虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

大好きな段ボール工作

2019-04-15 15:31:38 | 教育論 読者の方からのQ&A

小学4年生のAくん、Bくん、Cくんはとにかく工作好きで、

段ボールを使って、大掛かりな作品をもりもり作ります。

この日、Aくんが作りたがったのは

ATMです。ここ数年の工作体験で、完成した形のイメージから展開図を描くことができる

ようになっているので、あっという間に形を作って組み立てていました。

 

 

Bくんは忍者屋敷を作っていました。

Cくんはお城を作っていたのですが、一度、作っていたお城を崩していたので、

写真を撮りそびれてしまいました。写真はカッターで折り筋を入れているところです。


子どものおしゃべりと絵を絵本に

2019-04-13 21:57:15 | 3、4歳児

4歳になったばかりのAちゃんが教室に着くなり、

「今日、ママのかさがひっくりかえっちゃったの!」と

目を丸くして報告してくれました。

「どんな風にひっくりかえったの?」とたずねると、

身振りをまじえながら、

「きょうりゅうみたいにのびて、ぴょんってなったの!」と説明してくれました。

傘が裏返った様子が、

トリケラトプスのフリルやスピノサウルスの背中のでっぱりのように

見えたようです。子どものたとえは面白いなぁ、と思いました。

そこで、Aちゃんといっしょに絵本を作ることにしました。

くわしく傘がひっくり返った時のことをたずねると、

きちんと、いつ、どこでひっくりかえったのか、どんな様子だったのか、

ていねいにお話してくれました。

それをお母さんが文字にして、Aちゃんが絵を描いて

すてきな絵本ができました。

 

 

 

AちゃんといっしょにレッスンしているBちゃんはもうすぐ4歳です。

私が見せた工作手順をていねいに見ていて、上手に再現する様に

4歳になる子たちの姿を感じました。この時期の子たちは、じゃばらを折ったり、

簡単な折り紙の折り方を学んだり、セロテープをぺったんテープと

呼んでいるひっくり返して輪にした形にするなど、急に模倣のレベルが上がるのです。

小さいパーツを貼っていく作業が大好きなBちゃんは、

レストランで注文を取るための機械を作っていました。

 

この日、AちゃんとBちゃんが喜んで遊んでいたボードゲームです。

ゲームのあとで、ハムスターのフィギュアで算数を学びました。

数の増減の理解がずいぶん進んでいました。


少し難しくなるとやりたがらない子、難しそうだと思うと最初からしない子にどう接したらいい 2? 

2019-04-11 21:04:05 | 算数

(↑ ユースホステルにて)

 

「難しそうだからやめておく」という子が、

考えることをめんどくさがったり考えるのが苦手だったりする子だった場合、

ただ成長を待って見守るだけではダメかな、と思っていることを書きました。

 

それなら、どうすればいいのかというと、

まず考えることを避けるいくつかの理由をできるだけ正確に把握するようにします。

 

考えることを避ける子の中には、親子の1対1の会話の量が少ないために

語彙量が足りなくて、問われている内容がイメージできない子がいます。

できるようにするためにプリントやワークをさせることや

他の子らよりできない何かを練習させることしか、親御さんの頭にないままだと、

いやいややらせるうちに自信をなくしたり、大の学習嫌いになってしまいがちです。

遊びや日常のひとこまひとこまで、よりていねいに言葉を伝えたり、

子どもとの会話を楽しんだりすることが大事なのではないでしょうか。

言葉からイメージする力が足りない子らと遊ぶ時、

わたしは言うまでもなく当たり前のこともいちいち言葉にしたり、

クイズにしたりします。

「お母さんはどこに行ったの?」と聞かれたら、「お母さんは買い物に行ったのかも

しれないね。そうだ、○ちゃんが教室で遊んでいる間にシャンプーがなくなっていたから

買ってこようって思っているかもよ。

レジのところで洗剤の箱をはいって渡して、お財布からお金を出して、おつりを

もらっているかも。お風呂に入った時、シャンプーがなくて、リンスしかなかったら、

どうなるかな?リンスで洗えばいいか……?」といった話をしたり、

子どもがミニカーを並べて遊んでいたら、「暑い暑い。今日はとっても暑い日ね。

今は冬なの?それとも秋?」とたずねたり、いっしょに信号を確認したり、

車のガソリンの残り具合を相談してガソリンスタンドに行くことにしたりします。

「どちらが」とか、「1番、2番目に~、3番目に~」とか、

「向かいあわせにおいてね」とか、「半分にしないと……」とか「○○くんの道路の車を

全部あわせたのより先生の駐車場の車の方が多いよ」といった話をしたりします。

子どもがアニメのキャラクターが好きなら、アニメの話題で、こうしたさまざまな

言葉に触れられるように気をつけています。また、子どもが思わず、「こうだよ」と

説明したくなるような問いかけや会話を目指しています。

 

考えようとしない子には、自分の身の回りの状況を把握するのが苦手な子もいます。

そうした子にワークでの解き方だけ教えても、あまり意味がないと思っています。

「少し難しくなるとやりたがらない子」には、

それまでの成長の中で、年相応の「向上心」が育っていないように見える子がいます。

 

