「枠組み」について説明しますね。
ひとことで、「少し遊ぶと気が散って、次のおもちゃへ次のおもちゃへと気が移りやすい」
といっても、理由は十人十色です。
想像力が乏しくて、ひとつひとつのことと表面的にしか関われず、
しっかりコミットメントすることができないというのも
理由のひとつ。
また、大人のかまい過ぎ、教え過ぎ、受動的な刺激の与え過ぎで、
飽きっぽく耐性がない性質になっている場合もあります。
それとは別に、頭の回転が速くて、素早く本質的なものを見抜いて、
「もうわかった!」となると、次々と「新しい何か」を求める子もいます。
◆くんの場合、遊んでいる内容に飽きて、次のおもちゃに行くのではなく、
遊んでいるうちに、「そうだ、こうしたらもっと面白そう!」とひらめいて、
次から次へとおもちゃを取りに行っている様子でした。
また、「どうしよう?」と考え込まなきゃいけない事態にぶつかることが面白いらしく、
「それを解決する方法を思いつくこと」と、「次のおもちゃを取ってこなくちゃ!」
が結びついているものですから、
どうにも脈絡のない遊び方になってしまうのでした。
こうした頭のなかが忙しくて、
自分の手に負えないほどもの物を相手にした挙句、
何をしていたのかさえわからなくなってしまうタイプの子らは
教室にも他に大勢います。
また、わたし自身もうちの子らも……。
おそらく遺伝が関わっているものでしょうから、わたしの父母や祖父母をたどっていっても
同様の気質と格闘しながら生きてきたのがよくわかります。
この性質をいい方向に活かせば、直観的で創造的で頭脳活動を好む気質を、
持ち前の集中力と実行力を使って何かを生み出すことに使っていけるわけですが、
でも一歩間違うと、
あれもこれもと手を出すうちに、自分でも何をしていたのかさえわからなくなって、
どれもこれも中途半端なまま自信を失っていくことにも
つながりがちです。
わたしはこの年まで自分の性質ときあってきた上でも、
わが子たちの育ちを見つめてきた上でも、
こうしたひらめき型の子への「枠組み」の大切さを強く実感しています。
↑写真はエレベーター遊びをする男の子。(記事と関連はありません)
いつもいつも一生懸命。無我夢中。
頭もしっかり使っている。
でもちょっと何かするたびに新しいことを思いついて、
次から次へと新しいことを手掛けていたとするとどうなるでしょう?
おまけに他人から習うのが苦手で、
正しい手順でコツコツやっていくのが嫌いだとしたら……?
いくらがんばってもがんばっても、
ちょっとしては新しいことを始めていたのでは、
毎回、毎回、1からのスタートしていることになり、
過去のがんばりがいっこうに活かされないのではないでしょうか。
おまけにそうしたスタート地点で、手順通りに基礎を身につけるより、
自分のひらめいたことを実行に移したいわけですから、
余計にたちが悪いのです。
といっても、こうした性質の子に、「ひとつのことをまじめに続けなさい」と
繰り返しの多い体系化された活動を押し付けたとしたら、
退屈のあまり、することなすこと大嫌いになったり、怠けたり、さらに落ち着きがなくなったり
しがちです。
なら、「枠組みを作る」というのは、どういうものなのかというと、
これはわたし流の考えなのですが、
次々とひらめくままに新しいことに取り組んだところで、
そうしたバラバラの取り組みが、ひとつのところでつながっていて
無駄にはならず、むしろあれこれすることで、
深みや豊かさが増すような活動をサポートする、ということです。
自由度が高く、応用が効いて、
常に新しいことをしていても、そのバラバラの活動がどれも
基礎技術や知識の蓄積に役立つような活動です。
それは何か、というと、
その子次第、その人次第で、それぞれ異なるはずです。
教室では、
「物作り(工作やブロック制作)」
「ゲーム類(ボードゲーム、カードゲーム)」
「ごっこ遊び」
「科学実験」
「読書」
の5つを大切にしていて、
ただそれをやらせるのではなく、きちんと「枠組み」としての機能が
果たせるように工夫しています。
物作りひとつとっても、直観が優れている子と感覚が優れている子では、
より子どもの潜在能力が伸びる活動は異なると感じています。
感覚が優れている子は、色や形の配置の仕方や仕上がりの美しさなどに
気をくばる上、
コツコツと同じ作業を続けるのを好むこともよくありますから、
最初にブロック制作から関わらせると、
手先が不器用な幼い間も、自分のイメージ通りの仕上がりになるため
頭を使って集中して取り組むようになる場合がよくあります。
質の良い積み木もこのタイプの子たちの
能力を引き出します。
とにかく素材そのものが、一定のサイズでたくさんあるということが、
数量やサイズに敏感で、物作りが数学的な感性を育むことと結び付きやすい
感覚が優れている子らを伸ばすのです。
また、ベタベタザラザラドロドロした素材のさまざまな感触と触れて遊ぶような工作から、
化学実験への興味に移行していく感覚タイプの子らもたくさんいます。
↑感覚が優れている小2の子たちの作品。
一方、直観が優れている子の場合、仕上がりより何より、
ひらめくことと未知の可能性を追うこと、改良すること、想像力を使うことに
関心がありますから、
廃材や画用紙などを使った工作が向いています。
ブロックにしても、成長した後もデュプロブロックなどのように
手間がかからず大がかりな思いつきが実現できる素材が
このタイプの子の能力を伸ばすのです。
「枠組みを作る」には、子どもの活動をサポートする際の
大人がその子というのをよく理解していることと、
活動が含んでいる可能性の広がりに精通していることが
大切です。