King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

ドービニの庭をみる

2007年06月15日 23時21分01秒 | 日々のこと
昨日関東地方は、入梅したそうです。
私は昨日、一日かけて大阪まで来て、今日は新幹線で
広島まで行きました。
その大阪のついでに、兼ねてからみたいと思っていたゴッホの
ドービニの庭を見たかったからです。
昨日は一日雨でしたが、今日はどうにか降らずに朝を迎え
新大阪のホテルから歩くとかなり暑い日で、汗ばむようでした。
新幹線はのぞみ一号で、500系の一番とんがった車両です。
これは窓も狭く音もうるさい車両で乗り心地はいまいちです。
天井も低く、レッドアロー号より乗りごごち悪いです。

車内は、平日ということもありほとんどスーツ姿のビジネスマン
です。こちらは気ままな一人旅で、スキー以外の旅というと
昨年夏の大洗以来です。そして、こういう予定を決めない
旅というのは、自由でいいようでいてまたあまり有意義に時間も
使えなかったりします。それも急に行が決まったり、タイミング的な
物もあり、まあ仕方ないことなのですが、私に時間があるから
余計綿密な計画も立てずについここまできたんだから広島まで行く
という感じの旅行になってしまいました。

ですから、新幹線も宿も全て当日の手配です。大阪でも広島でも
ホテルが沢山あるから当日一人でも取れるのですが、目先の予約を
入れながらというのも時間が全て決まっている旅と較べていいのか
悪いのか。

宿と行き帰りの切符くらい取っておくのが一番ですけど。
まあそれができないのが、私の性格なのでしょうか。もともとこの広島行
は年末の休みに行く予定でした。そうすれば、山陽の観光地は一緒に
周れたのです。今回は、もし時間が許せば、倉敷も周りたいという
緩やかな希望で、とにかく一番の目的は、広島美術館のドービニの庭
なのです。

広島に着いた私は、まず路面電車に乗って美術館を目指します。
この電車がとってものろく、そのうえ人は結構乗っています。広島に
着いたら雨も降り出して、荷物を抱えて美術館への移動は大変な
物になりました。それでも15分ほどで目的の駅に着き、そこから歩いて
県庁のほうに行き、目指す美術館はすぐに見つかりました。
この時期だからか、どこでも団体の小学生や中学生に会います。
そんな団体と一緒になって絵を見ていると突然目的のドービニの庭が
あり、しばしそのまま凍り付いてしまいました。

これがまあ、実に簡単な描き方で何色も色も使われていなくて
なんて下手な絵なんだろうという感じです。それでもこの緑調の明るい
不思議な絵は、作者の思いがすごいつまっているのです。それが
濃いから、みているとみているだけ絵の中の電磁波がこちらに伝わり
明るい色調と子供の筆使いのような稚拙な塗り絵のようであり、デッサン
狂いの構図と不思議な空間を詰め込まれた絵なんだということが
伝わるのです。作者のドービニへの思いと自分の絵に対する情熱が
圧倒的な存在感で庭という限られた借景の中に自分の人生の熱が
思いがギュウとうねって詰まったありえない空間なのです。

ベンチとテーブルはなぜこんな大きさなのか。建物はなぜこうも白く
奥まって真っ白に座りがいいのか。左の傾斜と手前の傾斜も合って
ないし、こういう空間の描き方というのは、キュビズムより画期的なの
ではないかとか。まあ色々感じます。近くで見ると変な塗りなおしの箇所と
絵の一番下の部分は、下手な塗り方で誰かが足したようだし、問題の
猫の跡は何で茶色が塗られているのか。クロネコを塗りつぶしたのなら
同じ色に塗っておいていいはずで、何で茶色が出てくるのか。

なぜ夏なのに未亡人だからか、ドービニ夫人だといわれる人物は
黒服なのか。色々考え出せばきりがない。それにこの絵のサイズも
縦の寸法が短いのはなぜでしょう。普通黄金比でもう寸法は決まって
いるものです。

この作品には、とにかく時間に許す限り近づいたり、離れたりして
みましたが、はなれるとまたみたくなり、この絵を見て他の絵をみて
頭の容量がオーバーしちゃうんじゃないかと思いました。というのも
この美術館は、とにかく収蔵作品がすごいのです。この一枚は新幹線に
乗って見に来る価値がありますが、その他にピカソにシャガールに
マチスと名作が沢山あります。それに加えて、日本の有名作家の
絵画も沢山あり、一日にこんなにみたら頭の中がと思えてきます。
実は、この日もしくは次の日に倉敷の大原美術館も行くという計画が
一時あったのですが、とにかくそんな気力がなくなってしまいました。

興奮冷めやらずまま、近くの観光名所の広島城に行きます。

雨の中のお城を訪れると、石垣や場内の各地にやはり原爆の
爪あとを感じる事ができ、それではと爆心地にも赴きます。まるで
映画のセットのような原爆ドームがそこだけ本当に当時のままに残っています。
毎年ニュースで見る記念碑。資料館。これらは
日本人なら一度は訪れてみておくべきところだと改めて感じます。
原爆がはじめて落とされた地として、多くの人にこの感じを感じ取って
もらいたいです。物言わぬこの地には、そこに立てば語りかけるものが
あります。

強烈なこの感じは、長崎でも沖縄の慰霊の地でも感じたことの
ないものでした。それで、胸が一杯になり、後一泊して観光する
気力もそがれて帰ることにしました。胸にはそれと、新しい友達の
ようなドービニの庭の思い出を抱いて。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする