『自閉症のDIR治療プログラム』S.グリーンスパン S.ウィーダー 創元社
では、現実世界と関連した論理力について扱っています。
この著書では、自閉症スペクトラム障がいの子を含むどの子どもも、現実的な論理の枠組みで
この世の中を理解する必要があり、
家や学校や職場などすべての社会状況の中で利用できる技法を身につけていかねばならない
と論じています。
『自閉症のDIR治療プログラム』に次のように書かれています。
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冒頭で示したASD(自閉症スペクトラム障がい)やその他の発達障がいの場合は、
言葉や運動機能や感覚処理の問題などがあるために、論理的に考えて現実世界に合わせる
ことは困難で、ファンタジーの世界に逃げ込む方が簡単です。
高い音が苦手な子どもは甲高い声が耳障りで苦手で、会話を避けるかもしれません。
むしろ独語や空想の方が好きなのです。
ファンタジーの世界では登場人物を監督し会話させることは簡単です。
そこでは、なぜ、いつ、どこでなどの難しい質問をしてくる人はいません。本を読んだり
文章を書いたり計算をしたりという難しい技術を身につける必要はありません。
その世界で過ごすことはとても簡単です。もし言葉が話せれば、独り言を繰り返し、
楽しい時間を過ごすことでしょう。
(略)
このような子どもは現実に合わせた考えが困難です。
なぜなら、論理的な発想をするための第一段階は周りと十分に関わり、周りを知ろうと
思うことから始まるからです。
感覚情報処理に問題があってこうした関わりが困難な場合、
論理的な考えを身につけるまでの道のりは長く、
途中に大きな障害物が横たわっています。ジョーンズ氏のように、論理的思考は部分的にしかできません。
しかし、目標がはっきりすれば、論理的な考えというゴールに
向かってサポートしていくことは可能なのです。
『自閉症のDIR治療プログラム』S.グリーンスパン S.ウィーダー 創元社 P104、P105
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この夏、ユースホステルでのお泊りレッスンの時にも、自閉症スペクトラムの男の子が、
ファンタジーの世界から一歩外に出て、周囲の世界と感情的に意味のある関わりをすることで、
現実の世界に関心を示しはじめる姿を目にしました。
自閉症スペクトラムの子と人間関係 だんだん親しくなっていく 1
自閉症スペクトラムの子と人間関係 だんだん親しくなっていく 2
でその時の出来事を記事にして紹介しています。
さらさらと日本地図や大きな数の表を描いていく☆くんは、独り言を言いながら
自分のファンタジーの世界にどっぷりつかって過ごすことが多い子です。
感覚過敏がひどく、人と交わるのが苦手で、これといったあてもなくふらふらと歩きまわって過ごしがちです。
目で見たものを写真のように記憶できることから、
覚えた漢字や数字を見本もなしにさらさらと書いて、遊んでいます。
そんな☆くんが、独り言や独り遊びの世界から、
自分のしていることを見て、認めてくれている人の存在を感じて、
自分を理解してもらう喜びを感じて、お友だちの作っているものに興味を示したり、
私の遊びや工作の提案に乗ろうとしたとき、
☆くんが無関心や逃げる構えから、人に強い興味を抱いて関わりたいいう思いに
心を広げていく目には見えない微妙な変化が、
そこにいた人々には、まるで☆くんの心の動きを自分で体験していることのように
感じることができたのです。
誰もが敏感すぎる☆くんの近くで息をする気配も消すほどに
そっと優しく温かな雰囲気を創り出していて、
☆くんはそこでいつもの☆くんでは見られないような能動的で積極的な態度で
周囲を観察し、行動に移していたのです。