虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

ひとつの不思議から次の不思議が生まれる

2019-03-30 08:51:49 | 年中、年長

 

 ブログのカテゴリーを少しずつ整理しています。年齢ごとのカテゴリーを増やしています。

ついでに埋もれていた過去記事を再アップさせることが

たびたびあります。

 

年中のAくんは、不思議に感じるものを見つけて、それをじっくり探求するのが

好きな男の子です。これまでも、のび縮みするバネを使った工作や氷の変化などに

夢中になってきました。

今回のレッスンで、Aくんが、ラップの芯を覗いて、潜水艦のについている覗き眼鏡だということにして

遊んでいたので、100円ショップの眼鏡を曲がる部分につけてあげると大喜びでした。

見栄えは悪いですが、後で自由にはずすことも考えてそのまま取り付けています。

下から、天井の方向に芯を覗いているのに、部屋の壁面にあるものが見えるのが、

不思議でたまらない様子。

Aくんは筒を倒してみたり、上に向けたり、斜めに向けたり、曲がった先の方向だけ

変えてみたりして遊んでいました。

面白くてたまらない様子です。

 

Aくん、今度は、「もっともっと筒を長くしたい!」と考えていました。

それから、「これ、お風呂で見ることができる?」とたずねていました。

 

もっと筒を長くしたり、もう一度曲がるところを作ってもう一枚鏡を取り付けたり

すると、もっといろいろ探求できますよね。

Aくんが、お風呂の中の様子を覗きたがっていたので、

牛乳パックで同様の覗きめがねを作ることを提案しました。

 

鏡の不思議に夢中になっているAくんと、簡単な万華鏡もどきを

作って遊びました。

3枚の鏡を三角になるように置いて、中央に小物を入れたり、下に絵柄を敷いたりして

覗きます。

顔を近づけて中を覗きます。

自分で作るので、万華鏡の仕組みがよくわかります。

 

 

 

 


子どもの間違いから学ぶ

2019-03-23 09:32:46 | 年中、年長

年中さんの女の子たちのグループレッスンでのこと。
この子たち、毎回少しだけおやつを持ってきて、
途中のおやつタイムにそれを分け合うのを楽しみにしています。
自分の持ってきたお菓子を、お友だちに平等に分けるにはどうすればよいか、
考えるのが上手になってきました。「残ったひとつは、4人だったら、4つに割ればいい」と言います。
それで、お菓子を使って小学校受験の『逆思考』の問題をたずねてみました。

3個のお菓子を見せて、
「妹に2個お菓子をあげたら、3つになっちゃったよ。
妹にあげる前は、はじめ、いくつ持っていたのかな?」と
たずねると、口々に「3個!」と言います。
そこで、実際、もらったりあげたりする様子を見せて、数が変化するさまを理解させてから問い直すと、やはり「うーん、3個?4個?」と首をかしげています。

それで。「おにいちゃんがね、2個お菓子を取っちゃったの。そうしたら、3個になっちゃったよ。最初はいくつだったかな?」という問いに変えると、
お兄ちゃんのいる子が、「5個!」と答え、その子はそれからは、
他の問いでもきちんと答えるようになりました。

この問題は、なかなか理解にいたらなかった子も、
自分が日常でよく遭遇する出来事でイメージできることは理解が早いのです。
教室では、子どもたちにさまざまな問いかけをして
何を理解していて、何を間違えるか、どの概念が弱いのかに気づいたときは、
それから私がまず学び、親御さんに伝えて、
少しだけ環境を豊かにしてもらっています。

たとえば、先ほどの逆思考のような問題が苦手だとわかれば、
子どもをいつも「はやく、はやく」とせかさず、
いろんな場面でゆっくりおしゃべりしながら、「あ~、どうぞってしたから、ちょっとになったね。じゃあ、今度はお母さんは☆ちゃんに2個あげようね」
という具合に、気持を味わったり、少し前のことを振り返ったりする時間を
増やすようにするといいですよね。

子どもの間違いから学ぶというのは、
子どもが「あれっ?」というところで間違えたとき、
教え込んでわからせるのではなくて、
「こうした概念に気づきにくい生活をしていないかな?」と子どもの暮らしを見直して、環境を改善したり豊かにしたりしていくことです。

幼児教育には、賛成派、反対派、どちらもいらっしゃることと思います。
私は子どもの世界に評価や競争を持ち込んだり、
ペーパーでの学習をたくさんさせたりすることには反対です。

しかし、
幼児期に小学校受験に出てくるような
『数量・比較』『お話の記憶』『言葉』『常識』や『図形』や『推理』といった問題に触れて、

きちんと集中して話を聞いたり、聞いたことや見たことを記憶にとどめたり、
表現力を豊かにしたり、推理したり、図形で遊んだり、
理科や行事などの常識問題をしたりして、
頭を使い方や頭を使う楽しみを知るのはよいことだと考えています。

そうした頭を使う体験を、遊びや生活の中で
たくさん楽しめるように工夫しています。

そうして、問題を出すとき、子どもが間違えるときがありますよね。
間違えるたびに、
「間違えてもいいんだな。チャレンジすることこそ大事なんだな。どうして間違ったのかよく考えてみよう」
という気持ちになるように、気をつけています。
親御さんによっては、できないと、いちいちその場でわからせようと
説明をはじめる方もいるのですが、
私は、大人が、子どもが今、理解のどの段階にいるかを把握すれば十分だと思っています。
あわててできる状態にするより、
自由にリラックスして、たくさん間違えることができる場にすることを優先しています。

女の子のグループレッスンの子たちは、語彙が豊かで、とってもおしゃべりです。

ですが、女の人がいろんな家事をしている絵を見せて何をしているのか問うと、せんたくものをほしているときは、「せんたくしている」
たたんでいるときも、「せんたくしている」
ほうきで掃いている絵は、「そうじしている」
と言ってました。ハトが、エサをついばんでいる絵は、「食べている」
猫がつめを研いでいる絵は、「ひっかいている」と答えました。


正解と言えば、正解なのですが、
「ほす」「はく」「たたむ」「ついばむ」「とぐ」といった
絵を正しく表現する言葉が使えているかというと、
三角かな?というところ。
こんな場合、「間違っているよ」とは言わず、
「せんたくしている」と答えれば、
「そうね、せんたくものを干しているね」と正しい言葉で返してあげるといいですね。
それから、家庭では、子どもがおしゃべりだと、大人は言葉を気をつけて使おうとはあまり思わないのですが、
少しだけ言葉の世界の豊かさを味わうような会話をするよう
つとめるとよいかと思いました。

虹色教室通信では、よく「はやくはやく」とせかさない……ということを
繰り返しています。
それはつまり、豊かな言葉の世界をゆっくり味わうことや、
自分の言葉で、考えを練ってみること、
身近な不思議に科学的な疑問を抱いてゆっくり親しむことを意味しています。
目に見える成果の陰で、
そうしたものが犠牲にされているのをたびたび見かけるからです。