金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

263:宇佐見りん『推し、燃ゆ』

2023-12-21 11:50:12 | 23 本の感想
宇佐見りん『推し、燃ゆ』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。
アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。
ある日突然、推しが炎上し——。
デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。
21歳、圧巻の第二作。
 
****************************************
 
芥川賞受賞作。
話題になっていたので、タイトルだけ知っていた。
Amazon Audibleに入っていたので聞いた。
 
タイトルや、女子高生が主人公であるというところから、
ポップでライトな雰囲気を予想していたのだけども、予想外に重い。
はっきりとは書かれていないものの、主人公はおそらく発達障害で、
病院で診断が出ているにもかかわらず、家族に理解があるとは言えないし、
高校生活にも適応できず、中退することになる。
 
この発達障害の設定が必要だったのか? という感想も見かけたけども、
彼女の生きづらさというのが、
「推し」にのめり込む背景にもなっていたと思うので、
やはり必要だったのではないかな。
 
彼女は同情を誘わないタイプの人間なので、
フォローされない状況も、それを良しとは思わないけれども、
「周囲の反応も、まあ、そうなるだろうな……」
という納得感があるのだった。
 
ここまで何かにのめり込んだことはないけれども、
「推し」に認知されたくない、その他大勢の中に埋もれていたい、
という気持ちはよくわかる。
私も、どんなに好きな作家さんでも、会いたいとは思わないもんな。
美男美女の芸能人は生で見てみたいと思うけれども(テレビで見るより美しいらしいから)、
話したいとは思わない。
相手にとってその時間に何のメリットがあるの?? と思っちゃう。
ただ健やかに幸せに、活躍していてくれ~と思うのみ。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

262:永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』

2023-12-21 11:22:13 | 23 本の感想
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
◆第169回直木三十五賞・第36回山本周五郎賞 受賞作◆
疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。

語り草となった大事件、その真相は――。
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、
美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。
父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は
たくさんの人々から賞賛された。
二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、
芝居小屋を訪れるが――。
新田次郎文学賞など三冠の『商う狼』、直木賞候補作『女人入眼』で
今もっとも注目される時代・歴史小説家による、
現代人を勇気づける令和の革命的傑作誕生!
 
****************************************
 
Amazon Audibleにて。
Kindleの読み上げ機能は固有名詞の読みがめちゃくちゃだったりするけど、
Audibleは人が読んでいるだけあってそうしたミスはなく、
しかもプロが読んでくれるから情感たっぷり。
今回みたいな人情ものにはよく合う。
 
仇討ち事件について聞きに来た相手に乞われ、
事件についてだけでなく
自らの半生を語る芝居小屋の人々。
話が進むごとに仇討ちは本当に行われたのか?という疑問がわいてきて、
それがミステリー的な要素となり、タイトルが「仇討ち」ではなく
「あだ討ち」である理由も明かされる。
優しくあたたかい人々を描いた人情物であるとともに、
「武士とは」「正義とは」ということも
考えさせられる内容にもなっていた。
第4話・第5話あたりからぐぐっと引き込まれるが、
当人が語るネタばらしの最終話は、やや冗長。
ここがもう少しきっぱりさっぱりしていたら★5だった。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする