金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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7:芥川龍之介 『地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇』

2011-01-22 21:55:41 | 11 本の感想
芥川龍之介『地獄変・邪宗門・好色・薮の中 他七篇』(岩波文庫)
★★★☆☆

【収録作品】
「運」
「道祖問答」
「袈裟と盛遠」
「地獄変」
「邪宗門」
「竜」
「往生絵巻」
「好色」
「藪の中」
「六の宮の姫君」
「二人小町」

芥川の「王朝もの」を集めた短編集。
やっぱり有名な作品は、それ相応の理由があるよな~。
「地獄変」と「藪の中」の完成度は抜きん出ている。
「袈裟と盛遠」「好色」「六の宮の姫君」は、
古典の世界の登場人物の心理を近代の目で解釈しなおして
詳細に語っているのだけれど、物語としてのおもしろさはいまいち。
「地獄変」の後日談にあたる「邪宗門」は
おもしろそうだったのに未完!
それを収録した芥川の言。

「それを今上梓するのは一には書肆の嘱により、
 二には作者の貧によるのである」

コラ~!!
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映画:『ラスト、コーション』

2011-01-22 09:36:28 | 映画の感想
映画:『ラスト、コーション
★★★★★

日中戦争の中、戦火を逃れ香港に逃れていた女子大生・チアチーは、
同じ大学に通うクァンに勧誘されて、学生劇団に入団。
劇団のリーダーであるクァンは抗日に燃え、
やがて劇団自体も抗日運動に傾倒していくことになる。
そして夏休み、劇団の仲間たちは、特務機関の易(イー)を
売国奴だとして殺害する計画を立てる。
チアチーは貿易商の若妻・マイ夫人として易の身辺に
近づくことに成功するが……

*****************************************************

原題は「色・戒」。
積極的に見たいと思っていたわけではないので、
忙しい時期に入ったこともあり、半月以上放置していたのですが……
よかった!!

チアチーは本当は抗日運動なんてどうでもよかったんじゃないかな。
父が再婚し、取り残されてイギリスに行くこともできない。
そんな中で、好意を抱いているクァンの情熱と劇団員たちのムードに
引きずられて、成り行きでそうなってしまったという感じ。
クァンは情熱だけはあるんだけど、「色男、金と力はなかりけり」
みたいな男。計画が無邪気で、幼稚すぎる。
易を篭絡できるかも!?となったときに、
チアチーの知らないところで方針が決まっていたこと、
クァンが止めずに、しかも「練習」の相手が彼でなかったこと、
さらにそこまでしたのに、思いがけず計画が頓挫してしまったこと。
三年後、チアチーが再び抗日運動に参加することになったのは、
そういうことの積み重ねの結果、
捨て鉢な気持ちになってしまったからだと思う。
チアチーの動じなさ、潔さが悲しい。

易役のトニー・レオンは昔の石坂浩二に見えてしかたなかったし、
中盤では「SM!!」とドン引きしましたが、
職務上、誰にも心を許せず孤独を抱える易に
「信じている」と言われ愛されて、
チアチーの心が揺らぐのはわかる。
ラストがせつない
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