金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

196:田口ランディ 『ぐるぐる日記』

2006-09-22 15:14:08 | 06 本の感想
田口ランディ『ぐるぐる日記』(筑摩書房)
★★★☆☆

だらしな日記』で紹介されていたもの。
あまり関係ないけれど、先日、藤田さんにスーパーでばったり遭遇し、
サインをねだる夢を見た。
夢の中でひどく舞い上がっているわたし。
そんなに彼女のファンになっていたとは……自分でも知らなんだ。

さてこの本は、「ネットコラムニスト」として活躍していた著者が
小説家としてデビューするまでの一年を記した日記。
田口さんって、なんとなくオカルトなイメージがあったので、
スピリチュアルな世界に対しての冷静な視点がやや意外。
自然礼賛には飽き飽き、スピリチュアルな世界も否定はしないけれど
興味が薄い……というわたしなので、コラム部分は
実は読み飛ばしてしまいました。
読んでよかったなあと思ったのは、ネット世界に関する部分。
ネットで配信した文章についてメールで文句をつけてくる人、
「傷つけられた」と訴えてくる人についての著者の考えが
述べられているのだけど、ほんと、「いやなら読むな」で終わると思う。
本でもそうだ。
反論があるなら自分も文章の形で発信すればいい。
今はその機会が誰にでもある。

そして、(もちろん傷つけないように努力することは必要だが)
傷つけられたと言う人は、書かれた世界と自分との区別がつけられない、
傷つくのは自分の趣味の領域なのだ……という部分には、
このところのもやもやした気分に決着をつけてもらったようで安心した。
人は文章を読むとき、自分が読みたいように読めてしまうのだなあ。
本当に最近、そう思う。
そういう誤読の自由が、文章の強みであり弱みであるのだろうけど。

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195:河野真希 監修 『はじめよう! 気持ちのいい暮らし』

2006-09-21 10:20:41 | 06 本の感想
河野真希 監修『はじめよう!気持ちのいい暮らし』(PHP研究所)
★★★★☆

部屋も汚いし料理もこまめにしないんだけど
こういう「暮らし本」読むと一時的にやる気になるね!(「一時的に」だけど)

衣食住にお金や人間関係、防犯など、かわいいイラストと文章で
ひとり暮らしについてアドバイスをした女性向けの一冊。
三年のひとり暮しをしていると特に目新しい情報もないのだけど、
ちょっと生活をリセットしたいというか、
いやーな気分を一掃したいときにこういう本を読むと
新鮮な気持ちになって気がひきしまる気がする。

もろに「生活」な情報だけでなく、「さみしくなったとき」の対処法や
「ひとり遊び」の紹介なんかもされているところがちょっと新しい。
本当に可愛らしい本なので、これからひとり暮らしを考えている人には
オススメ!
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194:薫くみこ『十二歳はいちどだけ』

2006-09-20 13:29:12 | 06 本の感想
薫くみこ『十二歳はいちどだけ』(ポプラポケット文庫)
★★★★★

シリーズ第一作め『十二歳の合い言葉』で心臓弁膜症と診断され、
唯一のとりえだったスポーツを奪われた梢。
両親やかおり・菜々に支えられて立ち直ったかと思いきや、
中学に入ってから、どうしようもない空しさに苦しめられ、
弱みにつけこまれて不良グループに連れまわされる。
それを知ったかおりと菜々は、梢の心を取り戻すべく
かけずりまわることになるが……。

三人の友情にじーん……
決してご都合主義に走らず、変えようもない条件下で
なんとか活路を見出そうとする話の展開がいい。
もともとこの3作目で終了の予定だったらしく、
クライマックスにふさわしい盛り上がりもある。

三者三様の恋も描かれるのだけれど、いちばんもてるのが
美少女のかおりではなく菜々だってところも、
なんだかわかるなあ。
かおりと梢は年上の男性に片想いなのだけど、
菜々は常に、同級生の男の子に好意を寄せられるか
ほのかな両想いだったりするのね。
そういう相手ではない男の子とのたわいないやりとりも
菜々の場合はちゃんと描かれていて、
親しみやすい感じがあるんだろうなあと納得。
作郎からの手紙の話が好き。