向上心は自分がやりたいと思ったことにしっかりやって達成感を味わうと高まります。

また、過保護や過干渉な関わりではなく、人として尊重され、

自分の興味や行為を認められるうちに養われていきます。

 

教室の小1のDちゃんと年中のEくんは、

最近、「向上心が育ってきているな」と感じる姉弟です。

DちゃんEくんのお母さんから、この夏休みにお家でしている試みについてうかがって、

子どもの意欲や根気を刺激するすてきなアイデアに感服しました。

家族で、「最近、ラジオ体操ってないよね」という話から、

「家でラジオ体操をしよう」という流れになったそうです。

お母さんがラジオ体操のスタンプカードを作っていると、

Dちゃんも真似て作ったのだとか。

それから毎朝、家族みんなで早起きし、テレビのラジオ体操をつけて、

みんなで体操をしてスタンプを押して、スタンプが10個たまったら、

子どもといっしょにお菓子作りをすることにしたそうです。

お菓子は本の中から好きなひとつを選んで、材料を買いに行くところから。

 

この取り組みをはじめた当初は、「すぐに飽きてしまうかな」と思っていたそうですが、

もう2回お菓子を作って、今も毎日続いているという話です。

 


少し難しくなるとやりたがらない子、難しそうだと思うと最初からやらない子にどう接したらいい?

2019-04-11 20:44:39 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

 

不定期の算数クラブの様子です。

遠方から来た女の子が暑さにまいって半べそをかいて教室に着いたのに

帰る時は満面の笑顔で、「このまま、ここに泊っていきたい」と言っていました。

 

自由に活動を選ぶ時間に、午前の部の男の子たちはブロックで海賊船を作ったり、

ロジックパズルや科学手品をしたりして遊びました。

 

「長くて大きな海賊船が作りたい」「宝がたくさんいる」「島を作らないと……」

「ガイコツの絵が描いてある布(帆)みたいなのがいるよ」と意見がアイデアが

出るたびにだんだん大掛かりな作品になりました。

 

<「大きい、中くらい、小さい」の3つのサイズの帆の簡単な作り方>

紙を半分に折って切ります。

一方の紙を片側が大きくなるように折って切ります。


このように切ると、2回折って切るだけで、<2分の1、2分の1よりも小さく

最も小さいサイズよりも大きい、最も小さいサイズ>の3つのサイズの紙ができます。

子どもたちにとって帆をブロックで作った棒に挟む作業は、

ちょっと難しくて楽しいものだったようです。

 

28+□の繰り上がりのある計算を瞬時に言う練習をしています。

どの子もコツをつかんで、上手に答えることができていました。

午前、午後どちらのレッスンの子らも、

『きらめき算数脳』の文章題に意欲的に取り組んでいました。

目新しいおもちゃで遊ぶ時と同じくらい夢中になって、

「次はぼくが解きたい」「わたしが解きたい」と手を挙げていました。

 

算数の課題をする時、「やってみたい子?」とたずねると、

ハイ、ハイと調子よく手を挙げる子らと、「できなかったらどうしよう」という表情で

尻込みしている子がいました。また、問題がどんどん難しくなっていっても、

「やりたい」と手を挙げ続ける子と、それまでミスもなく正解していたけれど

他の子の解く様子を見て、「これは難しそうだから、もうやめておく」と

告げた子がいました。

 

レッスン後、子どもたちの学習の様子を見ていた

親御さんたちから、「家でもきらめき算数脳のような問題を進んでやりたがるものの

少し難しそうな問題にぶつかると、今日のように、難しそうだからやめておく……と

言うのですが、どう対応したらいいでしょう?」とか、

「のんびりしたタイプなので、つい先まわりしてあれこれ言い過ぎてしまうためか、

自分で考えようとしません。難しそうだと思うと最初からやろうとしないところも

あります。どのような声かけをしたらいいのでしょう?}

といった相談をいただきました。

 

ひっぱりますが次回に続きます。

 

 少し難しそうな問題にぶつかると、難しそうだからやめておく……と言う子に

どのように対応すればいいのでしょう?

 

毎度、同じような答えで悪いのですが、子どもの気がかりについての問いの答えに

「これ」という正解はなくて、子どもの性質、能力、発達段階などによって

一人ひとり異なるのではないか、と考えています。

 

この日、相談をいただいたAちゃんの場合、子どもの発言が大人の意向と違っても、

その子の言葉を言葉通りに信頼してあげるといいのではないかと感じました。

つまり、本人が「やめておく」と言うのなら、

今は「やめておくことが賢明な判断なんだろう」と受け止めるということです。

 

算数の学習の前、『LASER MAZE』という頭脳パズルで遊んでいた時のこと、

どの子もはじめて触れる問題でわけがわからないようでした。

が、あちこち課題の鏡を置いてみるうちに、たまたま置いた位置が正解でした。

すると、Aちゃんの表情が、「あっ、そうか」と納得したように輝きました。

そして、次の問題を解く時は、わかったことを利用して丁寧に推理する姿がありました。

また他の子らが解いている時も、ただ眺めているだけでなく

自分の頭でも一生懸命に考えていたようで、

「どうしてうまくいかないんだと思う?」とたずねると、

Aちゃんは、毎回手を挙げて、的確な答えを言っていました。

 

 

工作でカゴを作っている時、

こんなことがありました。Bちゃんがカゴを飾るリボンを貼ってみると、

長さが少し足りませんでした。

子どもたちに、「Bちゃんは、ちゃんとこんな風にリボンをカゴに巻いて

ちょうどいい長さになるように測って切ったのに……貼ってみると

長さが足りなくなったの。どうしてだと思う?」

とたずねました。するとAちゃんが手を挙げて、

「カップの真ん中らへんの周りの長さの方が上の方の

まわりよりも短いからでしょう?」と答えました。

 他の遊びの場面でも、わたしが、「どうしてだと思う?」と問いかけると、

Aちゃんがすかさず手を挙げて、「○○だから?」と真剣な顔で答えていました。

 

そうしたAちゃんの態度と言葉から、Aちゃんが

何をする時も、自分の頭と心をしっかり働かせている子で、

理解したことを言葉にしたり推測したり分析したりするのが好きな子であるのが

よくわかりました。

また知的好奇心が強くて、積極的に考える活動に参加しようとする子でもありました。

ただその一方で、一番になって目立ちたいという気持ちや競争心は薄く、

自分にそれができそうか、本当にやりたいのか、慎重に判断してから

するかしないか決めていました。

 

 

Aちゃんのお母さんは、Aちゃんが洞察力が優れた知的好奇心の強い子であるのを

理解しつつも、じっくり考えていく持久力が足りないのではないか、と気にかけている

ようでした。

こんな場合、成長を見守るべきか、適度にプッシュすべきか迷うところですよね。

 

Aちゃんのお母さんは取りあえず参考に……とわたしの考えをたずねはするものの、

子どもとどう関わるか、自分自身でちょうどいい加減をわかっている方のようでした。

ですから、この質問をわざわざブログで取り上げなくてもよかったのですが……。

でも、Aちゃんという個別のケースについて、

どんな点に注意を向けて、どう判断したのか書くことは、

「こういう子にはこのように対応します」とひとつの一般的な正解を示すより、

別のさまざまなケースについて思いを巡らすのに役立つんじゃないかな、と

考えています。

 

この日、いっしょにレッスンしていたCちゃんは、

難しい問題になってもどんどんチャレンジする意欲的な子でした。

ただ取り組む前に推理したり分析したりすることはないようで、

とにかくやってみて失敗してから、どこがまずかったのか気づいて、

それから正しい方法で解いていました。

失敗にはとても強くて、間違えると、何とか克服しようとやる気が増すようでしたし、

失敗した後に集中して考える姿がありました。

 

それに対して先に記事にしていたAちゃんは、取り組む前に慎重によく考えていて、

何もしていない時も気になることをあれこれ考えているようでした。

そのせいで「難しそうだからやめておく」ということになるのですが、

だからといって、AちゃんとCちゃんのどちらのやり方がいいというわけではなく、

それぞれに一長一短がある個性の問題と捉えるべきなのでしょう。

 

Aちゃんの場合、「やめておく」と言っていったん問題から離れても、

時間が経つと、自分から「あの問題をやってみたい」と言うタイプでした。

そうして自分のペースで難しいものにチャレンジしていく気持ちを

後押しするのは、信頼されることと、新しい知的好奇心を刺激するひらめきを得ること

だと思います。

 

「難しそうだからやめておく」という子はAちゃんのように

考えることを苦としない子もいますが、

考えることをめんどくさがったり考えるのが苦手だったりする子もいますよね。

そうした子には、ただ成長を待って見守るだけでは

ダメかな、と思っています。Aちゃんにしたように、「やめておく」という言葉を

言葉通りに受け止めるのも、ちょっとまずいかもしれません。


「先生、やって!」から、自ら進んで行動し、よく考えて行動する姿に 後編

2019-04-09 06:34:41 | 通常レッスン

「そんなことで?と感じる場面で尻込みする姿」と

「行動することだけでなく、行動する内容の質を気にかけるようなった姿」が、

表と裏、合わせてひとつのセットとなっているような年中さんたち

を目にして、年少までの姿との違いを思いました。

 

シャッターの棒を下ろす作業は、年少の子たちもやりたがります。

でも、たいていは、危なっかしく棒をふらふらさせて突起に引っ掛けた挙句、

グーッと力を込めて棒を下に引く段になると、力が抜けて、

「もういい」とこちらに仕事を預けてしまうことでしょう。

また、電池を交換するにしても、年少までの子は、

プラス極、マイナス極なんておかまいなしに、

とにかく電池を押し込んでおしまい、となりがちです。

 

それが、年中児となると、している作業にに心が伴ってきます。

やってることの意味を理解したり、うまくいかない原因を

推理したり、自分が何を期待されているのか、

自分はどんな風にやり遂げたいのか、意識したりしています。

とはいえ、そうした気持ちは、身近な大人に認めてもらい、

言葉にしてもらわないことには、

そうした思いが自分の中で渦まいていることすら気づけない時期でもあります。

こんなことがありました。

スーツケースの取っ手の作り方を教えると、

Bちゃんがいいことを思いつきました。

スーツケースの取っ手は引っ張ると長くなるし、

押さえると短くなるので、取っ手をストローに通すと、

伸びたり縮んだりするというのです。

Bちゃんの指示通りにストロー2本をつなげて作った取っ手を太めのストローに

通すと、伸び縮みするようになりましたが、

引っ張るとストローが抜けてしまいます。

セロテープのストッパーをつけることを提案すると、

それを見ていた子どもたちが、感心した様子で、

「長くしても取れないね」と言いました。

 

子どもたちと工作する時、いつも感じるのですが、

どんなにささやかなアイデアでも、発見でも、

子どもが自ら気づいたことは、他の何ものにも代えられないやる気のもとで

あり、もっともっと自分で考え、自分の手で取り組んでいこう

とする態度の起爆剤です。

 

年中の子たちというのは、「自分が気にしているポイント」については、

こうしたい、ああしたい、これは違う、こんな風になっている、

こことここはいっしょ、など、それは細かく言いたいことがあるものです。

思いが複雑になった分、自分の手にあまることも

やりたくて、うまくできない自分に

不安を覚えたり、イライラしたりしています。

 

伸び縮みする取っ手を作ったBちゃんは、今度は、スーツケースの側面にも

取っ手がつけたかったのです。

でも、困ったことが起きました。

上下の伸び縮み、右左の伸び縮みの取っ手を

スーツケースの背面に貼り付けると、ストローとストローが交差して重なり合って、

不格好な上、動かなくなるのです。

そこで、側面の取っ手は穴を開けて内側に貼ってはどうか?とたずねると、

とてもうれしそうでした。

こんな風に大人が解決した方法も、「そうか、そんなやり方があるのか」と響くのが

この時期の子ですが、手出しや何かを学ばせる働きかけは、全体の1、2割にして、

作業の面でも、方法を考える面でも、

ほとんど自分でやり遂げたという満足が残るように気をつけています。

 

下の写真は、スーツケースの内部の様子です。側面の取っ手が

スーツケースの中で伸び縮みするようになっています。

 

今回の話題は、年中児を中心に書いているのですが、

どの年代の子も、「あれれ?困ったな」と映る気になるところと

表と裏で一体となっている「この年齢ならではの新しい魅力や可能性

の芽」があるのを感じます。

対応はというと、「あれれ?困ったな」に大人が足をすくわれずに、

対になっているこれから育っていく肯定的な側面に

じっくりていねいにつきあっていると、いつの間にか、

最初に目にした否定的な面は、影をひそめてしまいます。

 

たとえば、年長児のそれは、

「やりたいことがないよ」「そんなのつまんない」という

めんどくさそうな態度です。

年中までは、それが何であれ、「やりたい!」「やらせて!」

と飛びついていたことに対して、「そんなのやったって面白くないもん」

「どうせ作ったってお母さんが捨てちゃう」

「あんまり大きいもの作ったら、持って帰ったらダメって言われるよ。

うちのお母さんは、これくらい(ティッシュ箱くらいを手で作り)じゃないと

だめっていうと思う」「どうせ~じゃない?」なんて生意気な言葉を

つぶやくようになります。

 

倦怠感を帯びたこうした年長児の姿と対になっているのは、

「急に全体像が見えてきた」「先が読めるようになって、やった後のことまで

見えてきた」という自分のしていることをメタな視点でとらえだした

兆しがあります。

AちゃんBちゃんCちゃんの年中児3人のレッスンのなかで、こんなことがありました。

部屋を暗くしてから、それぞれが作った星雲を映しだしました。

色水の背後から懐中電灯を当てると、天井にはゆらめきながら変化する

黄色、緑色、赤色の光がきれいでした。

 

ついでに、恐竜のフィギュアを使った影絵遊びをしました。

それぞれ懐中電灯を手に、恐竜を走らせたり、

互いに取っ組み合う形で動かしたり、1匹の影を2つに増やしたりして

遊びました。

懐中電灯はひとり1つずつ持っているのですが、

わたしが2つの懐中電灯を使って影を増やす見本を見せたので、

Bちゃんが、「懐中電灯、2つ使いたい。貸してよ」と

Cちゃんの懐中電灯に手を伸ばしました。

でもCちゃんも、「わたしもふたつ使いたい。早くやってみたい!」と

譲りませんでした。

こんな場合、「ひとり1つずつだから」と我慢させることもできるし、

「順番に貸しあいましょう」と、先にじゃんけんさせることもできますが、

それよりも、2方向の光で影が増えることを不思議に思う気持ちを

優先させて、子どもたちにさらに1本ずつ懐中電灯を渡すことにしました。

すると、2本ずつ使っていろいろ実験した後で、

Bちゃんがみんなの懐中電灯を集めて6本全て使って、

光が作り出す不思議な世界を探求していました。

その姿を見ると、年少さんんたちの「やりたい!やりたい!」

「もっとたくさんほしい」「わたしもほしい」という騒ぎとは

ちがう「2つにしたら、どうなるかな?」「3つにしたらどうなるだろう?」

「4つにしたらどうなるかな?」という知りたい気持ちに基づいているのが

わかりました。

 

