虹色教室をしていてしみじみ感じるのが、
幼児の知力の向上と、親のメタ認知能力というか親が意識できている範囲の広さと、
とても関係が深いんじゃないかな?ということです。
もちろん、子ども自身、持って生まれた能力というのはあるでしょうが、
後天的に伸びていく部分は、身近な大人のあり方と密接につながっているように
思うのです。
子どもにこれこれさせた、こんな訓練をした、ということより
身近な大人が何を認識し、どんなことをよく思い出し、どんなことを口にしているか、
どんな発想をして、何に価値観を置いているかで、
子どもの育ちはずいぶん違うんじゃないかと感じています。
といって、頭が良い親じゃなきゃいけないとか、
理想的な何でもできる親じゃなけいけないというのではなくて、
ごくごく普通の能力の親でも、メタな視点を持つとか、
意識できている範囲を少し広げる努力を怠らないだけで、
子どもにあれこれさせようと焦らなくても、自然と子どもの知力は引き上げられる
と感じているのです。
たとえば、親御さんが思い出すことに愚痴や不満が多いか、
その日、子どもがうれしそうにしていたことや楽しかったことの振り返りが多いかで、
幼児の記憶力に各段の差が出るのです。
幼児って、快と不快を基準にして、
何度もしたがることと、嫌になって避けることを分けていきますよね。
ですから、嫌なことを思い出すことが多い親御さんの元だと、
過去を切り捨てて、すぐに忘れながら生活しようとするし、
楽しかったことを思い出して口にする親御さんの元だと、
記憶力をフルに使って、あった出来事を思い出そうとするのです。
また、親御さんが子どもの長所に気づきやすいか、短所に目が行きやすいかでも
子どもの能力は大きく違ってくると思います。
長所は少し刺激すれば急速に伸びるし、おまけに短所まで底上げされるものですが、
短所ばかり刺激すれば、自己肯定感が下がって
全てにやる気がない態度になりがちですから。
子どもの能力の伸びって、親の何気ないささいな一言にも影響されるものです。
たとえば、教室で子どもがひとつのおもちゃで遊んでいて、
次に別のおもちゃを触ったところで、「もう終わり?もうあれで遊ばないの?」
といった子どもの気持ちをちょっと下げて、小さな罪悪感を持たせがちな一言が
多い方っているものです。
もちろん、使ったおもちゃは片付けなきゃいけないのですが、
その場の雰囲気で、「2つ3つまでは出してもOKで、それ以上出したいときは
きちんとお片付け」くらいのルールで十分なごっこ遊びのような複数の物を必要とする
遊びの最中にも、つい手持ちぶたさで、子どもの楽しい気持ちを下げるような一言を
言ってしまうということがあると思うんです。
でもそうした大人の余計なひと言を、しょっちゅう浴びている子は、
遊んでいても、すぐに気持ちが沈んだり、つまらなくなって飽きたり、
気まぐれに感情を爆発させたりしやすくなるものです。
そうした時に、親が自分のつぶやく言葉に一線を設けて
子どもがよりいきいきと生産的に想像力を膨らませながら遊べるように
配慮してあげると、子どもはちょっと動くたびに気分が変動して落ち込むといったことが
なくなって、思考力をいっぱいいっぱいまで使って遊び出します。
虹色教室の乳幼児のレッスンでは、
親のメタ認知能力を上げたり、意識できる範囲を広げるために、
どんなことに気をつけたらいいかといったことを話題に親御さんたちといっしょに
おしゃべりをすることがよくあります。
そうした時間が子どもたちの成長に大きな影響を与えているなと実感しています。
写真は2歳3ヶ月の★くんと☆ちゃんのレッスンの様子です。
玉そろばんで数遊び中。
前回、子どもの想像力や思考力の広がり方や伸び方というのは、
身近な大人が何を認識し、どんなことをよく思い出し、どんなことを口にしているか、
どんな発想をして、何に価値観を置いているかと密接な関わりがあろようだ、
といったことを書かせていただきました。
それなら、具体的にどのような働きかけ方をしたらよいのか、
2歳3ヶ月の★ちゃん、☆ちゃんのレッスンで
親御さんたちに学んでいただいたことを中心に紹介させていただきますね。
★ちゃんは、後ろが開いたり閉ったりする車(本来は警察の護送車らしい)を手に、
「ゴミ収集車」と言って遊びだしました。
「ゴミ収集車」で連想できるものって何でしょう?
収集日があること。
街中回って、ゴミを集めること。
ゴミってゴミ袋に入ってますね。カラスがゴミに悪さしないように気をつけている
地域もあります。
ゴミ収集車のお家はどこでしょう? ゴミの焼却場でしょうか。
ゴミ収集車のお友だちは誰でしょう? 働く車たちでしょうか。
子どもが「ゴミ収集車」と言って遊び出したら、
いっしょに遊んであげている大人が、ちょっと頭をひねって
連想できるものをいろいろと遊びに取り入れると、
たちまち子どもも記憶力と想像力と思考力をフルに使って遊び始めます。
「そうだ、今日は月曜日だから、ゴミの収集日だわ。9時までにださなくちゃ。」と言って、
袋にゴミに見立てたものを入れて、
ゴミ出しの真似をすると、
子どもは喜んでそのゴミを収集して遊ぶだけでなく、
収集日は曜日で決められていたりするんだな、いろんなルールがあるんだな、
と直観的に学びますし、
カラスがゴミをつつきにくる、というストーリー展開を
楽しむこともできます。
2歳児と遊ぶときは、あまり説明的ではなく、(教え込んだり、わかっているか
たずねたりせずに)あくまでも雰囲気で、楽しくてワクワクする気持ちを
膨らませるために、さまざまな言葉を駆使して遊びます。
遊びのなかで、ゴミ収集車に「お家に帰りたい!」と言わせたり、
「お友だちと遊びたい!」と言わせたりして、
ゴミの焼却場や働く車たちを登場させるのもいいですね。
★ちゃんのお母さんによると、普段は、★ちゃんがこうして「○○車」と言って
遊び出すと、
「ふーん、ゴミ収集車なの」と言うだけでおしまい……となっていたそうです。
幼い子たちは親や年上の子らに誘われて、
イメージの世界を広げ、考える楽しさを学びます。
普段、身近な大人が、どのようにイメージを広げ、どのように思い出し、
どのように考えているかが、
そのまんま幼児の想像力と思考力が育まれるスペースであり環境となります。
かる~いねんど(100円)でクッキー遊び。
1回遊んだら、後は固まって遊べなかった~となる遊びもたまには必要。
無駄に見えますが、子どもの心に、柔らかかったものが、
固くなって2度と元に戻らなかったという経験が残ります。
★くんは、物をよく観察して、物の作りを記憶するのが得意です。
☆ちゃんは、お料理の手順のように流れのある作業を記憶することが得意です。
そうした子どもの得意な記憶がどのようなものか知っておくことで、
子どもといっしょにする遊びをより豊かにすることができます。
また、子どもに何かを見せてあげるときに、
子どもの得意な記憶がより鮮明なものになるよう
ていねいに見せてあげることができます。