鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

Vol.51『でも、同棲してるじゃない?(4章)』

2005年01月27日 | ヨハネ伝解読

 サマリアの女は自堕落女か? の続きです。

 この女に関して「5人の夫を持ってきた」に加えてもう一つ、自堕落という印象を与えるせりふが記されていますね。

 「今一緒に住んでいる男は夫ではない」

 というイエスの言葉がそれであります。今流に言えば、これは同棲ではないか、ということになる。このように追い打ちをかけられると、もう、弁護の余地はないように見えます。

      @      @      @

 だが、これも我々が現代日本の家族構成を前提に考えているからかもしれないのです。古代のユダヤ社会(そして、ギリシャ社会、ローマ社会でも)では、家族というのはもっと大きな集団でした。そこには妻、子などの血縁関係者だけでなく、奴隷もたくさん含まれていました。それらを一家の主人が強い権限を持って統率している、これが家族です。

 なお、この場合の奴隷というのも、日本語から通常描かれるイメージとは、かけ離れています。日本語で奴隷といえば、牛馬のようにむち打たれて働かされる存在というイメージですよね。だが、当時はそうではない。たとえば、家族の金銭関係の管理を任されている執事のような知的な仕事に携わる存在も、身分は奴隷であり得ました。

 聖書に出てくる「奴隷」という言葉は、「自由人」に対する、反対概念です。そして、この場合自由人というのは、自分の属する集団の全体に関する情報を持っているもの、という意味です。そういう情報を与えられていない人は、専門家であっても奴隷でありうるのです。

 家族の財務管理を担当している執事も、奴隷である場合が多かった。それが家族全体でどういう位置にあるかの情報を与えられておらず、ただお金を運営するエキスパートであるならば、すなわち奴隷でありえたのです。日本語ではむしろ「しもべ、下僕」という感じですね。

      @      @      @

 そういう状況ですから、6番目の弟が、その家族の中にいたのかもしれません。ヨハネがイエスの言葉として「共に住んでいる」と記しているのは、それだけのことである可能性も十二分にあるのです。

 でも、それが「夫でない」というのはなぜか。それもあり得ます。彼は、律法に従って、将来、彼女の夫になることに決まっています。だが、次の結婚を兄の妻だった女性とする前に、一定の期間をおいていたのかもしれません。

 そういう可能性も十分です。現代日本だって、再婚登録をする場合、離婚後6ヶ月以上は待たねばならないことに法律で定められていますね。

 このように、彼女が今流に言う「同棲生活」をしているのではない確率も、十分にありえます。兄の嫁だった女も家族です。その弟と元兄嫁が、同じ家族として「共に住んでいる」だけという可能性を否定することは決してできません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Vol.50『サマリアの女は自堕落女?(4章)』

2005年01月27日 | ヨハネ伝解読

 ここで少し脇道に入りましょう。このサマリアの女とは、どういう女だったのでしょうか。

 ほとんどの解説では、情欲の強い自堕落な女だったとされています。5人も夫を換えて、しかも、その後、夫でない男と一緒に住んでいるというのだから、というのがその根拠です。驚くべき堕落女・・・。

      @      @      @

 けれども、そうでない可能性もあるのです。つまり、彼女は旧約聖書に記されている律法に従って生きていた、信仰深い女性である・・・と。たとえば、申命記という書物には、次のような律法が書かれています。律法というのは、創主から人間に下された命令という意味をもった言葉です。

  「兄弟が一緒に住んでいて、そのうちの一人が死に彼に子がない場合、死んだものの妻は、家族以外のよそ者に嫁いではならない。その夫の兄弟がその女のところに入り、これをめとって妻とし、夫の兄弟としての義務を果たさなければならない」(申命記、25章5節)

 このサマリアの女は、上記の律法に忠実に従っていたのかも知れないのです。子供に恵まれないままで夫に次々に先立たれた。そこで、律法に従ってその兄弟を次々に夫にせざるを得なかったのかもしれません。

      @      @      @

 まさか、とお思いになる読者が多いでしょうね。だがそれは、今の日本の家族構成を前提に考えているからでしょう。今は、子供が2人からせいぜい3人くらいです。

 けれども、それは日本でもごく最近のことであります。戦前までは男の兄弟が数人という家族は、珍しくありませんでしたよ。明治維新以降だけでなく、江戸時代にもたくさんの子供を産みました。

 イエス時代のユダヤ系民族の社会でも、状況は同じだったかもしれません。ユダヤ人が多産系であったことは、聖書にも記されています。

 モーセに率いられてエジプトを脱出する以前、彼らはエジプトに奴隷として暮らしていました。その頃の彼らに関して、エジプト人が驚異に感じるほどの多産であったことが記されています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする