虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

小さい労力で多くの満足感が得られるようにして 、がんばる心を支えること

2015-10-26 07:19:22 | 工作 ワークショップ

過去記事を形を変えてお伝えしています。(大阪城めぐりの様子、写真を整理し終わったところです。

今日明日中に記事をアップしますね)

手伝う、教えるという場面で、わたしはユーモアや言葉の力を利用して

子どもの意欲が高まったり、我慢が持続するようにサポートしています。

 

発達の凹凸のある子たちのレッスンで、こんなことがありました。

水遊びの道具を工作していたため、セロテープではなく

ビニールテープを使用していました。

すると、セロテープのようにハサミで簡単に切れないものですから、

ひとりの男の子が「切れない!切れないよ、もう!いやだ、こんなの!」とかんしゃくを起こしかけていました。

 

そこでわたしが、「だって、そのテープは、セロテープよりパワーがあって強いんだもの。

●くんにね、どうせ切れないだろう、切れるもんなら切ってみろ、おれさまは強いからなって挑戦しているのよ」

と言うと、この子は笑いだし、それからは弱音を吐かずに

がんばってやり遂げていました。

うまく切れなくて、まるではさみがテープと決闘でもしているように

見える度に、含み笑いをしながら、いきいきと取り組んでいました。

 

工作を「提案する」という場面では、次のような点に注意していると、

子どもは意欲的に能動的に振舞うようになってくると感じています。

 

子どもがやる活動がどんなにささいな小さなものでも、

子どもがその結果から得る楽しさや満足感が大きなものになるようにするのです。

写真は、子どもが型で抜いたハートを紙に貼ったシーンです。

お母さんがそれを利用して、太陽が登って沈んでいくプラネタリウムを演じたり、

なぞなぞクイズをしたりして遊んであげています。

写真は、アイスのカップにポリテープを貼って、本人いわく

「宇宙船」(わたしはくらげかと思ってましたが……)を作ってきた一シーンです。

 

宇宙船にストローを貼って、ひもを使って空中を動かしています。

 

幼い子や工作体験の少ない子ほど、

小さい労力で多くの満足感が得られるようにしてあげないと、

「もっともっと、こんなこともしてみたい」という気持ちを膨らませたり、

がんばりを持続させたりするのは

難しいからです。

 


予測が100%当たってびっくり!?

2015-10-24 22:35:28 | 日々思うこと 雑感
3,4歳の女の子たちの月1回のグループレッスン日。
4歳になって間もない★ちゃん、☆ちゃんのお母さん方から、
「実は、初めの頃は、半信半疑だったんですけど、
先生のおっしゃる通りに、工作環境を整えてのんびり子育てしていたら、
次はこんな風に成長しますよ、という言葉そのままに成長していくのに
びっくりしています。
3歳になった頃、4歳頃には、ボードゲーム類を好むようになるので、
目につく場所に準備だけはして、無理にやらせないようにと
聞いてたんで、その通りしてたんです。
でも、買ったときは興味なしですし、そんな時期来るのかな?と怪しいくらい
だったんですけど、やりたがるとき、適当に駒を進めて遊ぶという本人のしたいように触らせていたら、
4歳の誕生日が近づいたら、ひたすらゲームをしたがるようになりました。」
★ちゃんのお母さん。
「うちの子は、オセロに夢中です」と☆ちゃんのお母さん。

どちらも、急に知能が急成長したように見える時期の前は、
しばらくボーッとして何もせず、停滞する時期があったそうで、
それも私が言っていた通りになったと驚いておられました。

「子どもって自然に育てていたら、こんなに賢く育つんだ~」と
日々、うれしい驚きを感じて、生活してくださっているそうで、
うれしいです。

今回のレッスンで、子どもたちは文字ブームでした。
といっても、ひらがなの書きを練習させているわけではないので、
それっぽい「うそ字」が多いのですが……。

ごっこ遊び中、「メニュー表作って!
コーヒーとアイスコーヒーとバナナジュースの。それから、レシートもいる。」「チケットも!」「手紙も」
と、紙に書いてある文字は何でも取り入れたい様子。

早期にひらがなの書きを練習させず、3,4歳まで自然な発達を
待っていると、「文字の敏感期」と言えるような
文字にとても敏感な時期が来ます。
それまでに、ひらがなをワークなどで教えてしまうと、
この時期に、文字が社会でどのように使われているのか、
興味しんしんで、「自分も書いてみたい」と強く願い、
遊びに文字をどんどん取り入れようとする意欲が薄くなる子もいます。

空腹感がなければ、食べたいと思って食べ物を探さないのと同じように
知識も、敏感期の強いエネルギーで吸収しないと、
知っているために、文字を見ても無関心という状態も起こりがちです。

子どもの自然な成長を信じ、
その時その時に最適な働きかけをすることが大切ですね。
 
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↑ の記事を書いた頃、4歳になったばかりだった★ちゃんのお母さんから、

こんなコメントをいただきました。

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懐かしい記事に思わずコメントしてしまいました。
今小1になっています。
記事の頃はナナメ線が認識しにくくて(うまく書けなかった)、
ちゃんと字がかけるようになるか
心配していた時期でした。が、
先生の「大丈夫ですよ」の一言に、
そのあとも字を教える事は一切せず
本人がしたいままそっとしておきました。

そうするとひたすら「うそ字」ばかりを書く時期がきて(この頃は大人の真似をして字を書いている自分に満足しているようでした)
小学生になった今は字を書くのが大好きになっています。

心配していたナナメ線の認識も
もしかしたら少し見づらいとかはあるのかもしれませんが、とにかくうそ字の練習量(?)は相当なものだったので(笑)、書く事に関してまったく問題ないです。

学校の担任の先生も
「字を習って1年生に上がってきた子達はあまり文字に興味がないし、間違って覚えた文字を、正しい文字に覚えなおすのがなかなかできない」
とおっしゃっておられました。

