
映画を観てから小雨にけむる広小路通りを歩いた。
こんな彫刻に出会った。
写真で見ると大きく見えるが、子どもたちの身長は50センチぐらいか。
笹島の交差点に着いた。
名古屋駅方面を見やると小雨と夕闇にツイン・タワーがうっすらしていた。

その近くで行われた若い人たちとの会に出席した。
年に二、三回一緒に勉強会をしている仲間たちだ。
会合を終えたら9時半近かった。
カラオケにゆくという若い人達と別れて私は帰途に。

岐阜駅へ着いたが雨はまだ降り続いていた。
もう自宅近くのバス停を通るバスはない。
すこし離れたバス停を通る路線の最終に乗る。
そのバス停に降りた頃には幸い雨はほぼ止んでいた。
歩き始めた。
すこし歩いたら向こうに幽霊が待っていた。
長い人生、こんなことは初めてではない。

初めて出会ったのはやはり夏、名古屋のとある橋の袂であった。
白っぽい衣服をまとったそれは、私を待っていてこういった。
「ねえ、学生さん、遊んでかない」
20歳になったかどうかの純情可憐な美青年にはひとつの試練であった。
「あ、あのう、結構です」としどろもどろに答えた。
「そう、じゃまたね」と幽霊はすーっと離れていった。

今度の幽霊は近づいても何もいわなかった。
近くでフラッシュを焚いて撮った。
ネット状のものをてるてる坊主のようにしつらえたのが正体であった。
身の丈160センチぐらい、夜目で遠目には人が佇んでいるように見える。
誰かのいたずらだろうか。
それとも何かへの祈りであろうか。
その幽霊がいる角を曲がって家路を急いだ。
途中の鎮守の森は黒々と闇に沈んでいた。
その森の奥で、蝉が一声、夜鳴きをするのが聞こえた。