金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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406:伊東潤『修羅の都』

2021-10-03 21:49:09 | 21 本の感想
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

「武士の世をつくる」。
頼朝の悲願を背負い、妻として母として
時代の要となった政子。
頼朝晩年の謎をも大胆に描く傑作時代長編。

****************************************

前半は
「小説の体を借りた新書でも読まされてるのか?」
ってくらい、小説としての面白みがなかった。
何が退屈って、史実や逸話として残っているエピソードが
そのままにひたすら続くのだ。 
歴史小説で読みたいのは、史実にからんだ、でもオリジナルの
味付けなんだよ!
前半はそれがほとんど感じられず、面白かったのは 
頼朝一家のギスギスした親子関係だけ。

しかし後半は、俄然面白くなってくる。 
「吾妻鏡空白の四年間に迫る」と帯にあるように 
ここからオリジナルの要素が強く出てきた。 

※以下ネタバレ注意



後半、頼朝が認知症になってしまうんである。
作中で皆が言うほど「頭脳明晰」な感じが前半にない
(いろいろ理由付けてるが、せこくて小心者のおっさんだ)ので
ギャップはそれほど感じなかったのだけども、
「娘の入内」に向かって動き出したあたりからおかしくて、
打つ手にキレがなくなってきただけでなく、
人の名前も忘れてしまい、次第に娘の死も理解できず、
妻のことも分からなくなってくる。
それでも将軍という地位に対する執着は強くあり
隠居も拒み、なのに決断もできないので仕事も滞る一方。
ボケ始めた頼朝を操ろうと比企&梶原、頼家、チーム北条の間で
駆け引きが……というのが後半の流れ。
「建久七年の政変」前後の鎌倉サイドによる
朝廷工作のグダグダ感や、頼朝の不審な死については、
全く違和感なく独自設定と折り合いをつけていて面白かった。


私の中の政子のイメージは、この小説のものに近いかも。 
冷徹な策謀家ではなかったと思う。
頼朝の認知症や頼家の危険性に焦点を合わせるためも
あっただろうが、時政を悪く描いていなかったのは新鮮。
そして畠山重忠は、ここでも眩しいぐらいに清い。


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大河ドラマ『青天を衝け』#29

2021-10-03 21:33:56 | 大河ドラマ「青天を衝け」
なんか、和気藹々とした平和なシーンが続くと、
それだけで
「作劇のバランスとして、この後いやな展開がくるな……」
と思ってしまう。
こういうメタな見方してしまうの、いやね~。
栄一の屋敷を訪問したとっさま&かっさまの
帰り道のシーンで、
「とっさま、死ぬのでは……」
と思ったら、やっぱり。
来週亡くなってしまうんだな……。

大隈にかけあい、「改正掛」を設立した栄一は、
所属メンバーとともにアイディアを出し合い、
逓信、測量、度量衡の統一等々、
必要だと思うことを次々と実施。
新しいことをチームで始めて、
成功を積み重ねていくわくわく感。
薩長土肥と旧幕臣の対立もあるのだけども、
最終的には認め合う優しい世界。
それがご都合主義に見えないのは、
ちゃんと栄一のポジティブさと手腕を
描いているからだね。

大久保利通の年齢は知らないのだけども、
「一部の若手が勝手にやってる! けしからん!」
って怒ってるってことは、結構歳いってるのかな?
若く見えるのに老害感がすごい。
改正掛をつぶすべしと岩倉に掛け合うが、
岩倉は取り合わなかった様子。
しばらくは大久保が障害として
立ちはだかることになるのかしら。

【その他いろいろ】
・消印のこと、「汚れじゃないの?」って言ってたのに、
 その後、切手に判を押してるのを見せることで、
 「消印のこと、ちゃんと理解したんですよ」と示してる。

・千代ちゃんが相変わらず良妻賢母すぎる。

・前島密、郵便制度の開始には携われなかったけど、
 ちゃんと郵便の父として名が残ってよかったね。
 
・兄いが来て、新政府への恨みを口にしても、
 栄一は静かに思いの丈を述べる。有能。

コメント (2)
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