虹色教室に通っていると「あの時教えなくてよかったなー」
と思う事が多々あるのですが文字もその一つです。


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↑は、★ちゃんが小学校に就学する前の春休みに

虹色教室のマンガ雑誌用に作っていたものです。

絵からも文字からも描きたい気持ち、綴りたい気持ちがあふれだしてくるような

作品ですね。

 

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文字は、子どもが強い興味を抱いて

書きたがる時期に教えてあげるのがいいと思っています。

子どもによっては、その時期がとても早い子もいます。

 

下の作品はもうすぐ年中さんになる☆ちゃんが

お家で作ってきてくれた『ももたろう』の絵本です。

いっしょに教室に来た1年生のお姉ちゃんが、

「☆がね、字も絵も全部、自分でしていたんだよ」と教えてくれました。

 

☆ちゃんが教室に通い始めたのは、0歳7ヶ月の時。

工作体験がたっぷりあるので、何事もねばり強く最後まで取り組む根気が育っています。

☆ちゃんはピッケの絵本作りの会というイベントに参加したり、

お姉ちゃんがレッスンでカセット絵本を作っているのを見たりしてから、

絵本作りへの興味を募らせていたようです。

 

お話の中身は、図書館で自分で選んだ絵本を真似て書いたそうです。

 

 

ボタンを押すと「ピンポーン」と音がする赤ちゃん絵本を利用して、

次のページに移る合図に「ピンポーン」という音を入れながら、

絵本の文章を録音しました。


国語の学習につまずきがある子に教える時に気をつけていること

2015-10-23 14:54:50 | 国語

 国語の学習につまずく子の多くは語彙量が少なくて「言葉」をあまり知りません。

 

子どもとしゃべっていると、

「短い」鉛筆も、「浅い」池も、「ゆるやかな」坂も

「少ない」量も、「小さい」とか「あれ、あれ」という言葉で済ませるなど、

意味は通じるけれど、それはちょっと……という言葉の使い方をしていることが

よくあります。

 

しょっちゅう訂正していたのでは

しゃべること自体を嫌がるようになるかもしれませんから、

楽しくおしゃべりのキャッチボールを続けながら

少しずつ間違いが修正されて、語彙量が増えるようにしてあげることが

大事だと思っています。

 

 

たとえば、子どもが作った新聞紙でできた剣を見ながらする会話でしたら、

こんな感じです。

 

<形容詞の理解が乏しい子との会話>

わたし 「この剣、かっこいいね。えいって振ったら、高い高いたか~い木も

スパッスパッて切れるよね」

子   「うん」

 

わたし 「木をね、剣で切ったら、どうなると思う?」

子   「ドテッてなる」

 

わたし  「そうよね。ドテッとね、倒れる。木が倒れるよね。雷が落ちた時みたいに」

子    「かみなりはね、こわいよ~ガラッガラバリンだよ」

 

わたし 「木はどうなるの?」

子   「ガシャガシャってね、壊れるよ」

 

わたし 「ああ~幹のところが、真っ二つに割れて、枝が1本1本、ポキンポキンと

折れて落ちるよね。火が燃えて、煙がもくもく舞い上がるかもしれないね。

かみなりは、どこから落ちてくるの?」

子   「上」

 

わたし 「上って、天井のところ?」

子   「ちがうよ。空のくものところだよ」

 

わたし  「空から地面まで落ちてくるのよね。すごくすごく遠いよね。

空と地面は遠いからね」

子    「遠くても、落ちるんだから、落ちる時はすぐなんだよ」

わたし  「滑り台を滑る時といっしょのことね。滑る時は人間も速いもんね。

新幹線みたいに。かみなりも落ちてくるから、速いのね」

 

『ちょっと難しい1000のことば』という本は

語彙が少なかったり、自分流の言葉の使い方が多くて、耳にした言葉から類推して

「だいたいこういう意味じゃないかな?」とピンとくることがあまりない子の学習に

とても役立ちます。

 

毎ページ5問ずつの線つなぎのクイズのように

楽しく取り組めるようになっています。

 

①いんぼうをたくらむ

②お母さんが先生にめんかいする。

③いちかばちかやってみよう。

 

といった聞いたことがありそうで、どういう意味かわかりにくいことばを、

短い解答と結び付けていきます。

 

A  人と会うこと。

B  うまくいくか失敗するかわからないが。

C  よくないことを計画すること。

 

★くんにこうした問題を出したところ、どれも正解することができました。

それほど言葉を知っているわけではないのでしょうが、類推するのが上手な

勘のいい子なので、五択になっている問題だと、「どれが答えに近そうか」が

ピンときたようです。

ただ、★くんがこの問題を解く姿を見て、文字を読む力のたどたどしさが

気にかかりました。

読み間違いや読み飛ばしが多く、たった二行の短い文でも

自分の読む力の危うさが原因で、何が書いてあったのか記憶に残っていないようでも

ありました。

今回の学習では、読みでつまずきかけるたびに、少し読み方のフォローをしていたので、

自分ひとりで読んで問題をすると、とたんにできる問題が減るようにも感じました。

 

理解力や考える力は高い子なので、

文字を読む際のつまずきを無くしていってあげれば、

今、国語でつまずいている状態から脱することができるのかもしれません。

 

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先の会話を読んでいただくとわかるように

語彙量の少ない子は、おしゃべりが楽しくなってきて言葉数が多い時にも、

「ドテッ」とか「バラバラ~」など擬音語だけでしゃべりながら、

手を振り回したり、身体ごと前のめりにこける真似をしたりして

言いたいことを伝えがちです。

そんな時、言いなおさせるのではなくて、

「そうよね。ドテッとね」と子どもの言葉をそのまま受け取ってから、

「倒れる。木が倒れるね」など、正しい言い方で言いなおすようにしています。

できるだけ短い言葉で言い直し、

後から主語をつけた形でも言い直すようにしています。

 

「倒れるのと、ぐらぐら揺れるだけなのと、どっちが怖い?」といった質問をして、

今、学んだ言葉を使う場面を設けるのもいいですね。

 

語彙の少ない子は相手の話を聞くこと自体に無関心なことがよくあって

話している最中にもプイッとよそ見をして、

自分の遊びに没頭しはじめることがあります。

 

無理のない形で、「おしゃべりをしている間は、相手の顔を見て、最後まで聞くのよ」

といったルールを繰り返し教えることも必要かもしれません。

また子どもがもっとしゃべりたい、面白い、楽しい、と感じるような

話題で会話をすることも大切だと思っています。

 

「国語の読解問題の答えは問題文の中にある」ということが

なかなかピンとこない子がいます。

 

「はなさんのお誕生日は何曜日だったでしょう?」

 

「うさぎさんは、どうして泣いていたのでしょう?」といった設問に対して、

 

問題文も読まずに、

「火曜日?」「ちがうの?じゃ、水曜日?」といった答え方をしたり、

 

「痛いから泣いてたと思う」と文章の内容とはかけ離れた、

泣いているから連想した考えを述べたりするのです。

 

そこで、「文の中に書いてあるから、文章をよく読んでね」と言っても、

文字の上を視線が上滑りに滑っていって

読んでいるのか、読んでいないのかはっきりしない時もあります。

 

そんな時に便利なのが、

クーピーペンシルや色鉛筆といったアイテムです。

 

設問の「どこで」や「どうして」「だれが」「いつ」といった部分に

色をつけてから、

文中の中からその答えになる部分を探しだして同じ色を塗るのです。

 

色を塗るという視覚的にわかりやすい行動をつけくわえてはじめて、

設問の答えって自分で思いついたことを言うんじゃなくて

文章の中に書いてあるのか、と身体で気づく子たちがいます。

 


『プチ哲学』と「セレンディピティー」

2015-10-23 13:29:29 | 日々思うこと 雑感

メディアクリエイターの佐藤雅彦さんの『プチ哲学』という本があります。

かわいらしい漫画に解説がついている本で、

教室で、それぞれの漫画のテーマと同様の体験をした際に

子どもたちに漫画を見せ、解説を読んであげると、強く心の響くものがあるようです。

 

この日、小2の女の子グループと見た漫画は、

『ビジネスマンダニエル氏』と『うっかり電池くんの証明法』。

 

『ビジネスマンダニエル氏』は、

拾ったセッケン箱を舟として使ってひと儲けしようとかんがえたカエルのダニエル氏。

ところが箱に穴があいていて、水が舟の中に入ってきて使いものになりませんでした。

そこで、ダニエル氏は、穴のあいたセッケン箱を水道につないで、シャワーきを開発して

成功をおさめました……という漫画。

 

テーマは「偶然性の発見」です。

画期的な商品は偶然にそのアイデアが発見されたものがたくさんあるという話。

新しいのりを開発している途中、「とてもはがれやすいのり」ができてしまった

ことよりポストイットができた例について話すと、子どもたちの間から笑いが漏れ、

ポストイットを見つけてきてみんなに見せていました。

 

人間の発想は見えない枠にとらわれています。しかし時として

失敗は、その枠の外にはみだしたところに発生します。その時、

私たちは新しい発見にめぐりあえたのです。このような偶然性の発見を、

難しい言葉ですが「セレンディピティー」と言います。 (『プチ哲学』P36)

 

 

工作をしていると、この「セレンディピティー」という言葉に

ぴったりの能力を使う場面がよくあります。

こうしたかったんだけど……→うまくいかない。

失敗する。→失敗

と思ったものから新しい発見をする。新しいものが生まれる。

そんな自分の何気ない体験を、こうして別の視点から言葉で捉えなおす作業が

子どもたちの心を深いところから揺さぶる時があります。 

 

コマの上に物を乗せて回そうとすると、転がり落ちてしまいます。

それにランダムに落ちるので、どこに飛んでいくかわかりません。

でも、Aちゃんは、そうした「うまくいかない」を利用して、

ゲームを作ることができました。

 

2年生のお姉ちゃんたちのグループに参加していた年中の妹Bちゃん。

コマにビーズや毛糸玉などをセロテープで貼ってデコレーションしていました。

ボンド等で貼るのと違い、セロテープで貼ると、

どうしても不格好にテープが上にはみだしたような貼り方になってしまいます。

ところが、これを回してみると、透明のはみ出したテープ部分が、

空間上に浮かんだ不思議な物体のように見え、なんともいえない美しさを

生み出していました。

 

写真がうまく撮れていなかったので見せることができないのですが、

いくつもの色でコマを色分けてきれいに仕上げる子が多い中、

二色だけの色でシンプルなコマを作ったCちゃん。

作品を半分だけ鏡に映るように作った箱に入れたところ、

摩訶不思議な色の変化を楽める作品となりました。

 

 

紙から立体を作るのが得意なDちゃん。

全て紙でできた作品は、壊れやすいのが難点。

でも、この作品では、コマに接着した建物が、

全て紙で組み立てた内部が空洞という作りだったため、

これだけ大きなサイズのものをコマに貼っても、

コマの回転に支障がなく、見る人がみんなうっとりするほど魅力的な作品となりました。

このコマを横から眺めてチェックしていたDちゃんは、横の一点から観察すると、

まるで景色が動いているようでとても面白いことを発見しました。

そこで、お家に帰ってから、

「窓つきの覆いを作って、車窓から景色の変化を眺める作品にしてはどうか……」

という話しあいをしました。

 

この日のレッスンには、算数を教えておられる方が見学にみえていました。

制作中も、『プチ哲学』を見て雑談する時も、算数の学習(今回は旅人算でした)でも

子どもたちがとても集中していることに感心しておられました。


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには? 4

2015-10-22 20:09:59 | 工作 ワークショップ

前回の記事で、子どもが「やりたい」という強い意欲を見せた時、

「ひとつのことにじっくり関わる力が育たないまま」に

なるような対応を取る方が多いということを書きました。

 

「ひとつのことにじっくり関わる力が育たないまま」になるような関わりとは、

子どもがやりたがらない時には、熱心に何度も何度も誘いかけて、

子どもがしつこくやりたがることには、あまり関心を持たずに途中でやめさせたり、

その場限りの活動で終わらせたりすることです。

 

他の子がみんなできていることだからとか、先生が声をかけているからとか、

親がはりきって準備したことだからとか、

大人が子どもに「やらせたい」と思い、誘いに乗らない子に、

熱心に何度も働きかけることはよくあります。

 

その一方で、仕事が忙しいのであまり構ってあげる時間がないからとか、

今日はこれを作ろうと思っていたのに、途中から作るのに飽きて遊んでいるように

見えるからとか、理由はないけれど子ども発でしたがることはどれもただの遊びに

見えて無意識にスルーしてしまうからといった理由で、

子どもが夢中になっていることに注意を払わない方は多いです。

 

子どもが熱中して何度もやりたがることというのは、

たいてい親の「こういうことをやらせよう」という思惑からずれているものです。

また、親がやらないでほしいと感じる

「その年齢より幼く見えること」「汚れそうなこと」「散らかりそうなこと」

「ちょっと危険なこと」「親からするとあまり価値がないこと」

「成長に結びつかないように見えること」

「親のすることに反抗しているように見えること」「脱線や停滞を感じさせること」

がほとんどです。

やらせたいことであっても、「それにじっくり付き合う時間を使うのはもったいない」

と感じさせるものだったりします。

 

ですから注意を払わないのも当然といったら当然のことではあるのですが、

「子どもがやりたがらない時には手を変え品を変え誘いかけ、

子どもがやりたがることには無関心」

という関わりを続けていくと、他の人や他の子といっしょに活動するのを嫌がったり、

「これをやる」とひとつのことに腰を据えて取り組もうとしなかったり、

自分より上手にできる人から学んで、できることを増やしていくのを避けたり

するようになります。


もし仕事が忙しくて、ゆっくり関わってあげる時間がないのなら、

ただ、子どものやりたがっていることに強い関心を寄せるだけでもいいのです。

「この子はこういうことが好きなんだな。こういう理由で好きなのかな?」

「これは危ないからやらせるわけにはいかないけど、別の形でこういうことが

たっぷりできるようにしてあげよう」

「こういうことが好きなのなら、この好きな作業でできそうな物作りはないかな?」

「この子はいろいろ試すのが好きなんだな?

もっと試せるように、何か用意してあげようかな?」

「作るより実験するのが好きなのなら、

実験しながら、いろいろな仮説を立てるのを楽しむようにしよう」

「散らかりそうな小さいものをいっぱい何かに詰めるのが好きだな。

後片付けが大変だから、今日は十分やらせてあげられないけど、

今度、散らかっても大丈夫な場でこれをやらせてあげよう。

砂場での遊びがもっと楽しいものになるように、持っていくものに工夫しよう」などと

考えをめぐらせることができますよね。

 

Aくんは小さい水風船をたくさん作りたがっていましたから、

小さい水風船の中に数個ずつビーズを入れて音の出るおもちゃ作りを楽しんだり、

風船人形を作ったり、ゴミ収集車を作って風船を集めたり、

水風船に食品トレイをつけたお風呂で浮かべられる船を作ることもできます。

また風船を膨らます道具を本人が扱いやすいものにしてあげることで、

自分でやり遂げる達成感を味わって、他のことにも自発的に取り組むようになるかも

しれません。また、本人がやりたがることに付き合う中で、

大人の誘いかけに乗ることへの抵抗感が薄れて、

他の場面でも働きかけに素直に乗るようになるかもしれません。

 

 

Aくんが発見した細いストローに太いストローを通して動かす遊びも、

ケーブルカー作り(太いストローに小さい箱を貼るだけ)や

木のぼり人形(黒いストローにサルに見立てたものを貼るだけ)などの工作に発展させて

遊ぶことができます。

 


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには? 3

2015-10-21 17:58:38 | 工作 ワークショップ

 はさみで切ったりテープで貼ったり色を塗ったりすることを、

自分から進んでやりたがるようになるには、

「自分でやりたい!」という気持ちが高まるそうした作業に対して敏感な時期に

やりたいと思うだけたっぷりやりきるのが大事です。

でも、そうした敏感期を過ぎてしまったら……?と心配になるかもしれません。

確かに、アレとコレと限定してしまうと、やりたがる時期を過ぎると

極端に自発的に取り組もうとする姿勢がなくなってしまうものもあります。

でも、子どもって、その時期その時期でやり残したことがあっても、

次の時期に別の形で、やり残したことを補おうとする姿があります。

 

Aくんにしても、切ったり貼ったりする作業は、すぐに飽きてしまうようでしたが、

「風船用の空気入れで水風船を膨らませる」といった作業は、

「この風船、全部、全部、膨らませたい!」と言うほど熱心でした。

水風船を空気入れで膨らませるのは、風船が飛んで行かないように指でしっかり押さえ

ながら、押したり引いたりする力も集中力もいる作業です。

それを何個もチャレンジしようとするのですから、

それをやりきることは、Aくんの心にとっても身体にとってもとても重要なことなのだと

思いました。

 

子どもが、自分から物事にしっかり関わるように成長していくか、

ひとつのことにじっくり関わる力が育たないままになるかは、

こうしたちょっとした子どもの姿への気づきとのつながりが大きいです。

 

「自分から物事にしっかり関わるように成長していく」ように関わるには、

そうした「たくさんたくさん挑戦したい、限界までチャレンジしたい」という姿を

目にした時に、風船を膨らます道具なども、本人にとって気持ちよく扱えるような

サイズを用意してあげることや、大人がその子のがんばりに強い興味を寄せることが

重要です。がんばりを応援し、注意深く扱えていることや、途中であきらめずに

努力していることを褒め、認めることです。

子どもが、がんばっている自分に喜んでいる時に、いっしょに喜びあって、

「○○ちゃんなら、はさみで切ることもテープで貼ることもきっと

上手にできるはず」と励ますことです。

 

