金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

81:安房直子 『ハンカチの上の花畑』

2007-06-25 16:34:54 | 07 本の感想
安房直子 『ハンカチの上の花畑』(あかね書房)
★★★★☆

なくなったはずの酒蔵に、手紙を届けにやってきた
郵便配達夫の良夫さん。
おばあさんに招き入れられ、菊酒を作る小人たちを
呼び出すことのできるつぼとハンカチを預かることに。
いくらでも菊酒を作ってもかまわないが、条件がふたつ。
お酒をつくるところは、だれにも見せちゃいけない。
菊酒で、金もうけをしようと考えちゃいけない。
菊酒のおかげで楽しい毎日をすごし、良夫さんのもとには
およめさんもやってきたが……

**************************

小学生の女の子が「おもしろいよ!」と家に持ってきて
くれたのだけど……こ、こわっ!!
完全に大人の読み方をしてしまうのだけど、
善良な夫婦が現実的な欲望に屈していくところとか、
経済的な取引という大人社会の概念を持ち出すところとか、
快楽を知って労働を放棄するところとか、
中盤はおそろしくておそろしくて。
小人の家でお茶を出されて、

「ほんの一口のんだだけで、ふたりの心の、おそれやしんぱいや、
悲しみが、霧のように消えました。……(略)……
ふたりの心は、すっかり明るくなりました。そのうえ、なんだか、
うきうきしてきたのです」

というところなんて、
「ド、ドラッグ!!」
と戦慄。シュールだよ!
ちなみに、持ってきてくれた子に「これ、怖いよ~!」と言ったら
「どこが??」とケロリと返されました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

80:豊島ミホ 『底辺女子高生』

2007-06-25 16:06:41 | 07 本の感想
豊島ミホ 『底辺女子高生』(幻冬舎文庫)
★★★★☆

クラス替え当初に行われる「値踏み」。
その結果、クラスのヒエラルキーの「底辺」に位置づけられ、
底辺生活から脱出すべく大阪に家出。
保健室の常連になり、出席日数不足でひとりきりの卒業式。
そんな高校時代の思い出を綴ったWeb連載のエッセイ。

痛い、痛い!
そう、地味女子は生きにくいのよねー。
そしてその後どれほど華やかな生活を送ることになろうが、
「思春期に女の子としてどこに位置していたか」は
確実にその後の人生に影響を及ぼすのです(断言)。
別にものすごくいやなことがあったわけでもないのだけれど、
とにかく思春期にまつわるあれやこれやがいやでしかたなく、
「出家したい……」と口癖のように思っていた高校時代を思い出して
暗澹たる気分に……

バレーボールの話とか、よくわかります。
都合の悪いことはすぐに忘れるわたしだけれど、
その忘れたあれこれを取り出して見せ付けられた気分。
過ぎ去ったできごととして客観的に自分を見つめ、
読者を楽しませようという意識も働いているのだけれど、
「まだ傷ついてるんだからね!」という恨みがましさも出ていて、
その素直さに共感したり目をそらしたくなったり。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする