King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

『Yの悲劇』読了

2007年07月10日 00時54分07秒 | 日々のこと
今読んでいる本の中に出てくる問題は、不確定性理論や
シュレーディンガーの猫の話です。それとて、19世紀の話で
遠い昔の話です。いまや21世紀であり、この科学とネットの
発展した世だから可能になるおはなしとか問題とかここまで
人類は来たんだというものがなぜ聞かれないのでしょうか。
ちょっと前までは世紀末で、異常気象だとかやたら終末理論
的な話でしたが、いざ21世紀になったとて別に世の中が変わった
訳じゃない。異常気象は、地球温暖化ということばになっただけ
です。

この『Yの悲劇』は1932年の発表で、私が中学時代本格ミステリーの
第1位として君臨していました。そんなもので、長く読むのを楽しみに
先延ばしにしてきた物語です。ルパンやコナン・ドイルを熱心に読み
いつかはクリスティやエラリー・クインもと思いつつ、いつしかミステリー
小説を読むことも無くなり、その後15年前ほどから通勤電車の長い
車中にあまり重くない本を読むうちに片っ端からミステリー小説も読む
ようになりました。すぐにエラリー・クインに行かなかったのは、他に
面白い本が沢山あり、ミステリーの質も高くなりかび臭い昔の話なんか
今の世にマッチしないからどうせ違和感があると決め付けていました。

しかし、国内の江戸川乱歩賞とかミステリー大賞を取ったような本も
あらかた読み終え、古本屋の100円コーナーにはもはや読みたいものも
なくなってしまいました。それでよいよ、古典の方も手を出すかとなった
のがこのYの悲劇です。最近の24のようにテンポが早く、ハイテク操作が
見世物のように繰り広げられるドラマを見てしまうと、やはり古いものは
なじまないというところがあります。しかし、19世紀から較べてなにが
我々に明らかになり、どう世の中を変えてしまったのでしょうか。
人間のゲノムの解読とかDNA鑑定で覆った判決とか決定的に変わった
物もありますし、検視なども化学的に様々なものが開発されて捜査に
大きな進展があるともいいます。

そんな科学的な捜査の番組とかFBIとかCTUとか様々な捜査機関とか
政府機関が活躍するアメリカよりまだ日本のほうが治安がよく、犯罪
検挙率はよいようです。そんなアメリカの古典的作品ですが、他の人が
絶賛する割には、私には全然面白くもありませんでした。そして、色々な
違和感を感じたものの、その正体もなにやら解りました。この本を読んで
最近読んで違和感を感じたものに似ていると思いました。それは
『ウロボロスの偽書』です。

これも読んでつまらなかったのですが、それによく雰囲気までが似ています。
まず設定の人物が、いかにも昔風で、俳優で変装も得意で忠実な僕が
いて、ハンディキャップを持っていて警察に信頼されていて警察と捜査協力
をする探偵。まず、探偵がスーパーヒーローになりすぎてはいけないという
セオリーをこんな設定でこなしています。現代のミステリーでは、探偵という
ヒーローがなかなか登場させられないというのがネックになっています。
つまり、警察という絶対の組織があり、それ以上に捜査や推理が得意という
人物設定は、元刑事とか何か特殊能力とか警察と一緒にもしくは警察
以上に謎を解く能力がないといけないことになります。

その設定が現代では難しく、特に日本では困難です。日本の探偵というと
浮気調査や行方不明者の捜索が主な仕事です。警察以上に謎を解く
ことなどありません。そんなところからまず話を造らなくてはならないのですが、
どちらの作も物語の中に事件のストーリーが出てきて、作中作と劇中劇の
ような関係になっているのです。ドルリー・レーンのとる行動も簡単なトリックも
とても馬鹿らしく、幼稚な事をすることから結末もなんだよというようなつまらない
落ちになっています。

私はこんな本を稀代のミステリー一位として、いつか読もうと大事にして
きたのかとかなり落胆しました。75年前でも今でも事件の解決の方法とか
やはりあまり変化は無いのです。バブルの頃を再現して話題になった映画
が最近いくつかありましたが、それは今から考えてもおかしな時代でしたが、
かといって現代においてより進歩した時代になっているかというと携帯が
普及したことと、ネットが普及したこと位で特に変化はやはりないのです。
人によっては、ヒルズに引越しして付き合う人も変わった人もいるでしょうが
私は、10年前に較べたら服もサイズダウンするくらい痩せて昔のような体型
に変わったので、それはそれでまた違う変化を手に入れたのですが、世の中
の人はそんな変化して豊かになった人なんていないのじゃあないでしょうか。

ふとそんな事を考えました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする