フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

4月13日(木) 晴れ

2023-04-14 10:18:15 | Weblog

9時、起床。寝坊した。今日は2限(10時40分から)があるので、10時半には家を出なくてはならないのに。

倍速で行動し、トースト、サラダ、牛乳、紅茶の朝食(簡易版)を食べ、10時40分に家を出る。

『らんまん』は北朝鮮のミサイル騒ぎで朝の放送分が飛んでしまった。

東京駅での乗り換えのとき、構内の本屋で村上春樹の新作長編『街とその不確かな壁』(新潮社)を買う。今日は夕方まで授業があるので、読み始められるのはそれからだが、東西線の車内で書き出しのところだけチラッと見る。

「君がぼくにその街のことを教えてくれた。/その夏の夕方、ぼくらは甘い草の匂いを嗅ぎながら、川を上流へと遡っていった。砂流止めの小さな滝を何度か越え、時折立ち止まって、溜まりを泳ぐ細い銀色の魚たちを眺めた。二人ともしばらく前から裸足になっていた。澄んで水がひやりと踝(くるぶし)を洗い、川底の細かい砂地が二人の足を包んだ――夢の中の柔らかな雲のように。僕は十七歳で、君はひとつ年下だった」

青春ライトノベルのような書き出しである。もちろん村上春樹がそういう物語を書くはずはないから、この軽やかな明るさはこれからの不穏な展開を予感させるものである。

始業前直前に大学に着く。研究室には寄らず、そのまま教室に直行する。

2限の演習「現代人と社交」は30名中29名が出席。初回は自己紹介。授業のテーマが「社交」であるから、社交的な自己紹介を心がけてやってもらう。5人ずつ前に出て、1人1分ほどの自己紹介の後、すぐに次の人には行かず、質問タイムを設ける。初対面の人に向かって自己紹介をし、それを受けて、言葉のキャッチボールをする(楽しむ)。社交の中核はおしゃべりである。都市生活者は基本的に他者に対して自分を閉ざしているから、社交の扉がサビて開かなくなっている人が多い。ちょっと油を指してみましょうというレッスン。

100分授業だったが、10分オーバーして終わる。3限まで40分しかない。店はどこも満員で列ができている。コンビニ(ここもレジの前に長い列ができていたが)おにぎりとカップ麺を買って、研究室で食べる(カップ麺までは食べる時間がなかったが)。今後は、事前に昼食を買っておかないとなるまい。

3限は研究室で大学院の演習。受講者は3名。ここでの自己紹介は修論のテーマについて話してもらい、それを材料にディスカッション。100分をちょっとオーバーしたかもしれない。

引き続き研究指導。

研究室が同じフロアーの同僚の山田先生から『社会学の力―最重要概念・命題集』(有斐閣)の改訂版をいただく。ありがとうございます。本書は大学院受験生の必読書になっている。

4時半頃、大学を出る。「カフェゴトー」をちょっと覗いてみたが、混んでいるようだったので、地下鉄に乗り、『街とその不確かな壁』を読み始める。物語の舞台は二つ、現実の世界と観念の中の(?)の世界(高い壁で囲まれた街)、そういう二元的構成は『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』以来、村上春樹の作品ではおなじみのものだが、二つの世界は時制が違うようである。現実の世界が語られるときの人称は「ぼく」で、観念の中の世界が語られるときは「私」になっている。最初、「ぼく」が男の子で「私」が女の子なのかと思ったが、そうではなくて、どちらも同じ人物なのだが、「私」は大人になった「ぼく」なのだ。しかし、観念の世界の中の女の子はいつまでも16歳のままである。それって現実の世界の中での女の子の死を意味するのだろうか。物語はまだ始まったばかりだ。あれこれ考えるのはやめておこう。

蒲田に着くと、駅前で選挙演説が行われている。

「ルールブランシュ」に寄って行く。

テーブルの上にはキンプリ(キング・オブ・プリンス)の人形が勢ぞろいしている。時価にしたらかなりなもののはずである。店内にはキンプリファンの女性客が入れ替わりたちかわりやってくる。かなり遠方からの方が多い。そしてみなテンションが高い(笑)。

苺のタルトと紅茶を注文して、店の奥のテーブルで本の続きを読む。

店長さんが挨拶にみえられた。

「先生、これを食べてみてください」と出されたのが、めかぶだった。あまりこういう形状で食べたことがなかったが、歯ごたえがあって美味しい。

「こちらも食べてみてください」と出されたのが、キムチの浅漬けとピーマンの肉詰めにガリをのせたもの。後者は初めて食べる味だった。肉味噌とガリの組み合わせが意表をついて、しかも美味だった。

店主さんは、午後7時以降はビストロのようなことを始めようと考えているのだ。

店には1時間ほど滞在したが、読書できたのは30分くらいだったろうか(笑)。

夕食は回鍋肉、シューマイ、サラダ、大根の味噌汁、ごはん。

回鍋肉(ホイコーロー)とは豚肉とキャベツの味噌炒めである。

食事をしながら『かしましめし』の初回(録画)を観る。人生に迷うアサラー3人の同居生活を食事の場面を中心にして描くドラマ。「かしましい」から女性3年を連想したが、一人は男性だった。ただし彼は同性愛者なので、「かしましい」のイメージからそれほどずれてはいない。

今日から公開のオンデマンド授業「日常生活の社会学」のレビューシートのチェック。

風呂から出て、今日の日記を付ける。小説の続きを読む時間はない。

「明日はゼミがあるし、土曜日の楽しみにとっておきましょう」

1時半、就寝。