金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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136:井上靖 『天平の甍』

2010-08-17 21:57:23 | 10 本の感想
井上靖『天平の甍』(新潮文庫)
★★★★☆

天平の昔、第九次遣唐使派遣が行われ、
大安寺の僧・普照は、栄叡、玄朗、戒融とともに
留学僧として、荒れ狂う海を越えて唐に向かった。
唐で、何事もなさずして年月を過ごした先輩僧たちの
姿を見、留学僧仲間の出奔や脱落を経て、
普照は栄叡の熱意に動かされる形で
伝戒の師僧として高僧鑒真を日本へ招こうと
奔走することになる。

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ちょうど一年前の旅行のときに買ったものの、
読まずに放置していたのでした。
新幹線に乗ってるときって、ちょっと堅い本も
ぐっと集中して読めるからいいね。

何年もかけて唐で学んだこと・集めたものが、
航海の途中で、人間の生命と共に
あっけなく海の底に消えていってしまう。
消えていくものを運ぼうとしているのではないか、
徒労ではないかという疑いを抱きながら
命がけの船出に挑む無名の留学僧たちの生涯を描いたもの。
ドラマチックなはずの出来事を淡々と描いているので
読んでいる途中では物足りなく感じたのだけど、
読後はじーんと静かな感動に満たされる。
ずっと「なぜ『甍』?」と思っていたのだけど、
最後のあたりでそれがわかってしんみり。

時代背景に関する知識がないとやや厳しいかも。
作中でくわしく説明されているわけではないので、
ベースになる知識がないと、
栄叡や普照がそこまで必死になっている理由も
いまいちわからないだろうし、
高弟が、日本へ渡ろうとする鑒真を止めようと
「好意的な妨害者」として密告したりするんだけど、
「お前らどんだけ鑒真が好きなんだよ!?」
って、ただのファンクラブみたいに受け取られてしまいそう
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大阪覚え書き①

2010-08-17 15:02:14 | おでかけの記
先月、『ラブ・ストーリーを読む老人』に関連して
恋愛小説を読む?という話をしていたときに、
中学生の女の子たちが
「携帯小説なら読む。みんな同じような話なんだけど、
 『恋空』は理想の恋愛」
と言っており、恋空ね~ふーん……と思っていたら、
昨日テレビでやっていた。
滞在していた大阪のホテルで見たのだけど、
「えっ、これ、ダイジェスト!?」
って思うくらい、ディープなはずの話が
ライトにさくさく進行。
「いまこの話の流れで、学校の図書館で!?」
とか、前半は吹き出しっぱなしだった。
思うに、大人から見て「ベタ」でも、
中高生にとってはそれまでの蓄積がない分、
「ベタ」にはなりえないんだなあ。
悪役の臼田あさ美ちゃん、好きなのでもっと見たかった。

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さてさて、大阪に行ってきました。
行くのは二回めだけど、観光地としては
いまいち触手が動かない大阪。
観光が目的ではないので、
本当は日帰りでも良かったのだけど
ホテルが安いので二泊。
お昼にゆっくりしゃちほこ村を出て、
一日めは古文によく登場する住吉へ。
写真は住吉大社の反橋。
淀殿が寄進とのこと。

人が多くて写真は断念しましたが、
おいとしぼし社にある「おもかる石」も
体験してきました。
一度石を持ち上げて重さを確かめたあと、
願いごとをして再度石を持ち上げたとき、
軽く感じれば願いが叶い、
重く感じれば叶わない……とのこと。
重かった
人のことをお祈りしたのだけど、まあ、
本人たちに頑張ってもらうしかないということかしら。
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