 下の写真は別の日に来た年中のDくんとEちゃんの姿です。

Dくんは輪ゴムをつないでいったものを椅子に引っかけて、引っぱって遊んでいます。

ただ引っぱると楽しいというだけでなく、どれだけ伸びたのか、

1mのものさしをあてて調べる作業に真剣に取り組む姿が

この時期の子だな、と思いました。

 

「こうしたら、どうなるか、目で確かめたい。

こうしてみたらどうなるか、それも、目で確かめたい」という

確かめることに貪欲な姿。

 

 

Eちゃんにゴムのつなぎ方を教えると、すぐにマスターして、どんどん

長いゴムを作っていました。手本を見る力が向上したのを感じます

 

 

長いゴムに太めのストローを切ったものを通していく作業を提案すると、

ゴムがひっかかって途中で細いストローで押し出さないと通すことができない

作業のややこしさがEちゃんにヒットしていました。

 

 

 DくんもEちゃんも「先生、やって」と頼んできたシーンこそ

ありませんでしたが、年中さん特有のやりにくさやわかりにくさが

見え隠れしました。

Dくんは最初工作をしていたのですが、作業途中のゴムを引っかけて伸ばしだすと、

どれくらい伸びるか、どんな風に伸びるか、といったことに夢中になって、

ずっとそれで遊んでいました。

Eちゃんは、これまでよりもひとつひとつの遊びが短くて、

パッと見たところ、遊び方が幼くなったようにも見えました。

でも、よく見ると、どちらも頭のなかの世界がこれまでより

活発に動いているため、あれこれ確かめる活動の様子が、

同じことばかり繰り返しているうようにも、

飽きて次々と遊びの対象を変えているようにも

見えるのだろうと思いました。

 

Dくん、Eちゃんにしても、Aちゃん、Bちゃん、Cちゃんにしても、

子どもたちが夢中になっているものに

こちらも関心を寄せて、疑問を口にしたり、子どもの意見に耳を傾けたり

していると、ちょっと気になる言動から一転して、

自発的にさまざまなことに取り組み、よく聞き、

理解し、よく考えて行動する姿を見せるようになっていました。

 

 


虹色教室で培ってきた算数遊びと療育的な関わりの知恵を共有したいと思っています

2019-04-08 13:10:59 | 生徒募集 イベント参加募集

 

虹色教室で培ってきた

『工作やアナログゲームを通して算数力の土台を作る』知恵と

『工作やアナログゲームを通して発達の凹凸のある子の能力を高める』知恵を

子どもとの関わりを学びたい方と共有したいと思っています。

そうした大人の方対象の講座を開こうかと思っています.

大人向けの講座の場合、どういった時間帯(平日の午前?休日?)

がいいのかお知らせいただきたいです。

 

(日時は6月の土日の一部、6月の平日の一部を予定しています。)

 

関心のある方は、希望等をコメント欄にひとことお願いします。

 

 


いきいきや学童で豊かな時間を過ごす子どもたち

2019-04-07 22:16:00 | 教育論 読者の方からのQ&A

もうすぐ小学1年生になるAちゃんが、春休み中から始まっている学校体験について

うれしそうにこんなことを言っていました。

「あのね、いきいき教室(放課後の教室)に、こーんなにいっぱいおもちゃ(ボードゲームなど)が

あるんだよ。最初に宿題をして、それが終わらないと遊べないけど、すっごく楽しいから!」

「すごいね。楽しそうね。いきいき教室好き?」とたずねると、

「面白くって大好き!」と元気な声で言っていました。

この日、Aちゃんは虹色教室内のゲームを真似て、ペンギンのおにごっこゲームを作りました。

数年前、学童にボードゲームなどを置くようになってから、

子どもの知力やコミュニケーション能力が上がったという話を親御さんから聞いて、

このブログでも記事にしたことがあります。

当時はそうした学童はすごく珍しかったようですが、

最近は、学童での時間を豊かにしようと、お家にあるカードゲームやボードゲームを

寄付しているという話もよく耳にするようになりました。

この日、教室に来ていた別の子の親御さんも、

「うちの学童もさまざまなボードゲーム類があって

子どもたちがアナログなゲームを楽しんでいるようです」と言っていました。

そんな風に子どもの遊びを大事に育てていこうとする環境にいる子らは

概して遊ぶのが上手です。「こういうことしたい!」「こういうこと好き!」をたくさん

持っているし、自分でやりたいことを考えて、遊びを作っていく力を持っているのを感じます。

 

 

 


虹色教室紙幣を作ってもらいました!

