金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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94:村上しいこ 『青春は燃えるゴミではありません』

2019-06-22 14:05:57 | 19 本の感想
村上しいこ『青春は燃えるゴミではありません』(講談社)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

パティシエになりたいという将来の夢を胸に、
高校生活最後の年を迎えた桃子。
でもその希望の前に、家庭の事情が大きく立ちはだかる。
夢をあきらめられる?それとも?
短歌甲子園をめざす高校生たちの青春小説!

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シリーズ1作目の感想で

>シリーズ3作目の一部を仕事で読んだことがあって、
>合わなさそうだ……と思っていたのだけど、

と書いたとおり、最初にこの3作目を読んだせいで
シリーズに嫌な印象がまとわりついていた。
そのときは本当に一部しか読んでいなかったのだけど、
実際、この3作目は好きになれない。

無理にシリーズの中に組み込もうとしたせいで
不自然さが生じている。


1・2作目の形式を踏襲して「日記」パートがあるんだけど、
これ、なくてもいいよね?
これまでと違って視点人物と日記の書き手が同一人物なので、
日記にしなくても主人公の考えていることは
地の文に組み込める。
「日記とそれ以外のパートが同時進行することで
事実が明らかになっていく」という効果もないし。


先にストーリーありきで展開していくせいで、
1・2作めで固まってきたキャラクターと
ブレが生じている。
主人公・桃子が(キャラが定まりきっていない感がありながらも)
1・2作めでそれなりの成長を遂げているのに、
また逆戻り……というか、前よりひどくなっている。
「どうして隠すんだ」「どうして根回ししないんだ」と
「ストーリーのために演出された愚鈍さ」に
イライライライラ……


これはシリーズの宿命だと思うんだけど、
その巻で必要のない登場人物にも触れなければならないため、
話が散漫になりがち&キャラクターの掘り下げができなくなる。
今回は、2作目で出てきた友郎の掘り下げが
あったくらいじゃないだろうか。

違う学年の子を主人公にするとか、
別の学校を舞台にするとかすれば、
上記1~3の欠点は生じなかったんじゃないのかな……。

重朗さんのエピソードと主人公・桃子の悩みが
うまくリンクしていなくてちぐはぐだったのも気になった。

そして、展開上特に必要もない選考委員の描写が多いと思ったら、
実在の取材相手がモデルだったんか……。
読者にはいらんサービスだったわ……。

1作目は本当におもしろかったし、
3冊通して短歌の良さも伝えてくれる作品だったので、
最終巻の失速が本当に残念。


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93:八百板洋子 『ソフィアの白いばら』

2019-06-22 14:03:16 | 19 本の感想
八百板洋子『ソフィアの白いばら (福音館文庫 ノンフィクション)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

1970年秋、YOKOがソフィアの留学生宿舎で出会ったのは、
世界各国からやってきた若者たちだった。
ベトナム戦争は激しくなるばかり。
激動の時代に青春を過ごした仲間は、それぞれ、
歴史の大きなうねりにまきこまれていく……。

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ブルガリアへ留学した著者の体験を書いた随筆。
良い本だった……!

前半は、異なる国で生まれ育った人々がともに生活することの
難しさ、楽しさがつづられていて、興味深くて面白い。
言葉がわからないために、オレンジを大量に購入するはめになったり、
歯磨き粉と間違えて洗濯糊で歯を磨いたり、
スイカを船に吊るして機雷と間違えられたりと
笑えるところもたくさんあった。
同室になったアセンカの過剰な愛情表現と
束縛・独占欲に辟易しながらも
彼女と友情を育んでいく様子が印象的。

そして、後半は切なく悲しい。
ベトナムやエジプト、ルーマニアなど、
当時、政情不安にあった国ぐにの事情に触れられていて、
友だちや恋人が亡命したり命を落としたりと、
別れを余儀なくされることになる。
わたしの生まれる前の出来事だけど、
当時、リアルタイムでその空気を感じたひとにしか
わからないものがあるんだろうな。

ブルガリア、行ったのが冬だったせいか、
薄暗くて怖い印象のほうが強いのだけど、
春のソフィアは美しい街なのだな。




結構なボリュームの本だったけど、
少しずつ味わって読んだ。
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