ただ、そうした時に多くの親御さんは、

後者の「ひとつのことにじっくり関わる力が育たないまま」に

なるような対応をしがちです。

 

次回に続きます。


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには? 2

2015-10-20 21:49:43 | 工作 ワークショップ

何度も何度も呼びかけたり、手を変え品を変え誘いかけても

子どもがこちらが提示するものに乗ってこない時、

大人は「いったいどうすればいいの?」と強いジレンマを感じるか、

「無理にやらせることはないのでは?」と働きかけること自体を諦めてしまいがち

なのではないでしょうか。

 

Aくんのお祖母ちゃんは、誘いに乗らないAくんに対して、

優しく根気よく諭しつづけていましたが、誘えば誘うほど頑なになるAくんに、

どう対応したらいいのかわからないようでした。

 

そんな時に、どんな言葉をかけたら、Aくんが乗り気になって取り組みだすのか……

といえば、そんな魔法のようなひとことは、おそらくないはずです。その場面には。

 

でも、レッスン中の別の場面では、

Aくんの意欲に変化をもたらす魔法の種(?)をまくのにピッタリの機会がいくつも

見いだされました。

 

Aくんは、大人が誘う活動には見向きもしないものの、自分が面白いと思う活動は

非常に熱心に繰り返そうとするし、あれこれ試してみようとしていました。

上の写真のようなガムマシーンを作り方を見せていた時、

ビー玉や星やハートの形の透明小物を入れてみて、穴を通るかどうか試してみました。

「穴の中に入れてみる」ということは、Aくんの強い興味をそそるようで、

底に穴を開けた紙コップの穴に大量のビー玉を入れから、

紙コップを持ち上げて、ザーッとそれが周囲に広がって行く様を

眺めるのも面白がっていました。

 

ストローにサイズの異なるストローを通して、動かすことにも関心がありました。

 

気になったのは、そのようにAくんが自ら強い関心を抱いて、

心がひとつのことに集中している姿に対して、お祖母ちゃんが、

「家でもこんなふうにちょっと貼ったり、ちょっと何かして、その後は、

それでずっと遊んでいるんです」と、おっしゃっていたことです。

 

それは確かにそのように見えるし、実際、ほとんどの親御さんが、

「工作に取り組む時間の短さ」という点にだけ焦点を合わせて

解釈してしまうような場面ではありました。

 

でも、Aくんが大人の誘いかけに極端なほど無関心なことを思うと、

本当は、大人の方が、こうしたAくんが面白がっていることに対して、

強い関心を寄せる必要を感じました。そうして同じひとつのことに好奇心を向けあって、

あれこれ試したりおしゃべりしたりする楽しさを味わうのです。

また、Aくんの活動は、工作とはいいがたいものですが、

実験としては、「こうしたらどうかな?」「ああしたらどうかな?」

「こうだったから、こうなったのかな?」

「ビー玉がザーッとなだれのように広がるように、大きなコップに入るだけビー玉を

入れてみようよ」などと、アイデアを出したり、推測したり、

原因と結果について話しあったりする機会を含んでいるものでした。

 

太めのストローを貼って、傾きを変えて、物を滑らせてみることにも

関心がありました。

 

コップにビーズを詰める作業を面白がっていたので、

何種類かエレベーターを上げ下げする方法を見せました。

 

ストローを使った巻き上げ式エレベーター。

車で引っ張る形で挙げるエレベーター。

車を斜面に置いて、滑らせてあげるエレベーターなど。

 

紙コップを一方にひもでつないで、

ビー玉の数で上がったり下がったりするエレベーター。

まだ、そうした仕組みへの関心はあまりありませんでしたが、

お家で楽しむと喜ぶのではないかと思いました。

 

あと少しだけ続きます。


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには? 1

2015-10-20 14:58:02 | 工作 ワークショップ

親子向けの工作講座に、

出産間際のお母さんの代わりに4歳のお孫さん(Aくんとします)と

一緒に遠方から来てくださった方がいました。

工作に誘っても自分からしようとしないので、どのように誘ってモチベーションを

上げたらいいのかアドバイスを求められました。

 

Aくんは好奇心旺盛で頭の回転が速いおしゃべりさん。直感が優れている子のようです。

「花火」という言葉を耳にすると、即座にストローを放射線状に置いてみて、

「ほら、花火だよ」と言ったり、ストローとストローの間が

バランスよく均等になるように調整したり、

「風船を3つちょうだい」「それって、こういうことか」と自分が関わっていることに

的確なコメントをする姿がありました。

そのように意識がしゃんとした利発な子である一方で、

次から次へと興味が新しいことに移りやすく、一つのことにしっかり関われなかったり、

自分の興味は追うけれど、他者の誘いはいっさい無視したりする一面もありました。

 

「やりたい!」といった口の下から、別の何かをはじめているので、

おしゃべりする力はしっかりしているのに、連続した会話が成り立たないほどです。

ひとこと発する間に、新しいものに手を出しているのです。

 

Aくんが、ひとつの活動に集中できないのには、いくつかの理由が考えられました。

 

自分が「これはできる」と認識している活動のレパートリーが少ない。


Aくんは「花火みたい」「○○みたい」「これ○○だよ」と、

上手に見立てて平面上に物を配置してみるのは進んでやっていましたが、

自分が思いついたことだし、最初は非常に強い興味を抱いているように見えたことでも、

セロテープを貼るとか、はさみで切るといった作業を目にすると、

たちまちやる気が消失するようでした。

「花火」と言いながらストローを置いていた時も、

ストローをセロテープで貼る段になると、興味は次に移っていて、

促されてめんどくさそうに1、2枚テープを貼るのがやっとでした。

最初の興味はどこへやら、

「やって~」と大人に頼んで、できあがっていく過程を見守ることもしませんでした。

 

