ここで危惧しているのは、おそらくこれを期に世の中の専門医指向がまた一段と偏向的に拡大していくかもしれないということである。以前の勤務先である救命センターもしかり、開業してからは尚更であるが、自分は「何でも屋」である。地域でのかかりつけ医に求められているものはごく狭い範囲の「専門店」よりも、幅広く何でも売っている「よろず屋」なのである。ところが一度このような出来事があると世の中の流れは過剰に反応し「とにかく何が何でも全部専門医」という価値観になりやすい。もちろんうちのようなクリニックでは肝臓手術などはしないが、専門的処方や処置や小手術などは常にある。 たぶんこの時に「専門医ですか?」とは聞かれることはないと思うが、今回の事件がうちの患者さんに疑問や不安を少しでも抱かせるような誘因にならなければいいと危惧しているのである。