それにしても透おにいさまは、いつのまにあんなにオトナに
なってしまったんでしょうか。
前作じゃあ、マザコン気味の反抗期少年だったのに。

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193:森茉莉 『父の帽子』

2006-09-19 11:01:33 | 06 本の感想
森茉莉『父の帽子』(講談社文芸文庫)
★★★★★

再々読。
森鴎外の長女・森茉莉のエッセイ集。
Reading Batonにも挙げたけれど、大好き

似た経歴をたどってくると心情的な共通点も多いのかもしれないけれど、
わたしのまわりには「ファザコン」が多い気がする。
男の「マザコン」とはちがって、女の「ファザコン」は
実際的な利をともなうことが少ない絶対的な信頼だと思う。
わたしは「家長」「父親」というイメージにすごーく弱いのだけど、
その発端になった本が大学時代に読んだこれ。
表題作もよいけれど、記憶の中の風景を美しい言葉で描き出した
「幼い日々」が好き。

『あぐらをかいて坐ると、胸の釦と釦の間がたるんだように口を開いていて、その軍服の胸の中に、小さな胸一杯の、私の恋と信頼とが、かけられているのだった。「パッパ」。それは私の心の全部だった。父の胸の中にも、私の恋しがる小さな心が、いつでも、温かく包まれて入っていた。私の幼い恋と母の心との入っている、懐かしい軍服の胸で、あった。』

「父の手紙」の菫の押し花の話も好きなのだけれど、
「幼い日々」のこの部分を読むとなんだかいつもほろっときてしまう。
きちんと母の心も入っているところがね。

センチメンタルな思い出だけではなく、
「半日」によって母に悪妻の評が定着してしまったことに対するわだかまり、
父の人間性に対する冷静な考察も述べられていて、興味深い。

しかし……この薄い文庫で940円はちょっと高いよね。

そのほか鴎外の子どもたちの随筆。
森於菟   『父親としての森鴎外』
小堀杏奴  『朽葉色のショール』『晩年の父』
森類    『鴎外の子供たち―あとに残されたものの記録』




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192:伊坂幸太郎 『重力ピエロ』

2006-09-18 19:11:21 | 06 本の感想
伊坂幸太郎 『重力ピエロ』(新潮文庫)
★★★★☆

このところ本も読めない状況だったのですが、
なんとか落ち着きまして。

非常に重いテーマを含んでいるのに、ライトな雰囲気で
さくさく読めてしまった。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
というセリフを体現しているかのよう。
放火と落書きと血のつながりについての物語だけれども、
ネアンデルタール人とクロマニヨン人、ガンジーに遺伝子などなど
ちりばめられた知識とエピソードが効果的にはたらき、
結末に向けて集約していくのがみごと。
もう一度読まないときちんと感想が書けない気もするのだけど、
やさしいお話だと思いました。
この小説における春の行為の、他人から見た是非は
やっぱり問題ではないと思う。

『ラッシュライフ』を読んだときに、『チルドレン』のほか
いくつかの作品とリンクしているようだったけれど、
そのうちの一つがこれなのですね。

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191:薫くみこ 『あした天気に十二歳』

2006-09-13 19:18:23 | 06 本の感想
薫くみこ『あした天気に十二歳』(ポプラ社)
★★★★★

以前書いた『十二歳の合い言葉』の続編。

父の不倫疑惑、入院中の母の寂しさ、担任の先生の許されない恋。
菜々・梢と離れ、ひとり私立中学に通うことになったかおりが
垣間見る大人の事情。
児童書にしてはなまなましくシビアだと思うのは
わたしだけでしょうか
大人になってから読んだ今もはっとするような言葉がちりばめられていて、
先生の言葉にはとくにしみじみ。
ショックを受けて飛び出したかおりを迎えにいく菜々と梢の友情に
思わず目頭が熱くなる。

