虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

創造性があると、いつも2倍楽しい 3

2018-01-13 21:34:04 | 工作 ワークショップ

創造力を使うと、なんでもないようなものが、すごく楽しいおもちゃになります。

小2のAくんと小1のBくんのレッスンでこんなことがありました。

「がちゃぽん」作りに使ったペットボトルのキャップがたくさんあまっていたので、

Aくんがブロックに乗せて面白い遊びをはじめました。

キャップに切った紙を入れて、中央のブロックを動かすと、工場でベルトコンベアーを

動かしているようです。

ペットボトルの上部を切って、紙を投入する部分を作りました。

白いレバーの紙を押し上げると、(紙をテープで貼っただけです)中に入れたものが下に落ちます。

 

上の写真は、遊園地の回転する乗り物です。ストローに輪ゴムを貼っただけですが、

人形を乗せてくるくる回るので面白いです。

回転させるためにコップの間にビー玉をはさんでいます。

滑り降りる乗り物です。

]

 

紙コップのエレベーターです。

 

 


大人の声のかけ方が、子どもの考える力を弱める時、高める時

2018-01-10 13:14:50 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

↑色紙恐竜

親御さんの接し方や言葉のかけ方が、子どもの考える力に弱さの原因のひとつを作るときがあります。

以前、書いた記事に

少し書き足して説明しますね。

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「子どもとの会話がなりたちません~。思考力の伸びが弱いです。」
という相談を受けることがあります。

1年生ですが、しゃべったとしても、「あれして~これして~!」「うん、それで?」
といった簡単なやりとりばかりで会話になっていません。

「4歳児ですが、うまく言葉で表現できないので、すぐ手がでます。よく泣きます」

といった相談をときどき受けます。
実のところ、とても多くの子どもたちが、ごくごく簡単な言葉のやりとりだけで
日々過していて、
会話のキャッチボールがいい感じに続く子というのは少ないようです。

先日、そうした対話する力が弱いため、「遊び方が幼いし、考える力が弱いようで心配です」と相談を受けた年長さんたちのレッスンをしました。

そこで、いくつか気づいた点がありました。

★ 「短い」「浅い」場合も、「小さい」といった言葉で表現していても、
それで親御さんとの会話が通じてしまっている場合。

いちいち間違いを修正させる必要はないのですが、
語彙を正しく使い、
さまざまな言葉を使いこなせるように、
子どもが「この棒、小さいね」といえば、
「そうよね。短いよね。もう数センチ長ければ、車のタイヤに取り付けることができるのに」と返すなど、

正しい言葉や、別の言い方でのフィードバック+
親の意見や気持ちをひとこと

くらいに、ていねいな返事を返すことが大事です。

家庭では、「この棒、小さいね」に「そうね」と返していたり、「はやく片付けなさい」と返していることが多いものです。
大人がほんの少しでも子どもへの返事に
思考力や創造力を使うようにすれば
たちまち子どもの語彙は増えていきます。

★ 「レゴはブロックじゃない」と言うなど、
概念の理解に弱さがある場合。

「魚は生き物じゃない。生き物は、カブトとかクワガタだから。」など、
自分がこれまで見聞きした狭い範囲で言葉を理解している場合があります。

「金魚が尾をひらひらさせるのはどうしてかな?」
「どうして、あんな風に上手に浮かんでいられるのかな?」といった
子どもの疑問に対し、即座に答えを教えたり、図鑑で調べるのでなく、
いっしょに疑問を追いかけて会話することを楽しんでいると、
どんな生き物がどんな仲間に分類されるかといったことは、
会話の中で、自然と察して学んでいけますよ。

「そして」「だから」といった接続詞を補って
会話をつなぐ方法を自然に示していきます。

もし~だったらどうかな?
といったアイデアを子どもといっしょに、ユーモアもまじえて、ありえないことでもいっぱい出してみます。


子どもとの会話が成り立たない~という場合、
親御さん側は、
「かなりワンパターンの命令かうながす言葉か、簡単な感想や質問
しかしたことがない」
とおっしゃるケースが多いです。
それで、子ども側からは、スラスラと論理的に筋の通った返事を期待してしまうので、

期待が高い分、場が緊張してしゃべりにくくなりがちなのです。

大人の側が、
リラックスして、会話を楽しむ技術を少しずつレベルアップしていくと、
回を重ねるごとに、子どもの表現力は豊かになっていきます。

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子どもの知能を高めるには、身近な大人が

純粋に楽しみながら、子どもの話に耳を傾けるのが一番です。

 

子どもが何か言うたびに、「教えよう」「しつけよう」「評価しよう」として、

性急に大人が価値があると思うものを押し付けていけば、

子どもたちはよく考えもせずに、何でも鵜呑みにして動くようになります。

 

「こうしてごらん」と指示を出すのを控えて、ゆったりと子どもが何かを選択するのを

待っていると、

その子がどんな子で、何に価値を置いていて、どのようなことを望んでいるのか

見えてきます。

↑の写真は、3歳後半の●くんといっしょに過ごしていた

2歳4カ月の★です。

★くんは、言葉が達者で、慎重でよく考えてから行動する子です。

 

この日は初めて会った3歳の男の子を前にして、固まっていました。

心配した★くんのお母さんが、「~したら?」「~したら?」と声をかけようとしていらっしゃいましたが、

お願いして声かけを控えていただいて、

周囲を緊張した様子で眺める★くんをそっとしておきました。

 

年上の●くんが先に遊んでいたものを、

後から必ず★くんが、「~やりたい!」と言っているのがわかりました。

また、自分が遊ぶときには、

先に遊んでいた●くんの遊び方から良いものを吸収してもいました。

観察力や何をしているのか意味を察する力が優れているのです。

 

そうした★くんの性質からすると、

★くんが観察している最中に、「~してごらん」とうながすことは、

せっかく集中して学んでいるところを中断して、

「学ばずに何かするように」とせかすことになりがちなのがわかりますよね。

 

なら、どんな声かけをすると良いのかというと、

★くんでしたら、観察した後で、

何かをし始めた時に、

「よく○○することに気がついたね」とか、

「面白そう。どうやってするのか教えてちょうだい」とか、

本人が触っている物の名前や動作の名前を具体的に表現しながら、

楽しく会話を紡ぎだすことだと思います。

↑の写真では、環状線の本を読みながら、駅名や電車の名前を言いながら、

環状線について説明していた●くんを真似て、同じ本を読み始めたところです。

 

●くんの態度から学んでいる★くんの気持ちを汲んで

「次は何駅かな?次は何駅かな?環状線はぐるぐる回るね」といった

●くんがしていたことを、★くんが引き継げるような声かけをするといいかもしれません。

 

子ともと会話をするときに、

大人が言いたいことを言うのではなくて、

その子の性質を理解した上で、

子どもが自分の意志を向上する方向に向けやすいように

サポートすることが大事ではないでしょうか。

(たとえば、★くんでしたら、

年上の子の行動を見習って目的を定める性質を

尊重していくということです)

 

 


創造性があると、いつも2倍楽しい 2

2018-01-09 22:27:37 | 工作 ワークショップ

今日もまた、「創造性があると、何をしても2倍楽しいな」と思った出来事があったので

紹介します。

 

小学2年生のAくん。教室に着くなり、「今日も作りたいものを考えてきたんだ。」と言いました。

「工作もいいけど、今日はゲームをしたらどうかな?最近、教室でポケモンのカードゲームが流行っているよ。」と

言うと、「じゃあ、カードゲームして、それから作りたいもの作る。

ドラゴンと町が作りたいんだ。ドラゴンが飛んでいる時に下にある町のことだよ。」と言いました。

「今日は、算数の学習がかなりあるし、ゲームをしたら、ドラゴンは作れても町は無理かもしれないよ。」

と言ったけれど、いつも臨機応変に切り替えるのが上手なAくんは、

「わかったよ。それなら、もし、ポケモンゲームして、その後、ドラゴン作って、その後、算数までに

時間があまったら、町を作るよ。」と応えました。

Aくんが作ったのは巨大なドラゴン。

ゴムを上下するとホバリングします。

キバの一本一本にまで凝った細工をしたので、完成したのは、

算数をするまでたった5分という時でした。

Aくんが、「じゃぁ、次は町が作りたい」と言ったので、

「後5分しかないから無理ね」と言うと、

「5分だけでいいから作りたい」という答えが返ってきました。

それで、たったの5分なのですが、Aくんは猛スピードで黙々と作業して、

町を作っていきました。

そして、5分と算数の時間中の休憩の5分をあわせて、

わずか10分でこんなすてきな町を作りました。

「ドラゴンの映画撮影ができるね」と言うと、喜んでうなずいていました。

 


創造性があると、いつも2倍楽しい

2018-01-08 20:22:53 | 工作 ワークショップ

小学2年生の子たちのレッスンで、「創造性があると、どんな時も2倍楽しくなるな」

と感じた出来事を紹介します。

 

2年生のA君、Bくん、Cくんの3人とポケモンのカードゲームで遊んだ時のことです。

ポケモンのカードゲームは、ポケモンごとに異なる110とか120といったHP(体力)に、

20とか30の攻撃を何回かしかけて相手を倒すゲームです。

楽しいだけでなく、同時に数学的な勘も養われる魅力的なゲームです。

何回か遊ぶうちに、園児でも、110<20×6 といった暗算をするように

なってきます。

 

このゲームで遊んだ後で、Aくんが、「先生、厚紙ある? ぼくも自分でカードゲームが作りたい

んだ。」と言いました。

すると、BくんもCくんもカードゲームが作りたいと言いました。

Cくんが作ったのは、織田信長の時代の鉄甲船のカードゲーム。

 

Aくんが作ったのは電車のカードゲームです。

ポケモンのモクローにあたる弱いカードに選ばれた乗り物は、「生駒山ケーブル」です。

 

Bくんが作ったのは「忍者のカードゲーム」です。必殺アイテムがたくさんあります。

 

算数の時間には、最高レベル問題集の水のかさの応用問題をしました。

3人とも2段階の思考や逆思考が得意になってきているのを感じました。

 


中身が気になる と 外まわりが気になる

2018-01-07 22:00:07 | 子どもたちの発見

100円ショップのしゃぼん玉マシーンの風が出てくる仕組みが気になって

分解中の年長のAくん。なんと、モーターが洗濯槽のようなはねで覆われていました。

びっくり!

 

こちらは年中のBちゃん。

おもちゃのカメラと同じものが作りたくて、いいことを考えました。

色画用紙をあてて、はさみで面ごとにに切り取るのです。

この作り方はBちゃんが自分で思いついたアイデアなので、やる気がちがいます。

完成するまでそれは熱心に一面、一面、紙を切り取って、貼り合わせていました。

最後に綿を詰めて、直方体のカメラの出来上がり。

 

おまけ。Bちゃんは、こんな観覧車も作りました。

 

 


真夜中計画 と 嘘と勘違いのちがい

2018-01-05 21:24:11 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

宇宙をテーマにしたお泊り会での出来事。

紙コップと豆電球でオリジナル懐中電灯を作ってうれしくてたまらない小3のAくん。

いっしょに寝る部屋の子らといっしょに、「真夜中計画」というのをもくろんでいる

という話を聞きました。

後から聞いたところ、夜中の12時になったらその懐中電灯で掛け時計を照らして、真夜中かどうか確かめる

腹積もりだったそうです。

翌朝、「真夜中計画はどうなったの?」とたずねると、

むくれ顔で、「できなかったよ。」と言いました。

「12時になる前に寝てしまったの?」とたずねると、

「どうもこうもないよ。お母さんたちが、ぼくが作った懐中電灯を取りあげちゃったんだから。」

とぼやきました。

「それは残念。」と話していると、別の部屋で寝た3年生のBくんが、

「ぼくたちなんて、夜中の2時まで起きていたよ。」と自慢しました。

Bくんは最初、男の子たちが集まって寝ている部屋で寝る予定だったのですが、

心細くなって、大人が多い部屋に移って寝ていたのです。

 

真夜中計画がとん挫して残念そうな男の子たちが、

「本当?本当にあっちの部屋の子らは夜中の2時まで起きていたの?」とたずねるので、

その部屋にはわたしもいたので、

昨晩、あったことを話しました。

「子どもたちが寝込んでずいぶんたったな、と思った時、時計を見てみると11時半だったわ。」

それを聞いた1年生のCくんが、しばらく頭をひねっていて、

ひらめいたように、

「11時半の時に、寝込んでずいぶんたったって思ったなら、2時まで起きていたなんて嘘だ。

Bくんは嘘つきだ!」と言いました。

「だまされた」と憤慨しています。

そこで、「嘘じゃないわよ」とわたしが言いました。

「だって、Bくんは懐中電灯を持っていなかったんだから。夜中の2時かどうかなんて確認できないでしょ。

それは、嘘じゃなくて、勘違いというものでしょう。」


すると、Cくんは、嘘と勘違いのちがいについて、しばらく考えていました。

Cくんとふたりで、「嘘はだますためにつくもの、勘違いは事実を間違えて捉えることよね。」といった話を

しばらく楽しんだ後で、Cくんは、「Bくんはだますんじゃないけど、ほかの人に2時って思ってほしいみたいだったよ。

間違えてほしいみたいだった。だから、自分が、勘違いしたのと違う。」と言いました。

「それは、嘘に似ているけど、自慢したいから、相手の方に勘違いしてほしいって思ったということかな?」と言うと、

Cくんは、真剣にそれらのちがいについて考え続けていました。

 


ブロックで遊びの世界を豊かに (まとめ記事)

2018-01-05 20:24:19 | レゴ デュプロ ブロック

 

デュプロブロックで荷物の上げ下ろしをするコーナーを作るには?

