吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

刻み食? その2

2016年11月04日 06時39分05秒 | 日記
 うちのクリニックでは老人ホームに入居中の患者さんの診療もしている。ある患者さんであるが最近食欲がない、食事をする気がしないと言っていた。よくよく話を聞いたら、食べたい気はあるのだが、目の前の刻み食をみたら途端に食欲がなくなるというのだ。あれは鳥のエサであって食べ物ではないと言っている。患者さんは嚥下障害がありよくむせるというのだ。普通食ならきっと食欲も出て食べられると思うのだが、やはり誤嚥が心配なのである。見た目が悪くて食欲をなくす刻み食であるが、これを出していれば窒息はないだろう。その点では施設側は「食材を細かく刻んでいます」と誤嚥に配慮していると家族に喜ばれるのであろうか? (ま 刻み食でも100%窒息予防にはならないが)

 このような裁判があると、世の中の施設はすべて刻み食、ミキサー食になってしまうだろう。それでも今回、原告のご家族は「ああ、これで報われた」と思うのであろうか? 認知症の方の行動は時に予測不能である。いきなり急に口にものを一杯詰め込むこともある。もしこの事故が家で起こった場合はどうするのか? 「お前がきちんと看ていなかったからだ」とお嫁さんを訴えるのであろうか?
 医療機関や介護施設は決して手を抜いているわけではないと思う。それでもご家族は自宅でとうてい看きれない介護の責任を厳しく施設側に要求するのであろうか?