このシリーズ、菜々が主役だと思っていたのだけど、
新装版を三冊並べてみたら、表紙が全部かおりひとり。
挿絵も、菜々と梢はときどきすごくぶさいくな顔をしていて、
かおりが特別扱いなのがよくわかります

小学生のころは透おにいさまに本気でときめいた
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190:斉藤洋 『ルドルフとイッパイアッテナ』

2006-09-13 18:55:39 | 06 本の感想
斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』(講談社)
★★★★☆

籐子ちゃんの妹君からお借りしました。
これ、以前、テレビで紙芝居風のアニメになって
やってた気がするなあ。
「斉藤洋は天才」という感想を見て、
きちんと読んでみたいなあと思った次第。

アクシデントで家から東京まで来てしまうことになった
飼い猫のルドルフ。
家がどこにあるかもわからず、帰ることができないルドルフは
野良猫のイッパイアッテナに出会って字を教わる。

ルドルフはじめ猫たちのキャラクターとかけ合いがおもしろい。
児童書らしくひらがなが多いため、読むテンポが遅くなるのが
ややじれったいものの、最後の男気あふれる展開には、
「おおお!」と思いました。
続編も出てるのね。読みます。
コメント (2)
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189:藤田香織 『やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記』

2006-09-13 18:42:34 | 06 本の感想
藤田香織『やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記』(幻冬舎)
★★★☆☆

『だらしな日記』がおもしろかったので、2冊目をさがしていました。
図書館になかったので買ってしまった。
だらしなぶりはややパワーダウン?
マンションを購入して引っ越すために掃除したり、
犬や猫の世話に追われているせいかしら。
マンション・ペットと、三種の神器のうち二つまでが
そろってしまいましたね

「だらしなマンション購入記」と「断食合宿紀行」は
あまり興味をそそられなかったけれど、
今回も紹介されている本はおもしろそうなものが多く、
付箋で大量チェック!
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188:島本理生 『一千一秒の日々』

2006-09-13 18:34:00 | 06 本の感想
島本理生『一千一秒の日々』(マガジンハウス)
★★★★☆

失われる恋、始まる恋、別れても続く交遊。
同じ世界に生きる若い男女の、それぞれの視点で恋愛を描いた
連作短編集。
最後の「夏めく日」だけは他とまったく関連性なし。

最初の「風光る」はちょうど自分の状況そのままの話でした。
読みながら本気でぐさぐさっときた。
期間も同じだしさ。
タイムリーすぎるよ……!

島本さんの描く男の子は、少女漫画そだちの女の子の心を
わしづかみにするな~。
『ナラタージュ』の先生や小野くんは好きになれなかったけど
(話は好き)、静かで礼儀正しい、端正な感じにときめきます。

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187:乃名桃子 『鈴屋テトラ』

2006-09-08 23:07:21 | 06 本の感想
乃名桃子『鈴屋テトラ』(講談社F文庫)
★★☆☆☆

籐子ちゃんライブラリーから拝借。

……うわあ、どうしよう……!と思いました。
お相手の男性諸君が出てきたあたりから、特に。
正直、ゾッとしっぱなしで鳥肌立ちまくってたけど、
(ラブコメで鳥肌なんて初めてだよ……)
前もって聞いてたように、キャラクターの書き分けはみごと。
キャラクターの造型がマンガ的なので、本当にマンガにして
文字ではなく絵で見せるとおもしろいかったかも。
最後まで読ませる勢いみたいなものはあるのだけど、
文章と内容、シリアスとコミカルさのバランスが
うまく取れていない感じで、もったいない。

作者は高校生だそうですが、自分を見抜いて
ばしっと言ってくれる男の子に憧れてるのかしら。
そこのあたりも合わない原因だったかも。
「あ~見抜いてる『つもり』ね、ハイハイ」
などとひねくれたことを思ってしまうワタシ。
ラブストーリーって、ときめいてなんぼってところが
あるので、好みが一致するかどうかは大きい。

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