 

ピラミッドに続く道 といちごの宝箱

 

お城の縄張り図

デュプロブロックで0~2歳児用のおもちゃ作り

変形メカの手作り解説書

 

忍者屋敷


遊んで育つというのは、基本的に普段の遊びのレベルが高い場合 ?!

2018-01-04 20:35:30 | 幼児教育の基本

KID´Sいわき・ぱふ代表、にほんこどもの発達研究所の岩城敏之氏が

『子どもの遊びをたかめる大人のかかわり』という著書のなかで、

「遊んで育つというのは、基本的には普段の遊びのレベルの高さです」

とおっしゃっています。

岩城氏はこんな例を挙げて説明しておられます。

 

大人が子どもたちに鶴の折り方を教えたとします。

上手な子はパパッと折って、下手な子は手伝ってもらいながら

作ります。もっと折りたいという子もいれば、

もうこりごりという子もいるはずです。

 

そこで、もっと折りたいと思うときに折れる状況が大事で、折り紙コーナーが

きちんとあるという環境を設定します。

教わった折り紙が面白かった子は、そこに集まって自分たちでどんどん勝手に遊びますし、

もしひとりも集まらなかったとしたら、そこが幼稚園や保育園の場合、教えていた先生だけが

面白くて、子どもは先生が真剣だからお付き合いしていただけということです。

 

それも悪くはないけど、遊んで育つという考え方からすると、それは遊ばなかったということ

と同じ。

つまり技術も身についていないし、習熟しないということです。

 

岩城氏の文章を引用させていただくと、次のような遊びと育ちの関係があるのです。

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何回も何回も「もう一つ作ろう、もう一つ作ろう、こんなんも作ろう、あんなんも作ってみよう」

と思って遊んで、はじめて子どもは育つわけです。

遊んで育つということは、こういうくりかえしが大切です。

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たとえば、父の日に園でお父さんの絵を描くのはいいけれど、

普段から家族の絵を描いたり、ままごとコーナーにお父さんごっこがどれだけ盛り上がるような

仕掛けが置いてあるか、新聞とかたばことかお酒など……。

そういうことが

本当の意味で子どもの成長を育む

「普段の遊びのレベルを上げる」ということだ、とおっしゃっているのです。


どっちが大事?子どもの発想 大人の提案?

2018-01-03 21:57:12 | 理科 科学クラブ
図鑑を見ながら、ちょっとした実験などをするとき、
「こんなことやってみよう!」と大人が提案するのがよいのか、
子どもの「こんなことしたい」を待つのが良いのか悩むという方がいます。

私は、どっちも五分五分で、どちらでもいいけど、
途中では、できるだけ子どもの発想や気づきを優先させると
良いと思っています。

いろんな方法に正しい、正しくないという○×をつけて、
良いことばかりすると、結局子どもが伸びない気がします。

子どもの自由にさせていっさい口出さないときもいるし、
きちっと大人の指示に従わせるときも必要。
子どもが試行錯誤して失敗するのを見守るのもいるし、
きちんと手本をしるして、そのとおり真似させるのも必要。
大人が「こんなことしてみない?」と誘うときも、
子どものやりたそう~に敏感に反応するのもどちらも大事ですね。
大目に見るときもいるし、ビシッと叱るときも必要。

こうしたことって、一貫性のない子育てとは、ちょっとちがいます。
情報でだけ、「一貫性のない子育て」が悪いと知ると、
偏ってバランスが悪くなっても、目の前の事実から目をそらして、
思考停止状態で自分の信じる情報に従う方がけっこういます。
でも、そうして思考停止でいつも同じことをするのは、
本当に一貫性のある態度と言えるのでしょうか?

現代のように情報があふれる世界では、
大人自身が、凛とした気持ちと柔らかな感性で、
「今」を正直に生きていないと、
子どもに教えることも、伝えたいことも、
何が何だかわからなくなってしまいますね。

あけましておめでとうございます

2018-01-02 10:08:23 | 日々思うこと 雑感

新年 あけましておめでとうございます。

今年は例年までとちがう正月を送っています。この10年ほど、

日々のタスク……教室の仕事、家事、ブログを書くこと……に追われてて、

子どもの頃から夢だった児童文学の物語を書きたいという思いを棚上げしてきました。

が、ちょうど去年半ばあたりから、

今までしてきた仕事をしっかり継続しながら、

自分のしたいことのための時間も作っていく新しい生活の仕方を摸索していました。

うれしいことに、『ファンタジー児童文学大賞』への応募のために

応募の最低ラインの32000文字を目標に書いていた物語が

年明けに40000字を超えました。後は締め切りまで、何度も推敲しながら、

より書きたいものへと煮詰めていこうと思っています。

 

物語を書いていく中で、

去年、虹色教室の活動中にあった思わず頬が緩んでしまうような場面が

いくつも浮かびました。

たとえば、こんな出来事。

ユースで初めて出会った3年生のAくんと1年生のBくんをはさんで

朝食を食べていた時のことです。

前夜、小学校中学年の子らの活発な様子に1年生のBくんが怖気て、

「遊びに入れてくれない」と訴えてきたので、やんちゃながらに気のいいAくんに、

「Bくんも仲間に入れてあげてね。年上の子たちに声をかけるのは勇気がいるでしょ。

Aくんからも、Bくんに声をかけてあげてね」とお願いしていました。

それを覚えていてか、朝食の際も、ふたりは申し合わせて

ひとつ間を開けて並んで座った上で、「先生、こっちこっち。」と空いた席に

わたしを誘ってくれました。

パンをほうばりながら、Bくんが昆虫の生態についての驚くような量の知識を

披露しました。どの虫についてたずねられても、その虫がどのように成長し、

虫の天敵は何で、どんな暮らしをしているのか流暢にしゃべるBくんを見て、

虹色教室きっての雑学王のAくんが、すっかりそれに魅了された様子で

聞き入っていました。

それでわたしが「Aくんも、放射能のことでも、地震のことでも、

歴史のことでも、算数のことでも、Aくんが知らないことなんてないじゃない?

Aくんほど、いろいろなことを知っている子って、探してもいないよね」と

言いました。

するとAくんは、それはそうだよ、というように自信満々な様子で、

照れながら、「でもさ、ぼくは昆虫のことだけは、全然知らないんだ」と言いました。

すると、横からBくんが、

「ぼくは、昆虫のことは完璧だけど、昆虫のことだけしか知らないんだ」

と言いました。

それでわたしが、「あっ、だったら、ふたり合わせたら……?」と言いかけると、

Aくんがゲラゲラ笑いながら、「そうだっ、ふたり合わせたら完全体だ!

ふたりで合体したら、この世にあること全てを制覇できるぞ!!」

言って大喜びしていました。

そうして想像の上で完全体になれたことを喜びあうAくんとBくんの笑顔が

今も目に焼き付いています。

 

別の日、こんなこともありました。

1歳半のCくんは、笑顔がそれはかわいい男の子です。

Cくんがお兄ちゃんたちのレッスンについて教室に来ていた時のこと。

レッスンの休憩時間にCくんがちょこちょことわたしのそばに来て、

自分用の個包装のお菓子袋からスナック菓子をひとつぶ取り出して、

わたしに差し出しました。自分の意志で、「あげるよ」と手渡す行為が

心の底からCくんをワクワクさせるらしく、

満面の笑みを振りまきながら、わたしがそのお菓子を口に入れるかどうか

見守っています。ひとつ口に含んでみると、味のないベビー用のお菓子なのだけど

魚の粉末が練り込んである今どきのお菓子です。

「ありがとう、おいしい、おいしい」とやっていると、

「もうひとつ」「もうひとつ」と、わたしの手に押し込むようにお菓子をくれます。

Cくんの表情からは、幼い子がハトにパンくずをまいたり、

猫の口にえさをつっこんだりする時の好奇心と得意と満足が入り混じった

気持ちが伝わってきました。

お腹すいてないのかな、このお菓子あまり好きじゃないのかな、と思っていた矢先、

お兄ちゃん連中が、「ひとつちょうだい」と手を差し出しました。

すると、こんな小さな子の中にこんなにも激しい意志が

隠れていたのかとはっとするほど、

「いやー!」と拒絶して、意地でもひとつぶもあげようとしないのです。

歩き始めて半年足らずの小さな体の中に

その子ならではの個性と心が育ちつつあるのを感じて

感動しました。

 

そんなひとつひとつの出来事に物語を書くように後押しされて、

今年はしっかり書き始めました