たいていの子が「自分で!」「ぼくが!」「わたしにやらせて!」と

手を出したがるような活動への無関心さが目立ちました。

Aくんには、器用さを伸ばす意味でも、自立心や意志力を育む意味でも、

工作のように、実際に手を使ってする取り組みが大事になってきます。

 

といっても、誘ってもやりたがらないのですから、どうすればいいのか戸惑いますよね。

 

「どうすればいいのか」のヒントは、この日のAくんの姿とお祖母ちゃんの関わりの中に

いくつかありました。

先に……Aくんが、「やって~」と大人に頼んで、できあがっていく過程を見守ることも

しませんでした……と書きました。

本来、大人に「やって~」と頼んで、自分は見ているだけ……という態度は

感心できるものではないかもしれません。

でも、もし、それすらしないほど、気持ちが次から次へと新しいものに移っているなら、

話は別です。

何かひとつに決めて、集中するには、Aくんが大人に頼ったり期待したりする気持ちを

育むことも、重要になってきます。


自分が興味を持った時にゆったり対応してもらうことで育つ

「相手に期待する気持ち」を育む必要性


大人が道具を使う姿をよく見ていると、子どもは自分も使ってみたくなるし、

どのように扱えばいいかもわかってきます。

子どもの興味に応える形で、道具を使ってみせると、

自分の好きなおもちゃを作ってもらう過程や自分のアイデアの実現を手伝ってもらう過程を

ワクワクしながら見守るようになります。

 

でも、そうは言っても、「ちゃんと見なさい」と呼んでも、知らんふりして、

別のおもちゃに手を出す子に、強制的に叱って見せるわけにもいかないし……と

悩んでしまうかもしれません。

Aくんにしても、お祖母ちゃんが、

「Aくん、Aくん、先生が呼んでいるよ」「先生のお話を聞きなさい」と

優しく声をかけている間は、意地でも誘いに乗らないぞという態度でした。

 

Aくんのそうした頑なな態度にやきもきするお母さんの姿が目に浮かぶようでした。

 

話を引っぱりますが、具体的な対応は次回に続きます。

 


うちの子、わがまますぎるの? 子どものぐずりを減らすには? 2

2015-10-19 17:46:49 | 日々思うこと 雑感

前回の記事「うちの子、わがまますぎるの? 子どものぐずりを減らすには?1」に、

少し補足があります。

この記事の頭に、「前回の記事に次のようなコメントをいただきました」と

書いているのですが、この前回の記事とは、3年も前の、

「しっかり泣けるようにわがままが言えるように(2歳7ヶ月の子のレッスンから)」

という記事(点線から下)のことです。


この記事に登場する★くんは、現在年長さん。

しっかりした利発な子に成長しています。工作が好きで好きで、寝ても覚めても

何か作っているようです。

算数がとても得意になってきました。育ちの過程では、不安が強かったり、

遊びが広がらなかったり、園になじめなかったり……とやきもきすることもいろいろ

あったけれど、数年の間に何ごとにも自信を持って取り組む姿勢を身に付けた★くん。

お母さんもお祖母ちゃんも★くんの成長ぶりにとても驚いています。

 

2歳の頃の★くんと最近の★(A)くんの記事を紹介します。

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2歳7カ月の★くん。感覚と思考が優れた温和な男の子です。

生まれたばかりの妹ちゃんといっしょにレッスンに来てくれました。

 

工作遊びをするようになってから、「どうして?」「なぜ?」と質問

することが増えてきたそうです。

 

線路にずらりと列車を並べながら、

「○○と○○と○○が連結して、長く長くつながっていくんだよ。電車のうしろの車輪が

くるくるってなるから、すべるんだよ」などと、あれこれ解説してくれます。

 

あんまり自信満々に電車を連結させているものですから、

「いいなぁ。★くん。上手ねぇ。先生も、連結、連結って、電車を並べたいなぁ」

と言うと、★くん、一瞬黙りこくって複雑な表情を浮かべていました。

自分の作品作りを邪魔されるのではないかと不安だったのかもしれません。

 

そこで、「先生も、下に線路を置いてね、電車の連結、連結ってできるかな?」と

たずねなおしました。すると、しばらくしてから、

「できるよ。先生も、できる」と静かな声で返事が返ってきました。

 

そこでわたしが近くにあった電車2台を線路に乗せたところ、

「それは、ガチャンってできないからっ、連結じゃない。

もうちょっと上になってたら、連結」と、わたしの置いた電車を取りあげて、

連結部分の問題を指摘します。

といっても、★くんの電車の連結部分と同じではあるのですが、

何かとイチャモンをつけたい模様です。「それにしても、★くんにしてはめずらしく

自己主張するなぁ。自分に自信がつきはじめたのかな」と感じました。

 

★くんはおとなしくて生真面目な性質で、これまでは感情をあまり表現しないことと、

内気過ぎるところが気にかかっていました。

お母さんに対してもわがままを言ったり、自己主張したり、

自分から甘えたりすることがほとんどありませんでした。

教室に来始めた当初は、お母さんがおもちゃを片付けるように言うと、

まだ遊びたいように見える時にも即座に片付けだすおりこうさんの反面で、

おもちゃで遊ぶ時間よりも片付けをしている時間の方が長くなってしまいがちなのが

気になっていました。

★くんのお母さんは温和で優しい方で、けっして片付けを無理強いしているわけでは

ありませんでした。

★くんの几帳面過ぎる性質が、こだわりを作っていたようなのです。

 

わがままを言ったり、自己主張したり、甘えたりすることが少ない子の目には、

他人や世界が恐ろしいもののように映っているようです。

★くんも、防衛的な構えからか、周囲に対する好奇心が遮断されて、

無表情のまま自分ひとりの世界に閉じこもって遊ぶ姿が目立っていました。

 

