新年 あけましておめでとうございます。
今年は例年までとちがう正月を送っています。この10年ほど、
日々のタスク……教室の仕事、家事、ブログを書くこと……に追われてて、
子どもの頃から夢だった児童文学の物語を書きたいという思いを棚上げしてきました。
が、ちょうど去年半ばあたりから、
今までしてきた仕事をしっかり継続しながら、
自分のしたいことのための時間も作っていく新しい生活の仕方を摸索していました。
うれしいことに、『ファンタジー児童文学大賞』への応募のために
応募の最低ラインの32000文字を目標に書いていた物語が
年明けに40000字を超えました。後は締め切りまで、何度も推敲しながら、
より書きたいものへと煮詰めていこうと思っています。
物語を書いていく中で、
去年、虹色教室の活動中にあった思わず頬が緩んでしまうような場面が
いくつも浮かびました。
たとえば、こんな出来事。
ユースで初めて出会った3年生のAくんと1年生のBくんをはさんで
朝食を食べていた時のことです。
前夜、小学校中学年の子らの活発な様子に1年生のBくんが怖気て、
「遊びに入れてくれない」と訴えてきたので、やんちゃながらに気のいいAくんに、
「Bくんも仲間に入れてあげてね。年上の子たちに声をかけるのは勇気がいるでしょ。
Aくんからも、Bくんに声をかけてあげてね」とお願いしていました。
それを覚えていてか、朝食の際も、ふたりは申し合わせて
ひとつ間を開けて並んで座った上で、「先生、こっちこっち。」と空いた席に
わたしを誘ってくれました。
パンをほうばりながら、Bくんが昆虫の生態についての驚くような量の知識を
披露しました。どの虫についてたずねられても、その虫がどのように成長し、
虫の天敵は何で、どんな暮らしをしているのか流暢にしゃべるBくんを見て、
虹色教室きっての雑学王のAくんが、すっかりそれに魅了された様子で
聞き入っていました。
それでわたしが「Aくんも、放射能のことでも、地震のことでも、
歴史のことでも、算数のことでも、Aくんが知らないことなんてないじゃない?
Aくんほど、いろいろなことを知っている子って、探してもいないよね」と
言いました。
するとAくんは、それはそうだよ、というように自信満々な様子で、
照れながら、「でもさ、ぼくは昆虫のことだけは、全然知らないんだ」と言いました。
すると、横からBくんが、
「ぼくは、昆虫のことは完璧だけど、昆虫のことだけしか知らないんだ」
と言いました。
それでわたしが、「あっ、だったら、ふたり合わせたら……?」と言いかけると、
Aくんがゲラゲラ笑いながら、「そうだっ、ふたり合わせたら完全体だ!
ふたりで合体したら、この世にあること全てを制覇できるぞ!!」と
言って大喜びしていました。
そうして想像の上で完全体になれたことを喜びあうAくんとBくんの笑顔が
今も目に焼き付いています。
別の日、こんなこともありました。
1歳半のCくんは、笑顔がそれはかわいい男の子です。
Cくんがお兄ちゃんたちのレッスンについて教室に来ていた時のこと。
レッスンの休憩時間にCくんがちょこちょことわたしのそばに来て、
自分用の個包装のお菓子袋からスナック菓子をひとつぶ取り出して、
わたしに差し出しました。自分の意志で、「あげるよ」と手渡す行為が
心の底からCくんをワクワクさせるらしく、
満面の笑みを振りまきながら、わたしがそのお菓子を口に入れるかどうか
見守っています。ひとつ口に含んでみると、味のないベビー用のお菓子なのだけど
魚の粉末が練り込んである今どきのお菓子です。
「ありがとう、おいしい、おいしい」とやっていると、
「もうひとつ」「もうひとつ」と、わたしの手に押し込むようにお菓子をくれます。
Cくんの表情からは、幼い子がハトにパンくずをまいたり、
猫の口にえさをつっこんだりする時の好奇心と得意と満足が入り混じった
気持ちが伝わってきました。
お腹すいてないのかな、このお菓子あまり好きじゃないのかな、と思っていた矢先、
お兄ちゃん連中が、「ひとつちょうだい」と手を差し出しました。
すると、こんな小さな子の中にこんなにも激しい意志が
隠れていたのかとはっとするほど、
「いやー!」と拒絶して、意地でもひとつぶもあげようとしないのです。
歩き始めて半年足らずの小さな体の中に
その子ならではの個性と心が育ちつつあるのを感じて
感動しました。
そんなひとつひとつの出来事に物語を書くように後押しされて、
今年はしっかり書き始めました