上手に「考える」ことができるようになるために、できるようになっておくといいステップの2つめは、上手に「聞く」ことです。
2、3歳の子にはじめて会うと、耳の機能には何も問題がないのに、まるでまったく耳が聞こえていないように見える時がある子がけっこういます。
お母さんや私が呼びかけても、振り向いたり音のほうに顔を向けたりしないで、好きなことをしています。
また、何かをひっくり返したりして、ガラガラ大きな音がしても、その方をちらりと見ることもないのです。
幼い子は同時に2つのことをするのが苦手ですから、何かに夢中になると、耳がお留守……となりがちなのですが、わざと聞こえていても無視しているように見える子の場合、大人の対応や生活環境に気をつけると、直ってくることがほとんどです。
「聞く」力の良し悪しは、自分の心の中で考えた言葉を「聞く」力とも関係がありますから、「考える」力に大きな影響を及ぼします。
もし「見える」ものだけで反射のように答えを出すばかりだと、少しも考えが深まりませんよね。
人の話も周囲の音も自分の心の声も、しっかり集中して「聞ける」技術を身につければ、じっくり考える力が育ってきます。
それでは、どうしたら「聞く」のが上手になるでしょう?
一番良い方法は、お母さんが不必要なことをしゃべりすぎないことです。
「語りかけ育児」という言葉があるくらいですから、シャワーのように子どもに言葉をかけたらいいんじゃないの?と思うかも知れません。
確かに、語りかけるコツをきちんと押さえて、子どもの興味と聞きたい思いを引き出しながら、語りかけていくのなら、とてもすばらしいのです。
でもだいたいの場合、お母さんが子どもに声をかけるほど、子どもは音への反応を鈍化させて、全部聞いていたらきりがない上、きちんと聞いてもどうでもいいことばかりだからBGMのように聞き流すという習慣をつけています。
そうした場合、声かけというのは、「遊んできたら?それか~し~てっていって。何がしたい?よかったね。ほら、あれで遊んでおいで。これで遊ぶ?」といったものです。
それも、子どもが新しいものを目にして、真剣に頭を使おうとしているとき、お家よりもお外で遊ぶ際や、お友だちを前にした際、大人がしゃべりすぎてしまうと問題が大きい気がします。
2、3歳の子なら、「何をしようかな?」「あれ面白そうだな」「触ってみようかな」「あれで遊ぼ」と、自分の頭で考えて決めることをすべて、お母さんが横からロボットのリモコンスイッチを押して操作するように言葉で指示を出しているのです。
もちろん、子どもの方は、そうしたことは自分で決めるべきとわかっていますから、自分で自由に遊び出すのですが、お母さんがたくさん指示を出す場合、大人の声にはいっさい耳をかさないことが習慣になっている子も多いです。
そこでさらにたくさん声をかけ、さらに無視するという悪循環に陥っています。
軽度発達障害があって、呼びかけると聞こえていないようだったかと思うと、小さな音にも敏感……という子もいるのですが、ほとんどの場合は、自分に向けられる音が多すぎて、全てに反応していられないから、自分に呼びかけられる声に鈍感になっているという、障害とは無関係のもののように見えます。
また赤ちゃんの時期から、そうした「こうしたら?」「ああしたら?」と背後から子どもの気もちを代弁する声かけは多いけれど、あやして笑わせたり、手遊びしたりして、子どもの顔を見て反応を引き出しながら、きちっと声をかけることは少なかったという場合、「聞く」ことが、とても苦手な子になりやすいように感じます。
次の記事→ 幼児が「よく考える」ようになるためのステップ 4 <聞いた後で> に続きます。
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