2019-04-06 22:12:13 | 虹色文庫出版局

虹色教室の卒業生のAくんに虹色タウン構想で使う予定の虹色教室紙幣を作ってきてもらいました。

Aくんに依頼することを思いついたのは、虹色文庫の編集長のBちゃんです。

真剣な表情で虹色文庫に目を通し、「Aくんに教室内通貨作りをお願いするといい」と

言っていましたから。私の中になかった発想で驚きました。

表も裏もていねいに描かれていて、使うのがもったいないです。

 


「先生、やって!」から、自ら進んで行動し、よく考える姿へ  前編

2019-04-03 21:03:16 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

年中になると、年少の頃に比べて、

できることも思考力もグンと伸びる一方で、

「あれれ?こんなにしっかりしている子が?」と思う子が、

十分にこなせる簡単な課題を、「先生やって!」と頼る姿もよく見かけます。

年中児の子らにありがちな「先生やって!」は、甘えて言っているわけでも、

めんどくさがって言っているわけでもなく、

この時期特有の完璧主義に由来することが多いです。

はさみで切るならはみ出さないようまっすぐ切れるか、鉛筆で書くなら

お手本通りきれいに書くことができるかが気になって、「できない」「やって!」に

つながるのです。

 

できるけれど「先生、やって!」を連発する子と関わる時は、

「自分でしなさい」とつっぱねるのでも、

「やってあげるわ」と簡単に引き受けるのでもない

心の葛藤につきあいながら、関わり方を微調整しながら、

自分でやっていく作業を励ましていくことが大事です。

子どもが「やって!」という時、不器用さから「やって!」と言っているのか、

急に他者の目や自分自身で自分のしていることを評価するようになったため

不安にとらわれているのか、

手伝ってもらうことで、より大きな目標を成し遂げようとしているのか、など

「やって」の背後にあるものを理解してから、

対応するようにします。

年中頃の「やって」は、それまでできていたことについて

やってほしがるものなので、

ただ甘えたり、怠けたりしているようにも見えるので、

心を傷つけるような声かけをしてしまう親御さんもいます。

でも、それは完璧主義に陥ってできない状態にある子には、

一番よくない対応だと思っています。

その子なら十分できるということを、

「できない。お母さん、やって!」と言う時、

これが正解というひとつの対応があるわけではなくて、

「自分でできるよ、やってごらん」と、本人がしはじめるまで待つのがいい時も

あるし、少し進むごとに、

「上手にできているよ。」「大丈夫、よくできている」と励ましていくのが

いい時もあるし、大雑把な完璧とはいえない手本や、

大人が手間取りながらゆっくり作業する様子を見せるのがいい時もあります。

また、時には、「やって」という言葉をそのまま受け止めて、してあげるのがいい

場合だってあるでしょう。

「完璧にやりたい気持ち」と「できないかもしれない不安」の間で揺れる気持ちを

理解している限り、どう関わろうと、

さほど気にしなくていいのだと思います。

 

完璧にできないかもしれない不安から

「やって」と頼る子への対応というと、

どうしても、「子どもが自分でするように仕向けること」がゴールとして

設定されて、

見守る大人の気持ちは、どんな声かけをしたらいいのかというところの

向かいがちです。

 

でも、「やって!」への対応は、それを自分でやるかどうか

ということとは全然別のところにたくさん答えが広がっている

感じています。

 

つい最近、年中のの女の子たちが、手作りのカートに貼る絵柄について、

「線がぐらぐらしてゆがんじゃうから切れない。先生して!」

「上手に切れないから先生切って!」と頼んできた出来事がありました。

その日、Aちゃんが、「ユースでお友だちが持っていたプリキュアの

コロコロがついたカバンが作りたい」と言い、他のふたりもそれに乗り、

スーツケースを作ることになりました。

それぞれが検索で出した画像から好きな絵を選んで印刷し、切り抜く運びになった

時、BちゃんとCちゃんが、「先生、やって!」と不安気な

声をあげたのです。

 

 

虹色教室に使っている部屋は、

もともと駐車場にしていたスペースをリフォームして作った部屋で、

外に面したところがガラス張りになっています。

そのため部屋の電気を消しても、ロールスクリーン越しに光が

差し込んで、部屋は明るいままです。

 

教室ではよく影絵遊びや光の実験をするのですが、

本格的に室内に暗闇を作る際には、外のシャッターを下ろすようにしています。

 

この日のレッスンでは、

子どもたちと「教室の中に宇宙を作ろう」と約束していたので

ライト類やセロファンなどを準備していたのですが、当日になって

子どもたちはスーツケース作りに熱中しはじめて、

「先生、後で、宇宙にしようね」

「先生、色水作って光らせるのしたいから、

プリキュアのやつ作ったらそれする」とわたしがシャッターを下ろす約束を

忘れないよう念押ししていました。

 

スーツケースを作り終えて、いざ、シャッターを下ろす段になって、

子どもたちが口々に、

「シャッターおろすのやらせて!」「わたしもしたい!」

「棒、かして、わたしも!!」と言いました。

 

金属の長い棒を高く掲げてシャッターの突起に引っ掛けて、引き下ろす作業は、

背の低い子どもには危険な作業です。

そこで、ひとりひとりに厳しく注意をうながした上で、

(事故を防ぐため、棒が顔に倒れないよう棒の横で支えています)

シャッターを下ろさせることになりました。

すると、どの子も、こちらの注意をていねいに聞き取って、

真剣な面持ちで重い金属の棒を扱う作業をやり遂げました。

 

