折り紙を半分に折って、片面にピタゴラスイッチという文字を
書いてもらった☆くん。
「見て見て!」といったかと思うと、斜面からころがっきたビー玉がぶつかると、
ピタゴラスイッチの文字が倒れるところを実演してみせました。
その時、●くんは警察署のドールハウスの牢屋に屋根をつけたがっていました。
今、「お手本をみせて教える」のが☆くんのマイブームです。
ですから●くんが同年代のお友だちから「教えてもらう」体験をする
ちょうどいいチャンスだと思いました。
そこで、「☆くん、☆くん。●くんがね、警察の屋根が作りたいんだって。
そのピタゴラスイッチの折り紙みたいに、はんぶん、はんぶんって折る方法を
教えてくれる?」とたずねました。
☆くんは、「いいよ。こうやるんだよ」とご機嫌です。
でも●くんは、わたしが「☆くんに屋根の作り方を教えてもらおう」と誘っても、
●くんのお母さんが、「☆くんが教えてくれるよ。ほらっ、教えてもらいに行きなさい」と
誘いかけても、あれこれ言われるのを振り払うように奥に引っ込んでしまいました。
そんな●くんの様子を見て、●くんのお母さんは、
「ほら、教えてもらったら?」と繰り返し説得していました。
●くんは、まだ「教えてもらう」という体験が
ほとんどありません。
ですから、「教えてもらったら?」という言葉だけでは、
どの場所で、どのような態度で、どのようなタイミングで何をすればいいのか、
確かなイメージがないのでしょう。
ですから、こんな場合、言葉だけで指示するのは●くんを不安がらせるでしょうし、今後、そうした言葉を避けたがる原因になるかもしれません。
周囲の大人が
●くんの代わりに「教えてもらう」役をして、教えてもらうというのが、
どういう態度で行うのか見せるだけでいいのかもしれません。
また、教える側がそっと場所を移動して、
●くんのすぐ近くで、そうした「教える」「教わる」が見えるように
するくらいでもいいのかもしれません。
そんな時に、大人の目から見てのできるできないにかかわらず、
(近くにいれただけでも)「ちゃんとお話聞けたね。☆くんが教えてくれたから
●くん、わかったよね。●くんよかったね。ちゃんと教えてもらったから屋根ができるよ」と
●くんに自信や勇気を持たせるような言葉をそえるといいかもしれません。
コミュニケーション能力を育むには、会話する力を伸ばすことの他にも、
お友だちに、「これとこれとこれのうち、どれがいい?」と選んでもらう役をすることや、
選ぶ役をすること、
プレゼントをあげること、プレゼントするものを相手を思い浮かべながら選ぶこと、もらうこと、
貸してあげること、貸してもらうこと、
遊びに誘うこと、入れてもらうこと、教えてあげること、教えてもらうこと、
なぞなぞやクイズをだすこと、答えること、相手を笑わせること、いっしょに笑いあうことなど、
さまざまな体験があります。
そのひとつひとつを気持ちのいい楽しい雰囲気の中で、
たくさん体験させてあげたいと思っています。
お母さんに手伝ってもらって屋根を作った●くん。
警察の護送車も折り紙で覆いました。
●くんが帰った後で、わたしにはひとつ反省したことがありました。
というのは、いつもより場に打ち解けることができていなかった
●くんに、前回まで喜んでいた「お肉列車」や「ブロックのドアホン」を
出してあげるのを忘れていたことです。
今回作っていた警察の屋根や護送車の覆いにしても、
これから先、●くんの緊張を和らげて、遊びの世界に誘うきっかけになるはずなのです。
そのための記録でもあるのに、
●くんが不安そうにしている場合を想定して、
いくつか解決法を用意していなかったのは、ちょっとまずかったな~と感じました。