虹色教室に通ってくるうちに、

★くんの遊びは積み木の列車の駅作りから

働く車を工作で作ること、さまざまなもののサイズや色や数について比較していくこと、

高架の線路を作って、街作りをしながら、自分の考えを自由に言葉で表現することや

おままごとをすることへと広がっていきました。

しだいに表情が明るくなり、おしゃべりも達者になってきました。

几帳面な性質は、物を作る時、色をそろえたり、

はさみで小さくものを切り刻むような創造的な活動のなかで活かされるようになり、

几帳面さに邪魔をされて、遊びが狭まるようなことはなくなりました。

 

 ★くんは教室の警察の車が気に入りました。

大好きなゴミ収集車ということにして遊んでいます。

「ゴミ袋を作ろうか?」とたずねると、大喜びで乗ってきました。

 

★くんはサイズに敏感な子で、

空気入れで風船を膨らませているわたしを真剣な表情でチェックしています。

「それは、(ゴミ収集車に)入るよ。それは大きいから、入らないよ。

それは青より大きい。青いのより小さいのにして」という具合に。

 

水風船にビーズを数個入れてから、水風船用の空気入れで膨らまします(大きな

100円ショップで売っています)。しばると小さなゴミの入った袋のできあがり。

振ると、手に振動があって面白いです。

★くんはこしらえたゴミ袋をゴミ収集車で回収してまわります。

 

乗り物のおもちゃが好きな子は

ひとりで遊ばせているとなかなか遊びが広がらない場合があります。

乗り物遊びを中心に、ブロックの街作りや、工作でガソリンスタンドや洗車場を

作ること、ストーリーのあるごっこ遊びを展開するなど

身近な人が遊びの世界を広げてあげるといいですね。

 

★くんはとても素直な聞き分けのいい子で、お母さんやお父さんに逆らったことは

ほとんどありませんでした。

★くんのおばあちゃんにだけは、怒って叩くことがあるという話でした。

★くんのおばあちゃんがいらした時に★くんと遊ぶ姿を見せていただいたところ、

いつもは無表情なことの多い★くんが、自然な喜怒哀楽を表現しながら甘えていました。

おばあちゃんには、「イヤ」という本音が出せているようなのです。

★くんのお母さんは温和な優しい方で、

どうして★くんはお母さんの前でちょっと緊張した良い子良い子した

態度を崩せないのかと気になっていました。

どうも出産でお母さんがもうすぐいなくなってしまうかもしれない

という状況が、不安だったのかもしれません。

今回、赤ちゃんといっしょに教室に来た★くんは

緊張して身体をこわばらせる癖が減って、かわいらしい笑顔をたくさん浮かべていました。

自己主張もたくさん出てきて、

わたしに「こうしてよ」「ああしてよ」とたくさん注文を出してきます。

通りがかりにわたしの肩に体重を預けてもたれかかってくるので、

抱き上げて、「高いところのおもちゃ、見て、どれがいい?」と

棚の上をのぞかせると、ちょっと身体をのけぞってみたものの、

やっぱり甘えてうれしそうな顔をしました。

そういえば、★くんは、2人目の赤ちゃんに遠慮して、お母さんに甘えて

抱きついていくことができない様子です。

いつも抱っこされておっぱいをもらっている妹がお母さんを独占しているので、

遠巻きにお母さんを眺めています。

妹さんの世話が一段落着いた時には、お母さんの方から

積極的に★くんを抱きあげて甘えさせてあげるようにと伝えました。

 

帰り際になって、

★くんは、この日、ゴミ収集車に見立てて遊んでいた警察の護送車で遊んだのが

楽しくてたまらなかったようで、

「この車持って帰るー!」と言いいながら車を抱え込んでいました。

 

「それは教室のだから置いていこうね」と言っても、「★くんのー」と言い張ります。

こうした自己主張にしても、反抗にしても、★くんにすると本当にめずらしいことです。

お母さんが優しい口調で説得に入ると、

★くんはたちまち、エッ、エッ、と嗚咽を漏らして泣き始めました。

 

といっても★くん、反抗にしても、泣くのにしても、

これまでほとんど自分の我を通した経験がないためか、

まるで心にもない演技でもしているように弱々しいのです。

 

そこで、優しく説得していたお母さんが、

「それなら置いていくわよ」と優しい口調で付け加えて、

立ち去る真似をしようとしました。

 

すると泣きかけていた★くんの顔面が蒼白になって、

そのまま放心したような無表情になって涙を引っ込めかけました。

 

わたしは慌てて、★くんのように見捨てられるのではないかという恐怖心を

持っている子には、「置いていくわよ」は絶対、禁句で、真似ごとでも立ち去るふりを

してはいけないと伝えました。

すると、★くんのお母さんはとても驚いて、

「いつもごねかけたら、置いていくわよ、と言って脅していました」と

おっしゃいました。

★くんのお母さんはいつも穏やかに優しく子どもに接している方です。

「置いていくわよ」のひとことで、★くんがあんまり簡単に言うことを聞くので、

強く叱らずに済んでいい、と思っていたのかもしれません。

 

わたしは★くんが弱々しく嗚咽を漏らしながら、

蚊の鳴くような声で自己主張するのを見て、

まず自分の気持ちをしっかり表現させてあげたいと感じていました。

それが、★くんのお母さんは、大人の言い分で言いくるめるようにして

泣くのをやめさせようとしてしまいます。

おそらく★くんが悲しそうな姿を見るのがいたたまれないのでしょう。

 

でも、★くんは普段から、

「こうしたい」「ああしたい」という自分の要求を外に出す子ではなく、

おそらくそうした自分の内面から湧き上がる強い思いを感じた体験自体が

少ない子でしょうから、

めずらしく自分の我を通しているこのチャンスを逃す手はないのです。

わたしはお母さんの言葉を制止して、もう少し、★くんの自己主張に

つきあうことにしました。

 

今は、「こうしたいの!」と主張させ、、「そうだね、その車が好きなのね。

ゴミ集めして面白かったもんね」と、しっかり気持ちを受け止めてあげて、

「でも教室のおもちゃだから、残念。バイバイしてまた今度遊ぼうね」と言って

泣くなら、泣きたいだけたっぷり泣いて、お母さんにだっこされてなぐさめてもらう

必要があるのです。

 

そこで「もし、★くんが持って帰ったら、お友だちが遊べないでしょう?