最初から最後まで集中力をとぎらせず、一生懸命、

重い棒を扱う姿を見ながら、

少し前には、はさみでまっすぐ切るだけのことを

「やって!きれいにできないからやって!」と言っていたけれど、

実際、切りはじめたら、真剣な面持ちで、自分のしている作業を

逐一チェックしながらしていた姿が浮かびました。

 

また、懐中電灯に電池をセットする際も、

「先生、どちらの向きに入れたらいいの?これであっているの?」と

入れ方にも注意しながら作業していた様子が浮かびました。

 

できるのにすぐに「やって!」と頼るように、

大人の目には「悪いこと」と映る場面に遭遇した時、

即座にそれに対する対応だけに注意を向けるのではなく、

もう少し大きな視野でそれを眺め直してみると、

思っていたものとは真逆の肯定的な側面

見えてくることはよくあります。

 

子どもの中で今、成長しようとしている新たな可能性の芽が、

まだ慣れない環境でバランスが悪い状態のまま顔をだしている、

そう感じます。

 

続きます。

 


持っている能力をきちんと発揮することができない子 との関わり 続き

2019-04-02 22:36:35 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

「でも、絵本を見ると、大阪環状線の一つの駅の写真に淀川が写っているわよ」と

言って絵本を開いて見せると、◎くんは、「本当だ、淀川だ!」と言い、

川を作るための青い布地を出してあげると大喜びしていました。

◎くんは、路線図や地図や写真と、自分の作っているものが対になっているのが

うれしくてたまらないようでした。

ところが、まぐろのおもちゃでふざけていた当の★くんは、写真を見せても

ピンとこない様子でした。

 

想像をするのが難しい子に、イラストや写真を見せると、想像しながらしていく活動が

しやすくなるのですが、

イラストや写真の情報と現実の物事をつながりにくい段階にある子もいるのです。

紙に印刷された情報に関心が薄い子もいます。

そんな場合、視覚的な支援や言葉をそえるだけでは足りません。

 

それならどうすればいいのかというと、

わたしは、これまで困り感のある子たちと接する中で何度かうまくいった方法を

解決の糸口にするようにしています。

 

★くんの話から少し脱線するのですが、

解決の糸口にしている方法をいくつか紹介させていただきますね。

 

一つ目は、「その子発のアイデア追うときに、それまでわからなかったことと

関連づける」ということです。

相手の話を理解したり状況を読むのがとても苦手な子も、

自分が閃いたアイデアを追いかけていくのなら、

それまで全く理解していないように見えたことでも

わかるようになることはよくあるのです。

 

また、その子のアイデアから出発して、理解したもろもろのことを、

繰り返し具体的な言葉で伝えていると、

ほかの場面でも、応用がきくようになってきます。

 

見たところ、理解する力が弱いようでも、実際は、相手と同じものに

注意を向ける力や自分が関心がないものに注意を持続させる力に

問題があって、理解力そのものはかなり高い子も多いのです。

たとえば、ジオラマ作りが始まってから、自分が何をしているのかわからない様子で、

その場と全然関係のない突拍子もない発言を繰り返していた☆くんですが、

こんな自分発のアイデアから、意味を理解した上で活動に参加するようになりました。

 

リーダー役を命じられている◎くんが、「大阪環状線はぐるっと丸くなってるから、

線路をつないでいくよ」とみんなに声をかけると、☆くんが、

「湖西線がいい。湖西線」と言いました。

 

「☆くん、湖西線がいいの?それなら、ちょうどそこにブロックの清水寺があるから、

そっちが京都ってことにしようか?

大阪駅から京都方面に向かう線路をつなごう」と言って線路を加えてから、

「湖西線、いい考えね。湖西線も作ったら、ジオラマ作りが面白くなるよね。

ほら、この丸いところが大阪環状線。ここが大阪駅。そこから京都に向かう線路。

今は、それぞれの駅にある動物園とか川とかビルを作っているのよ」と言うと、

それまではこちらが話をはじめたとたんうろうろするか、

自分が思いついたことを話していた☆くんが、

わたしが手で触れて説明する物を見ながら、最後まで話を聞いていました。

 

「☆くんはどんなものが作ってみたい?作るのに必要なものを探してくる?」と

たずねると、☆くんは小物入れがら小さいサイズのロボットをいくつか出してきました。

 

「☆くん、ロボットは、電車のジオラマ作りと関係がないんじゃない?

先生は最初に、ジオラマ作りに関係があるものは、出して使ってもいいけれど、

全く関係のないおもちゃで勝手に遊んではダメ。

関係がないおもちゃを触った人は、それがジオラマに関係するものになるように

先生とよく話しあいながら考えたり、作ったりして、責任を取ってもらいます!って

言ったよね。

☆くん、ロボットは電車のジオラマ作りと関係ない。

先生と話しあいするよ!」と言ってから、「ロボットを売っているお店を作ったり、

ロボット博物館を作ったりしたら、駅の近くにある施設になるよ。どうする?

