吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

杉並区健診で肺癌見落とし その2

2018年12月01日 05時55分10秒 | 日記
 一方、呼吸器専門医が読影した場合は、ある程度診断精度は高くなるがそれでも見落としはゼロではなく、今回のX線写真でもほとんど所見はみとめられず専門医の診断でも「異常なし」とされている。これでは専門性が高くても拾い上げは難しい。
 CTを撮ってみて肺癌が診断され、「正解」を知ってから、その目でX線写真を見てみれば、ああそういえばここにあるような気もするという程度の所見しかない。本音であるが「自分がこの患者さんのX線写真の読影担当でなくてよかった」と思う。自分が担当していたら自分が当事者になっていた。

 区の健診の中における胸部X線写真の位置づけは、肺の微細病変、微小肺癌を見出すことではない。それは最初から無理がある。それならば別枠で行われている(杉並区は知らないが豊島区では施行されている)肺癌検診を受ける必要がある。
 胸部X線写真での診断目的は、ある程度大きな病変や陳旧性病変、例えば昔の結核の痕が悪化していないかどうかなどの粗大病変のチェックにある。
 ここで「異常なし」という診断を出すと「ああすべてOK、自分には(がんも含めて)悪いところは全くない」と「誤解」してしまう。