うんぬんうんぬん~」と長々と大人の世界のルールをくどくどと言って聞かせて、

主張も涙も引っ込ませてしまうようなことをしてはいけないはずです。

2歳児には2歳児への諭し方があるはずですから。

 

欲しくてたまらない思い、楽しくてたまらなかった記憶、

家に持って帰ってずっと遊びたいという気持ちが、心に渦巻いているのです。

泣いて、泣いて、なぐさめられて、

そうした気持ちを乗り越えるだけで精いっぱいなのです。

 

そこで、ここにいないお友だちの気持ちまで想像してみなさい、

などと説得するのでは、大人と子どもの力関係のなかで無理矢理、

まだ生まれて2年ちょっとしか経っていないような子の

弱い側の意見をひねりつぶしてしまうようなものです。

 

子どもの成長にゆっくりゆっくり付き合ってあげたいですね。

 

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<最近の★(A)くん>

「ダンボールに剣の絵を描いて、切り取り、クーピーで雑に色付けする」という

自己流の剣作りを繰り返していたAくん。

「同じものばかり何度も何度も作りたがるし、作る素材も作り方も同じで、

作業もちょっと雑……でも、本人は全身全霊をこの活動に打ちこんでいる」という状態が

1年近く続いた後で、Aくんにいくつもの変化が訪れました。

 

Aくんが手と目でする作業と頭と言葉でする作業の移行の時期にあると思ったのは、

誰に言われるともなく、先に設計図や完成図を描いて、計画を立てて作品作りに入る姿を

目にしたからです。

 

何本も何本もダンボールの剣を作るうちに、

ダンボール製のため剣が何度も折れてしまうという憂き目を見てきた

Aくんは、常に作る際の補強する材料に気を配るようになりました。

事前に割り箸やストローなどで折れない工夫をしてから作っていきます。

 

相変わらず剣が好きだけれど、剣以外のものも、目で見たものをどのように作ろうかと

自分でイメージして作り始めました。

弓矢を作る時に曲線部分はモールを巻きつけることで補強していました。

 

仕上がりをきれいにするためにカラフルな折り紙を貼ったり、色テープで

模様を描いたりするようになりました。

 


うちの子、わがまますぎるの? 子どものぐずりを減らすには?

2015-10-19 16:18:14 | 幼児教育の基本
 
前回の記事に次のようなコメントをいただきました。
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しっかり泣かせるわがままを言わせるって難しいなあって思ってコメントします。
3歳の男の子と1歳の女の子がいます。
上の子が幼稚園に入り、幼稚園では最初こそ大泣きしたものの、
今ではすっかり慣れて楽しく通っています。
幼稚園では、先生の言うことをよく聞いて楽しく過ごしており何も問題はないようです。
また実の母親や旦那に見てもらっている時も機嫌良く楽しく遊んでいると言います。 

それが、母親である私と一緒にいるときは、些細なことや理不尽なことで
一日に何度も怒ったりグズグズしたりして、正直うんざりしてしまいます。

幼稚園の先生からも佐々木正美先生の本でもそれで良いと言われますが、
毎日対応する方としては、ついつい怒ってしまってうまく対応できないなあと
思っています。こういった子どもの愚図りを減らす方法はあるのでしょうか?
それともこれは母親がどっしり構えるべきなのでしょうか?
 
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過去記事に2、3歳の子の愚図りに対応する方法を書いたものがあったので紹介します。
 
「ナチュラルな子ども時代」産調出版という本によると、2~3歳児というのは、
爆発的に意志が発達する時期なのだそうです。
だから、かんしゃくをしょっちゅう起すんですね。
自意識が発達するにつれ、ここにいる「自分」と自分に脅威を与える「他人」が
いるという状態になります。
「自分の意志」と「他人の意志」の対立に気づきます。
 
子どもの「意志の力のエネルギー」はとても激しいものです。
どんなに辛抱強くて理解ある親もついていけない…
それが「魔の2歳児」(3歳の間もしっかり続く子も…。)です。
 
この困ったおちびさんに、どう付き合えばいいのでしょう?
どうすれば、かんしゃくはおさまるのでしょう?
 
まず親は、この困ったちゃんぶりが、いつまでも続かないことを
知っておかなくてはなりません。
4~5歳になると、「意志」は「創造的な遊び」という新しい方法で
表現されるそうです。
 
それとわがままに見えても、愛情とサポートをたくさん必要としている
幼児であることを片時も忘れるわけにはいきません。
 
かんしゃくを起こりにくくしたり、しずめるには、
子どものエネルギーの出口を見つけ、積極的にそこにエネルギーを向けるように
仕向ける必要があります。
 
わが子が2~3歳のころ、私が見つけたエネルギーの出口は、

◎水遊び
◎ころころ転がる遊び
◎ふざけっこ
◎豆の移し変えや砂遊び
◎適度な散歩
 
などです。
本で紹介されていたのは、長靴をはかせて、水たまりでばしゃばしゃさせる、
草の上で転げまわらせるなどです。
それでも、2~3歳の子どもはかんしゃくを起します。うちの子も、
食事が気に入らないことからはじまって、作り直させたあとで、
ひきつけを起すほど泣いていたことがありました。
 
幼稚園に上がるまで、夏の間は、毎日2回水遊びをさせていました。
水遊びは危ないので、注意してそばについていなければなりませんが、
適度な疲れが、2~3歳児の激しいかんしゃくをしずめるのには効果ありますよ~♪
 
想像力を刺激する遊びを教えていくと、
かんしゃくばかりの時期をはやめに卒業するようです。