金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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現在、記事の整理中。

143:倉本智明 『だれか、ふつうを教えてくれ!』

2010-08-20 21:27:53 | 10 本の感想
倉本智明『だれか、ふつうを教えてくれ!』(よりみちパン!セ)
★★★☆☆

20代前半までを弱視者として過ごし、
その後全盲になったという著者が、
障害というものを足がかりにして
「ふつう」や社会のルール、人間関係について
述べた一冊。
乙武さんの『五体不満足』にあったのと同じように、
小学校時代、友達が弱視の自分のために野球に
特別ルールを作ってくれた、
でもそれは本当の共生でなかった……
というエピソードから始まり、
著者自身の体験談を交えながら、
「障害者」というひとかたまりでとらえてしまうことの
暴力、人の人との関わりについて考えを述べている。

『五体不満足』からさらに一歩進んだところで
「バリアフリーとは何か」を考えさせられる。
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142:長江優子 『タイドプール』

2010-08-20 21:12:03 | 10 本の感想
長江優子『タイドプール』(講談社)
★★★☆☆

父親の再婚相手・マコさんとの生活が始まり、
「目に見えないルール」をおかされることに
苛立つ小学五年生のえり子。
幼稚園からいっしょのちひろとは親友だが、
鼓笛隊の担当が発表され、
えり子が指揮者に選ばれたのをきっかけにして、
ちひろに避けられるようになる。

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タイドプールとは、岩場の潮溜まりのこと。
小さく厳しい世界に生きる生き物たちに、
家庭や学校の人間関係を重ねて描いた児童文学。
書き込みは丁寧で、
マコさんに対する小さなイライラの積み重ねや、
えり子がちひろと仲たがいしてからの
クラスの女の子たちの間に流れる空気には
説得力がある。
それにしても清水さん、6年生なのにオンナだなあ。

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141:中島らも 『お父さんのバックドロップ』

2010-08-20 21:01:27 | 10 本の感想
中島らも『お父さんのバックドロップ』 (集英社文庫)
★★★☆☆

同級生の下田くんの家に行ったタケルは、
帰宅した下田くんのお父さんに遭遇。
お父さんは有名な悪役プロレスラー・下田牛之助だった。
頭は金髪、顔は赤白の隈取り、
リングでみどり色の霧を吹く。
「尊敬できない」と面と向かって言う息子のために、
お父さんは空手家「クマ殺しのカーマン」に挑戦状をたたきつけ、
対戦することになったのだが……

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勤め先でいただいてきたもの。
中島らもは『空のオルゴール』で二度と手を出すまいと
思っていたのだが……
こちらは子供向けのライトな、ほのぼのした作風。
おちゃめで愛しいお父さんたちを描いた短編集。
「お父さんのロッククンロール」のチヨノばあちゃんに
笑ってしもうた。
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140:森達也 『世界を信じるためのメソッド―ぼくらの時代のメディア・リテラシー』

2010-08-20 17:18:31 | 10 本の感想
森達也『世界を信じるためのメソッド―ぼくらの時代のメディア・リテラシー』(よりみちパン!セ)
★★★★☆

教科書にもメディア論は載っているけれど、
これだけ堅苦しさを感じさせずに、易しく
書かれたものは、ほかに思い浮かばないなあ。

マスメディアの伝えることを鵜呑みにするな、
というのはよく言われることだけれど、
意図する・しないにかかわらず、どうしても
製作者側のフィルターがかかってしまうという
メディアの性質とその理由、
そしてメディアのもたらす情報を偏らせているのは
視聴者である一般大衆であることを、
具体例をまじえて説明してくれる。

より難しい文章を理解するためのベースつくりを
するには最適。
中学生のメディア論入門編におすすめ。
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