止めてもらう心地よさを

知らないから、荒れた行動をとっている」

 

という捉えるのは

親御さんたちに対して失礼にあたるかもしれません。

 

とはいえお母さんが近くにいる時の★くんは

まるで聞き分けのない2歳児のように

わがまま放題に振舞っているのも事実でした。

 

そこでいったんお母さんに離れておいていただいて

わたしと★くんがペアになって行動することにしました。

 

すると★くんは、「こういうことがやってみたい」というチャレンジ精神が薄いわけでも、

大人の指示に素直に従えないわけでも、

見たり聞いたりすることが苦手なわけでもないことが

徐々にわかってきました。

もちろんふたりで過ごしだしたとたん、★くんの「困ったちゃんモード」が

「いきいきしたしっかりさんモード」に

コロッと切り替わったわけではありません。

 

でも、最初はこちらの声かけを無視したり、憎まれ口を返したりして対応していた★くんが

★くんの本当の気持ちに光を当てるうちに

自ら進んでお手伝いをしたり、

一度は放りだした課題に再度取り組んだりするようになってきました。

 

そうするうちに★くんの内面には、

個性的なさまざまな良い資質が潜在しているのに

それを発揮する機会がないために

わがまま放題な態度に終始しがちになっているのが見えてきました。

 

 

 


愛情をかけて可愛がって育てているのに困った言動が増えてくる時 (ユースホステルのレッスンから) 2

2012-07-28 20:32:44 | 幼児教育の基本

 ( ↑ 押し入れのなかで上映会。熱中症にならないように注意がいりますね)

 

教室外の子どもたちと接する機会があると、

発達障害などのハンディーキャップがないにもかかわらず

★くんのような気になる態度を示す5、6歳の子とたくさん出会います。

 

「どうしてそうした困った態度を身につけてしまうのか」のもとをたどると、

2、3歳という自我が生じはじめて

自己統制力が育っていく過程で

周囲の接し方がまずかったり、環境に少し問題があったんじゃないかな、

と思われることが多々あります。

 

過去の原因探しばかりしていても仕方がないのですが、これからどのようにして

気になる行動を克服していくといいのかを話題にする前に、

2、3歳児を育てている親御さんたちに学んでいただくためにも

そうした困った態度が生じてくる仕組みについて説明させてくださいね。

 

山梨大学の加藤繁美先生は、次のようにおっしゃっています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「自己チュー児」などと呼ばれる「超わがままタイプ」の子どもは、

「しつけ」ができていないというよりも、

自分の言葉を聴き取られ、自分の思いを受け止めてもらう心地よさを

知らない子どもが、「荒れ」た行動をとっているのである。

その理由は、子どもの自己統制力が育っていく道筋が、

実はそうした構造をもっているからにほかならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

子どもは最初に、大人と親密なコミュケーションの過程で、

愛されることの心地よさを獲得していきます。

 

加藤繁美先生によると、一口に「愛されることの心地よさ」と言うけれど、

実は乳児期に体験する大人・子どもコミュニケーションの質は、

その後の子どもの育ちを規定するくらい大きな意味を持つものなのだそうです。

 

大人たちは子どもが自分でも自覚していない要求を読みとり、

ていねいに「意味づけ」し続けます。

子どもはそうやって繰り返されるコミュニケーションを通して、

自分の要求と音声が対応していくことを知っていきます。

 

そうして乳児期に獲得した「愛されることの心地よさ」をベースに、

音声で表現できることを知った要求世界を

自分の興味・関心にひきずられるようにして

どんどん表現するようになります。

 

それが「自我」の誕生と呼ばれるものです。

 

要求を主体として成長していくこの時期に、

大人が子どもの発するものを受け止め、同時に方向づける

という対応を辛抱強くていねいに続けていくことで、

子どもは言葉で表現するようになった世界を大人と共有することに

幸福を感じるようになるそうです。

 

そして2歳半を過ぎる頃から、大人と共有した価値の世界がはっきりしてきて、

知性として形成される「第二の自我」の芽となるのだとか。

第二の自我とは、

「社会的存在としての自分がどう行動すべきか」という形で

知性として認識される「規範的自我」「理想的自我」である点を特徴としているそうです。

 

 3、4歳とは、身体が求める要求世界としての「自我」の世界と、

知性として育てた「第二の自我」の世界の間に生じる

矛盾と葛藤を生きている時期で、

やがて4歳半を過ぎる頃から、「自己内対話」をしながら

生きていくようになります。

 

現在は、「自己内対話能力」がうまく育っていかない子が急速に増えていると言われています。

 

5,6歳という幼児後期になっても「自我」の世界だけは出し続けるけど、

「第二の自我」が育っていかないという

困ったちゃんが増えているのです。

 

5歳の★くんにしても、自分の要求はいくらでも出すのですが、

「社会的存在として自分がどう行動すべきか」に気づいて、

自分の内面でそれと折り合いをつけて行動に移すことができません。

「欲しい」とか「したい」とか、自分から要求を出すこと以外に無関心で、

外からの要求には無視するか、憎まれ口をきいて相手もやりこめるかの

どちらかで対応しているのです。

 

 

 

↑ ユースホステルのレッスンで。

回転すると模様がどのように変化するのか

確かめています。