金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

78:関口安義 『芥川龍之介』

2007-06-13 23:32:42 | 07 本の感想
関口安義『芥川龍之介』(岩波新書)
★★★★☆

芥川龍之介の生涯と人となり、作品が執筆された背景を
追った評伝。
芥川龍之介については、国語便覧に載っているようなことと
北村薫『六の宮の姫君』で読んだことくらいしか知らなかったので、
新鮮な気持ちで読めました。

師である漱石からの励ましの手紙にはほろっときちゃうのだけど、
芥川のほうには漱石に対して、尊敬ばかりではない葛藤が
あったのだなあ。
漱石との関係、一途に文学の道へ突き進もうとする
同時代の文学者たちとの交流に、
なにやらときめきを感じてしまいます。
鴎外の影響も受けてたのね、とちょっとうれしい。

結婚前の奥さんへのラブレターは、
「ぎゃー!!」とごろごろ転がりたいほど恥ずかしいのだけど、
その恥ずかしさがどこから来てるかと言えば、
文中にやたら英語や横文字を使いたがる「西洋かぶれ」の
部分だという気がする。
これは当時のほかの文学者の作品や書簡も同様。
そして芥川最晩年の写真は、見ればみるほど館ひろしに似ている……。

追記:出口王仁三郎って「出口の現代文」の人の祖先。
   出てきておどろきました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

77:豊島ミホ 『陽の子雨の子』

2007-06-13 12:37:35 | 07 本の感想
豊島ミホ 『陽の子雨の子』(講談社)
★★★☆☆

私立の男子中学に通う夕陽は、担任の先生の同級生だという
24歳の雪枝に出会う。
招かれて、彼女の住む古い家を訪れた夕陽に、
雪枝は思いがけないものを見せる。
それは4年前に彼女に拾われたという19歳の男で、
押入れの中で後ろ手に縛られていた。

***********************

変質者っぽい怖い女が出てきたと思ったら、
乙女チックで可愛い話。
うーん……。
前半のなにかすごいわけがありそうな、演出された
「異常さ」に対して、後半の展開は「えっ、そんなこと?」と
拍子抜けしてしまった。
いまいち説得力がなく、なんだかもやもや。
自分に才能がないことを悟りつつ、
普通でいることに甘んじられずにあがく、
そんな心理もわかるんだけど、とにかく筆が追いついていない印象。
夕陽と聡という二人の男の子の視点で話が進むのだけど、
それがうまく機能していなくて、焦点もブレてる感じ。

雰囲気は好きで、黄色いカッパを着せられたり、
気になる女の子に対するふるまいなんかも可愛いんだけどなあ。
その女の子の清らかな雰囲気もとっても好み。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする