吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

杉並区健診で肺癌見落とし その4

2018年12月04日 06時40分42秒 | 日記
 しかも健診の意義は、個人的に一人ひとりの病気を拾い上げるためのものではない(個人的に疾患を拾い上げる目的のものは人間ドック(自費))である。健診の意義は、無症状の疾病の診断によって、社会全体でその疾病による死亡率をいかに低下させるかということにある。健診の意義は、個人ではなく、社会全体における公衆衛生の向上なのである。つまり疾患の見落とし例があっても(もちろんないほうがいいのだが)、その他大勢で多くの早期発見例があり、全体的に死亡率が右肩下がりになって行けば意義があるのである。

 と言ってしまうと冷たく感じるかもしれないが、社会全体の公衆衛生の向上が目的であるので、社会(行政)からの補助で成り立っている。
 また個人のためのものではないとは言うものの、現実的には早期発見・早期治療に繋がり治癒に結びつく人もかなり多いわけである。だから健診により、社会的ばかりでなく個人的にも恩恵はもたらされているのである。
 この恩恵を無視して、当然一定の確率で起こりうる「見落とし」についてその部分のみを追求するのは得策ではないものと思われる。