ほかの方法を考えてもいいよ」と付け加えました。

 

すると、☆くんは了解して、建物と飾り棚を作ってロボットを飾っていました。

それが博物館の展示の仕方そっくりにあんまり上手にできていたので

びっくりしてしまいました。

その後、☆くんは2階と屋根をつけて、とても立派な博物館を完成させました。

↓ (内部が展示場になっています)

 

二つ目は、「見たり聞いたりしてから、それをアウトプットするまでに

かなり時間がかかる子がいる(10分近く時間差がある子もいる)。

教えてすぐに反応がない場合も、しばらくするとそれをしている姿を見たら、

時間のずれを考慮した上で、関わるようにする」ことです。

 

三つ目は、「その子の表情が輝いているときや

好奇心を抱いたとき、集中して何かしているとき、理解できたときなどを

それがどんなものでも覚えておいて、

本人が自分の長所に気づく言葉として繰り返し伝えて、

関わりや学習の場で活かす」ことです。

たとえ、その時は、困った行動でしかないものでも、

子どもがうれしそうにすることやしつこくやりたがることは、

子どもの成長に役立たせることができます。

 

「持っている能力をきちんと発揮することができない子との関わり 4」の三つ目

「その子の表情が輝いているときや

好奇心を抱いたとき、集中して何かしているとき、理解できたときなどを

それがどんなものでも覚えておいて、本人が自分の長所に気づく言葉として

繰り返し伝えて、関わりや学習の場で活かす」について、

もう少し詳しく書かせていただきますね。

 

積んだものを乱暴に崩したり、ふざけて物を振り回したりするときは、

うれしそうに笑い転げるものの、腰を落ち着けて活動することがなかった★くんに、

わたしは、「ブロックの爆弾、作りたい?あとで作り方を教えてあげるわ」と

告げました。

ほかの子らも口ぐちに、「ぼくも作りたい」「教えて!」と言いました。

ブロックの爆弾というのは、デュプロブロックにゴムを引っかけて、

びっくり箱の仕掛けのようなものを作ることで、作る際、しっかりこちらの手本を

見て集中して作業しないと、上手く作れないものです。

パンッとはじける瞬間が面白いので、強い刺激を求めて作業を嫌がる子たちも、

熱心にいくつも作ろうとするブロック作品の一つです。

 

それが、算数の学習の時間がきてしまったので「あとで……」と言ってから、

なかなか教える時間が取れずにいました。

すると、★くんは、ほかの子らが忘れた後も、「ブロック爆弾は?」と言い続けて

いました。(勉強が終わってから、帰り際に作ることになりました)

 

こんな出来事も、「みんなが忘れてもずっと覚えていて、記憶力がいいね」とか、

「記憶しておくのが得意だね」といった言葉にして★くんに伝えてから、

次から学習をする際に、

「前に、こんなこと~あったね。先生も他のお友だちもみんな忘れても、★くんは

ブロック爆弾は?って聞いてたよね。ずっと覚えていて、記憶力がいいね」

と前置きするといいのかもしれません。

 

それと同時に、問題文をいっしょに読みながら記憶力クイズをしたり、

記憶する力を利用して問題が解けたという体験をさせるのもいいな、と考えています。

 

★くんは、「勉強する」という状況や「紙に印刷された文字」を見たとたん、

即座に、「できない」「わからない」という強く拒絶をしていましたから。

 

気持ちや注意を学習に向けるには、

自分の得意な能力を使ってそれに取り組めるような言葉を覚えておくといいです。

★くんでしたら、「ぼくは記憶するのが得意だから、やり方を教えてもらって

覚えておいたら、きっとできる。こういう問題を解くときはどうするんだったかな?」

といった取り組もうという気持ちを作る言葉とか、

「筆算の仕方は、数字を書いて、それから下にも数字を書いて、

ちゃんと1の位と1の位がそろってるかなぁって見て、横の線~!」のように、

問題を解く時に唱える言葉などを教えていくといいのかもしれません。

また、投げ出したい思いをとどまらせるため、自分で自分を励ます言葉を

繰り返し、かけるのも大切なのかも。

 

この日、『カタンの開拓者』というカードゲームをしているとき、

★くんは記憶力だけでなく、情報処理能力がとても高い一面があるし、

言葉の理解力もあることがわかりました。

初めてするゲームなのに、交換の概念をすぐに理解してスムーズにゲームを

していましたし、「普通は、何もしなくても2枚のカードがもらえるところ、

騎士のカードを持っている人は、騎士のカード1枚につき、1枚多くカードをもらう

ことができるのよ。★くんは騎士のカードを2枚持っているでしょ。

わたしから何枚カードをもらうことができるの?」

とたずねると、悩むことなく「4枚」と答えていましたから。

 

そうした★くんの様子は、勉強中、「わからないわからない」と言い張って

問題を見ようともしないし、話を聞こうともしない姿や

遊びの場で、ほかの子らの行動から自分が何をしたらいいのかわからなくて、

ふざけ続ける姿からは、想像もつかないものでした。

 

ある状況下なら、自分の力を発揮しやすのでしょうし、

状況によっては、混乱と不安に捉われてしまうのでしょう。

 

★くんにとって大事な支援は、それらの二つの状況をつなぐ橋渡しをして、

混乱しやすい場面でも、

「自分の力が出せる場面でできていることなら、ちゃんとできる」という

自信をつけていってあげることでしょう。

それには、自分の行動を統制するのに役立つ言葉を

かけていくことが大事だと思っています。