金木犀、薔薇、白木蓮

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315:アンソロジー『鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選』

2022-12-17 23:36:41 | 22 本の感想
アンソロジー『鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
2022年大河ドラマの舞台は鎌倉幕府!
北条義時をはじめ、源頼朝を取り巻く鎌倉武士の
壮絶な生き様を描き切った衝撃のアンソロジー。

鎌倉幕府草創期から、二代将軍源頼家の時代に始まった
宿老ら十三人による合議制を経て、
三代将軍実朝の暗殺、承久の乱まで――。
流されるように生きてきた北条義時が
人生を賭けた大勝負に出る「水草の言い条」(谷津矢車)、
“讒訴の奸物"となった梶原景時の生き様を描く「讒訴の忠」(吉川永青)、
権謀術数うずまく幕府において、
畠山重忠が坂東武者の誇りを見せる「重忠なり」(矢野隆)など、
実力派作家七人によるアンソロジー。
 
目次
水草の言い条――谷津矢車
蝸牛――秋山香乃
曾我兄弟――滝口康彦
讒訴の忠――吉川永青
非命に斃る――髙橋直樹
重忠なり――矢野 隆
八幡宮雪の石階――安部龍太郎
解説 細谷正充
 
****************************************
 
長い間、読もう読もうと思っていたものをやっと読んだ。
熟成期間が長すぎて、期待が高まりすぎていたかもしれない。
「衝撃のアンソロジー」とあるけれど、衝撃はもちろんのこと、
「新しさ」があまり感じられなかったのは残念。
 
自分が歴史小説に求めるものが
「史実をふまえた上のオリジナリティ」
なので、特に好きな時代を扱ったものは、
どんどんハードルが上がってしまう。
 
同じ時代を扱った作品をたくさん読む
→慣れてしまう
→ちょっとやそっとのことじゃ新しさを感じなくなる……
 
という感じ。
 
長編よりも短編のほうが新しさを出すのが難しいのだろうし、
特に義時や景時は、永井路子先生がずいぶん昔に
すでに鮮やかにやってしまっているから、
苦しいのだろうとは思う。
しかし逆に言えば、ひねった描き方がされていないので、
まったくこの時代・人物を知らない人にとっては
入門編としていいかもしれない。
 
収録されている多くの作品で、
ダイジェスト的な「史実の紹介パート」が目立つのも気になった。
小説というより説明文みたいになっている。
上手い作家さんだとちゃんと「小説の地の文」になるんだけど、
これは何が違うんだろう。
情報を必要最低限にしぼっているから、
他の部分と文体に差が出ていなくて、なじんでいるのかな。
 
面白かったのは頼家を描いた「非命に斃る」。
エピソードを一通りさらいつつも 説明文になっていなかったし、
独自の味付けがされていて、小説として 完成されていた。
時房の描きかたにも、珍しい要素が入っていたし、
序盤の訴訟のエピソードを終盤で回収する構成も面白い。
 
 

コメント
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