
「稲盛『哲学』と聖書の思想」第12回です。
煩悩の思想についても、聖書の思想と比較してみましょう。

<教えがめざすゴールが違う>
シャカの教えには、人の心理を深く内省して詳細に把握するという特質があります。
イエスの人間に関する教えが示唆するところも、仏教でいう煩悩を十分にカバーしています。けれども、人間の心理に焦点を当て続けてそれを執拗に明かしていく、という姿勢はありません。
それは以前に述べたとおり、イエスが人を導こうとしている究極のゴールがシャカのそれと違うからです。イエスは人の霊が「天の創主王国」において永遠に住めるようになる、というところに目標を置いています。
対して、シャカの教えのゴールは、「人間が現世を煩悩少なく生きることが出来るようにする」というところに置かれています。その為には、人間の心理の深奥を明かすことが根本課題となるのです。詳細に明かして、詳細に対処するのが教えの中核になるのですね。

<経営者として>
稲盛さんは、経営者として企業に働く人々が心の妄念少なく現世を生きる方法を、重点的に考えることになります。それには、聖書の教えよりも仏教の教えの方が直接役に立つのです。
稲盛さんが、仏教の智慧にむかわれた、ということにも、氏の実践的な直感力が現れていると鹿嶋は思います。
